第2章 第3節 経済危機と労働市場の柔軟性

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第1章 世界経済の現況 第2章 知識・技能の向上と労働市場
第1節 第2節 第3節 第4節 第5節 第6節 第1節 第2節 第3節
概観 アメリカ 欧州 アジア 金融・商品 IT アメリカ 欧州 アジア

第3節 経済危機と労働市場の柔軟性

(韓国、シンガポール、オーストラリアの場合)

通貨・金融危機は、程度の差こそあれ、東アジアの国・地域で多くの失業を生じさせるとともに、労働市場のあり方に大きな影響を与えた。この節では通貨・金融危機後、派遣労働制の導入やIT関連などの成長産業の雇用者数の伸びが目立っている韓国、雇用のミスマッチが顕在化したシンガポール、危機前から労働市場改革に取り組んできたオーストラリアの3か国をとりあげ、これらの国で、労働市場はどのように変化したか、労働市場の柔軟性を高めるために政府はどのように労働市場の改革や雇用の質を高める政策を進めているかを検討する。

1 韓国:通貨・金融危機対応による労働市場の質的変化

韓国では、伝統的に労働組合の力が非常に強く、企業がレイオフを実施する場合には、労働組合の同意が必要となるなど、労働市場の硬直性が指摘されてきた。経済が高成長を続けたこともあり、失業率()は通貨・金融危機前までOECD加盟国の平均を大幅に下回って推移し、長年にわたりほぼ完全雇用に近い状態が続いていた。しかし、通貨・金融危機の発生により、企業の過剰雇用の弊害が顕在化すると、98年2月の整理解雇制()の導入もあいまって、大量のレイオフが発生した。失業率が、それまでの2%台から過去最悪の7%台まで急速に悪化したことから、政府は、四大構造改革の一つに労働市場改革(他に、企業構造改革、金融構造改革、公共部門の構造改革)を掲げ、失業者対策を中心とする各種の課題に取組んできた。

その結果、失業率は、99年初頭をピークに低下傾向を示し、2000年9月現在では4.0%にまで低下している。しかし、失業率が通貨・金融危機前の水準まで低下していないこともあり、政府は、失業給付の拡充や公共事業による雇用創出を中心とした受動的な雇用政策だけではなく、失業を未然に防ぐための職業訓練制度の拡充などにも力点を置いている。本節では、韓国の労働市場について、(1)通貨・金融危機により労働市場がどのように変化したのか、(2)政府による労働力の質を高めるための雇用政策はどう展開されてきたか、という点について検討する。

(1) 労働市場の柔軟化
(雇用形態の多様化)

韓国では、危機前まで派遣労働は原則として認められていなかったが、危機後の98年2月に派遣労働制が導入された。98年末までに、約800の派遣業者と4万人を超える派遣労働者()が誕生している。非常用雇用者数は、危機の影響が深刻化した98年には減少したものの、危機後の99年には大幅に増加し、危機前の水準を大きく上回っている(第2-3-1図)。

第2-3-1 図 韓国の形態別雇用動向

常用雇用者数は危機後も減少を続けているため、危機後に全体の雇用者数がやや増加したのは、非常用雇用者数の大幅な増加によるところが大きい。非常用雇用者数増加の背景には、政府による公共事業創出プログラムに加え、企業が常用雇用者の削減を進める一方で、派遣労働者などを重要な戦力として積極的に受け入れていることがあると考えられる。このような派遣労働者数の増加を受け、政府は、失業給付対象基準を派遣労働者にまで拡大し、派遣労働に対し雇用契約の明文化を義務付けるなど、派遣労働環境の整備を進めている。

(労働移動の高まり)

韓国では、危機前までは平均勤続年数が次第に長期化する傾向にあったが、危機後この傾向に変化がみられた。入職率と離職率によって労働移動の動向をみると、入職率、離職率ともに危機前までは低下傾向で推移していたが、危機後には入職率、離職率ともに上昇傾向に転じている(第2-3-2図)。

第2-3-2 図 韓国の労働移動

新規設立企業数や倒産件数の増加にみられるように、企業部門の新陳代謝の活発化に伴い、危機前よりも労働移動が円滑に行われるようになったとみられる。また、企業が大規模なリストラクチャリングを断行したことから、危機直後には離職率が入職率を大幅に上回ったが、99年3月以降は、入職率が離職率を上回って推移している。しかし、企業は新規雇用に慎重になっているものとみられ、危機直後の大規模な離職者数に相当する規模の入職者数の増加はみられていない。

