第1章
第2節 高齢者の消費と就労
少子高齢化が進展する中、我が国全体の経済活動に対して、高齢者層の与えるインパクトが高まっており、長期的・構造的な経済成長をみる上でも、短期的・循環的な景気動向をみる上でも重要性が増している。
特に、団塊世代(1947年~49年生まれ)は、人口規模が大きいため、その消費動向がマクロの消費に大きな影響を与えている。また、団塊世代が高齢化し、2007年以降の定年退職等の動きが労働供給にも影響を及ぼしているなど、その就業動向が経済全体の労働供給に大きな影響を与えている。
こうした高齢者の影響をみる上では、健康寿命の上昇などに伴い以前に比べて消費や就業といった経済活動に積極的であること、また所得・資産状況や健康状態などの個人差が大きいことに留意する必要がある。本節では、こうした高齢者の特性を踏まえつつ、その消費や就労の動向を分析するとともに、高齢者のより積極的な経済活動への参加に向けた課題を探る。
1 高齢者の消費活動
ここでは、近年、高齢者層全体の消費は増加しており、マクロの消費に対するインパクトが高まっていることを確認した上で、高齢者の消費行動の特徴を確認するとともにその背景を探る。
(高齢者層の消費支出は全体の約半分を占めるまでに拡大)
個人消費全体の中で、高齢者層の消費は、どのように推移しているのだろうか。総務省「家計調査」によって、消費支出の年齢階層別シェアの推移をみると、2000年以降、60歳以上の高齢者世帯のウェイトが趨勢的に上昇しており、最近ではおおむね半分を占めるまでに拡大している(第1-2-1図(1))。
高齢者世帯の1世帯当たり消費支出をみると、他の世代よりも水準は低いものの(第1-2-1図(2))、少子高齢化の進展の下、全体の世帯数に占める高齢者世帯のシェアの上昇によって、高齢者層の消費インパクトが増大している。
これを確認するために、マクロの消費支出を60歳以上と60歳未満に分けて、世帯数と1世帯当たりの消費額で要因分解すると、60歳以上の世帯数が一貫してプラスで寄与していることが分かる(第1-2-1図(3))。
また、60歳以上世帯と60歳未満世帯における消費品目ウェイトの違いをみると、高齢者世帯は他の世代に比して、交際費を含むその他の消費支出や外食を含む食料、保健医療の比率が高くなっている(第1-2-1図(4))。
(無職世帯の消費支出は勤労のそれよりも少なく、就労収入が消費を拡大する可能性)
このように高齢者の消費支出は全体としては拡大している。しかし、高齢者世帯の中には勤労世帯と無職世帯があり、後者は貯蓄取り崩し世帯であるため、両者は異なった消費行動をとることを踏まえると、高齢者層の消費支出全体をみるだけではその消費特性を捉えきれないと考えられる。
そこで、60歳以上世帯について、勤労と無職世帯に分け、それぞれの可処分所得と消費支出をみてみよう。
まず、可処分所得(月額)については、勤労世帯は無職世帯よりも、約16万円多く、消費支出(月額)も約7万円大きい(第1-2-2図(1))。
次に、消費品目を比較すると、勤労世帯では、余裕資金が多いこともあってか、自動車の購入費用などの交通・通信費やこづかいを含むその他の消費支出などのシェアが高いことが分かる(第1-2-2図(2))。
このように勤労高齢者は無職高齢者に比べて可処分所得が多く、その結果、消費が多い。現在就労していないが、希望する高齢者が職に就き安定した収入を得ることができれば、消費支出もより積極的になる可能性が高い。これは、経済全体の消費に対してもプラスの効果を持ち得ると考えられる。
(町村に居住する高齢者を中心に購買形態が限られる傾向)
ここまで、就業による所得環境の改善が高齢者の消費を拡大させる可能性についてみてきたが、高齢者の消費拡大のためには、所得が増えるだけで十分なのであろうか。
近年、過疎化と高齢化が進む地域においては、日用品などの買物に不便を感じる高齢者が増加している。「買物弱者」などともいわれるが、その数は2014年には700万人程度に上るとの推計結果もある24。
