第二部 各論 三 建設 2 建築


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 昭和二五年後半から二六年前半にかけておこつたビル・ブームおよび糸ヘン工場新設ブームが一段落して、二七年度の建設工事は割合平静に終始した。すなわち工事費総額では前年度を約一割上回り、二四〇〇億円程度と推定されるが、着工延面積では前年とほゞ同一水準の一、〇一〇万坪であつた。工事費が延面積にくらべて多かつたのは主として木造建設費の値上りによるものであつた。これを民間と国および地方公共団体と建設に分けると前者は工事費では前年度を一〇%上回つたが、延面積では三%減少した。これに反して後者は主として学校建設および公営住宅の増勢を反映して工事費では二九%延面積で一六%増加した。

第50図 用途別建築物着工延面積および工事費の対前年度比

 住宅建設については、「国民生活」の章で扱うが、その他の建築の動きをみてみよう。まず商業用建築および鉱工業用建築工事費は、いずれも前年度を下回つて店舗、工場等の新規拡充を減じたことを示した。それを法人企業の建設したものと個人企業の建設したものとに分けてみると、一層はつきり経済動向を反映している。すなわち、商業用建築についてみると、法人企業の工事費は大巾に約四〇%も減少したのに反し、個人企業の工事費は二五%増加している。着工延面積でも法人企業は二〇%減少したが、個人企業は五%増加した。法人企業の商業用建築工事費が激減したのは前年度のビル・ブームが一応有効需要を充足したこと、ビル制限措置がとられたことにもよるが、設備資金の融資規制、収益の低下が影響したものであろう。これに対して個人企業の商業建築が増加したのは、上昇した消費需要に支えられて小売店舗、娯楽場がうるおつたからである。鉱工業用建築では法人企業も個人企業もともに着工延面積は減少したが前者の減少が前年度にくらべ約二〇%であるのに反し、後者の減少は約一〇%にとどまつた。工事費では法人の場合は一二%減少したが、個人企業の場合は木造建築の値上りの影響をうけて八%増加した。このように消費需要に関連の深い個人企業建設工事費は前年度にくらべて増加したが、法人企業の建設工事費は前年度をかなり下回つた。

 公共用建築には学校、病院、官公庁舎、宗教用建設等が含まれているが、このうち最もウエイトの大きいのは学校建築とくに公立諸学校建築である。公共建築工事費は住宅工事費についで多く、二七年度の工事費は前年にくらべ文教施設に対する国および国庫補助事業費の上昇と同じく二〇%増加した。

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