労働移動の動向を産業別にみると、製造業の雇用者数増加率は、90年代半ばまでほぼ横ばいで推移した後、危機前後(95~98年)は大幅に減少した(第2-3-3表(1))。自動車やIT(情報技術)関連機器などの成長の著しい業種の雇用者数の伸びが目立っている。これらの業種は、90年代半ばにかけ大幅に増加した後、他の業種が雇用者数を大幅に削減した危機前後でも、減少幅は比較的小幅なものにとどまっている。これ以外の業種については、90年代前半に雇用減がみられていたところばかりでなく、いずれの業種でも90年代を通じてみると、雇用者数は減少となっている。

企業規模別にみると、大企業(従業員200人以上)の雇用者数は、90年代を通して減少を続け、危機の前後には雇用者数の減少幅、数ともに、より顕著なものとなった。90年代半ばまで雇用者数が増加していた中小企業(従業員50人未満)については、危機の前後には雇用者数が減少に転じたものの、減少幅は相対的に小さなものとなっている。このことは、財閥系などの大企業を中心に、大規模なリストラクチャリングが行なわれたことを物語っている(第2-3-3表(2))。

第2-3-3 表 韓国の製造業における雇用者数増加率

(賃金形成の弾力化)

韓国の実質賃金上昇率は、大量レイオフによる労働需給緩和の影響で名目賃金が低下したことに加え、通貨減価による物価の高騰もあって、98年に大幅なマイナスとなった。名目賃金上昇率を固定給、ボーナス、残業代の構成別にみると、ボーナスや残業代などが大幅に削減されている(第2-3-4図)。99年に入ってからは、賃金上昇率に高まりがみられるものの、賃金上昇に対する固定給の寄与が危機前よりも小さくなっている。以上からみて、危機後には、企業は労働力の量的な調整だけではなく、賃金面での調整も柔軟に行っているものと考えられる。

第2-3-4 図 韓国の賃金伸び率の構成別寄与度

(2) 労働力の質を高めるための雇用政策

オーカンの法則(成長率と失業率の間には負の相関がみられる)を用いて危機前後の労働市場の構造変化をみると、危機前の90年代半ばまでは、高い経済成長率に支えられ、失業率は概ね1%程度の変動幅にとどまっていたが、危機前後(90年代後半)には、経済成長率が大きく変動する中で、失業率の変動幅も大幅に拡大している(第2-3-5図)。90年代前半に比べ、危機を含む90年代後半には失業率(前年同期差)を1%変動させる実質GDP成長率(前年同期比)の変化幅(オーカン係数)が小さくなっていることから、経済変動に対して、失業率が以前よりも大きく動くようになっている。90年代半ばまでとは異なり、経済が長期的に好調を維持したとしても、景気循環局面によっては、一時的に失業が顕在化する可能性もあるため、今後は、労働者個人が長期失業に陥らないよう高い知識・技能を身につけていく努力が一層必要になってくる。

第2-3-5 図 韓国の成長率と失業率の関係の変化(オーカン係数)

このような中、韓国政府は、危機後に社会資本の整備を進めるとともに、失業率の悪化に歯止めをかける目的で、失業給付制度の拡充や公共事業による雇用創出を中心とする緊急雇用対策を講じた。具体的には、雇用保険制度の適用範囲の拡大()や環境保護のための植林事業などを内容としている。

さらに、失業の再発(復職者が再び失業すること)を防止するための長期的な対策として、失業者の雇用可能性を高めるための職業訓練制度の拡大を図っている。職業訓練制度の利用者は、97年から98年にかけ大幅に増加しており、職業訓練への予算配分は、危機後に失業者対策を上回る伸びを示した(第2-3-6表)。

第2-3-6 表 韓国の職業訓練の動向

韓国政府の職業訓練プログラムは、受講者のニーズにあわせて、基礎的な訓練から高度な技術者を養成する訓練まで幅広く提供されている。危機後には、職業訓練の質的向上を図る目的で、職業訓練機関に対し、訓練内容や受講者に占める復職者の割合に応じて資金援助額を調整したりするなど、効率的な職業訓練を目指した試みが実施されている。そのなかでも、IT技術者を99年現在の107万人から2004年までに150万人にまで増員する必要があるとの政府見通しの下、(1)IT関連学部を持つ大学・大学院に対する資金援助、(2)IT技能の向上に資する遠隔教育システムの構築、(3)IT部門での博士号取得を促進するための海外有力大学院との提携、(4)IT技術者を養成するための職業訓練制度の利用、などの政策を積極的に推進している。

国際化や情報化の進展に伴い、高度な知識・技能を持つ雇用者の育成が急務となっていることから、99年には職業訓練制度の対象範囲の変更が行われた。例えば、その受講対象者が、若者限定から全労働者へ、製造業中心からサービス業や管理職を含む層まで、従業員1,000人以上の企業から全企業へと拡大されている。プログラムの内容についても、より専門的な知識を有する労働者の育成に主眼が置かれており、一部の技能向上は職業訓練の対象範囲から除外されている。

