第3節 地方財政の改革
公共サービスの提供者という観点からは、国よりもむしろ地方公共団体の方が大きな役割を担っている。したがって、「官から民へ」によって小さな政府を目指すためには、まず、公共財の利用者である住民により近い立場にある地方公共団体の裁量を拡大し、その地方の事情にあったサービスの提供を可能にするとともに、実際の事業執行者としての地方公共団体における行財政改革を進めることが重要である。現在、地方財政については、三位一体の改革という形で国と地方の関係の見直しが行われるとともに、市町村の合併が進む中で、規模の拡大による行政の効率化が進められている。そこで、ここでは、三位一体の改革の概要について紹介した後、市町村合併にみられるような行政サービスの広域化によってどの程度の行政効率化の効果が得られるかについて検討する。また、地方公共団体間の財政的な格差はどのような要因に影響されるのかについても分析を行う。
1 国と地方の関係の見直し
● 国と地方の関係の見直し
「官から民へ」、「国から地方へ」の考え方の下、地方の権限と責任を大幅に拡大し、国と地方の明確な役割分担に基づいた自主・自立の地域社会からなる地方分権型の行政システムを構築するための取組が行われている。こうした改革の目指すところは、地方の歳出・歳入両面で国の関与を減らし地方の自由度を高めることで、受益と負担の関係を明確にし、真に住民に必要な行政サービスを地方自らの責任で自主的、効率的に選択できる幅を拡大するとともに、国・地方を通じた簡素で効率的な行財政システムの構築を図ることである。こうした理念の下、国庫補助負担金改革、税源移譲及び地方交付税改革を一体として進める三位一体の改革、課税自主権の拡大、市町村合併の推進が同時に進められている。
● 国と地方の関係の現状
2003年度の数字に基づいて、国と地方の財政における関係を簡単に整理すると、まず、支出面については、国及び地方の歳出総額(純計)に占める地方の割合は約6割である。これを費目別にみると、地方の支出割合が高い順に、教育費(85.4%)、警察・消防・一般行政費を含む機関費(78.6%)、国土保全及び開発費(70.2%)、産業経済費(65.6%)、社会保障関係費(58.0%)となる。教育費に占める地方の割合が高いのは、義務教育や高等学校等の実施を地方が行っているためであり、次に高い機関費については、司法警察消防費等が含まれるためである(第2-3-1表)。他方、社会保障関係費に占める地方の割合が比較的低いのは、年金など国が直接所得移転を行っているものが含まれるためである。また、産業経済費には、農林水産業費や商工費等が含まれるが、農林水産業関連の普通建設事業費では補助事業費の比率が高いことや、商工費のかなりの部分が貸付金であること等を反映して、地方の支出比率が他の費目と比べて低くなっている。
ただし、以上の国・地方の支出割合は、国・地方間の資金移転後の姿であり、移転前の姿については、地方の比率は大きく低下し、特に社会保障関係費(58.0%→44.5%)、国土保全及び開発費(70.2%→59.7%)、教育費(85.4%→69.2%)については、国から地方への移転の大きさを反映して低下幅が大きい。
このように、国から地方への移転は大きな役割を果たしているが、税収面をみると地方の割合は4割強程度となっている。このため、地方交付税、地方譲与税による国から地方への移転後では、地方の収入は6割弱になる(ただし支出面と整合的でないのは公債による収入を考慮していないためである)(第2-3-2図)39。
● 三位一体の改革の概要
三位一体の改革とは、国庫補助負担金改革、税源移譲及び地方交付税改革を一体として進めることである。こうした改革を通じて、地方の一般財源の割合の引上げ、地方税の充実、交付税への依存の引下げ、効率的で小さな政府の実現が期待されている。これまでの改革の進展状況については、以下のとおりである。
(i)国庫補助負担金改革
「基本方針2003」では、2006年度までにおおむね4兆円を目途に補助金の廃止・縮減等を行うこととしているが、2004年度に約1兆円の廃止・縮減等が行われたのに続き、2005年度においては、税源移譲に結び付く改革(1兆1,239億円)、地方の裁量度を高め自主性を大幅に拡大する改革(交付金化の改革)(3,430億円)国・地方を通じた行政のスリム化の改革(3,011億円)の3つの改革により、計1兆7,681億円の改革を実施している。
具体的には、まず、税源移譲に結び付く改革として、国民健康保険国庫負担等(6,989億円)について改革を実施するほか(第2-3-3図)、2005年度の暫定措置として義務教育国庫負担金を減額(4,250億円)している。次に、交付金化の改革として、省庁横断的な新たな交付金制度を創設(810億円)するほか、その他の交付金制度の拡充・創設(2,620億円)を行っている。また、スリム化の改革については、公共事業関係の国庫補助負担金の削減(2004年度当初予算比2,515億円減)を中心に実施している。
