第1節 高齢化・人口減少の経済への影響
我が国の人口及びその構成は大きく変わりつつある。2005年に戦後初めての人口減少を迎え、2006年はわずかに増加したものの、2007年後半から再び人口が減少に転じており、今後もそうした傾向は続くと見込まれている。高齢化も急速に進み、団塊ジュニアと呼ばれる世代が生まれた頃の70年代前半は、65歳以上の高齢者が総人口のうち10人に1人もいなかったが、30年あまりを経た現在、その割合が5人に1人を超えるようになった2。その間、労働力人口の生産年齢人口(15歳以上)に占める割合は、女性の労働力化が進んだにもかかわらず、64%前後の水準から60%程度に低下した3。よく知られているように、日本の高齢化のスピードは、先進国の中でも際立っている(第3-1-1図)。本節では、高齢化と財政の問題を考える準備として、こうした急速な高齢化が経済に及ぼす影響について概観する。まず、経済成長への影響についてみた後、歳入構造や行政需要に関係が深いとみられるGDPの構成や産業構造についても調べることとする。
1 経済成長への影響
経済成長をもたらすのは、労働力の増加、資本の増加、それに技術進歩である。以下では、このうち特に労働力、技術進歩について、順次みていこう。
● 労働投入の減少は成長のマイナス要因だが、成長率はプラスが維持される
労働力人口の減少は、労働投入の減少を通じて、経済成長にマイナスのインパクトを与える。これまで、日本の高度成長の背景として、農村から都市への急速な人口の移動によって、農業部門から成長分野であった工業部門へ労働力が移り、産業構造の大きな転換を促したことが重要であり、それがひいては需要の喚起をもたらし、経済全体への発展につながったとされてきた4。すなわち、大量の労働投入が供給側からの成長を促し、それが需要面での拡大に結びついたことで経済成長が実現するという好循環を生み出しており、人口増加が成長の源泉であったといえる。また、こうしたことは、日本のみならずアジアで共通にみられ、各種の実証分析により、農村から都市に流入した豊富な労働力資源が重要な役割を果たしてきたと指摘されている5。
このように、労働投入の成長に対する重要性が指摘されてきているが、今後の人口減少はどの程度のインパクトがあるだろうか。人口減少が将来の経済成長に与える影響を具体的にみるため、日本の人口推計をもとにした労働投入の潜在成長率への寄与を考えると、全要素生産性(TFP)、資本投入の伸び率及び就業率が変わらないと仮定し、人口減少の効果だけを取り出した場合の我が国の潜在GDP成長率は足下の1%台半ばから2020年代には1%弱に低下する可能性がうかがえる(第3-1-2図)。このうち、労働投入は今後マイナスに寄与し続け、2030年頃には潜在GDP成長率を0.5%程度押し下げる可能性が示されている。
将来の人口減少下においても、この要因だけで潜在的な経済成長率がマイナスになることは当面ないと考えられる。しかしながら、長期的には徐々にその影響が出てくるため、今後はこうした労働投入の減少分を補うだけの生産性の向上や労働力率の上昇などが成長を維持するためには必要になる。
● 我が国は特に改革を行うことによって、一人当たり経済成長を高める余地が大きいとされる
ところで、国民の「豊かさ」との関係では、GDP成長率そのものよりも一人当たりGDP成長率の方が重要である。既存の資本ストックの下で労働力人口が減少しても、今後一人当たり資本装備率が高まることによって、一人当たりでみたGDPは成長し、個人レベルの所得水準が高まる。あわせて、全要素生産性(TFP)の伸びの高まりによって、一人当たり労働生産性も高めていくことができる。OECDでは、一人当たり成長率について幾つかの試算を行っているが、それによれば、年金改革や労働力率の引上げなどがなかったケースで1%程度の成長となり、アメリカよりも低いものにとどまる(第3-1-3図(1))。その一方で、そうした改革を行ったことで労働力率が高まり、負担も抑制される最も望ましいケースであれば、1.5%台前後の成長を達成することが可能となり、アメリカと同程度かやや高い一人当たり成長が達成されると見込まれる(第3-1-3図(2))。