脚注

  • 1 韓国の失業者の定義は、OECD基準と異なるため、失業率がやや低目になるとの指摘がなされている。例えば、政府発表の99年12月の失業率は4.8%であったが、OECD基準を適用すれば5.1%となる。
  • id="k1-2"2 整理解雇制とは、やむを得ない経営上の理由がある場合、経営者が60日前までに労働者の代表にその旨通知すれば、労働者を解雇できる制度である。
  • 3 これら派遣労働者(dispatched workers)は、専門知識や技能が要求される職業に従事し、一つの企業に最高で2年まで勤務できる。彼らは、まず派遣業者と雇用契約を交わし、その後別の企業へ派遣されるという点で、従来の日雇い労働者(daily workers)とは異なる。
  • 4 1995年に創設された雇用保険制度は、当初30人以上の雇用者を抱える企業のみが対象であったため、危機前は雇用者のほぼ3分の1しかカバーされていなかったが、危機後の98年10月には、全ての企業が対象範囲となった。

2 シンガポール:労働需給のミスマッチと知識基盤経済への移行

60年代後半以降工業化により目覚しい発展を遂げたシンガポールは、2%程度とほぼ完全雇用といえる水準の失業率を維持してきた。しかし、アジア通貨・金融危機の発生を機に製造業を中心にレイオフが拡大し、失業率は4%以上というかつてない水準に達した。政府は労働コストの引下げ等を柱とする「ビジネスコスト削減策」を実施するなど、景気の減速に対し機敏に対処した。その後、エレクトロニクス製品の世界的な需要増により輸出が増加したことなどにより景気は比較的早期に回復し、雇用情勢も徐々に回復の兆しをみせた。しかし、実質GDPが危機前の水準を大きく超えた現在でも、失業率は以前の水準に戻っておらず、労働需給のミスマッチも顕在化した。経済が発展するにつれ賃金コストが高まるなか、労働者は、企業のニーズに見合った技能を修得しないでいると、たとえ景気拡大が続いたとしてもいずれは就業の機会を失うというリスクにさらされている。こうした状況を踏まえ、シンガポール政府は国家的人材開発戦略である「マンパワー21」を打ち出し、個々人の就業能力向上に加えて人材の確保を通じた「知識基盤経済」への移行()を図り、将来の国際競争力を確保しようとしている。

以下では、アジア通貨・金融危機後のシンガポールの雇用情勢を概観した上で、労働需給のミスマッチをやや詳細に検証する。さらに、「知識基盤経済」に向けた雇用政策について、問題点等を検討してみる。

(雇用情勢の急速な悪化)

シンガポールでは、アジア通貨・金融危機の影響を受ける以前は高成長、低失業率が持続し、97年の実質GDP成長率は8.4%、失業率は1.8%となっていた。シンガポールでは転職率が非常に高いことを考慮すれば、1.8%という失業率はほぼ完全雇用といえる状態である。政府は、96年頃には人手不足の問題を無視できなくなり、パートタイム採用や外国人労働者採用の拡大、定年延長等を実施し始めた。

97年に発生したアジア通貨・金融危機の影響を受けてシンガポールの雇用情勢は急速に悪化した。シンガポール経済への影響は危機が発生した国に比べれば比較的軽微であったものの、成長が鈍化するにつれて失業率が上昇し、マイナス成長となった98年12月には4.3%と史上最悪を記録した(第2-3-7図)。97年は約1万人だった解雇者数は、製造業、建設業、サービス業の全ての産業で急増し、98年には3倍近い2万9千人となった。特に、製造業の状況が深刻となり、なかでもエレクトロニクス産業でのレイオフが著しく増加した。チップやディスクドライブ等の世界的な過剰供給や熾烈な価格競争を背景に、競争力維持のための労働コスト削減が行われたためとみられる。

第2-3-7 図 シンガポールのGDP成長率と失業率

(以前の水準に戻らない失業率)

雇用情勢は景気回復にやや遅れて回復していったが、失業率は以前の低い水準まで戻っていない。解雇者数をみると、99年は98年の約半数まで減少したが、それでも97年と比べれば約50%多い。産業別の動向を四半期別にみると、サービス業で徐々に減少しているが、製造業では年末、年初に大幅な増加がみられた(第2-3-8図)。このところの製造業での解雇者の増加は、ディスクドライブメーカーにおいて大規模なリストラや合併が続いていることが影響している。リストラは、労働生産性の面では成果を上げており、特に製造業では前年同期比10%以上の上昇が続いている。

第2-3-8 図 シンガポールの産業別解雇者数

(労働需給のミスマッチ顕在化)

経済成長が回復しているにもかかわらず失業率が以前の水準にまで低下していないのは、労働需給のミスマッチによる構造的失業が発生しているためであると考えられる。失業率と欠員率の推移をみると、98年まではおおむね負の相関がみられるが、99年、2000年1~6月期は両者がともに増加している(第2-3-9図)。企業の欠員が増加すれば、企業は雇用を拡大し失業が減少するはずであるから両者には負の相関があるのが通常であり、このことは労働需給のミスマッチを示唆するものである。

