第3章 ストックの力で豊かさを感じられる経済社会へ 第2節
第2節 住宅ストックの展望と課題
我が国の住宅戸数(ストック)は、1960年代後半に世帯数を上回り、両者のかい離が拡大していく中、フローの新設着工戸数は減少傾向にある。その背景には、バブル崩壊後の長期的な不動産価格の低迷、住宅購入志向が相対的に低い単身世帯の増加、既存16住宅の取引の増加、さらに、近年では建築費の高騰など、様々な要因が指摘されている。人口動態的要因をはじめ、こうした要因の多くは構造的なものと言える。今後、更なる人口減少が見込まれ、世帯構成の変化が続いていくことが予見される中で、住宅市場を展望するに当たっては、持家を中心とした新規の住宅着工は、減少傾向で推移していくことが見込まれる。一方、既存住宅市場は、諸外国と比べて依然として低水準ではあるものの、近年増加傾向にあり、新築に比べて、子育て世代を中心に、より入手しやすい住宅の供給や、これを通じた生活の質やゆとりの向上に資するものである。本節では、中長期的な住宅需要の構造の変化を分析するとともに、既存住宅を巡る環境の変化や、流通市場を活性化するための課題について検討する。
1 我が国の住宅需要の構造の変化
(住宅の長寿命化もあり、人口当たりの新設住宅着工戸数は減少)
はじめに、人口動態と住宅戸数との関係について概観し、持家比率の長期的な変化やその背景及び今後の長期的な見通しについて検討する。冒頭に述べたように、我が国の住宅ストックは、1960年代後半に世帯数を上回り、両者のかい離が拡大している(第3-2-1図)。この間の新設住宅着工戸数の動向をみると、持家(分譲住宅を合わせた広義の持家)を中心に、1970年代前半の年間約190万戸をピークとして減少傾向で推移し、2023年には年間約82万戸と、ピーク時の4割強にまで減少している(第3-2-2図)。
この間の我が国の世帯数は単身世帯等を中心に増加が続いている一方、人口は国勢調査によると2010年をピークに緩やかな減少傾向で推移しており(第3-2-3図(1)(2))、こうした中で、人口千人当たり及び千世帯当たりの新設住宅着工戸数をみると、いずれも長期的には減少傾向で推移している(第3-2-4図(1))。比較対象の一例として、アメリカの千人当たりの新設住宅着工戸数をみると、日本に比べて半分程度と低い水準であるほか、2000年代後半の世界金融危機に伴う新設住宅着工の減少など景気変動に伴う増減もみられるが、長期的には一定の水準に回帰する傾向がみられる。老朽化した住宅が一定の期間で除却・建て替えられる状況において、人口当たり又は世帯当たりの新設住宅着工戸数は、一定の水準に回帰すると想定されるが、我が国の人口当たり及び世帯当たりの新設住宅着工戸数は、アメリカよりも大幅な減少傾向で推移しており、これには住宅の長寿命化が進んでいることも背景の一つにあるとみられる。実際、除却住宅の平均築後年数をみると、2000年代前半以降、長期的には、いずれの形態でも伸長していることが分かる(第3-2-4図(2))。
(単身世帯の増加を背景に、各年齢層の持家率が低下している)
次に、新設住宅着工戸数の長期的な減少幅が大きい持家について、世帯構成の変化との関係を確認する。我が国の世帯数の長期的な増加は、主に単身世帯等の増加によるものである一方、持家住宅への志向が強いと考えられる夫婦と子供世帯や三世代同居世帯は長期的に減少しており(前掲第3-2-3図(2))、世帯構成の変化が持家住宅の需要に影響していると考えられる。総務省「住宅・土地統計調査」により、総世帯における世帯主の年齢別持家率の変遷をみると、1990年代のバブル崩壊以降の過去25年間(1993年~2018年)で、30代、40代の持家率は、それぞれ7.1%ポイント、9.5%ポイント低下している(第3-2-5図(1))。また、世帯構成別にみると、二人以上世帯17では、30代は横ばい傾向、40代は横ばいから緩やかな低下傾向となっており、総世帯でみられるほどの低下傾向はみられない(第3-2-5図(2))。単身世帯では、30代、40代ともに、2003年以降、持家率は低い水準でやや低下傾向にある(第3-2-5図(3))。
総世帯における世帯主の年齢別持家率の変化について、二人以上世帯の持家率の変化要因、単身世帯の持家率の変化要因、世帯構成の変化要因の3つの要因に分解すると、世帯構成の変化要因、具体的には、持家率の水準が低い単身世帯の割合の増加が50代以下の各年齢層の持家率の低下に大きく寄与していることが分かる(第3-2-6図)。なお、60代では、二人以上世帯の持家率の上昇が、同年代全体の持家率の上昇に寄与している。もっとも、各年代を総じてみれば、単身世帯を含む世帯構成別の持家率の変化要因は、全体の持家率の変動には大きな影響を与えているわけではない。住宅購入を計画している家計における住宅取得動機は、40代までの年齢層では結婚、出産、子育て、50代以上では老後の安心など、ライフステージの変化を背景としている18が、近年は婚姻率の低下により婚姻数の減少が加速している。ライフステージの変化に伴う住宅取得の意欲は潜在的には高いものの、婚姻数の減少に伴う単身世帯割合の増加が、持家率の低下に大きく寄与していると言える。
