第二部 各論 一 貿易 3 特需への依存


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 朝鮮動乱後のわが国経済は、米軍および国連軍関係の消費など、いわゆる広義の特需の増加によつて支えられてきた。すなわち昭和二五年から二七年に至る三年間の広義特需は合計一五億七千万ドルで、同期間のドル貿易の入超一一億六千万ドル(外国為替収支)を埋め合わせてなお余りがあつた。昭和二七年の広義の特需の総額は約七億九千万ドルで、前年より一億六千万ドル増加した。このうち朝鮮作戦用などのいわゆる狭義の特需は前年より九千万ドルを減少したが、一方で軍人、軍需やその家族の個人的消費が前年より六千万ドルを増加し、また駐留軍雇用による労務費が一億一千万ドルふえている。

第五表 特需の使途別内容

 上の狭義特需に対応する契約高についてみると、二七年の合計額は二億三千万ドルで前年より約四割減少した。このうち商品契約はとくに低調で、下半期に期待された完成兵器の発注も受入態勢の不備、見透し不安などから試験的発注の域を出ず、砲弾類を中心に二千万ドル足らずに終つた。しかし年末からに八年上半期にかけて、兵器をはじめ戦闘関連資材の発注が増加し、とくに三月の契約は六千万ドル(動乱後最高)を達した。

第六表 特需契約高(狭義)

 つぎに狭義の特需の支払高のうち約七割(一億八千万ドル)は商品であるが、残りの三割はサーヴイスであり、さらに労務費ないし個人消費の大半もサーヴイスであるため、特需による外貨の手取は通常の輸出による外貨手取をかなり上回る有利なものとなつている。従つて特需の減少を輸出の増加によつて補うには輸出規模を大巾に拡大し、外貨の純手取を増加させなければならない。

 なお休戦後の特需の動向については、特需による外貨収入が大きかつただけに強い関心を呼んでおり、急激な変化はないとしても、その総額が漸減に向うものとみられている。特需のうち朝鮮作戦用のものが減少ことは確実であろうが、休戦によつてわが国から駐留軍が撤退するわけではないので、個人消費、労務費など駐留に伴う需要には差当り大きな変化はないとみられる。また休戦後は韓国の復興用、民生安定用資材の需要が、セメント、木材、鋼材、小麦粉、肥料などを中心に増加することが期待されるが、その多くは国連の朝鮮復興局による国際入札の形をとる見込みが強く、対外的に戦争の少なかつた特需にくらべ、商業採算条件が厳格になるであろう。

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