第一部 總説……独立日本の経済力 第一 序言

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 かえりみれば終戦いらい八年の間に日本経済は目覚ましい回復を示した。終戦直後のあの荒廃した焼土に立つて、生産規模や国民生活が、十年を出でずしてここまで回復すると予想したものはおそらくないであろう。しかしこのような大幅な回復に寄与した最も大きな要因は、日本経済の置かれた国際環境の変化であつた。朝鮮動乱勃発以後の推移においてもその例にもれない。

 動乱以来三年の間に一人当り実質国民所得も、消費水準も、二割の上昇を示してほぼ戦前並みに戻つた。輸入量も八割上昇したのに、外貨保有高は六億余ドル増大している。このような経済活動の膨脹も、特需の発生と世界の再軍備に基づく輸出の増大に起因している。

 このように日本経済に大きな影響をもつた朝鮮の動乱は勃発三週年を経て、懸案の休戦会議もようやく成立の運びとなつてきたようである。これがいわゆる「冷戦」の全面的緩和の方向に向う契機になるかどうかについてはいまにわかに予断を許さぬものであるけれども、これによつてすでに昨年以来顕著になつていた再軍備の引延ばしに基づく世界景気の停滞は、一そうその傾向を強め、輸出競争も激化をもたらすであろうことは疑いを容れない。従つて現在の局面は、朝鮮の動乱が日本経済に与えた影響をあらゆる面から再検討し、徒らに特別な外貨収入が今後どれだけ継続するかの予測に日を送ることなく、特需なき後の日本経済の進むべき道に対して思いをひそむべき時期でなければならない。そこで本年の報告書においてはまず昨年中の経済循環の意義を説明するとともに、動乱後の経済水準の上昇が、真に自立達成への前進を意味するかどうかを検討し、併せて、今後解決しなければならぬ自立達成への諸条件を考察して、われわれの前途に横たわる課題の大きさをみきわめたいと思う。

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