(今後の世帯構成の変化は、持家住宅ストックの余剰を拡大させる可能性)
新設住宅着工戸数は減少している一方で、前掲第3-2-4図(2)でみたとおり、新築から除却までの年数の増加を通じた住宅の長寿命化が進んできたこともあり、住宅ストック戸数は、持家を含めて緩やかな増加を続けてきた(前掲第3-2-1図)。国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)令和6(2024)年推計」による単独世帯数と2人以上の世帯員からなる世帯数を基に、現在の世帯構成別の持家率が変わらないという前提で、今後の持家率の推移を試算する19と、単身世帯の増加という世帯構成の変化により、持家率の低下とそれに伴う持家住宅需要の減少が見込まれる(第3-2-7図)。これに対し、既存の持家の住宅ストックと新規着工フローから考えると、低水準とは言え毎年の新設着工戸数が積み上がる中で、新築から除却までの年数の伸長傾向が平均除却率を低下させていくと考えられることから、持家の住宅ストック戸数はほぼ横ばい又はやや増加傾向で推移することが考えられる。持家のニーズ・購入意欲が相対的に高いと考えられる二人以上世帯が減少していくことで、需要が供給を下回るという意味において、持家ストックの余剰が更に拡大していくものと考えられ、今後は、既存の持家の住宅ストックを市場でいかに円滑に流通させていくかが重要となる。
(近年の住宅価格上昇の中で、取得住宅の郊外化、中古化が進む)
以上は、2018年までの「住宅・土地統計調査」を基に議論したが、より直近の状況を確認するために、総務省「家計調査」の二人以上世帯について、持家率の推移を世帯主の年齢階級別にみると、子育て世代に当たる40代以下、特に30代で、緩やかに上昇している(第3-2-8図)。この間の低金利環境の中で、住宅ローンを組み、住宅を取得する二人以上世帯の割合が増加したことが背景にある。次に、建築費の上昇等を背景に不動産価格の上昇がみられる中で、家計がどのように住宅購入費用を確保してきたのかを確認する。
まず、住宅全体の不動産価格指数(全国)の推移をみると、2012年以降、コロナ禍前の2019年まで緩やかに上昇した後、コロナ禍を経て、近年、建築コストの上昇もあり、上昇のペースが加速し、過去10年間で35%程度上昇している(第3-2-9図)。これに対して、民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供する最長35年の全期間固定金利の住宅ローンである「フラット35」の利用者20に関する集計データ(「フラット35利用者調査」)より、住宅取得の動向を確認すると、融資種別1m2当たりの住宅ローン取得額の平均値は、過去10年間で、30.6万円/m2から38.3万円/m2と25%程度上昇している(第3-2-10図)が、不動産価格指数の伸び率に比べると小幅にとどまっている。
次に、住宅取得場所という観点で、三大都市圏の中心部からの距離別でみた住宅取得状況をみると、ここ10年間で、各都市圏中心部(20km以内)での住宅取得割合が低下していることが分かる(第3-2-11図(1))。こうした取得住宅の郊外化は、東京圏で最も顕著であるが、名古屋圏、大阪圏でも同様の傾向がみられることが分かる。内閣府政策統括官(経済財政分析担当)(2024)では、子育て世帯が、東京都から他の首都圏へ流出していることが示されているが、他の都市圏でも中心部から郊外に住居を構える傾向が強まっている可能性が示唆される。また、1人当たり居住面積をみると、住宅取得の郊外化に伴い、平均値・中央値とも緩やかに増加している。もっとも、住宅取得割合の分布をみると最頻値は10年前と比べて変化していない(第3-2-11図(2))。1人当たり居住面積が50m2程度や75m2以上の比較的広い住宅を取得できる層の割合の増加が1人当たり居住面積の平均値や中央値の押上げに寄与しており、標準的な世帯の1人当たり居住面積は、大きくは変化していないとみられる。
こうした取得住宅の郊外化とともに、フラット35の申請件数に占める中古住宅の割合は年々増加傾向にあり、新築に比べて安価な中古住宅の購入が増えていることが分かる(第3-2-11図(3))。中古住宅市場の広がりについては、次項で詳述する。