特徴的なことは、アメリカと比較して、日本の場合は、改革を行った場合と行わなかった場合の一人当たり経済成長率が大きく異なるという点である。これは、日本では、貯蓄率へのマイナスの影響を抑えるような年金制度の改革や、退職年齢引上げや女性労働力の活用などを通じた労働力率の向上といった取組の余地が相対的に大きいことを示唆している。また、そうした労働力の活用によって貯蓄率低下への歯止めがなされれば、資本蓄積が促され、資本装備率が高まることになる。
なお、国民の「豊かさ」につながるという意味では、厳密にいえば一人当たりGDPよりも一人当たりGNI(国民総所得)6をみるほうがよい。日本では既に対外純資産が積み上がり、海外からの財産所得が大幅に増加してGNIがGDPを17.6兆円程度(2007年度)上回っている。高齢化が進む中で「豊かさ」を維持していくためには、海外資産を含む資産運用の効率化を図ることも重要である。
● 海外の高度人材を活用して成長力を高めていくことが重要
一般論として、海外からの労働者の受入れは、経済成長に寄与するとされる。まず、諸外国での労働力全体に占める外国人労働者の割合をみると、ルクセンブルクやスイスなどの比較的規模が小さく一人当たりGDPが比較的高い国々で高いが、ドイツ、イタリア、英国、フランスといった比較的大きな国でも、5~9%に達している(第3-1-4図)。これに対し、日本は1.1%となっている。また、新規に労働力として入国を認める許可件数(フロー)では、ドイツが約8万人(労働力人口比0.2%)、イタリアが約8万人(同0.3%)、英国が約10万人(同0.3%)、フランスが約1万9千人(同0.1%)となっている。日本は、それらの中間の約12万5千人(同0.2%)であった7。
そうした外国人労働力は、実際にどの程度、経済成長に寄与したのだろうか。諸外国の経験に関する先行研究によれば、例えば、英国では、外国人労働力の経済成長への寄与率は、2006年で約15~20%相当あったとされる。また、アイルランドでは、過去10年間の平均成長率5.9%のうち4.8%ポイント、フランスでは1.6%のうち1.3%ポイントまでが外国人労働力の寄与であると指摘されている8。
ただし、こうした外国人労働力と経済成長の関係の解釈に当たっては留意が必要である。外国人労働力の割合については、その歴史的な経緯が主な背景となっていることも多く、ドイツはトルコ・東欧から、英国、フランスは旧植民地から、それぞれ多くの移民を受け入れてきたこと、またイタリアでは、上記3カ国が移民受入れを停止した後、その影響を受けて移民を多く引き取ってきたことが指摘されている9。さらに、前述の先行研究では、外国人労働力のうち高度人材と単純労働とを区別していないため、それぞれがどの程度成長に寄与しているかは明らかでない。投入される労働力の質による違いなど、様々な要素との関係も含めた研究の蓄積が今後求められる。
我が国について高度人材の受入れ状況をみてみると、2006年時点で約18万人となっている10。これは、10年前の96年に比べ約8万人増と、約2倍の規模である。特に我が国では、現在、高度人材の受入れについて積極的な取組を進めており、今後もその増加が期待される。
ただし当然のことながら、受け入れる側の体制が整っていなければ、社会的なあつれきから生じるコスト増がより大きな問題となる。また、日本で積極的な受入れに取り組んでいる高度人材は、世界中でその獲得競争が激しいものとなっており、その受入れのためには、単に門戸を開いておくだけではなく、諸外国と比べて日本が提供する制度やインフラがより良いものであることを示す必要があるだろう。外国人にとっても住みやすい街づくり、教育や医療を含む「社会インフラ」を整備することが、有能な人材を確保するために求められることになる。あわせて、企業側も有能な外国人を受け入れるための体制作りに積極的に取り組むことが重要になる。