第2-3-9 図 シンガポールの失業率と欠員率の推移

雇用情勢を年齢別、学歴別、職能別にみると、ミスマッチの特徴を浮かび上がらせることができる。年齢別にみると、91年、95年時点と比べ40代以上の中高年層の失業率が特に高まっている(第2-3-10図)。解雇者数をみても、2000年1~6月期には40歳以上が全解雇者の55%を占めており、中高年にとりわけ厳しい雇用情勢となっている。学歴別では、高卒とそれ以上の学歴層の失業率が3%以下にとどまっているのに対し、中卒とそれ以下の学歴層は3.5~4.5%と高く、91年、95年時点と比較して学歴による失業率の差が拡大している(第2-3-11図)。2000年1~3月期では失業者の8割は中卒とそれ以下の学歴層であり、このうち4人に1人は40歳以上の未就学及び小卒の学歴層が占めている。2000年1~6月期の解雇者数の内訳をみても、全体の72%は中卒とそれ以下の学歴層となっている。職能別では、解雇の6~8割は生産・運輸・清掃や事務・販売・サービス等の比較的低技能の職種が占めており、このところ解雇者の増加は主に低技能職の解雇によるものである(第2-3-12図)。欠員率をみても、従来は低技能労働の欠員率が高く、専門・管理・技術といった高技能労働の欠員率が低かった。この傾向は緩やかに解消され、99年末には高技能労働の欠員率が最も高くなった(第2-3-13図)。

第2-3-10図 シンガポールの年齢別失業率

第2-3-11図 シンガポールの学歴別失業率

第2-3-12図 シンガポールの職能別解雇者数

第2-3-13図 シンガポールの職能別欠員率

(雇用情勢の変化に対する政府の対応)

シンガポール政府は、96年にひっ迫した雇用情勢のもとで「職場再復帰プログラム」を実施し、女性や高齢者の労働力率引上げを図っていた。具体的には、女性や高齢者の職場復帰をスムーズにするために職業あっせんを実施したほか、60歳前後の高齢者に簡単な英語とコンピュータ技術を教えるなどの職業訓練機会を提供した。また、シンガポールの雇用慣習にはなかったパートタイム労働を促進し、人手不足解消を図った。このような取組を行う一方で、企業が労働者の技能のレベルアップを図ることを奨励する目的で「技能再開発プログラム」を実施した。このプログラムの主な対象は、(1)中高年労働者、(2)教育水準の低い労働者、(3)未熟練労働者、(4)解雇労働者、(5)間もなく解雇されそうな労働者、などとなっており、労働需給のミスマッチが顕在化する前から中高年層や教育水準の低い労働者の再訓練に取り組んでいた点は注目される。

解雇者数が急増した98年になると、シンガポール政府は政労使からなる委員会を設置し、(1)就職フェア等を通じた求職者への援助、(2)96年に実施した「技能再開発プログラム」の拡張、(3)解雇に代わる雇用調整方法としての賃金調整、労働時間短縮、一時的レイオフ等の導入を使用者に要請、などを実施した。また、98年末には5~8%の賃金カットや、住宅、医療等福祉厚生積立基金の使用者負担を半分に引き下げるなどの労働コスト削減策を実施した。これは労働者にとり痛みを伴う大胆な政策であったが、労働者に受け入れられた。雇用確保に重点を置いた政府の機動的対応は、失業率の上昇を抑制する効果があったものとみられることから、適切であったと評価されている。

(就業能力向上の必要性)

シンガポールの雇用情勢は最悪期は脱したとみられるものの、中高年層や低学歴層にとりわけ厳しいものとなっている。経済が発展するにつれ賃金コストが高まるなか、労働者は企業のニーズに見合った技能を習得しないでいると、たとえ景気拡大が持続したとしてもいずれは就業の機会を失うというリスクにさらされている。シンガポール政府は、個々人が労働需要に見合った技能を修得し就業能力を高めることは、各人の所得水準を上昇させるばかりでなく、経済全体の生産性を上昇させるとの認識の下、国家的人材開発戦略である「マンパワー21」を99年8月に発表した。この計画は、個々人の就業能力を向上させることに加えて、人材の確保を通じ「知識基盤経済」への移行を図るとともに、将来の国際競争力を確保することを目的としており、(1)集積された人材開発計画、(2)エンプロイヤビリティ(就業能力)向上のための生涯学習、(3)人材プールの増強、(4)新時代にふさわしい職場環境の実現、(5)活気ある人材関連産業の開発、(6)政労使のパートナーシップの再構築、の6つの戦略から構成されている。

(知識基盤経済に向けて)

