第二部 各論 五 財政 4 財政投資


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 財政による建設投資および産業部面への資金供給は戦後逐年増大し、わが国経済力の増強に大きな役割を果してきたが、昭和二七年度は総額五、三三五億円に達し、生産財卸売物価で換算した実質的規模においても前年度の三割八分増、二四年度にくらべると二倍になる。

第三四表 財政投資先別内訳

 財政投資の方向として注目すべきは、公共事業費、政府事業投資が実額では逐年増大しながら総額に占める比重からいうと漸減の傾向にある反面、開発銀行その他の政府金融機関、あるいは金融債引受を通じて行われる民間への資金供給は比重においても次第に増大しつつあることである。なかでも開発銀行の比重が急速に大きくなりつつあり、一〇月に見返資金のもつ債権を一切承継することにより一層強大なものとなつた。なお同行の主な融資先は電力、海運、鉄鋼、石炭等の基幹産業であり、それに対する二七年度末における貸出は同行貸出総額の六割五分を占めている。これらからもうかがえるように民間に対する資金供給の多くは基幹産業に向けられている。

第57図 財政投資

 一方農林漁業資金会計、国民金融公庫、住宅金融公庫などの融資が次第に大きくなりつつあることは農林漁業、中小企業、住宅問題などに対する配慮が重要視されていることを示している。また地方債引受が漸増していることは事業量の増加、地方財政の窮迫などを反映したものといえよう。

 財政投資を資金源別に検討してみると、見返資金が急速にその比重を減少しつつあるのに対し、運用部のそれが次第に増大していることが注目される。

第三五表 資金源別内訳

 見返資金は年度中の繰入が僅か二三億円に止まり、一方投資額は五四七億円に上つたため、余裕金を費消するほか前年度中に購入した長期国債四九四億円のうち二九六億円を日銀に売却することによつてようやく賄つた。この結果見返資金の余裕金は第三六表に示すように急速に減少し、二七年度末において一二七億円、長期国債を加えても運用余力は三二四億円にすぎない。従つて今後財政投資の資金源として見返資金に多くを期待することはできない。

 資金運用部は見返資金の先細りとともに、政府資金供給機関としての役割を益々増大し、国鉄、電力、農林漁業資金会計、住宅公庫に対する融資、金融債、地方債の引受などその働きは他面にわたつている。このため二七年度中は郵便貯金、簡保年金を中心として、一、三五九億円の資金受入があつたにも拘らず、第三六表に示す如く年度中二五四億円の余裕金を使用しなければならなかつた。この結果、年度末余裕金は二九三億円、長期国債を含めると七三六億円となるが、二八年度においては保有国債の売却が予定されており、今後の運用余力はかなり窮屈なものとなるであろう。

第三六表 見返資金運用部資金の運用余力

 以上述べてきたように財政投資需要は今後とも増大するとみられるに反し、その資金源は見返資金の先細り、運用部における過去の蓄積の取りくずしにより今後はかなり窮屈となることが予想され、ここに新たな財源として二八年度予算案において特別減税国債および公募公社債の発行が検討されている所以が存するわけである。

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