高齢化が進むことで労働力の不足が懸念されている。我が国においても、若者、女性、高齢者の活用による労働力確保とあわせて、グローバル化の中で、海外からの高度人材が一層活躍できる場を提供するよう開かれた国を目指し、そうした人材が生産性の向上に寄与するようになることが望ましい。例えば英国は、79年の金融市場に関する外資規制撤廃の後、ロンドン証券取引所を核として外資の導入を進めるとともに、高度人材の流入もあって、世界の金融センターとして成長したとされるが、今後、我が国においても、専門性のある高度な人材が活躍できるよう、社会全体としての環境整備が求められている。
● 技術進歩によって経済成長を高めることができるか
技術進歩についても、それを生み出すのが労働者であり、結局、その労働者の数を規定する「人口」の規模に帰着するのであれば、人口減少を迎える我が国では、技術進歩が今後の経済成長を高める原動力とはなりにくいとの見方もある。実際、様々な条件をコントロールして人口と生産性の関係を調べた研究11によれば、人口規模と生産性には正の相関がみられる(第3-1-5図)。すなわち、人口減少と生産性が独立して決定されるのではなく、人が技術進歩を生み出す以上、人口が重要な要因となる可能性を示唆している12。
ただし、技術進歩が人口以外の様々な要因に左右されることはいうまでもない。イノベーションが生み出されやすい環境を整備すること、海外との結びつきを強めて生産、経営などに関する技術移転等を通じその活力を吸収すること、といった基本的な対応を進めることで、人口減少に伴う過度の悲観論を和らげることができる。また、生産性の低い部門から高い部門への人材の移動という産業構造の変化によって、マクロの生産性を高めることも可能と考えられる。
ここでは、一例として海外との貿易取引を通じた結びつきの効果を確認しておこう。生産性の伸びと「対外開放度」を表すGDP比の貿易量13との関係をみると、正の相関がみられる(第3-1-6図)。すなわち、貿易を通じた海外とのつながりが競争圧力や新しい技術の獲得を通じて、生産性の向上ひいては経済成長につながることが示唆される。
このように、人口減少を迎える我が国においては、海外との連携を通じて技術進歩のペースを維持していくことが成長の鍵となろう。
コラム13 人口減少下での経済成長14
過去の歴史を振り返ると、人口減少下であっても経済成長が可能となった事例もあることから、人口減少そのものは大きな問題ではないとされることがある。ここでは、そうした具体的な事例を経済的な要因を含めて紹介する(コラム13図)。
14、15世紀の西欧では、「黒死病(ペスト)」の広がりや度重なる戦争、飢餓などの要因によって、大幅な人口減少が起きたが、経済はむしろそうした人口減少によって成長した面があった。その背景としては、人口減少によって、生産要素としての土地が労働力に対して相対的に豊富になり、生産性の低い耕作地が放棄され、生産性の高い土地が集中的に利用されたことが挙げられる。労働需給の逼迫から賃金が上昇した一方で、小麦を中心とする農産物の生産量がある程度確保されたため、一般物価の急激な上昇が起きなかったことが指摘されている。結局、農産物価格の相対的低下と、賃金の相対的上昇によって、実質ベースでみた一人当たりの国民所得が増加した。ただし、同時期のドイツでは、封建領主の権力が強かったために農民の移動が自由ではなく、生産性の高い土地の集中的な利用も行われなかったことで経済が停滞したという。
また、技術進歩による生産性上昇があったことは見逃せない。14世紀以降の西欧では、生産性の高い土地への集中化とあわせて、例えば、「フランドル農法」と呼ばれる、同じ土地で季節ごとに栽培作物を入れ替え一年中利用するという生産技術が普及していったことなどもあり、その後、17世紀まで穀物の生産性の上昇が続いたことが指摘されている。