シンガポール生産性基準局(PSB)によれば、96年以降実施している「技能再開発プログラム」等の職業訓練プログラムの資金源である技能開発基金(SDF)による訓練機会は、99年11月の段階で前年度比6%増となり()、過去最高となった。また、SDFの訓練助成を受けた40歳以上の中高年労働者数も97年の5倍となり、過去最高を記録した。訓練が労働者や使用者に及ぼしているプラスの影響についても報告されている。98年にPSBが550社を対象に行った調査によれば、訓練を受けたことにより労働者の賃金、知識・技能の水準は10~20%、サービスの質は11~20%、製品の質は1~10%、それぞれ改善されている。また、調査対象の6割は、純益が増加するとともに、技能資格を有する従業員のパフォーマンスが改善した結果、コスト削減が可能となった。しかし他方では、中高年労働者のなかには、「知識基盤経済」に必要な技能を修得するための基礎を欠いている者も少なくないことも判明しており、低学歴の中高年層の再訓練は難しいことが浮き彫りになっている。

脚注

  • 1 シンガポール競争力委員会が98年11月にまとめた報告書のなかで掲げた目標。以後政府は、経済成長にとり知識が一層重要な資産となるとの認識の下、「インダストリー21」や「マンパワー21」等の計画を策定、推進している。
  • 2 年度は、4~3月。

3 オーストラリア: 改革がもたらした労働市場の柔軟性

近年、オーストラリアでは失業率の低下傾向が続いている。これはアジア通貨・金融危機の影響をほとんど受けずに景気拡大が続いたことによるだけでなく、労働市場の柔軟性が高まったことにもよるものとみられる。オーストラリアでは50年代より国内産業の強化と保護を目的に高関税政策や輸入代替工業化政策が推進され、労働市場においても強い労働組合の存在が高い賃金水準と所得分配における平等性を維持していた。しかしながら、70年代後半から製造業の国際競争力や経済効率が悪化し、80年代前半には10%を超える高インフレに加え、高水準の失業率、財政赤字・貿易赤字、オーストラリア・ドル安等の経済困難に陥り、所得水準も他のOECD諸国に比べ相対的に低下していった。83年からの労働党政権発足以降、一連の労働市場改革を始めとして、金融制度の自由化、公営企業の民営化、各種規制緩和、外国製品に対する市場開放等、資源配分における政府の介入をできるだけ排除し、市場メカニズムをより有効に活用するための構造改革が実施された。本節では一連の労働市場改革の内容と改革が労働市場の柔軟性に与えた影響について検討する。

(1) オーストラリアにおける労働環境の変化

オーストラリアで、失業率は低下傾向にあり、ヨーロッパ諸国と同様に抱えてきた若年者の失業や長期失業者といった労働市場の問題も、近年、若干改善傾向にある。また、労働力需給のミスマッチも縮小している。

(低下傾向にある失業率)

オーストラリアの雇用者数の推移をみると、90~92年度(7~6月)は減少していたが、それ以降は96年度に伸びの鈍化はあったものの一貫して増加している。アジアへの輸出依存度が高いにもかかわらず、97年のアジア通貨・金融危機の影響はみてとれない。

失業率の推移をみると、92年度に11%まで上昇した後、94~96年度までは景気が拡大しているにもかかわらず、失業率は8%台半ばで高止まりを続けた。これが、構造的な問題であるとの指摘がなされていたが、97年度以降は低下傾向で推移し、99年度には大幅に低下し6.9%となっている(第2-3-14図)。

第2-3-14図 オーストラリアの雇用者数(前年度差)と失業率

失業期間別にみると、52週以上の長期失業者数は、94、95年度と低下した後は、ほぼ横ばいで推移している。長期失業者が占める割合も、93年度の37%から低下し、30%前後となっている(第2-3-15図)。

第2-3-15図 オーストラリアの失業期間別失業者数と長期(52週以上)失業者の割合

失業者の構成を年齢別にみると、15~24歳の若年層の失業者が全体のおよそ4割を占めている(第2-3-16図)。オーストラリア統計局の「失業者の求職活動と失業期間に関する調査」(98年7月)をみても、就業の障害になっている理由の中で「若年または高齢者であること」、「必要な技能・教育不足」、「経験不足」等が上位を占め、「若年または高齢者であること」を理由に失業している人の平均失業期間(95週)は、「病気・障害のため」(98週)に次いで長くなっている(第2-3-17表)。

第2-3-16図 オーストラリアの若年失業者数の推移と若年失業者の割合

第2-3-17表 オーストラリアの失業者の就職が困難な理由と失業期間

(縮小している労働需給のミスマッチ)

