第1章 第1節 世界経済の現況
第1章 世界経済の現況 | 第2章 アメリカ経済の長期拡大の要因と課題 | 第3章 物価安定下の世界経済 | |||||||||||
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概観 | アメリカ | 欧州 | アジア | 金融・商品 | 通貨・金融システム | 特徴 | 要因 | 生産性 | 課題 | 現状 | 要因 | 特徴 | 金融政策 |
第1章 世界経済の現況
第1章のポイント
[世界経済の概観]
98年の世界経済は、アジア通貨・金融危機の影響等により、成長率が鈍化した。99年の世界経済は、アメリカ経済が順調に景気拡大を続け、ヨーロッパ経済は景気の減速が一時的なものに収まり、アジア経済も回復することから、緩やかながら回復に向かうと見込まれている。
[南北アメリカ]
アメリカ経済は、99年4月で景気拡大が9年目に入った。株高等の先行き不透明感は払拭されていないものの、アメリカ経済は98年の国際金融市場の混乱をも乗り越え、その景気拡大のペースは大方の予想を上回っている。
中南米では、ブラジルの通貨危機を端緒に景気は後退局面にあるものの、後退の程度は年初の予想よりも軽度にとどまっている。
[ヨーロッパ]
西ヨーロッパでは、各国通貨の増価やアジア危機等による外需の減少から、98年後半から景気は緩やかに減速したものの、99年春以降、アジア経済の回復等により外需が増加に転じたことなどから改善の動きが強まっている。EU11か国では、99年1月、単一通貨「ユーロ」が導入され、アメリカに比肩する一大通貨圏が誕生した。
ロシアでは、景気は底入れしたとみられる。
[アジア]
通貨・金融危機の発生から2年以上が経過し、東アジア経済に回復の動きが広がってきている。その要因として、金融・財政両面からの景気浮揚策の効果や為替レートの大幅な減価等による外需の増加等が挙げられる。中国では、国有企業改革の進展に伴う雇用不安などから消費の伸びが鈍化し、景気が減速傾向にあり、物価の下落が続いている。
本章では、第1節で世界経済の現況を概観した後、第2節で先行きに不透明感もあるものの景気拡大を続けるアメリカ、景気が後退している中南米など南北アメリカの経済動向をみる。次に、第3節で緩やかな景気の減速の後、改善の動きが強まる西ヨーロッパ、市場経済への移行プロセス等の違いにより経済状況に差がみられる中・東ヨーロッパ、金融危機からの脱却を目指すロシアなど、ヨーロッパの経済動向をみる。また、第4節で通貨・金融危機の発生から2年以上が経過し、総じて回復の動きがみられる東アジア、景気減速が続く中国、景気の拡大が続くオーストラリアなどアジア・大洋州の経済動向をみる。第5節で国際金融・商品の動向を概観し、最後に第6節で国際通貨・金融システムの強化について考察する。
各国経済の動向に加えて、ユーロ導入後の統合の深化と拡大に向けて取り組むEU経済の課題について整理する。
なお、ここ1、2年を超えるアメリカ経済のより長期的な動向については、第2章を参照されたい。
第1節 緩やかながら回復に向かう世界経済
1997年のアジア通貨・金融危機は、世界的な需要の低迷、貿易の伸びの鈍化、一次産品価格の低下等を通じて、世界経済全体にも大きな影響を及ぼし、98年の世界全体の実質GDP成長率は鈍化した。世界の実質GDP成長率(IMF統計による)は、97年の4.2%の後、98年は2.5%となった。アメリカでは順調な景気拡大が続いたが、西ヨーロッパでは年後半に緩やかな景気の減速がみられた。日本では景気の低迷が続いた。通貨・金融危機の影響から、東アジアの多くの国やロシアでマイナス成長となったほか、中南米でも成長率が大幅に鈍化した(第1-1-1表)。
99年の世界経済は、IMFの見通しによると、アメリカは順調な景気拡大が続き、西ヨーロッパでは年前半の景気拡大テンポの鈍化から成長率がやや低下する。日本がプラス成長に転ずることから、先進国全体の成長率はやや高まることが見込まれている。途上国については、中国では景気の減速が続くものの、アジア全体では回復する。一方、中南米では総じて景気が後退する。99年の世界全体の実質GDP成長率は3.0%と98年に比べやや高まることが見込まれている。
(先進国経済:アメリカの景気拡大続く)
先進国の実質GDP成長率は、98年2.2%の後、99年は2.8%の見込みとなっている。