さらに、50代以下の二人以上世帯21における収入の動向をみると、世帯主本人の収入の増加はさほどみられないものの、世帯の収入としては、共働きの進展を背景に10年前と比べて18%程度上昇している(第3-2-12図(1))。一方、「フラット35利用者調査」を集計した2012年~22年についてみると、1か月当たりの返済額の中央値は10.3万円から11.2万円の9%程度の増加にとどまっており(第3-2-12図(2))、返済額の増加は世帯収入の増加の範囲内となっている。こうした中で、償還期間の平均値は、32年から32.6年とほぼ横ばいとなっている(第3-2-12図(3))。この間、30年債などの超長期金利は低下しており、簡易的に試算すると、総返済額は8%程度減少していたことが分かる(第3-2-13図)。
以上をまとめると、過去10年間、不動産価格が上昇する中にあっても、家計は収入対比の借入倍率を引き上げてリスクを取るのではなく、郊外や中古の物件といった比較的安価な住宅取得を行うことで、住宅の購入費を抑えていたと考えられる。加えて、低金利環境の下でローン返済額の増加が、家計の収入増加の範囲内に抑制されてきたことも、この間の住宅取得の増加と持家率の上昇に関係していることが分かる。今後は、金利のある世界を見据え、子育て世代等の住宅ニーズを満たすためには、継続的に所得が向上する経済を実現することが最重要であるが、これに加えて、中古住宅の流通市場をより活性化させ、各世帯の選好に応じて、より取得しやすい持家や貸家として、既存の住宅ストックを有効に活用していくことが課題と考えられる。
2 既存住宅流通市場の拡大に向けて
前項での議論を踏まえ、ここでは、ストックを活かして豊かな経済を実現する観点から重要性を増している既存住宅について、流通市場の規模に係る現状と変化、購入者の属性別にみた取得状況を確認するとともに、既存住宅の流通を抑制する一因となっている住宅の経年的な減価パターンにおける近年の変化を分析する。その上で、既存住宅流通市場をより活性化させるための課題として、リフォームの促進や既存住宅取引における透明性の向上といった課題について考察する。
(既存住宅の取得は、国際的にみると限定的だが、広がりもみられつつある)
はじめに、既存住宅の取得状況について、詳細を確認する。前提として、既存住宅の流通状況の把握は、新築住宅に比べて難しい面があることに留意する必要がある。つまり、新築住宅の場合、分譲マンションの一部でみられる賃貸目的の購入などを除けば、着工戸数をみることで、近似的に持家目的の取得戸数を把握することが可能である一方、既存住宅の持家目的の取得戸数の把握は統計上の制約がある。これは、既存住宅の流通では、売買件数を把握したとしても購入住宅をリフォームの上で売却するという投資目的での購入と居住目的での購入の区別が難しいことが背景にある。
まず、「住宅・土地統計調査」をみると、住宅取得(建て替えを含む)に占める中古住宅の割合は、長期的には上昇傾向で推移しており、把握可能な直近の2018年時点で14%台となっている(第3-2-14図(1))。一方、アメリカ、英国、フランスといった主要先進国ではこの割合は7割を超えており、単純に比較すると我が国の中古住宅流通量は国際的にみて極めて低い水準にとどまっている(第3-2-14図(2))。このように、中古住宅の取得状況の国際比較では、我が国について「住宅・土地統計調査」を用いて比べられることが多いが、当該調査は5年に1回の頻度であることに加え、住宅ストックの状況を調べる統計調査であることから、現在居住している家の取得方法をベースに中古住宅の取得割合を示すものであり、過去5年間のそれぞれの年に住宅を取得した世帯のサンプルサイズは限られているため、調査対象年の中古住宅流通量のデータとしては一定の幅を持ってみる必要がある22。
こうした留意点を踏まえつつ、同統計から、過去5年以内に建築・入居した持家の取得形態について、長期的な変化をみると、幅広い年齢層で、新築住宅の購入割合が低下している一方、依然として水準は低めではあるものの、中古住宅の購入割合が幅広い年齢層で高まっていることが分かる(第3-2-15図)。このように購入割合が増加している中古住宅について、前掲コラム3-1と同様の考え方で、年齢効果、生まれ年(世代)効果、時代効果に分解する(第3-2-16図)。まず、年齢効果について、中古住宅取得割合は、20代前半で高く、20代後半から50代前半にかけて低下するが、50代後半以降のより高年齢層で再び増加するというU字型となっていることが分かる。中古住宅は、年収が高くない若年層や、取得住居の居住見込み年数が短くなる高年齢層に選好されていることが示唆される。また、世代効果についてみると、若い世代の方が、高齢の世代よりも中古住宅取得割合が高く、若い世代においては中古住宅取得の抵抗感が小さくなりつつあることを示していると考えられる。また、中古住宅を戸建と共同住宅(マンション)に分けると、年齢効果や世代効果の傾向に大きな違いはみられないが、時代効果については、中古共同住宅は近年の方が高い一方、中古戸建は近年の方がやや低くなっている。一般に、戸建に比べて、マンションは流動性が高く、中古住宅としての需要が高まってきている可能性を示している。
(既存住宅取得割合は、直近で3割近くまで上昇している可能性)