国庫補助負担金等の総額(一般会計と特別会計の合計)の推移をみると、2003年度が20.4兆円、2004年度が20.4兆円、2005年度が19.8兆円となっているが、これは国庫補助負担金改革を実施する一方で、医療・介護・福祉等の社会保障関係経費の大幅な増加等があるためである(第2-3-3図)。
(ii)税源移譲等
税源移譲については、廃止する国庫補助負担金の対象事業の中で、引き続き地方が主体となって実施する必要のあるものについて実施することとされており、2004年度に所得譲与税及び税源移譲予定特例交付金として措置した額を含め、おおむね3兆円規模を目指すこととされている。この税源移譲は、所得税から住民税への移譲によって行うものとし、個人住民税所得割のフラット化を基本として実施することとなっている。2004年度については、2003年度の補助金改革分も合わせて所得譲与税による税源移譲4,249億円を行ったほか、税源移譲を行うまでの間の措置として交付する交付金(税源移譲予定特例交付金)2,309億円が創設された。さらに、2005年度には、所得譲与税による移譲が6,910億円、義務教育費国庫負担金の暫定措置に伴う減収額を埋めるため、税源移譲予定特例交付金による財源措置が4,250億円実施された。こうした措置により、2005年度までに合計約1.8兆円の税財源が地方に対し措置された。
(iii)地方交付税改革
2005年度、2006年度は地方団体の安定的な財政運営に必要な地方交付税、地方税などの一般財源の総額を確保し、あわせて、歳出削減に引き続き努め、地方財政計画の合理化・透明化を進めることとされた。2005年度では、地方交付税の総額は16.9兆円(前年度比0.1%増)と、ほぼ前年並みの水準となっている。
税源移譲に伴う増収分については、税源移譲に伴う財政力格差が拡大しないようにしつつ、円滑な財政運営、制度の移行を確保するため、当面基準財政収入額に100%算入することとされている。
なお、経済財政諮問会議では、地方財政計画において、投資単独事業費をはじめとして計画額と決算額に顕著なかい離があり、国民への説明責任の観点から是正・適正計上する必要があるとの指摘があった40。
政府与党合意では、2005年度以降、地方財政計画の計画と決算のかい離を是正し、適正計上を行うとされ、2005年度地方財政計画においても、かい離の是正が行われた。
また、引き続き交付税の算定方法の簡素化、透明化に取り組むととともに、不交付団体(人口)の割合の拡大に向けた改革を検討することとなっている。
なお、普通交付税の交付・不交付団体の推移をみると、2004年度には、景気回復の影響もあって、不交付団体数は134団体(都道府県では東京都のみ)と、2003年度の115団体から19団体増加した(第2-3-4図)。また、不交付団体(市町村分)の人口の全国に占める割合は2004年度に17.7%と、前年の15.3%から増加した。
● 課税自主権の拡大
地方の課税自主権については、一定の制限はあるものの、税目及び税率の決定についてある程度地方の裁量が認められている41。このうち税目決定権については、地方分権一括法により、2000年4月から、これまで認められていた法定外普通税に加えて、新たに法定外目的税の創設が認められた。また、法定外税の課税の要件についても、許可制から同意を必要とする協議制に改められた42。法定外税は、地方団体にとって課税の選択の幅を広げるものであり、また、特に法定外目的税については、住民にとって受益と負担の関係が明確となるものであり、制度改正を受けて、多くの地方団体において、法定外税の創設に向けた取組が行われている。また、税率決定権については、地方消費税、自動車取得税など全国的な見地から一定税率以外で課税することが認められていない税もあるが、個人住民税、固定資産税などについては地方団体が税率を自由に決定することができるほか、法人住民税、事業税などについても「制限税率」以下であれば地方団体が税率を自由に決定することができることとされている。
法定外税の状況について2003年度決算でみると、法定外税を設置している団体は、法定外普通税は20団体、法定外目的税は13団体である(第2-3-5表)。法定外税による収入総額は391億円と、地方税収の0.12%を占めている。税目別の状況をみると、普通税については、核燃料税、砂利採取税といった税を採用する団体が多い。また、目的税については、産業廃棄物税、遊漁税など、政策実行のための財源確保の手段として用いられている例が多い。
