第2節 設備投資拡大に向けた課題
本節では、設備投資拡大に向けた課題について考察する。まず、設備投資が低水準にとどまっている背景を検討する。次に、そこで明らかとなった設備過剰感や投資収益率の低迷などの課題に対し、どのような政策対応が考えられるかについて整理する。その上で、「日本再興戦略」の中で設備投資促進策として取り上げられている設備効率を高める事業再編の後押しや投資収益率を向上させるための研究開発投資の促進、設備投資減税等による資本コスト引下げなどの政策が、設備投資や研究開発投資、事業再編を促進する効果について考察する。
1 設備投資が低水準にとどまる背景と政策対応
ここでは、設備投資が低水準にとどまる現状を確認した後、その背景を点検する。次に、そこで明らかとなる設備過剰感の存在、投資収益率の低迷、期待成長率の低下、海外での設備投資意欲の高まりといった課題に対し、政策的にどのような対応策が取られているかについて整理する。
(低水準にとどまる設備投資、低下する資本生産性)
円安方向への動きや好調な内需を背景に企業収益は改善しているものの、設備投資は非製造業を中心とした持ち直しの動きにとどまっており、回復力は弱い18。2000年代に入ってからのより中長期的な設備投資の動向を確認すると、現在(2013年7-9月期)の設備投資は、リーマンショック前の2007年と比べて、製造業で約60%、非製造業で約70%の水準にとどまっている。短期的には、非製造業を中心に設備投資に持ち直しの動きが見られているが、中長期的に見ると、製造業、非製造業ともに、設備投資は低水準にとどまっている(第3-2-1図(1))。
設備投資が低水準にとどまり、資本ストックの老朽化が進む中で、資本生産性は低下している。1980年代には、設備投資が減価償却費を上回って増加していたため、有形固定資産(土地を除く)は増加していた(第3-2-1図(2))。しかし、90年代前半には設備投資が急減し、その後も減少傾向をたどる中で、2002年には初めて設備投資が減価償却費を下回った。さらにリーマンショック後の2009年から2012年にかけて、設備投資が減価償却費を下回って推移した。この結果、有形固定資産は90年代後半までは増加傾向で推移したが、2000年代に入ってからは、減少傾向で推移している。
資本のビンテージ(資本の平均年齢)は、上昇しており、資本ストックが急速に老朽化している(第3-2-1図(3))19。こうした中、資本係数(資本ストック額/付加価値額)は、90年代以降、上昇傾向にあり、資本生産性(資本係数の逆数)が低下傾向にあったことを示している。資本生産性は、資本労働比率の上昇によっても低下するが、設備投資が低水準にとどまり資本の老朽化が進む中で、資本生産性が低下していると考えられる。新しい技術を体化した設備が導入されなければ、我が国企業が競争力を維持することは難しいと考えられる。
(製造業の設備投資の弱さの背景には設備過剰感や設備の投資収益率の低迷)
このように設備投資が低水準にとどまっている背景にはどのような要因があるのだろうか。まず設備投資に影響する要因のうち循環的と考えられる設備過剰感、キャッシュフロー、設備の投資収益率20の動向について確認しよう。
日銀短観の生産・営業用設備判断DIによると、設備過剰感は、製造業、非製造業ともに改善傾向にあり、非製造業では不足超に転じている(第3-2-2図(1))。しかし、製造業では、稼働率が低い水準にとどまっていることから過剰感が残っている。
次に、キャッシュフローの動向を見ると、大・中堅企業では、企業収益の改善を背景に製造業、非製造業ともに増加傾向にあるが、中小企業では、製造業で横ばい圏内、非製造業で減少基調となっており、設備投資の制約要因となっている可能性がある(第3-2-2図(2))。
また、製造業の設備の投資収益率は、リーマンショック後に回復したものの、2010年度以降は横ばい圏内にとどまっており、2012年度の水準(10.9%)は1990年度以降で設備投資が増加した年の平均的な水準(14.7%)に至っていない(第3-2-2図(3))。一方、非製造業の設備の投資収益率は、リーマンショック以降上昇を続け、2012年の水準(8.9%)は90年度以降で設備投資が増加した年の平均的な水準(7.9%)を超えている。