次に、「住宅・土地統計調査」以外の情報から、既存住宅取得割合を推計できないか試みたい。まず、直近の既存住宅の流通状況として、不動産の所有権移転登記などを用いることで、既存住宅の流通状況を推計した資料23によれば、既存住宅流通比率(新設着工戸数と既存住宅流通推計量に占める既存住宅流通推計量の割合)が上昇傾向にある点は、「住宅・土地統計調査」とおおむね同様であるものの、直近2022年時点では、既存住宅の流通比率は42.3%と高い数字となっている。もっとも、当該推計では法人取引や通常の住宅取得目的とは考えにくい単年度に複数回の所有権移転なども含まれており、最終需要者の既存住宅の取得状況に比べると高めの値になる傾向があるものと考えられる。このように、既存の統計や調査では、既存住宅の取得状況に係る実態についての把握が難しく、その他の各種民間機関の調査においても、サンプルサイズが多くても1,000程度に限られ、抽出対象の偏りもあるという制約がある。
そこで、サンプルサイズが比較的多く確保され、新規に着工された持家(持家、分譲戸建、共同分譲の合計)を取得した者の約10%が利用している「フラット35」の利用者24について、居住目的の中古住宅の取得状況を確認する(第3-2-17図)。「フラット35利用者調査」より、1年間の新築注文住宅、新築分譲戸建、新築マンションの住宅ローン申請数と、貸家を除く新設住宅着工戸数(持家、新築分譲戸建、新築マンション)の比率を用いて、中古戸建、中古マンションの住宅ローン申請数に乗じることで、中古住宅の取得状況を試算すると、10年前の中古住宅取得割合は、15%程度にとどまっていたのに対し、直近の10年間で、幅はあるものの、その割合が30%弱程度まで上昇しているとみられる。これは、年率換算で20万戸程度に相当する。このように、新設住宅着工戸数は減少傾向で推移している中で、「住宅・土地統計調査」と比べると、中古住宅の取得戸数は、実態として、より明確な形で増加傾向となっている可能性が示唆される。
(中古住宅の取得は近年中間層で増加がみられる)
一定の幅をもってみる必要はあるものの、中古住宅の取得戸数が、全体の3割近くを占めるまでに拡大している中で、どのような需要層が中古住宅を購入しているのかを確認したい。具体的には、上述の「フラット35利用者調査」より、住宅購入者の年収25層ごとに、住宅ローンを組んだ対象住宅の種別(新築注文住宅、新築建売住宅、新築マンションなど)の住宅取得割合をみると、中古住宅(中古戸建+中古マンション)の購入割合は、低年収層と高年収層で高く、U字型に近い形状となっている(第3-2-18図(1))。年収が相対的に低い層において、新築に比べて安価な中古住宅への選好が強いという点は、直感的にも相応な結果と考えられる一方、年収の高い層においても、中古住宅の購入割合が相対的に高い結果となっている。こうした背景の一つには、高年収層においては、住宅を資産形成の一環として位置づけている可能性がある。つまり、新築住宅に付随するプレミアム(以下「新築プレミアム」26という。)が小さい状況であれば、住まいとして不要になった際に売却が容易な(流動性の高い)マンション等の形で、中古住宅の購入が志向されている可能性がある。新築プレミアムの動向に関しては、後に詳述する。
次に、こうした年収層別にみた中古住宅の取得割合が、過去10年間でどのように変化したのかを確認する。過去、新築住宅の購入の割合が高かった年収300万円から年収600万円及び年収600万円から年収1,000万円の層では、中古住宅の購入割合が10年前の2倍程度まで上昇しているなど、これまで中古住宅の購入に相対的に積極的ではなかった年収層での中古住宅の購入が比較的大きく増加していることが分かる(第3-2-18図(2))。こうした結果、もともと住宅の購入シェアが大きい層における中古住宅購入の増加が全体の中古住宅取得割合の向上につながっていると言える。
(直近では、建築費が上昇する中、既存住宅の販売量は更に増加傾向に)
以上では、2022年までの状況を確認したが、昨今の物価上昇局面においては、円安による輸入価格の上昇もあいまった資材価格の高止まりや人件費の上昇もあり、住宅建築費は上昇・高止まり傾向を続けており、第1章でも述べたとおり、新設住宅着工戸数が弱含む要因となっている。こうした中で、2022年以降の新設住宅着工戸数と既存住宅販売量を比較すると、持家と分譲戸建を合わせた戸建住宅については、新設着工の弱含みが続いている一方で、既存住宅販売量は増加傾向にある。また、共同分譲(マンション等)についても、新設着工戸数は変動が大きい中で、横ばいから弱含みで推移する一方、中古マンションの販売量は緩やかな増加傾向にある(第3-2-19図)。建築費の動向は、資材価格や為替動向にも左右されるが、建設業従事率の長期的な低下傾向27や、2024年4月以降の「建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制」適用に向けた働き方改革などもあり、人件費を通じた建築費の上昇圧力は今後も継続する可能性がある。こうした点を踏まえれば、今後も、相対的に安価な既存住宅への需要は強まっていく可能性が高いと言えるであろう。