労働需給のミスマッチは、主に労働需要の構造的変化に労働供給がうまく適応できない要因があるため発生する。労働需要が存在するにもかかわらず、労働者の技術や資格の欠如等により職に就けなかったり、失業者の労働インセンティブが削がれている状態である。オーストラリアでは技能労働者不足は以前から懸案となっているが、職業教育と企業のニーズが合致していないことや、労働の需給調整を行う職業紹介業務が十分機能していなかったこと等が要因として考えられる。

ミスマッチの状況を失業率と欠員率の関係でみると、93~94年には欠員率が上昇し失業率が若干低下しているが、95年にかけて欠員率も低下している。その後は98年まで欠員率、失業率ともに停滞したが99年にかけて失業率と欠員率がともに低下している。このようにして、均衡失業率の低下を示唆する原点方向へのシフトがみられることから、ミスマッチによる構造的失業は若干改善しているものと考えられる(第2-3-18図)。

第2-3-18図 オーストラリアの欠員率と失業率の推移

(2)労働市場改革の内容

オーストラリアでは、制度面で中央集権的な労働条件の決定方式から分権化への移行や市場メカニズムの活用、競争原理の導入により労働市場の伸縮性を増し、効率化を図る形で労働市場改革が実施されてきた。

1. 労使関係制度の改革

(特有な賃金決定制度)

その国の労使関係の状況が労働条件の決定、特に賃金の決定に大きな影響を与える。オーストラリアでは古くから労使以外の公的な第三機関(労使関係委員会・AIRC)により中央集権的に賃金はじめとする労働条件の決定制度がとられていた。労働条件について包括的に規定する法律が存在しないオーストラリアにおいては、基本的労働条件は主に労使紛争を強制仲裁する労使関係委員会が決定する裁定(アウォード)により決められていた()。

(労使関係関連法の改革の変遷)

90年代に入り、こうした産業別・職種別のアウォードによる労働条件の画一的な中央決定方式は労働市場の硬直化の原因のひとつであるとされたため、企業内独自協約の導入により事業主・使用者と企業別労働組合の交渉により決定できる制度が導入されるなど、年々見直しがされてきた。そして97年の「職場関係法」により、(1)これまでの企業別交渉に加え、事業主・使用者と労働者が直接交渉によって労働条件を決定することを可能とする「オーストラリア職場協約」が導入され、労働組合の関与の必要をなくしたこと、(2)これまで100項目程度あったアウォードの項目を最低賃金、労働時間、年次有給休暇等20項目に整理・削減し、労使双方にとって交渉における自由度を増したこと、(3)クローズドショップ等強制的に労働者を労組に加入させることの禁止、労組への参加、不参加についての自由保障としたこと等の改革が行なわれた。

一方で、99年にはアウォードの一層の簡素化などを目的とした職場関係法の改正案が議会に提出されたが、野党の反対のため廃案となっている。

従来の産業ごとに一律に決められた賃金や労働条件の決定方式は労働者間の賃金等の平等性を確保するのには有効であったが、企業別レベルや個人レベルでの交渉のシステムに変更されたことは、個々の企業の業績や労働生産性に沿った決定方式といえ、ITなど情報化の進展による新技術の対応に促した企業の人的投資や生産性向上のための労働者の努力にインセンティブを与えるものと考えられる。このことが労働市場の柔軟化や雇用の増加の一因となったと評価されている。しかし、一方で、こうした方式の普及は賃金の格差の拡大や雇用の不安定化を生じさせているといわれている。

2.90年代の雇用政策

90年代初頭から半ばにかけて、失業率が10%を超える状況になり、労働党政権は94年に「勤労国民」と題する雇用と成長に関する白書を発表し、失業率を2000年までに5%に下げることを目的に失業対策()を強化した。政策の内容は長期失業対策と職業教育訓練を重視したものである。

その後、96年の総選挙で発足したハワード自由党・国民党連立政権は「小さな政府」を標榜し、政府の最優先課題とされた財政赤字の削減のため、前政権で実施されていた失業者に対する支援策の見直しを行った。これまでの賃金助成、訓練実施のための助成金等を統廃合し、これに変わる新しい政策として公共職業安定所の廃止と業務の民営化、若者や長期失業者等の就業インセンティブを高める政策、教育訓練制度の改革等を実施している。

(公共職業安定所の廃止と業務の民営化)

オーストラリアでは、労働党政権当時から職業紹介に関する改革が行われてきた。その背景には、行財政改革の一環として90年代初頭より、公共部門への競争原理導入政策が推進され、公共部門の合理化、効率化が求められたことや、政府の調査結果から公共職業安定所のサービスに対する求職者の不満が多かったことが挙げられる。まず、94年に 長期失業者に対して面接等の個別援助を行う「ケース・マネージメント」の業務について、入札による民間業者の参入を認めた。その後、97年12月より職業紹介、求職者に対する各種サービスは政府が民間の職業サービス企業等と委託契約を結び、民間において実施することになった。そのためそれまでの公共職業安定所は政府が株式の100%を所有する株式会社に改組され、民間の職業サービス企業等との競争関係の下で「ジョブ・ネットワーク」の一員としてサービスを供給することになった。この改革の成果について政府の政策評価をみると「ジョブ・ネットワーク」の利用件数は、求人数、就職件数とも増加している。また、就職困難者に対する個別援助も以前の同種のサービスに比べて利用件数が増加している。