そこで、高齢者における買物弱者の現状と、これに対応すべき課題について考えてみよう。内閣府の「高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査」により、居住地の人口規模別に買物弱者の割合をみると、第一に、買物弱者は最近に至るまで高水準で推移していること、第二に、居住地の人口規模が小さい町村では買物弱者の割合が高く、かつ上昇傾向が続いていることが挙げられる(第1-2-3図)。
(都市圏では宅配サービスやコンビニが高齢者の買物弱者化を抑制している可能性)
近年の買物弱者増加の背景には、モータリゼーションの進展に伴い大型店が郊外化する一方、中心部商店街が衰退する中で、運転が困難となり郊外大型店に足を運ぶことができなくなった高齢者が増加していることなどが指摘できる25。
一方、居住地の人口規模が大きいほど、買物弱者の割合の上昇に歯止めがかかっている背景には、中心部に商店街が残っていることに加えて、生協やネットスーパーなどの宅配サービスやコンビニエンスストアの普及などが考えられよう。
これを検証するために、消費者パネルデータを用いて、60歳代の高齢者の購入形態別消費シェアについて、都市圏と地方圏26を比較すると、都市圏は地方圏よりも、生協やネットスーパーなどの宅配やコンビニエンスストアを多く活用する傾向がみて取れる(第1-2-4図)。また、地方圏は都市圏よりもドラックストアの利用が目立っている。
このように、地方圏では都市圏に比して薬局に併設されることも多いドラックストアに対する依存度が高いほか、生協やネットスーパーなどの宅配サービスが活用されていないことが分かる。このため、地方圏の高齢者は一層の加齢により、自家用車の運転や購入商品の持ち運びが困難になると、購入ルートが限定され、必要な財が購入できなくなる可能性が示唆される。
この点、企業は、こうした将来買物弱者になり得る地方在住の高齢者の潜在需要に対応するよう、流通コストのかからない形で商品を提供するなどのビジネスのイノベーションが望まれる。実際、大都市部を中心的な商圏としていたネットスーパーの中には、近年、地方都市、地方周辺地域へのサービスエリア拡大のほか、高齢者が対応できるよう注文の簡素化などを進める動きもみられている27。
また、少子高齢化・人口減少が進展する都市や町村においても、コンパクトシティ形成などの取組により、人口面での規模経済性の維持を通じ、コンビニエンスストアや宅配サービスの進出・定着を実現するなど、利便性を高められるような取組が行われている28。
今後、高齢者が安心して消費活動を行っていくためには、このような企業と地域社会の両面における取組を広げていくことが重要と考えられる。
2 希望する高齢者の労働参加に向けた課題
前項では現在就労していないが、就労を希望する高齢者が就労し、収入を得られれば、消費支出が増加し、マクロの消費も拡大する可能性があることをみた。また、小売などの企業側も、高齢者が買物弱者にならないよう、宅配サービスなどの普及を加速させることで、高齢者の消費需要に対応する余地があることを確認した。
ここでは、まず希望する高齢者の就労が一層拡大する場合、所得や消費だけでなく、現下の労働供給不足の緩和にどの程度寄与するかを検証する。続いて、高齢者が働きやすい環境を整えるための課題を検討する。
(団塊世代の退職が労働供給の下押し圧力に)
少子高齢化の進展は我が国の労働供給にどのような影響を与えてきたのであろうか。
まず、60歳以上と60歳未満の就業が労働供給に与える影響について、就業者数の前年差をみると、近年、60歳以上の寄与が一貫してプラスで推移していることが分かる。就業者に占める高齢者のシェアは増加傾向で推移している。この背景には、少子高齢化の進展により高齢者人口が増加しているほか、高齢者の労働力率の上昇がある29(第1-2-5図)。高齢者の就業者数の動向が全体の労働供給に与える影響も年々高まっている。