(我が国の中古マンションの減価スピードは、以前よりも低下)
このように既存住宅の取引が増加する中で、既存住宅の市場価値に変化は起きているだろうか。ここでは、築年数に応じた既存住宅の減価パターンやその変化について、既存住宅購入価格データを基に考察したい。中古不動産取引価格の分析では、国土交通省の不動産情報ライブラリに掲載されている取引価格・成約価格を基に分析を行うことが一般的であり、例えば、国土交通省が公表している不動産価格指数では、不動産価格で重要な指標となる最寄り駅からの距離、築年数、取引主体の属性などの個別物件の品質をヘドニック法によって調整している28。こうしたヘドニック法により、2010年時点で、中古マンションの市場価格の経年的変化を推計した資料29によると、新築から1年経過した段階で10%程度減価した後は、定率で価値が減価していくことが示されている。
これに対し、ここでは、フラット35を利用して購入された中古マンションのデータを用いて、直近時点において、中古住宅がどのようなパターンで減価しているのかを確認する。フラット35のデータは個票データではないため、不動産情報ライブラリに掲載されたデータと異なり、築年数や地域といった主要項目以外の品質調整は困難であるが、一方で、業者間取引や投資目的の物件が含まれないほか、住宅金融支援機構が定める技術基準に適合していることが申請許可の要件となっているため、一般的な最終需要者向け、かつ一定の居住性能が確保された物件に限られたデータとなっているという特徴がある。今回の分析では、最終需要者向けの分析である点も踏まえ、取引価格に大きな影響を与えている立地要件と取引年数のみを調整し、「フラット35利用者調査」を用いて議論する。中古住宅の価値は、理論的には土地部分と建物部分の価値から構成される。一方、土地部分の価値は、地価の変動を除いて考えれば、減価償却のように経年で変化しない一方で、建物部分の価値は経年的に減少する。このため、一定の築年数までは、築年数が経過するごとに価値が減少していくが、建物部分の価値がほぼないとみなされる段階で、中古住宅の取引価格は下げ止まることになる。実際、「フラット35利用者調査」より、中古マンションの築年数ごとの平米単価をみると、東京圏、大阪圏、名古屋圏といった地域を問わず、こうした傾向が確認できる(第3-2-20図)。
次に、こうしたデータを基に、一定の仮定(詳細は付注3-3)の下で、土地部分と建物部分を区分しつつ、中古マンションの築年数を経た値動きのパターンを推計する。第3-2-21図をみると、中古マンションの価格は、築年数を経ると低下しているが、いずれの築年数でみても、年々価格が上昇していることが分かる。また、中古取引価格の低下が止まる築年数、つまり、中古住宅価格において土地部分の価値のみ算定されるようになる築年数は年々伸びており、10年前の2013年時点と比べると、2022年時点では10年近く伸長しており、1年当たりの減価スピードは10年前は年率約5%であったが、直近では年率約3.5%まで低下している。こうした傾向は大阪圏の中古マンションでも同様にみられている(第3-2-22図)。このように、建物部分の価値が高くなる中で、築年数を経た物件もより高く評価されるようになっている可能性がある。また、土地部分の評価は建物部分に比べて、上昇幅は小さいほか、築浅から築20年程度までの幅広い築年数で価格上昇がみられていることから、近年の中古マンションの価格上昇は建築コストの上昇に伴う建物部分の価値上昇や新築物件の供給減少の寄与などが大きいと考えられる。
(マンションの新築プレミアムはなくなりつつある)
次に、上述の分析結果に、新築マンションの価格を組み合わせることで新築プレミアムがどの程度存在するかを確認したい。前掲第3-2-21図(3)をみると、東京圏では2013年までは、新築プレミアムが相応に存在したことが分かる。具体的には、2013年時点では、新築価格と新築直後の中古価格との間には5%程度のかい離があった。しかし、こうした傾向は、2014年以降からはみられなくなり、近年では、中古築浅の取引価格よりも、新築マンション価格の方が安いという逆転現象もみられる30など、中古取引が活発になる中で、市場価格における新築と中古の区別はなくなりつつある可能性がある。こうした傾向は東京圏特有のものではなく、大阪圏でもみられる。大阪圏では2019年まで新築プレミアムがみられていたが、近年では新築プレミアムはみられなくなっていることが分かる(第3-2-22図(3))。国土交通省の「土地問題に関する国民の意識調査」をみると、住宅取得に当たり、所有したいと思う住宅について新築、既存住宅の希望を聞くと10年前に比べて、新築・既存住宅のどちらでもよいという回答や、既存住宅がよいという回答が増加している(第3-2-23図(1))。年齢別にみると、30代以上では新築住宅がよいとする割合は半分を下回っている(第3-2-23図(2))。このように、新築住宅に対するこだわりが低下していることが分かる。