地方税法では、一定税率が定められていない税についても、標準税率(地方団体が課税する場合に通常よるべき税率)が定められているが、財政上その他の必要がある場合には、地方団体は、この標準税率を超える税率を条例で定めて課税(超過課税)することができる。2003年度決算でみると、超過課税を行っている団体は、税目ごとの延べ数でみて2,332団体、それによる税収額は4,269億円(地方税収全体に占める割合は、1.3%)となっている(第2-3-6表)。これは、税率設定がある程度財政的な安定確保のために用いられていることを示していると考えられる。ただし、日本の場合、各地方団体間の最大税率格差については、個人住民税所得割では格差がなく、個人住民税均等割で1.5倍、道府県民税法人税割等で1.2倍程度、固定資産税で1.25倍程度である。既存の研究によると、これを欧米諸国と比べると、英国のカウンシル税の格差が3倍、フランスの不動産税の格差が2倍から4倍程度であり、日本では格差は比較的小さなものにとどまっている43(第2-3-7表)。これは、日本では、多くの地方税について制限税率制度がとられてきたことに加え、地方交付税制度を通じて、財源の均衡化が図られていることを反映しているためと考えられる。
地域間の税率格差を認め、地方団体が必要な歳出に応じて自主的に税率を決定することの利点としては、公共サービスに係る受益と負担の関係が明確化されることにより、納税者の意識が高まり行政監視機能がより強く働くことによって行政の効率性や利便性が上がるということがある。この点、日本の現状は、法人に対する超過課税が多く、個人に対する超過課税が少ない状況であり、こうした納税者による行政監視機能はあまり働いていないとの指摘もある。そうした点を踏まえて、課税自主権の活用について引き続き推進する必要がある。
2 規模の拡大による行政効率化
● 市町村合併の状況
地方分権の進展により、国から地方へと権限や事務が移譲され、中でも、総合的に住民サービスの提供の責務を負う市町村の役割が大きくなっている。市町村の権限の増大は、全国一律的なサービス提供の在り方を変え、地域の事情に合わせた公共サービスの提供を行うという意味で、公共サービスの利用者である地域住民の選好をより反映することが可能となり、限られた財政資源の有効かつ効率的な活用にも資するものである。他方で、市町村がこれまで以上に自立性が高い行政主体として機能するためには、行財政基盤の強化が不可欠であり、さらに今後少子高齢化による人口減少が見込まれること等も考慮すると、市町村の規模・能力をさらに充実・強化することが望ましい。このため、現在、市町村合併が急速に進んでいる。市町村の数の推移をみると、1999年に市町村の合併の特例に関する法律が改正され、2005年3月末までに合併申請を行った市町村には、合併市町村が市町村建設計画に基づいて行う一定の事業に要する経費等について、合併特例債を財源とすることができるといったこと等の行財政上の特例が認められたこともあって合併が進み、市町村の数は1999年3月末時点の3,232から2005年4月には2,395まで減少した。また、既に合併申請の済んでいる市町村が全て合併する2006年3月末には、1,822まで減少することが確実となっているところである44(第2-3-8表)。
● 規模の経済性
市町村合併や広域行政化が進められている理由の一つには、地方公共団体の規模がある程度大きくなると単位当たりの費用が低下することが期待されていることがあるが、そうした規模の経済性は実際にどの程度働くのであろうか。そこで、先行研究を参考にして、3千あまりにのぼる全市区町村の2003年度時点のデータを用いて、人口規模、面積によって市町村の住民一人当たりの費用がどのように違うかを調べた45。
まず、市町村の住民一人当たり人件費・物件費と人口規模の関係をみると、人口が多いほど低下する傾向がみられる(第2-3-9図)。なお、一定規模を超えると逆に費用が上昇していく傾向がみられるが、これは一定以上の規模の市については、政令指定都市、中核市、特例市の指定を受け、都道府県に代わって一定の事務を実施しているものもあるためである。
次に、住民一人当たり人件費・物件費を、人口規模だけでなく面積も説明変数に加えると、人口が同じであれば、面積が広いほど費用は大きくなる傾向がみられる(付注2-5)。これは、面積が広くなると、人口密度が低下し、サービス提供の効率性が低下するためである。また、ここでは考慮していないが、山間部のような地理的条件も大きく影響することが考えられる。
以上の推計結果を用いて、実際に合併した団体において、どの程度の費用削減効果が見込めるかについて試算を行った(第2-3-10図)。具体的には、2002年度及び2003年度に合併した主な団体について、推計されたパラメータを用いて、仮に合併がなく従前の人口、面積をそれぞれが保っていたとした場合の単位当たり費用の理論値を計算し、それと合併後の新団体の人口、面積を用いて計算した単位当たり費用の理論値を比較した。試算の結果によると、多くの団体で合併により理論的には単位当たり費用の低下が見込まれる。なお、この方法で試算を行うと、人口規模が大きな団体同士の合併の場合には、合併後の市が政令指定都市、中核市、特例市の指定を受けることにより、合併前より多くの事務を実施するようになるため、理論的には合併後の単位当たり費用が上昇することがある。ただし、その場合は見合いで都道府県の費用が減少していることから、当該地域全体としてみれば、やはり効率化しているものと考えられる点には留意する必要がある。