アメリカ経済は、99年4月に9年目の景気拡大局面に入り、個人消費と設備投資にけん引された内需中心の拡大が続いている。失業率は低水準で推移している。物価は総じて安定しているが、99年後半は上昇率がやや高まりをみせている。財政収支は引き続き改善している。98会計年度(97年10月~98年9月)には29年ぶりに黒字に転換し、99年度も大幅な黒字となった(第1-1-2図)。一方、輸出の減少、輸入の増加により貿易収支赤字は拡大している。
西ヨーロッパ経済をみると、個人消費や設備投資の拡大により98年半ば頃まで景気拡大が続いたが、各国通貨の増価やアジア通貨危機がロシア等へ波及したことによる外需の減少などから、98年後半から99年前半にかけて景気は緩やかに減速した。しかし、ユーロが99年1月の発足後総じて減価したことや、アジアにおける景気の回復、ロシアや中南米の金融危機の収拾などから外需が回復し、個人消費の好調も続いたことから、99年春以降、改善の動きが強まっている。 その他先進国では、カナダ、オーストラリアは内需中心に拡大が続いている。日本では景気の低迷が続いていたが、99年に入って前期比で2四半期続けてプラス成長となり、99年の実質GDP成長率はプラスが見込まれている。
(途上国経済:アジア経済は回復へ)
途上国の実質GDP成長率は、97年の5.8%の後、98年はアジア、中南米ともに景気が大幅に減速したため3.2%へ低下した。99年は中南米では通貨危機後の景気後退により成長率が低下するものの、アジアでは、東アジアを中心に総じて景気が回復し、全体として3.5%とやや回復が見込まれている(第1-1-3図)。
物価は、アジアでは98年に通貨減価の影響等からASEAN諸国を中心に物価上昇率が高まりをみせたが、99年には落ち着きを取り戻している。中南米では依然二桁の物価上昇が続いている国もみられるが、上昇率は低下傾向にある。
経常収支は、アジアでは97年には年後半の輸入の大幅な減少から黒字に転じ、98年には黒字幅が拡大した。99年には輸入の増加から黒字幅は縮小するものの、全体として黒字を維持するものと見込まれている。中南米では赤字の拡大が続いていたが、99年にはアメリカ向けの輸出拡大などから赤字幅が縮小するとみられている。
(市場経済移行国経済:景気の減速続く)
市場経済移行国の経済は、98年には、中・東ヨーロッパで国によって経済状況に違いがみられるが全体としては景気が鈍化し、ロシアは大幅なマイナス成長となったことから、全体として実質GDP成長率は▲0.2%と若干ながらマイナス成長となった。99年は中・東ヨーロッパでは減速が続き、ロシアでは景気は底入れしたとみられる(前掲第1-1-3図)。
物価上昇率は高水準ながら低下が続いていたが、ロシアでは98年8月のルーブル切下げ後急上昇した。
国際収支をみると、中・東ヨーロッパでは経常収支の赤字が続いている。ロシアでは、98年前半に経常収支が赤字となったが、後半にはルーブルの大幅減価を主因とした輸入の大幅な減少により黒字に転じている。
(世界貿易:大幅に伸びが鈍化)
世界貿易量の増加率は、97年に9.9%と高い伸びを示した後、98年には3.6%と大幅に伸びが鈍化した。特にアジア経済の大幅な落ち込みが続いたことから、途上国の輸入はマイナスの伸びとなった。また、99年については、アジアでは輸入の回復が見込まれるものの、市場経済移行国では輸入の減少が見込まれるなど、世界全体としては3.7%と98年と同程度の伸びとなることが見込まれている(前掲第1-1-1表)。
貿易財・サービス価格(米ドル建て)の動きをみると、96年以降下落に転じている。原油価格、国際商品価格とも下落幅が拡大しており、97年は4.9%、98年は5.1%の下落となった。99年については、IMFの見通しでは、下落幅は縮小するものの0.8%の下落が見込まれている。原油価格(北海ブレント、ドル/バレル)は、97年の19.2ドルから、98年には12.8ドルと大きく下落した。その後、99年初も更に下落が続いたが、産油国の減産効果などから3月以降急上昇し、7~9月期には20.5ドルまで上昇した。一次産品価格(CRB先物指数)は、97年半ば以降下落基調が続いていたが、99年半ば以降回復の兆しもみられる。
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