次に、労働供給に与えるインパクトが大きい団塊世代(1947年~49年生まれ)の就業者数の前年差を確認すると、2000年代前半までは、おおむね団塊世代以外の世代の就業者数と同様の動きであったものの、団塊世代が60歳を迎えた2007年から2009年にかけては、団塊世代の就業者数が大きく減少した様子がみて取れる30(第1-2-6図(1))。
また、団塊世代が65歳を迎えた2012年から2014年にかけては、景気回復とともに団塊世代以外の世代の労働参加が進展し、就業者数が増加したこととは反対に、団塊世代の就業者数は再び大きく減少している31。
以上のことを整理すると、2013年以降、団塊世代以外の世代の労働参加が進んでいるものの、団塊世代の就業率が2007年の約7割から2014年には約4割まで低下する中で、人口構成上大きなウェイトを占める同世代の労働市場からの退出が、就業者数全体の大きな押下げ要因となっている(第1-2-6図(2))。
では、現状のまま少子高齢化が進展すると、今後、我が国の労働供給にどのような影響を与えるのだろうか。日本の将来推計人口を用い、就業者数について機械的な試算をみてみよう。
まず、現状維持ケース(2015年以降の就業率が2014年の比率で一定と仮定)では、就業者数は、60歳未満の人口減少により一貫して減少する(第1-2-7図(1))。内訳をみると、高齢者の人口増加に伴い、60歳以上の就業者数が緩やかに増加する中、60歳未満の就業者数は、2014年時点から2020年には215万人、2030年には703万人、2040年には1,402万人程度減少する。
また、女性の労働参加が更に進み、M字カーブが解消されるケース(出産育児を理由として求職活動していない者が労働参加すると仮定)では、M字カーブ解消期間32において、就業者数前年差の減少幅が大きく縮小する。もっとも、解消期間の置き方にもよるが、今後10年先や20年先をみると人口減少が影響し、就業者数が減少し続ける姿となっている。
現状、アベノミクス以降3年間で雇用者数がおおむね150万人増加33しているが、我が国の今後の労働供給は、60歳未満の人口動向に大きな影響を受けることになる。労働環境を整備することにより、希望する若年層や女性の労働参加を進みやすくすることが重要である。スイスやスウェーデンなど他の先進諸国の中には、我が国より若・中年層の就業率が高い国が存在しており、我が国において更に就業率を高める余地がうかがわれる(第1-2-8図)。
また、60歳以上の就業率については、2014年時点で3割程度と60歳未満の就業率と対比して低い状況にある。定年等を理由として労働市場から退出した高齢者などを含め、働くことを希望する人が労働参加しやすい環境整備をしていくことが肝要である。
(希望する高齢者の労働参加の実現が労働力確保の鍵)
それでは、希望する高齢者が労働参加を進める場合、我が国の労働供給にどの程度の影響を与えるかみてみよう。
まず、各種労働統計により、高齢者の労働状況について確認する。総務省「労働力調査」によると、2014年の60歳以上人口は4,189万人、就業率は29.5%となっている(第1-2-9図)。また、総務省「就業構造基本調査」によると、2012年の60歳以上無業者(労働力調査の非労働力人口に近い概念34)2,709万人のうち、就業希望の無業者は216万人、就業を希望しない無業者のうち就業を希望しない理由について、「特に理由はない」や「その他」とする人は347万人となっており、両者の合計は563万人となっている。
次に、希望する高齢者の労働参加が、我が国全体の労働供給にどの程度寄与するのかについて、2つのシナリオについて機械的に計算したところ、以下の結果を得た(第1-2-10図)。
第一に、無業高齢者のうち就業希望者が2020年までに就業するケース(以下「就業希望の無業高齢者就業ケース」という。)では、就業者数の前年差は現状維持ケース対比で大きく引き上げられる。ただし、就業者数の水準でみると労働供給への影響は限定的な姿となっている。