まとめると、製造業では、稼働率の伸び悩みを背景に設備過剰感が残っているほか、設備の投資収益率が過去に設備投資が増加した局面と比べて低いことも設備投資を下押ししていると考えられる。一方、非製造業では、循環的要因は総じて好転しているが、中小企業ではキャッシュフローが減少している。製造業、非製造業ともに、中小企業ではキャッシュフローが設備投資の制約要因となっている可能性がある。
(期待成長率の低迷や海外設備投資意欲の高まりも設備投資を抑制)
設備投資の持ち直しに広がりが見られない背景には、こうした循環的な要因に加えて、期待成長率の低迷や海外設備投資意欲の高まりといった、より構造的な要因の影響も考えられる21。
そこで、設備投資の前年比伸び率と今後5年間の期待成長率の関係を見ると、両者はおおむね連動しており、期待成長率が設備投資の動向に一定の影響を与えていると考えられる(第3-2-3図(1))。2012年度(13年1月調査)の期待成長率はITバブルが崩壊した後の2002年度やリーマンショック直後の2008年度に次ぐ低い水準にある。こうした中長期的な期待成長率の低下が、製造業、非製造業を問わず、設備投資が低水準にとどまる要因となっていると考えられる。
また、資本金10億円以上の大企業に対して国内及び海外の生産・サービス供給能力の今後3年程度の中期的な見通しを聞いた調査では、国内の供給能力を増加させる企業の割合は2012年に3割を下回りその後も低い水準にあるのに対し、海外の供給能力を増加させる企業の割合は7割を超えている(第3-2-3図(2))。2013年に入って国内景気は上向いているものの、国内よりも海外で設備投資を増やす傾向に大きな変化は見られない。
こうした中で、国内拠点において重視する役割を聞いたアンケート調査によると、以前は「生産(汎用品)」が重視されていたが、今後は「生産(先端品)」を重視するとしており、高付加価値品の生産へのシフトが見られる(第3-2-3図(3))。また、「開発」、「設計」、「研究」を重視する傾向も強まってきている。企業は国内拠点に、研究開発拠点や高付加価値品の生産といったより高度な機能を持たせようと考えていることが分かる。
コラム3-1 技術・製品ライフサイクル短期化の投資収益への影響
経済産業省が実施したアンケート調査によると、自社の国内生産設備が国内外のライバル企業と比較して劣後すると回答した企業について、その理由を聞いたところ、各業種で「資金面から新規投資が困難なため、生産設備が老朽化」しているとの回答が最も多く、おおむね過半に達しているが、「ライバル企業の投資スピードが速く、追いついていけない」との回答も2番目に多く、特に電気機械や化学工業では2割を越えている(コラム3-1図(1))。
これには、技術や製品のライフサイクルの短期化が影響している可能性が考えられる。企業へのアンケート調査によると、企業が設備投資から利益を得られる期間は年々短くなる傾向にあり、当該設備投資から得られる営業利益も減少傾向にある(コラム3-1図(2))22。
製品ライフサイクルが短期化することで、投資収益性が低下するとともに、短期間に技術や製品の陳腐化が進むことから、既存の設備を過剰と感じる要因ともなっていると考えられる。
(設備投資拡大への課題と対応策)
低水準にとどまっている設備投資を拡大するためには、どのような政策対応が考えられるであろうか。以下では、政府が「日本再興戦略」で示している対応策を中心に見てみよう。
まず、設備過剰感を解消していくためには、過剰な設備の除却を進めることが考えられる。償却が済んでいない設備を除却すると、企業には財務面の負担(特別損失)が生じることから、除却に踏み切れない場合があると考えられる。そのため、事業再編や事業組み換えを後押しし、経営資源の円滑な移動を促すことで設備効率を高めることが考えられる。「日本再興戦略」では、政府は、過剰供給構造にある分野での再編を促進していくこととしている。また、企業における事業引継などのワンストップ窓口の拡充などの施策を検討していくこととしている。