(個別性の強い戸建住宅では、マンション対比で新築プレミアムが依然存在)
次に、中古の戸建住宅についても、築年数を経た際の値動きを確認する(第3-2-24図)。全国でみると、中古マンションと同様に築年数を経ると減価しているが、いずれの築年数でみても、年々価格が上昇していることが分かる。さらに、中古取引価格の低下が止まる築年数、つまり、中古住宅価格において土地部分の価値のみ算定されるようになる築年数も年々伸びていることが分かる。
戸建住宅の建物残存価値割合を不動産鑑定実務データより推計した資料31によると、新築から1年経過した段階で20%程度減価した後は、減価率が逓減しながら価値が減少していくことが示されている。「フラット35利用者調査」はばらつきが大きく減価率の逓減の抽出は難しいことから、中古マンションと同様の手法32で減価状況を確認する(第3-2-25図、第3-2-26図)。
前掲第3-2-23図で確認したように、新築住宅へのこだわりが低下する中で、戸建住宅の新築プレミアムについても、低下傾向で推移している。ただし、マンションと比べると、依然として新築プレミアムは相応に存在していることが分かる。新築注文住宅、新築分譲戸建、新築マンション(分譲集合住宅)を購入したそれぞれの層が比較・検討した物件種別をみると、新築注文住宅や新築分譲戸建を購入した層が中古戸建を検討する割合は、新築マンションを購入した層が中古マンションを検討した割合に比べて低い(第3-2-27図)。新築戸建の中でも特に注文住宅では施主の様々な希望が実現可能であることから、個別性が高く、汎用性が低くなっているため、新築分譲マンションに比べると戸建の新築プレミアムが大きく計測されていると考えられる。中古戸建住宅についても流通市場の厚みが増せば、新築プレミアムは徐々に小さくなると考えられる。住宅ストック活用という観点から、戸建住宅流通を活発にしていくことは引き続き課題であり、中古住宅の購入時における大規模な模様替えなどリフォームの促進を通じて、中古住宅であっても購入者の様々な希望が実現できる環境を整備することなどが重要であると考えられる。
コラム3-2 フラット35の利用者の代表性について
本論ではフラット35の利用者の住宅ローン申込みに係る調査を用いて、中古住宅の流通状況や新築住宅における新築プレミアムの推計などを行ってきたが、フラット35は長期固定金利ローンであることから、変動金利を利用する利用者と比べて、属性に偏りがあるのではないかという議論もあり得る。具体的には、変動金利商品については、金利上昇によって返済負担が上昇したとしても対応可能な高年収層や資産に余裕がある人に対して販売される傾向が強いという指摘がある。
ここでは、フラット35の利用者の特徴に偏りがないかを確認するため、住宅ローン利用者全般に対して実施したアンケート調査による年収層の分布とその中でのフラット35の利用者の年収層の分布を比較する(コラム3-2-1図)。これによると、両者でおおむね傾向は似通っており、フラット35の利用者は、住宅ローン利用者の動向をみる上で、一定程度の代表性があると考えて差し支えないと思われる。もっとも、フラット35の利用者の方が、年収の低い層の割合は住宅ローン利用者全体に比べてやや多く、各データの解釈に当たっては、一定の幅をもってみる必要はある。
また、本論でも述べたように、新設住宅着工戸数(貸家などを除く持家、分譲戸建、分譲マンションの合計)に占めるフラット35の利用者の占有率をみると、10%程度を占めており、十分なサンプルサイズを確保していると考えられる(コラム3-2-2図)。また、住宅ローンの申請書類などから作成したというデータの性質上、記入者の誤記載なく、回答率は100%に近いということも本データのメリットと考えられる。
(既存住宅流通には、情報の非対称性の緩和と住宅の長寿命化が重要)
ここまでは、我が国においても、既存住宅流通市場の厚みが増しつつあることが確認できたが、前掲第3-2-17図において、高めに見積もっても既存住宅取得比率は3割程度と、主要先進国の水準(7割以上)を下回っている点は変わらない。不動産のほか自動車などの高額な中古商品は、一般的な消費財に比べて、商品の個別性が高く、質に対する市場の評価が確立されづらく、また、取引の機会が少ないため消費者が知見を得にくいことから、販売業者と消費者の間で情報の非対称性が発生しやすい。このような場合、消費者は、意図せず粗悪な商品を購入してしまう可能性を回避するため、中古商品の購入を避けるようになる。結果として、良質な商品を提供する販売者が市場から撤退し、中古商品の取引が停滞するという逆選択問題が引き起こされる33。