第二部 各論 四 運輸通信 2 国内輸送


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(一)貨物輸送

 昭和二七年度において、鉱工業生産指数が前年度指数を上回つたにも拘らず、第二三表に示すように、汽船・機帆船・国鉄および私鉄の輸送屯数は前年度実績を下回り、トラツクのみがそれを上回つた。

 汽船輸送においては、輸送貨物の七割以上が石炭であつて、輸送はほとんど石炭の荷動きによつて左右されている。すなわち石炭の輸送需要は年度当初から減つて輸送実績は伸びず、運賃率も前年度のそれをやや低目であつた。しかも一〇月以降は炭労ストによる石炭減産によつてさらに大幅な減送となつた。

第二三表 27年度貨物輸送実績

 国鉄輸送においては、六月に入つて出貨が減少し、朝鮮動乱前のように若干の遊休貨車を生じ、この状態は八月までもちこされた。秋の出貨期に入つてからは、炭労ストによる石炭の出貨減と、運転用炭の不足による列車削減のために減送が続き、年度末には日通ストによつて荷役が障害を受けた。これらのほか、講和条約発効後における駐留軍貨物の減少や、トラツク輸送の進出なども減送の原因にあげられる。

第53図 汽船および国鉄輸送実績

 つぎに汽船、機帆船と国鉄との輸送分野はほとんど変化がみられず、前年度からもちこされた内航汽船の船腹過剰は解消していない。これは近海貿易が戦前ほどの活況をみないかぎり今後も続くものと思われる。

 他方、トラツク輸送は戦後逐年増加しているが、その原因として、燃料事情の好転、道路の整備の他、トラツク輸送の多くは積替を要せず、輸送の時間と費用が鉄道輸送より節約されることなどがあげられる。従つて小量取引に適した消費物資、一部の急送品などでは輸送屯数の増加に加え輸送距離も延びてきているが、反面国鉄輸送におけるこれら貨物は伸び悩んでいるので、国鉄とトラツクの輸送分野には若干の変化が考えられる。

 このような事情もあつて国鉄の輸送屯数は減少したが、距離を加えて輸送量(屯粁)は前年度のそれとほぼ同量で地域的には前年度の輸送逼迫がもちこされている。、国鉄においては新線の建設が進められているが、今後のものについては道路建設との調整が必要になると思われる。

(二)旅客輸送

 昭和二七年度における各輸送機関別の乗車人員は、第二四表に示すように自動車の増加が著しい。

第二四表 27年度の旅客輸送実績

 旅客輸送では、大都市とくに東京における通勤輸送の混雑が問題としてあげられる。国鉄においては、電車輸送力を戦前(昭和一一年)の二倍としたにも拘らず、乗客の数は三倍を超えて、ラツシユ時の乗車人員は平均して定員の二・五倍になつている。

 現在、国鉄の輸送力はほぼ限界に達し、急速に増加を見込めない。他面、バス・乗用自動車の台数は増加して円滑な道路輸送に支障をきたしはじめた。今後も人口が都市に集中し、住宅建設が郊外に延びてゆくとすれば、通勤輸送の混雑はさらに激化するものと予想される。

 以上のような輸送機関に加えて、二六年一〇月から国内航空輸送事業が開始された。

 現在国内幹線として、東京――大阪、東京――福岡、東京――札幌間の運航を行つており、その旅客数は第二五表に示すとおり、運航開始以来、月を逐うて増加の傾向をたどつている。このような国内幹線の整備と相まつて二八年一一月から国際航空路線が開設されようとしている。

第二五表 航空旅客人員

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