投資収益率を改善していくためには、投資収益を改善する戦略的な事業再編の促進、中長期的な収益・競争力の基盤を育てるための研究開発投資の後押しなどが考えられる。また、デフレからの脱却や減税により資本コストを低下させることも投資収益(税引後)を改善する。
期待成長率を高めていくためには、中長期的な経済成長をもたらす成長戦略を着実に実行していくことが重要である。こうした政策としては、規制緩和、科学技術イノベーションの推進、女性や若者の労働参加の促進、人材力の強化といった政策が広く当てはまる。
海外投資意欲の高まりに対しては、規制緩和や国内の社会インフラの競争力強化、法人税率引下げなどを通じ、国内立地の魅力を高める23ことが考えられる。「日本再興戦略」では、立地競争力を更に強化するため、国家戦略特区の実現などを通じた大胆な規制・制度改革、空港・港湾など産業インフラの整備、環境・エネルギー制約の克服などの幅広い取組を掲げている。
次項では、設備投資促進に資するこれらの多様な政策対応のうち、「日本再興戦略」で重要な役割を担っている税制措置を中心に見ていこう。
2 設備投資促進策の効果
ここでは、「日本再興戦略」の中で検討されている設備投資促進策により、設備投資や研究開発投資、事業再編がどの程度活発化するかについて検討する。
(1)資本コスト低下の設備投資促進効果
設備投資促進のためには、資本の使用者費用である資本コスト24を引き下げることが重要である。ここでは、デフレ脱却による実質金利の低下、あるいは設備投資減税が資本コストを引き下げることを通じて、設備投資をどれだけ促進するかについて整理する。
(設備投資誘発には、デフレ脱却による実質金利の低下が重要)
デフレから脱却する過程で実質金利が低下すれば、資本コストが低下し、設備投資を促進する効果を持つと期待されるが、どの程度影響があるのだろうか。
まず、資本コストの長期的な推移を見ると、80年代前半から90年代にかけて、傾向的に低下している(第3-2-4図(1))。これには、投資財の相対価格(対生産財価格)や実質金利が低下傾向にあったことが寄与している(第3-2-4図(2))。また、90年代前半は、減価償却率の低下など25も資本コストの低下要因となっていた。しかし、90年代末以降は、資本コストは横ばいで推移している。これは、名目金利の低下幅が縮小するとともに物価が下落傾向にあったために実質金利が高止まりしたこと、減価償却率がやや上昇したことなどによる。
我が国経済は、長期にわたってデフレ状況にあったため、実質金利が名目金利を上回り、その分だけ資本コストが高止まりして設備投資を抑制してきたと考えられる。例えば2011年の実質金利は名目金利を1.9%ポイント上回っており、これは資本コストを2.1%ポイント押し上げている。この資本コストの押上げ幅は、以下で試算する今回の減税効果を上回っている。このことは、設備投資を促進する上で、デフレからの脱却が非常に重要であることを示していると考えられる。
(減税は資本コストの引下げなどを通じて設備投資を促進)
次に、設備投資減税等の減税が、設備投資をどの程度促進するかについて検討する。減税は、大きくは「特別償却」と「税額削減」に分けられる。特別償却とは、対象設備について、一定期間に限り追加的な償却を認め、課税を繰り延べるものである。これによって、一時的に課税所得が減額され、キャッシュフローが改善するので、設備投資を促進する。税額削減は、税額控除によって対象設備の取得費用などを法人税額から控除したり、法人税率を引き下げたりすることによって課税額を減らす効果がある。課税額の減少は、税引き後利益を増加させ、投資採算の向上を通じて設備投資を促進する。
このような減税の設備投資促進効果を計測した先行研究によると、法人税の実効税率1%ポイントの低下により、資本コストはおおむね0.5~0.8%低下し、設備投資をおおむね0.2~0.6%誘発する効果があると考えられる(第3-2-5表)。また、設備投資減税については、資本コストに与える影響が法人税減税より大きく、設備投資誘発効果も大きい。投資額に対し6倍程度の設備投資を誘発するとするものもある26。