既存住宅流通市場における課題については、一般的に、こうした売主と買主の間における既存住宅の質に関する情報の非対称性の存在や、既存住宅の性能などが明らかでないことにより、木造戸建を中心に既存住宅における価値が早期にゼロと評価される慣行の存在が指摘されている(国土交通省(2020))。こうした課題に対して、売主・買主への支援としては、建物状況調査(インスペクション)制度の実施・普及、住宅の質の向上としては、長期優良住宅の認定制度の普及や住宅の長寿命化につながるリフォームへの支援、さらに、仲介の円滑化・適正化として、既存住宅価格査定マニュアルの整備や全国版空き家・空き地バンクの構築などが進められている。以下では、これらの課題について整理しつつ、仲介の円滑化・適正化に関して、不動産取引市場の透明性の課題について詳述する。
このうち、インスペクション制度については、宅地建物取引業法の一部を改正する法律(平成28年法律第56号)により、不動産業者が、専門家によるインスペクションの活用を促すことで、売主・買主が安心して取引ができる市場環境が整備されている。さらに、売主・買主における認知度が低いという課題に対して、制度の利用を促進すべく関連省令、告示等を改正し、2024年4月より施行されている。
具体的には、共同住宅に係る重要事項説明の対象となる建物状況調査結果の期間が、調査の実施から2年を経過していないものとするほか、標準媒介契約約款を改正し、インスペクションを実施する者のあっせんを「無」とする場合における理由の記載欄を設けるなど、制度の利用促進に向けた取組が進められている。こうした取組の効果を確認しつつ、必要に応じて制度の見直しを図り、インスペクションの利用を広げていくことが重要と言える。
また、空き家等の既存住宅の有効活用の観点から、2024年7月1日より、物件価格が800万円以下の低廉な空き家等について、当該媒介に要する費用を勘案して、原則による上限を超えて宅地建物取引業者が報酬を受領できるように措置を講じるなど、空き家等の流通促進に向けた取組が進められている。前掲第3-2-18図で確認したように幅広い年収層で既存住宅の購入が拡大する中で、価格の低い物件の流通促進施策も重要である。
(住宅の質的向上に資するリフォーム規模は、アメリカの半分以下)
次に、長寿命化に資する住宅リフォームの動向について確認する。まず、増築・改築(統計上、新設着工に含まれる)と住宅設備の維持修繕などを合わせたリフォームの市場規模については、2000年代後半以降、おおむね増加傾向で推移し、2022年時点で過去最高の水準まで高まっている(第3-2-28図(1))。一方、統計の変更・改善の理由から、遡及可能期間に限界はあるものの、受注額を直接把握する統計として「建築物リフォーム・リニューアル調査」を用いて、住宅リフォーム分の受注額をみると、2019年度~20年度に減少した後、2021年度以降は増加傾向にあり、2023年度には約4兆円規模となっている(第3-2-28図(2))。ここで、新設着工に含まれる増築・改築を除き、さらに、住宅の長寿命化など質の向上に資する「改装・改修」分を取り出すと、同様に増加傾向にあり、2023年度は約3兆円規模となっている。これは、一国全体の住宅投資に対する割合をみると、出来高ベースか受注ベースかという時期のずれがある点に留意する必要はあるが、約15%に相当し、GDPに対する比率としては0.6%程度となる(第3-2-28図(3))。これを、GDPの詳細な内訳が公表されているアメリカと比較すると、アメリカでは質的改善という意味でのリフォームに相当する「Improvements」は住宅投資の約32%、GDP比では約1.2%と、日本の2倍以上の規模となっている(第3-2-28図(3))。
このように、我が国において、リフォームにより既存住宅の質を向上させ、流通市場の活性化につなげる余地は十分に残されていると考えられる。リフォーム促進に当たっての課題として、国土交通省「住宅市場動向調査」から、リフォームを実施した者に対して「リフォーム時に困った経験」に対する回答(複数回答)を確認すると、「特にない」が67%程度と、大きな制約はないとみられるが、「見積もりが適切かどうかわからなかった」や「費用が当初の見積もりよりオーバーした」との回答が1割前後ずつあるなど、費用面での不安や不確実性も散見される(第3-2-29図(1))。また、別の調査より、リフォーム検討者について、不安に感じていることを尋ねた結果34(複数回答)をみると、「費用がかかる」や「見積もりの相場や適正価格がわからない」といった費用面の不安が3割から4割あるほか、「施工が適正に行われるか」も3割程度となっている(第3-2-29図(2))。こうしたリフォーム促進の制約となっている要因を踏まえながら、住宅リフォーム事業者団体登録制度の認知拡大など、リフォームに向けた心理的ハードルを低くしていくことが重要である。