西欧以外に同様な現象が、18世紀の日本(天明の飢饉などによる人口減少)、19世紀後半のアイルランド(飢饉と海外移民による人口減少)、1980年以降のハンガリー(出生率低下による人口減少)でも生じたとされる。いずれの場合でも、おおむね共通して、1)労働力や資本などの生産要素の生産性の高い分野への大規模な集中化、2)経営管理の効率化、3)技術革新、4)外部からの技術導入があったとされる。
2 経済構造への影響
「経済構造」というと論点が多岐にわたるが、ここではGDPの構成と産業構造を取り上げよう。GDPの構成の変化は、特に将来の歳入構造の在り方を探る際に重要である。また産業構造の変化は、マクロの需要項目の変化を推し量るのに有用なだけでなく、その景気変動や経済成長への影響を通じて財政全般に影響を及ぼすとみられる。
● 高齢化に伴いGDPの構成が変化する可能性
まず、GDPの構成を需要側、すなわち支出面からみよう。ライフサイクル仮説に基づけば、一般的には、高齢化すると貯蓄率の低下により、家計消費のウエイトが増加する一方で、設備投資のウエイトが相対的に下がることが考えられる。
実際、かつては高貯蓄率で知られた我が国も、最近では貯蓄率を3.2%(2006年度)まで低下させている。この長期的な傾向はおおむね先進国では共通して観察される。設備投資は、こうした貯蓄率の低下を考えれば伸びが鈍化する可能性もあるが、今後の国際資本移動の活発化により、必ずしも国内の貯蓄率のみに規定されるとは限らない15。
分配面からは、人口動態の要因により、当面は雇用者報酬の割合が低下すると予想される。そこで、過去、分配面からGDPの内訳がどのように変化してきたのかをみると、我が国においては、年功的な賃金カーブを前提に、団塊の世代の賃金が最も高まったとみられる90年代において雇用者報酬のウエイトがピークを迎え、その後はやや低下し始めている(第3-1-7図)。代わりに、資本ストックの増加に伴う固定資本減耗のウエイトの高まりがみられる。
比較のために諸外国の状況をみると、60年代から80年代にかけて高齢化が進んだイタリアにおいて16、一時期、我が国以上に高齢化率が高まったが、その際、雇用者報酬のウエイト低下が生じていることが分かる。一方、高齢化の進行が比較的遅いアメリカでは17、雇用者報酬のウエイトの低下はみられなかった。
● 高齢化によって保健医療などの支出項目が増加する見込み
GDPに占める消費のウエイトが高まる中で、消費の中身はどう変化するだろうか。国民経済計算に基づく家計の目的別最終消費支出の分類を用いて、年齢構成の将来推計と年齢別世帯の消費ウエイトに基づきOECDが推計した結果によれば、現在から2050年にかけて、保健・医療、電気・ガス・水道の消費ウエイトが高まる一方、交通や教育の支出が急速に低下するとされる18。保健・医療は加齢に伴う身体的な理由、また電気・ガス・水道は職場を離れ、自宅にとどまる時間の増加などからウエイトが高まると考えられる。その一方で、交通は通勤の必要性から解放されることなどによる公共交通機関への支出の減少、教育は子どもの数の減少がそれぞれ原因として考えられる。
さらに、OECDの推計からはうかがえない個別品目ごとの消費構造の変化を、推計のもととなった調査から推測することができる。高齢化によりウエイトが高まると考えられるサービス支出について、総務省「全国消費実態調査」(2004年)でみると、総世帯平均よりも高齢者世帯(世帯主が65歳以上)の方が支出は2割ほど少ないものの、医療関係の支出が相対的に多いことが特徴として挙げられる。ただし、それ以上に大きい支出項目として、住宅の修繕・維持工事費といった自宅での住環境の改善のためのリフォームや国内のパック旅行への支出が挙げられる(第3-1-8図)。その他、外国パック旅行や宿泊といったレジャー、また自宅保有比率が高いことを反映した火災保険が、総世帯平均よりも高い。その一方で、職場よりも自宅で多くの時間を費やすことによって、外食や通勤代が減少し、自宅保有によって不要になる家賃や駐車場賃貸料、子どもがいないことで教育費への支出が相対的に小さくなっていることなどが分かる。