簡単化のため今回の設備投資減税策(減税規模(2014年度)約4,700億円27)が投資税額控除として実施されると仮定すると、今回の減税策は資本コストを約1.1%(約0.2%ポイント)低下させると試算される。内閣府の「短期日本経済マクロ計量モデル」によると、設備投資の資本コストに対する弾力性は▲1.4程度である28。この弾力性を用いると、今回の設備投資減税策は1.5%程度設備投資を誘発する効果を持つと考えられる。なお、この結果は、モデルの弾性値を簡便な形で用いた試算であること等から、数値は幅を持ってみる必要がある29。
コラム3-2 2014年に実施予定の法人課税に関する減税策
法人課税に関する税制改正として、2014年には、以下の措置が実施予定である(付表3-1)。まず、産業競争力の強化に関する施策を総合的かつ一体的に推進するための体制を整備することなどを目的として、産業競争力強化法が2013年12月に成立した。同法関連措置として、以下の3つの施策が実施される。
第一に、生産性の向上につながる設備、すなわち生産性の高い先端的な設備や生産ライン及びオペレーションの改善のための設備への投資を対象に、即時償却又は税額控除を認める制度(生産性向上設備投資促進税制)が創設される。
第二に、事業再編促進税制が創設される。自社の事業部門を切り出し他社の事業部門と統合するため、事業再編に係る特定会社の特定株式等30を取得した場合、課税負担の軽減措置を講じるとともに、株式会社の設立や不動産の取得等に係る登録免許税を軽減するものである。
第三に、ベンチャー投資促進税制が創設される。これは、ベンチャーファンドへ出資する企業に税制上の支援措置を行うものである。
このほか、中小企業投資促進税制の拡充・延長及び研究開発税制の拡充・延長も実施される。中小企業投資促進税制の拡充・延長については、中小企業における生産性や事務能率の向上につながる機械装置等の導入に関し、即時償却又は取得価格の7%の税額控除等が実施される。
研究開発税制の拡充・延長については、時限措置である上乗せ税額控除の適用期限を2017年3月末までに開始する事業年度に3年間延長するとともに、増加試験研究費31の30%を限度(現行は5%を限度)として税額控除を行う。
なお、所得拡大促進税制の拡充(コラム2-5参照)のほか、経済の好循環を早期に実現する観点から、足下の企業収益を賃金の上昇につなげていくきっかけとするため、復興特別税のうち、法人に対して課せられる復興特別法人税の1年前倒しでの廃止も予定している。これにより、法人実効税率は38.01%から35.64%32に低下することとなる。
(2)研究開発減税の研究開発投資促進効果
次に、研究開発減税について見ていこう33。研究開発費の動向を確認した後、研究開発減税が研究開発を促進する効果について、企業に対するアンケート結果などを基に検討する。
(研究開発減税は研究開発投資を促進)
我が国の企業の研究開発費や研究開発費比率(研究開発費/売上高)は、80年代以降、上昇基調にあり、設備投資が低水準にとどまる中でも、国内における研究開発を重視して、企業は研究開発投資を増額してきていると考えられる(第3-2-6図(1))。ただし、2009年以降、研究開発費は落ち込みが見られ、業種別に見ると、研究開発費が最も多い電気機械業で大きく落ち込んでいる。
次に、過去の研究開発減税は研究開発を促進する効果があったのか、企業アンケートや先行研究を見ていこう。まず、研究開発減税額の推移を確認すると、90年代以降、試験研究費の税額控除の適用額は低下傾向にあったが、2003年度に、試験研究費総額の一定割合の税額控除を認める研究開発減税(総額型)が導入されたことで、税額控除額は急増した(図3-2-6図(2))34。研究開発費は、総額型導入後、輸送用機械、化学、一般機械、電気機械等で顕著に増加している。しかし、2008年度には、リーマンショックの影響により利益法人が減少した影響から控除額は急減した。それ以降も、算出税額(税額控除実施前の税額)の伸び悩みの影響で控除額は0.3~0.4兆円の水準にとどまっている。