(既存住宅の流通が近年活発化しつつあるものの、日本の取引透明性は低位)
こうした点に加え、既存住宅流通市場の課題として、以下では、不動産取引の透明性という観点に焦点を当てる。アメリカの総合不動産サービス会社であるジョーンズ・ラング・ラサール(JLL)のグローバルな「不動産透明度」調査によると、直近調査における日本の順位は12位となっている。調査国(94の国と地域)の中では相対的に上位に位置するものの、G7諸国の中では、イタリアを除いて最も低い水準にあり、世界の都市別不動産投資額の順位35で東京が5位に入るなど世界での我が国の不動産市場規模を考えると高い順位とは言えない(第3-2-30図)。日本について、各項目のG7諸国内での相対的な順位をみると、規制と法制度、パフォーマンス測定などは中位である一方で、市場ファンダメンタルズと並び、取引プロセスについては、G7諸国中最下位となっている。こうした背景について、各国の仲介制度と比較しながら確認したい。
(不動産取引の透明性向上に向けては様々な選択肢がある)
各国の不動産仲介制度は、各国の法体系や地理的な条件などにも依存するため一概に比較することは難しいが、ここでは、不動産取引の透明性が高いとされているアメリカと、国土が狭い中でも高い持家率と比較的広い住居面積となっており、政府の統制が厳しいシンガポール36の制度を比較する(第3-2-31図)。これによると、両国において、互いに対照的な手法で不動産取引の透明性を確保していることが分かる。
まず、シンガポールにおいては、「インフラ・不動産開発を小国ゆえの脆弱性を克服し国家の競争力を強化するための戦略的手段と位置づけている」(小林(2016))という指摘がみられるように、不動産取引の透明性を担保するため、法律や制度として義務付けている。狭い国土の中で、不動産の効率的な活用は重要な課題となっており、国民向けには住宅開発庁が安価に住宅供給をしており、持家率は9割程度と高い水準にある。一方、国民の2軒目の住宅購入には20%の税率が課されるほか、外国人の住宅購入には60%の税率が課される37など、不動産市場に対するコントロールを厳しく実施している。こうした中で、既存住宅の取引においては「両手仲介」が禁止されているなど、取引の透明性担保のために厳しい規制を行っている。
ここで、不動産取引の両手仲介とは、同一の不動産業者が売主と買主の仲介をすることである。一般的に、取引を効率化・迅速化できる一方、高く売りたい売主と、安く買いたい買主の双方を同一の業者が担当するため利益相反が発生する可能性があるほか、売主、買主双方から手数料を得たいインセンティブから売却依頼を受けた物件を他の不動産業者に取り扱わせないようにする、いわゆる「囲い込み」が発生する可能性があるという点が指摘されている。
他方、アメリカの場合は、シンガポールと異なり、連邦政府による公的規制はないが、代わりに、州によっては州法による規制があるほか、業界団体が、自主的なルール整備により、両手仲介に何らかの制約を課し、取引の透明性の確保を図っている。
次に、我が国の状況についてみると、不動産業界のコンプライアンスに関する問題は減少傾向であるものの、引き続き相応の件数が毎年発生している(付図3-2)。不動産の既存住宅の購入が幅広い年収層でも活発化しつつある中で、消費者保護の観点からも、より透明性が確保される取引制度の構築や業界団体によるコンプライアンス遵守の徹底を進めることは、既存住宅流通市場を成長させていく上で重要な課題の一つであると言える。
既存住宅取引に係る我が国の制度をみると、宅地建物取引業法により、仲介手数料の水準などについて一定の制限がある一方で、両手仲介に関する規制は存在しない。両手仲介は、売主と買主の間で中立的な立場から行われるのであれば、円滑な取引に資するものであり、必ずしも否定されるものではない。しかしながら、いわゆる「囲い込み」は、売主に不利益をもたらすとともに、不動産の流動性を低下させるおそれがあることから、取引の透明性を高めるための取組が講じられている。具体的には、不動産流通標準情報システム(レインズ)において、不動産関連市場の活性化に向けたデータの整備・連携が進められており、売主、自ら仲介を依頼した物件に購入の申込みが来ているかなどの取引状況を確認できるようにするなど、ステータス管理機能の拡充を図っている。
不動産取引に係る透明性の向上のための取組を含め、既存住宅の流通促進に向けた各種の施策を着実かつ総合的に進めることにより、子育て世代をはじめ多くの人々にとって、より低廉で購入しやすい住宅の供給が促され、生活の質の向上にも寄与するものと言える。少子高齢化と人口減少が当面進む中にあっては、住宅の一層の過剰供給につながり得る新築信仰から脱却し、これまで我が国に蓄積されてきた既存住宅というストックを有効活用することにより、ゆとりある暮らしと豊かさを感じられる経済社会の実現につなげていくという視点が一層重要となると考えられる。