第二部 各論 一 貿易 4 輸入規模の拡大


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(一)昭和二六年との比較

 昭和二七年の輸入金額も前年とほとんど変化なく、税関統計で二〇億ドル、外国為替統計で一七億ドルとなつている。もつとも輸入数量としてはこの間における単価の値下がりにより約一二%増加し、戦前の五割を超す水準にまで回復した。

第七表 輸入金額および数量の推移

 二七年の輸入量を前年と比較すると、まず輸入全体の六割を占める原料のうち、鉄鉱石、粘結炭がともに五割著増したのをはじめ、石油、羊毛が二割、綿花が一割余り増加し、概して鉄鋼原料、繊維原料および燃料の増加が目立つている。しかし一方で前年の過剰輸入による反動や、国産原料の増産に伴う自給度の向上から大豆、パルプをはじめ塩、燐鉱石、原皮などが減少し(第九表参照)したので、結局原料全体としては七%の増加に止つた。つぎに食糧(飼料を除く)は米の値上り砂糖の四割著増などにより、輸入全体に占める比率は前年の二五%から二九%に増加し、数量としても二割の増加を示している。

 なお二七年の輸入を税関統計によつて地域別にみると、ポンド地域およびドル地域からの輸入がそれぞれ三千万ドルおよび二千万ドル増加した反面、オープン勘定地域は七千万ドルを減少している。これは主として綿花、原油、塩などが輸入先をある程度ポンド地域へ転換したことに基づいている。このような地域転換は二六年下半期以来のポンド貨累増から政府が促進したところでもあつたが、さらに二七年後半に入ると、ポンド地域の価格低落によつて買付が増加した。このためポンド貨の保有高は輸出の減少とも相まつて急減し、輸入の先行不安からかえつて買急ぎ傾向を助長することにもなつた。またオープン勘定地域も二七年を通じてみると、同地域の一般的物価高などを反映して前年より大巾に減少し、従来のわが国の輸出超過はその後の輸出不振とも呼応して縮小均衡への傾向をたどつた。

第33図 主要商品別地域別対26年増減並に地域構成の変化

(二)動乱後の輸入増加

 ここで動乱後三カ年の動きをみると、昭和二七年の輸入量は前述したように特需等の臨時収入ならびに交易条件の改善などで二五年より六五%増加することができた。このうち生産財の輸入量は二・六倍と著増したが、輸入構成に占める比重が低いため、金額としては四億ドルの増加に止まつた。一方消費財の輸入量はこの間に約五割、金額で六億ドル増加したが、反面二七年の消費財の輸出量は二五年とほとんど変わらなかつたので、国内向消費財の供給量としてはかなり増加したわけである。つぎにこのような臨時的需要に支えられた商品の輸入状況を検討してみよう。まず食糧の輸入は全体で六割伸び、このうち穀物の輸入は四割強ふえ、重量で約百万トンの増加に当つている。一方穀物の国内生産はこの間に約五%(七〇万トン)の増加であつた。また砂糖は七割(四〇万トン)ほど増加し、ほぼ戦前の水準を回復している。つぎに原材料は全体で五二%増加し、この間における製造工業の生産増五七%を原料面から支えた。ことに増加の著しかつたのは鉄鉱石、粘結炭、石油、塩などの重化学工業原料ないし燃料で、二~四倍に増加した。また繊維原料でも羊毛は二七年に一億五千万ポンドと二倍になつたが、綿花は九億四千万ポンドで二割増に止まつた。綿花の輸入増は少いが、一方綿製品の輸出がこの間に約三割減少しているので、国内消費向けとしては約七億ポンドと三倍近くに著増したことになる。またパルプは輸入量としては変化がなかつたが、その需要増と国内増産で賄つており、供給量としては六割(一一億ポンド)増加している。なお工業製品の輸入は戦後縮少し、二五年には戦前の三分の一に回復した。これは主として産業機械など合理化用機械の増加に基づくものであるが、このほか不急消費物資の輸入も多少増加しており、その輸入全体に占める比重こそ少いが、注目に値する。

 結局二五年以来の輸入増加は、その大部分が動乱後の生産規模拡大に必要な原材料や食糧の需要増加を補うもので、日本経済にとつて欠くことのできない重要性をもつていたといえる。

第八表 生産財、消費財の輸入金額と数量

第34図 品目別、類別輸入水量水準

第九表 主要商品の輸入状況

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