研究開発減税の効果について、企業へのアンケート調査を見てみると、研究開発減税が自社の研究開発投資の押上げに寄与していると認識している企業は36.8%存在し、特に研究開発投資上位200社企業については61.5%の企業が何らかの押上げ効果があったと考えている(図3-2-6図(3))。研究開発減税が研究開発費を押し上げる程度については不確実性があるものの、我が国企業の研究開発投資の増加に一定程度寄与していると考えることができる。
(3)事業再編の動向と税制の役割
ここでは、我が国企業の事業再編の動向やそれを支援するための税制及びその利用状況を確認した後、事業再編が経済に与える影響を概観する。
(事業再編税制は、企業の収益性改善や雇用者数増加に寄与)
企業組織再編(M&A)は、効率的な事業運営や事業の拡大などを目的として、合併、株式交換・株式移転、会社分割、営業譲渡などを行うことである。まず、我が国企業のM&Aの推移を見ると、90年代後半以降、金額、件数ともに急速に増加した(第3-2-7図(1))。ただし、リーマンショック後に急減した後、2010年以降増加に転じたものの、依然としてリーマンショック前の水準を下回っている。
事業再編はこのような組織再編の実施も含む事業単位の再編行動である。事業再編によって、複数の企業の経営資源の融合、新規事業への進出、既存事業の整理統合などが生じ、それに関連して設備投資が誘発される。
M&Aをはじめとする事業再編が90年代後半以降進展した要因としては、競争の激化に伴う業況の悪化やバブル崩壊に伴う企業の財務状況の悪化などを背景に事業再編の必要性が高まったことに加え、企業結合法制などの制度整備が進んだことが挙げられる35。
また、産業活力再生特別措置法(産活法)が99年に制定されたことも影響していると考えられる36。これによって税制面の支援措置を含め各種支援措置37が講じられた。99年から2013年9月末までに産活法の認定を受けた計画数は609件あるが、そのうち、登録免許税の軽減などの税の軽減措置を受けた認定計画数は553件と大半を占めている(第3-2-7図(2))。税優遇は産活法の主要な政策ツールとなっている。こうした支援措置を通じ、99年の制定以降の認定計画のうち、生産性の向上という産活法の目的を達成した計画は、支援対象計画の約8割にのぼる38。
事業再編の内容・効果を企業へのアンケート調査39から確認してみよう。事業再編については、過去5年間に「実施した」とする企業が51.3%、今後3年間に「実施予定がある」とする企業が38.6%存在している。多くの企業がこれまで事業再編を実施してきており、今後についてもその必要性を認識している。事業再編を「実施した」、「実施予定である」と回答した企業にその内容を聞くと、「既存事業の拡大」、「新規事業の開始」とするものが多く、それに続いて「既存事業の縮小」や「不採算事業の廃止」とするものが多い(第3-2-7図(3))。事業再編が事業の新陳代謝を促進していることが分かる。また、これまで事業再編を実施した企業は、そうでない企業に比べ、経常利益や雇用者数が増加する企業の割合が高い(第3-2-7図(4))。これは、事業再編の実施内容として、既存事業の拡大や新規事業の開始といった前向きな再編だけでなく、不採算事業の廃止をした企業についても当てはまる。事業再編は、新規事業の開始、既存事業の拡大、不採算事業の廃止等の有力な手段であり、企業の収益を高め雇用を拡大する効果を持つことが分かる40。事業再編を通じた収益改善により、設備投資が増加することが期待される。
なお、事業再編税制については、公的助成や税制メリットを事業再編の直接的な実施理由として挙げる企業は必ずしも多くない41が、事業再編が事業の新陳代謝の促進、収益性の改善、雇用の拡大などに望ましい影響を与えることから、事業再編を税制面から後押しすることは重要であると考えられる。