第一部 總説……独立日本の経済力 四 自立経済達成の諸条件 1 ますます重くなる経済負担


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(一)賠償、その他

 このような難しい時期に日本経済にはさらに新しい経済負担が次々に加わつてきそうだ。その第一は賠償の問題である。現在まだ具体的に賠償額の決定にまで至つてはいないけれども、相手国の要求はかなり巨額である。これが年々の国際収支の国民経済にかなり負担になることは疑いを容れない。

 また外債の利払いも年々行ねばならない。その上終戦以来今日までに導入した外国資本の利子および元本等の支払額も嵩んでゆく。また自衛力の漸増に伴う負担も軽いとはいえないであろう。しかし、そのような経済負担に比してさらに大きな負担が存在する。それは人口の増加である。

(二)人口増加の重圧

 終戦直後に一時増大した出生率は次第に低下したけれども、一方死亡率も低下しているために、自然増加率はまだ一・五%に止つており、昨年中に日本の総人口は一二五万人増加して戦前(昭和一〇年)の二五%増の八五五八万人に達した。年々京都市に相当する人口がふえるわけである。目下の見透しでは日本の人口は昭和四五年には一億に達すると予想されている。

 人口増加のために要する食糧や繊維原料をそのまま追加輸入するとすれば、年々四千万ドルの外貨負担の増加を結果するであろう。しかし人口問題は、単に着せる喰わせるだけの問題ではない。増加する労働力に職をあたえる問題がある。一四歳以上のいわゆる生産年令人口は総人口のふえる率以上に増加し、昨年中その増加は一一八万人に達している。もちろんこの生産年令人口のうち一部は家庭に留まり、学校に通い、その他いろいろな事情で一一八万人全部が職を求める人口になるとは限らないけれども、このふえる人口の相当部分に新しい職場を提供することが是非必要である。しかしながら日本経済の国際競争力を強化するためには労働生産性を低めることはできない。労働生産性を向上させながら雇用を増加するためには経済規模を拡大しなければならない。ところが当面の情勢ではその経済規模の拡大がなかなか困難な模様なのである。

 昨年の報告書でも書いたとおり、日本経済は一応回復の段階を終え、終戦以来これまでに大きな割合を示した経済の成長率も今後は著しく鈍化しようとしている。しかしながら人口の増加のみは年々かなりの率を保つているのであるから、国民生活の向上はもちろん、その維持さえも必ずしも容易ではなかろう。

 以上述べてきたような情勢に対処して今後日本が努むべき道としてはつぎの二つが考えられる。輸出の振興と自給度の向上がこれである。

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