(就労インセンティブを高める政策)

失業者に対する支援策の見直しの中で、就労に対するインセンティブを高める雇用政策が重要視され、特に問題になっていた若年者の失業対策として「学校から職場への移行プログラム」()や失業保険給付等の依存の回避と技能向上及び就業経験を付与する「失業保険給付のための就労」()が実施されている。

3.教育訓練制度の改革

オーストラリアでは、若年者の失業率が高い理由として、技能・経験不足が挙げられている。大学教育を受けた人の失業率は中等教育までしか受けていない人よりかなり低いが、オーストラリアの大学進学率は他の先進諸国に比べて高いものではない。また、19歳までに労働市場に出た人の失業率をみると、何らかの職業技術の資格を持っている人は7%と低いのに対して、中等教育を終えておらず職業技術の資格を持たない人の失業率は27%,中等教育のみを終えている人は18%と高いことがわかる。オーストラリアでは、他のOECD諸国と比較して、これまで職業訓練教育への参加が少なかったこともあり、政府は、特に学校から職場への橋渡しとしての若者のための職業教育訓練(VET)に力を入れている。

職業教育訓練制度の改革の目的は主に若年層の失業率の引下げにあり、学校から職場への移行を円滑にするため、学校における学科教育と職場における職業体験をミックスさせることによる学校教育の職場教育との連携強化、職業教育訓練プログラムの地域における企業との関係の強化等が重視された。また、職業教育訓練のプログラムにおける教育訓練サービスの供給者間での競争の導入が図られている。

(技術、継続教育と見習工養成訓練制度・訓練生制度)

オーストラリアの職業訓練制度で重要視されているのは技術・継続教育(TAFET)と見習工養成訓練制度・訓練生制度である。技術・継続教育(TAFET)を実施する技術・継続教育機関(職業訓練専門学校)の多くは州立で高等教育機関の役割を果しており、大学への編入も認められている()。見習工養成訓練制度は労働市場の新規参入者に対して、職能として確立されている伝統的な技能を職場での実際の労働を通じて養成するものである()。

(職業訓練制度の改革)

96年以来の現連立政権がこれまでの失業者に対する支援策の統廃合をするなかで、この見習工養成訓練制度・訓練生制度は、費用対効果が高いと評価され、利用者のニーズに答えるように変更されるなど制度がより柔軟なものとなった。具体的には、(1)到達度や資格の取得状況による訓練期間の短縮、(2)使用者が訓練生として労働者をアウォード以下の賃金で雇い入れること、(3)情報技術及び通信サービス関連などの新たな成長産業に係わる職種への対象の拡大、(4)在学中の制度への参加、(5)訓練生によるOJT、職場外訓練(Off-JT)及び両者の組み合わせの選択やOff-JTでは公立の技術・継続教育機関(職業訓練専門学校)だけでなくビジネスカレッジ等の民間が供給する訓練の選択等が可能になった。

近年、政府は公的資金よる教育訓練の実施を公立教育訓練機関と民間教育訓練機関とでできるだけ競わせる方針を打ち出しており、様々な職業教育訓練プログラムにおいても、政府との契約により民間の教育訓練機関も各種サービスの提供が可能になっている。

(3) 労働市場改革等が労働市場に与えた影響

ここでは一連の労働市場を巡る制度改革が、どの程度労働市場を柔軟化させ、失業率の低下に影響を与えたかについて、(1)最低賃金、(2)失業給付、(3)労働組合活動を例にとり考えてみる。また、OECD諸国の中でもトップクラスの割合を占めるパートタイム雇用が労働市場に与えている影響をみる。

(最低賃金と失業率)

最低賃金の上昇は特に最低賃金以下の賃金でなら雇用され得る労働者の雇用を抑制することから、低技能者の雇用を抑制する効果があるものと考えられる。オーストラリアでは、中央集権的な賃金の決定方式から、企業別労働組合の交渉や、労働者の直接交渉によって賃金を決定することが可能となるなど、賃金の決定プロセスは柔軟化し、多様化した。この変化は最低賃金の平均賃金に対する割合の低下として現れていると考えられており、 オーストラリアでも最低賃金の平均賃金に対する割合が低くなるにしたがって失業率も低下している(第2-3-19図)。

第2-3-19図 オーストラリアの最低賃金/平均賃金と失業率の関係

(失業給付総額と給付件数の推移)

