第二部 各論 一〇 国民生活 5 住宅事情
(一)住宅の現状
住宅の不足戸数は二七年四月現在で約三一六万戸といわれるが、これは全国総世帯数の一八%にあたる。このうちまず量的にみた不足戸数は約一一六万戸とみられ、これらには二人以上の世帯で間借や本来独立の家庭生活を営むに適しないところに住むものが含まれている。
次に住宅の質的面では第一に過密住が問題になる。居住密度を一人当りの畳数によつてみると、二七年は全国平均三・七帖で、戦前の約九一%である。しかし、一世帯当り畳数別世帯数の分布をみると、都市では六帖から九帖未満の世帯数が最も多く、九帖未満の世帯は全世帯の実に二八%をしめている。この約二分の一は間借世帯である。過密住といわれた昭和一六年でも大都市における九帖未満の住宅数は一二%にすぎなかつた。また九帖未満の世帯のうちで一人当り二・五帖以下という過小住宅過密住世帯(間借世帯を除く)は約八三万戸といわれている。
第二は住宅の老朽化である。都市住宅では一寸した風雨、震災に耐えられないものが一・七%、土台、柱、壁または屋根の修理を要するものが四二%におよんでいる。これは戦時中以来の維持不足と住宅不足による繰延べ使用によるもので、二〇年以上を経過した住宅の老朽は急激に増加しており、また戦後の住宅は概して粗悪なためすでにその三割は修理を要するとみられる。都市のみならず、全国的にかかる老朽化住宅のうち当然更新を要すべきものは約一一七万戸と見積もられている。
第100図 都市住宅の経過年数別要修理住宅数分布状態(昭和25年都市住宅調査:建設省)
(二)住宅供給
昭和二七年の住宅投資は前年度より約三割増加し、一、一〇〇億円ないし、一、二〇〇億円に達したものとみられる。個人および個人企業の投資は三三%の増加であつたが、法人の住宅投資はその収益低下を反映して一四%しか伸びなかつた。しかしこのような住宅投資もそのほとんどが木造建築費の値上りに吸収されて延面積の増加は僅か三%にとどまつた。
建設省では二七年度の建設戸数を二七万戸と推定しているが、これは戦後のピークであつた二三年にくらべて四割にもみたず、人口の増加、災害および更新需要などの年々追加される需要約三〇万戸にもおよばなかつた。その供給内訳をみると公営住宅、住宅金融公庫、引揚者住居、入植者住宅、公務員住宅などの直接間接政府資金による建設戸数が次第に増加し、二七年度は三五%をしめた。
こうして住宅建築が進まない原因の一つは、戦前都市住宅の七、八割が貸家企業によつて供給されたのに対し、戦後は家主側に長期低利金利の途がなく借主側にとつても家賃の負担能力がないこと、また貸家業の主力であつた中産階級の没落で民間の貸家供給がないことに基づくものである。これにかわつて国庫補助公営住宅および住宅金融公庫が登場したものの、二七年度の供給は前者で約二五千戸、後者で約四五千戸にすぎず、また前者に対する申込延人員は二〇倍以上に達しているのに対し後者は七倍程度で中以下の所得層に対する供給不足を物語つている。
しかし、二八年度予算案では公営住宅が二七年度より倍増しているので、住宅難緩和の一助になるものと思われる。
つぎに建築費および宅地価格の値上りも住宅建築の障害になつている。朝鮮動乱前にくらべると都市の木造建築費は二倍、六大都市の宅地価格は二・五倍で、一般物価の上昇率より遙かに高い。とくにここ一、二年来の宅地価格上昇が著しく土地の所得難を強めている。