第二に、就業希望者に加え、現状では特に理由がなく就業してこなかった高齢者が、労働環境の整備に伴い就業を希望し、実際に2020年までに就業するケース(以下「就業希望高齢者拡大ケース」という。)では、就業者数の前年差でみると、2014年と同程度の増加幅が数年続く。就業者数の水準でみると、2020年以降の減少トレンドは他のケースと同じだが、水準が大きく切り上がる。この点、労働環境が整備され、希望する高齢者の労働参加が進むことで我が国の労働供給は大きく押し上げられるといえよう35。
(60歳以上高齢者の労働生産性は40歳未満のそれとさほど変わらない)
このように高齢者の就業が今後増えていけば、我が国の労働供給は大きく改善するほか、年齢別に労働生産性をみると、高齢者の生産性は40歳未満の生産性とほぼ同様との研究結果がでている(第1-2-11図36)。これに加えて、高齢者が今まで蓄積してきた知識や経験などの「無形資産」が若・中年層に伝達されれば、若・中年層の生産性も高められるという正の外部性が期待される。
以上のことから、今後の我が国の労働供給については、労働環境を整備していくことで、就労の質を高めるとともに、就労を希望する高齢者を拡大し、かつそのような高齢者の労働参加を実現していくことが重要であると考えられる。そのためには、後述のとおり、高齢者の労働参加を妨げる要因を取り除くといった取組が求められる。
(北欧諸国では高齢者の労働力率が上昇)
今後、我が国において、希望する高齢者の就労が実現するためにはどのような取組が求められるのであろうか。ここでは、高齢者の労働参加が着実に進展している北欧諸国(アイスランド、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランドをいう。以下同じ。)を中心にみてみよう。
まず、高齢者の労働力率の国際比較をみると、我が国の60歳以上高齢者の労働力率は比較的高い水準となっているものの、過去10年間の変化をみると、我が国では、特に65歳以上において2%弱の低い伸びにとどまる中、北欧諸国では平均して5%程度の高い伸びとなっており、高齢者の労働参加が急速に進んでいることが分かる(第1-2-12図(1)、(2))。北欧諸国の中でも、アイスランドにおける高齢者の労働力率は、2004年に既に日本のそれよりも高い水準であったにもかかわらず、その後の10年間で更に上昇している。
(北欧諸国では高齢者が働きやすい社会とするため多様な取組を実施)
それでは、北欧諸国において、近年高齢者の労働参加が着実に進展しているのはなぜだろうか。ここでは、高齢者の労働参加を妨げ得る要因と、それに対する各国の具体的な取組についてみてみよう。
OECD(2012)37は、高齢者が労働参加しやすい社会とするための効果的な政策として、①雇用可能性(employability)の拡大、②労働市場への参入障壁の撤廃、③働き続けることを促すインセンティブの強化、の3つを掲げている。
具体的には、①は研修等の訓練機会の確保や雇用環境の改善、②は企業側による労働者雇用における年齢差別や勤労年数に応じた賃金設定など、高齢者の労働参加における障壁の撤廃、③は高齢者が長く働き続けることを妨げない失業給付や年金制度などの整備が挙げられる。
これらの3つの観点から北欧諸国で実施されている取組についてみてみよう(第1-2-13図(1))。
まず、①雇用可能性の拡大に関しては、労働者が柔軟に労働時間を選択できる環境を整備し、労働時間の柔軟化への取組を行っているほか、能力開発の観点では、生涯学習の推進や高齢者の職業訓練の強化に取り組んでいる。
次に、②労働市場への参入障壁の撤廃に関しては、2000年代にかけて原則として年齢による就労条件の制約を取り除きつつ、定年延長・廃止の実現に取り組んできた38。
最後に、③働き続けることを促すインセンティブの強化に関しては、公的年金の支給開始年齢の引上げ、平均寿命の伸びを考慮した年金給付水準の調整、高齢者の失業保険受給要件の変更39等の取組が挙げられる。これは、社会保障の持続可能性を高めつつ、高齢者の労働参加のインセンティブにもなっていると考えられる40。