オーストラリアでは失業給付は保険制度ではなく、全額国庫負担による社会保障給付として支給され、新規学卒者等の就職経験のない者も支給対象となっている。失業給付については、失業期間が長期化しても給付水準が下がらないこと、支給期間に上限がないことなどが失業者、特に長期失業者の就業インセンティブを弱めているとの指摘があった。このため、前述のような就労インセンティブを高める政策を導入したり、失業給付の見直し()を進めた結果、失業給付総額、給付件数ともに減少傾向で推移している(第2-3-20図)。

第2-3-20図 オーストラリアの失業給付総額と給付件数の推移

(労働組合と争議件数の推移)

一連の改革は労働組合の組織率に影響を与えている。組織率は94年の35%から98年には26%になるなど低下傾向にある。これは労使関係委員会(AIRC)の裁定(アウォード)による賃金を始めとする労働条件の決定方式が徐々に分権化したことや、クローズドショップ等強制的に労働者を労組に加入させることの禁止が影響していると考えられる。争議件数については91年の1,036件から98年には518件となり、低下傾向にある。労働損失日数も91年から低下傾向で推移している(第2-3-21図)。

第2-3-21図 オーストラリアの組合組織率・労働争議件数の推移

(パートタイム雇用)

パートタイムは労働移動を容易にし、その雇用の促進は労働需給の調整における柔軟性を高め、女性の失業率や長期失業率を低下させる要因と考えられる。

オーストラリアではパートタイム労働者の労働条件は、一般的に労働時間に比例して付与されているが、労使関係制度の改革により企業別の労働時間等労働条件について、より柔軟な取り決めをする例が増加していると考えられる。

オーストラリアはOECD諸国の中でもパートタイムの割合がかなり高い国であり、職種では小売業やサービス業で多く、特に小売業は雇用者数の8割はパートタイムである。パートタイム雇用者は雇用者数全体の伸びが減少している時でも一貫して増加しており、99年のパートタイム割合は26.1%で、特に女性は全体の7割強である(第2-3-22図)。これは90年の21.7%と比較しても大幅に増加している。

第2-3-22図 オーストラリアのパートタイム雇用者数とパートタイム割合

(構造失業率の低下)

これまでみたように、失業率の低下は景気循環による部分もあるが、構造的な要因によるところが大きいものと思われる。OECDの推計でもオーストラリアの賃金上昇を加速させない失業率(NAWRU: Non-Accelerating Wage Rate of Unemployment)は、95年には9.0%まで高まったが、98年には8.1%まで低下している(第2-3-23図)。

第2-3-23図 OECD諸国の構造失業率

アジアの通貨・金融危機の際にオーストラリア経済がほとんど影響を受けなかったのは、危機前から労働市場の改革を始めとする構造改革に積極的に取り組んできたことも一因と考えられる。

脚注

  • 1 この制度を基礎にして、80年代前半から96年までの労働党政権の下で、政府と労働組合総評議会(ACTU)が賃金、物価政策、労使関係等の幅広い分野について、順次、政策合意(「所得と物価に関する合意」でアコードと呼ばれている)して協定を結び、労働側が賃金要求を合理的水準に抑制する一方、政府は年金、医療・福祉サービス、雇用の安定等の政策を通じて労働者に実質的所得保障を行う政策が試みられた。
  • 2 主な内容は長期失業者対策として「雇用援助パッケージ」を導入し、年間16万人分の雇用機会を提供するとともに、i就労相談の充実、ii職業訓練の充実、iii失業者を雇用する使用者に対する賃金補助制度を拡充した。
  • 3 学校から職場への移行を円滑に促し、失業者とならないため必要な技術と知識の供与に焦点を当てたもので、15~19歳の若年者を対象にカウンセリングや識字教育等を行うものである。
  • 4 これまでの雇用支援プログラムのひとつである失業給付等の所得保障を受けると同時に地域への貢献を義務付ける「相互義務プログラム」の一環として創設されたもので、失業期間が6か月以上で、職業訓練支援プログラム等へに参加していない18~34歳までの失業者に対して、観光事業、慈善事業、学校等の事務補助等の参加を義務付けるもの。
  • 5 建築・建設、ビジネス経営、コンピューター等の専門分野があり、専門職、専門職技術者、職人等の養成コースに分かれている。また、見習工養成訓練制度・訓練生制度におけるOff-JTの実施機関として活用されている。
  • 6 訓練生制度は事務、サービス職種等を中心として、従来からの伝統的な職能には含まれていない職種を対象とする制度である。
  • 7 夫婦の場合、従来給付の2人分を一方が受けていたのを夫婦各人に対する独立した給付に変更し、失業給付に係る審査の強化などを行った。
第1章 世界経済の現況 第2章 知識・技能の向上と労働市場
第1節 第2節 第3節 第4節 第5節 第6節 第1節 第2節 第3節
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