こうした結果は、今後の高齢化によって消費構造にどのような変化がもたらされるかを見込む上では役立つ。しかしながら、これは現在の高齢者の消費構成が変わらないことを前提としていることに留意が必要である。今後、技術進歩などを通じて新しい商品・サービスが登場すること、現在負担が大きい支出が競争の促進により低廉化することなどを通じて、消費構成が変化する場合も考えられる。例えば、現在は高齢者世帯で相対的に低い通信のウエイトが、今後のIT化の進展によって高まることも考えられる。そのため、将来の支出の変化を考える際には、技術進歩なども考慮される必要があるだろう。
● 高齢化によるサービス化の進展が我が国の景気の変動を小さくする可能性
前述のとおり、一般に、高齢者とその他の年代の消費構造は異なっており、各国の高齢化の度合いと消費におけるサービス支出ウエイトの変化には、プラスの相関が見出される(付図3―1)。これは、高齢者が耐久財を既に保有している場合が比較的多く、その代わりに新たな支出として、保健・医療を中心とするサービスに向かいやすい傾向があることが要因として考えられる。そうした消費が伸びることが産業構造の変化を通じてどのように我が国経済全体へ影響を与えるかをみるために、産業連関表に基づく全産業への影響力19や他産業からの感応度20の変化を調べてみると、耐久財に関連する製造業の影響力、感応度は相対的に高く、高齢者が主に消費すると考えられる保健・医療などの家計関連サービス業のそれは相対的に低いという結果となった(第3-1-9図)。このため、高齢化に伴うサービス業のシェア拡大は、我が国の景気変動を小さくする可能性があることが示唆される。
● サービス化の進展に伴う労働生産性の伸びの低下を防ぐことが課題
次に、サービス化の労働生産性への影響について考えよう。高齢化の進展により比重が増すと考えられるサービス業は、業種にもよるが、一般に、労働集約的な側面がある。また、国際的な競争にさらされることも少ない。そのため、世界各国で労働生産性上昇率が製造業に比べ総じて低いものにとどまっている傾向がうかがえる(第3-1-10図)。したがって、一般論としては、製造業の比率の低下及びサービス業の比率の高まりは、経済全体としての労働生産性上昇率にはマイナスの影響を与えるおそれがある。
また、年齢ごとの就業構造も異なっていることから、高齢者の割合の上昇が産業構造に影響することも考慮されなければならない。これまで高齢者が多く雇用されている産業は、一般に労働生産性の伸びが相対的に低いものにとどまっている(付図3―2)。高齢化の進展によりこうした産業の割合が高くなることは、そのまま全体の労働生産性の伸びを低めることになる。サービス業のうち労働生産性の比較的大きな上昇が期待される金融サービス、情報・通信といった分野などに、高齢の労働者がどこまで、どのように関わっていくことができるかが問われている。
このように、高齢化の進展は、労働供給の減少という直接的な影響以外にも、これまで労働生産性の上昇が高かった製造業から低いものにとどまってきたサービス業にシフトすること、若年層の減少によって成長著しい分野に労働者が新たに就業することが少なくなる一方で成長が低い分野に相対的に多く人がとどまること、といった間接的な形でマクロの労働生産性の向上を阻害することが懸念される。
ただし、逆にいえば、これまでのサービス業の在り方、高齢者の働き方を変えることが重要になっており、こうした高齢化の進展により想定されるマイナス要因を緩和、取り除く余地が十分あることも指摘できる。第3-1-10図のとおり、日本よりもサービス業の生産性が高いアメリカでは、90年代後半以降、ITを積極的に利用するサービス業を中心に労働生産性の伸び率が顕著に高まったとされるが21、我が国においても高齢社会に相応しい高齢労働者のIT活用や労働節約的な技術進歩の促進など様々な方法を模索する必要がある。さらに、情報・物流分野などサービス業における海外との連携・競争を促すための環境整備こそが根本的な対応策といえよう。