これらの取組のうち、①に対応する、労働時間の柔軟化への取組や研修等への参加比率と、高齢者の労働参加の関係について確認しよう。
まず、65歳以上の労働力率の伸びと労働時間を柔軟に設定できる高齢者41の割合の関係について、OECD諸国で比較すると、柔軟な労働時間を選択できる高齢者の割合が高いほど高齢者の労働力率が高まる傾向がみて取れる。特に、北欧諸国は柔軟に労働時間を選択できる高齢者の割合が高く、労働力率の伸びも高い(第1-2-13図(2))。
また、65歳以上の労働力率の伸びと研修等へ参加した60歳前後の労働者の割合の関係についても、OECD諸国で比較すると、研修に参加した労働者の割合が高いほど、労働力率が高まる関係が観察される(第1-2-13図(3))。
以上のことから、北欧諸国では、労働時間の柔軟化や能力開発に対する取組が高齢者にとって労働参加しやすい仕組みとなっていることが示唆される42。
(高齢者が労働参加しやすい社会の構築に向けた我が国の課題)
このような北欧諸国の事例を踏まえると、我が国において、希望する高齢者の就労を実現する上で課題は何であり、それに対してどのような政策対応が考えられるだろうか。
北欧諸国と比べ、我が国において特徴的な点として、以下の3点が挙げられる。
第一に、高齢者の労働時間を柔軟化するような取組の弱さである(前掲第1-2-13図(1))。民間企業の調査43によれば、柔軟な働き方を提供している企業(フレックス勤務44を導入している企業)の割合が、フィンランド、スウェーデン、デンマークでは80%を超える高水準にあったのに対し、我が国は17%と低水準であることが分かる。我が国では、高齢者も硬直的な労働時間を前提として働かざるを得ない状態にあるものと考えられる。実際、就労している65歳以上高齢者の週間労働時間を国際比較すると、我が国は北欧諸国よりも労働時間が長くなっており、例えばスウェーデンの1.3倍となっている(第1-2-14図)。高齢者の労働時間を柔軟にする取組について、企業、労働組合等による具体的な取組が重要である。
第二に、希望する高齢者が積極的に研修に参加できるような取組の遅れである。我が国においては、公的な職業訓練(雇用保険適用対象者を除く職業訓練)について、高齢者の受講者の割合が1%未満45と利用実績が少ないという現状がある46。このような公的な職業訓練だけでなく、企業が行う研修についても高齢者が排除されることが多いと、高齢者が技術変化について行けなくなってしまう可能性が考えられる。
第三に、就労促進を妨げないような制度の導入が遅れていることである。我が国では、公的年金支給開始年齢の引上げや、60歳から65歳までの雇用確保措置47等を通じて、高齢者の労働参加を妨げる要因を除去してきている。しかしながら、一定の条件を満たせば採用を若年に限ること等を可能としており、高齢者への就労条件の制約は一部にみられているとの指摘がある48。加えて、北欧諸国と比べ定年が早く、60~65歳の間で再雇用されると賃金水準が一律に大幅減少する傾向があることから、高齢者の労働参加意欲を削いでしまっている可能性49がある。
また、我が国の高齢者が、定年到達の際に再雇用や勤務延長を希望しなかった理由をみると、「就業時間に納得がいかなかったから」や「やりたい仕事ができないから」といった労働環境に関する理由を挙げる人の割合が高まっており、新規就労のほか、継続就労の面でも十分な能力が発揮されていない可能性が高い(第1-2-15図)。これより、希望する高齢者の労働参加を実現していくためには、働く意欲を持てるような労働環境を整備することが重要であると考えられる。
以上のことから、生産年齢人口の減少が続く中で、我が国において希望する高齢者の労働参加が実現できる環境を整備することは、こうした高齢者の所得向上および消費意欲を促すほか、労働供給面の制約を緩和する上で重要である。政府、企業ともに高齢者の就労意欲を高めるよう労働環境を改め、高齢者がやりがいをもって職場で積極的な役割を果たせるような取組を不断に続けていくことが必要である。