以上では、地方財政全般についての規模による格差をみたが、個別の費目でも地域ごとに大きな格差が存在するものがある。特に、国民健康保険については、市町村を保険者の基礎的単位としていることもあり、地域間で保険料の格差が大きい。市町村合併は、こうした保険面でも財政基盤の安定化に資するものである。このため、国民健康保険については、都道府県に市町村国保の広域化や市町村合併を支援する基金が設けられており、都道府県と市町村が連携しつつ、保険者の再編・統合を計画的に進め、広域連合等の活用により、都道府県においてより安定した保険運営を目指すこととされている。
3 地方公共団体間の財政格差とその要因
● 地方公共団体の財政状況
地方財政全体としては、引き続き厳しい状況が続いている。地方財政の硬直化の程度をみる指標として、経常収支比率がよく用いられるが、これは、人件費や公債費等のように毎年度経常的に支出される経費に充当された一般財源(経常経費充当一般財源)が、地方税や普通交付税のように毎年度経常的に入ってくる一般財源(経常一般財源)等に占める割合を示しており、この比率が高いほど財政は弾力性を失っていることを示す。全国市区についての経常収支比率の推移をみると、1990年代初めから2003年度に至るまで総じて上昇傾向にあり、財政構造が硬直化してきている様子が伺われる(第2-3-11図)。他方、全国市区について、財政構造の弾力性について、団体間のばらつきをみるために経常収支比率の変動係数(標準偏差を平均で除したもの)を計算すると、1990年代以降一貫して低下しており、団体間の格差はむしろ若干縮小していると考えられる。1990年と2003年の2時点において、全国市区の経常収支比率が地方公共団体間でどのような分布をしているかをみると、両時点とも、分布の最頻値(モード)を中心にして左右にほぼ均等に団体が分布しており、1990年から2003年にかけて全体が経常収支比率上昇方向に平行移動している。このため、多くの団体で総じて財政状況が悪化したことが示されている。ただし、2003年の方が分布の形状がより最頻値近辺に偏っていることから、分布形状からも団体間の格差自体は縮小している様子がみられる。
● 地方公共団体間の財政格差の要因
経常収支比率でみた場合、近年、やや縮小してきているとはいえ、地方公共団体間では、依然としてばらつきがみられる。そこで、地方公共団体間の財政状況の格差がどのような要因で生じているのかを調べるために、2003年時点における全国市区の経常収支比率が、財政的要因、人口構造や経済構造といった各地域の属性、行政改革の状況といった要因によってどの程度影響を受けているかを推計した(第2-3-12表)。なお、ケース1では、財政関係指標及び各地域の属性を説明変数として推計し、ケース2では、それに加えて行政改革の状況も説明変数に含めて推計している。推計結果(ケース1)によると、各地方公共団体の経常収支比率は、住民一人当たり職員数や税収といった財政に直接関係する要因との相関があるだけでなく、人口の伸び率、産業構造等との相関もみられる。このうち、地域属性の影響に注目すると、人口の伸び率が高いほど経常収支比率は低いという関係がみられるが、これは、既にみたように人口が増加し規模の経済性が働くことで行政の単位当たり費用が低下するとともに、地域経済としても人口増加によって活性化され、税収増等を通じて財政にも好影響があると考えられる。産業構造と経常収支比率の関係については、第2次産業の比率が大きい団体は、経常収支比率が低いところが多い傾向がみられるが、これは、第2次産業では事業規模が大きい事業者が多く、税収面等を通じて財政に好影響がある可能性が考えられる。人口に占める高齢者比率については、高齢者が多いほど経常収支比率が低いとの関係がみられる。これは、一般に高齢者比率が高いと、支出面、税収面とも不利になると考えられるものの、他方で、社会保障関係費等については国の補助等もあるため、地方公共団体の経常収支への影響は必ずしも明確でないという面があると考えられる。
● 行財政改革の効果
現在、地方の行財政改革については、地方行革指針(総務省)等を受けて、定員管理・給与の適正化、第三セクター・外郭団体等の抜本的な見直し、地方公営企業の経営健全化、民間委託・PFI等の推進、電子自治体の推進、行政評価の効果的・積極的な活用など様々な行財政改革の取組が行われている。そこで、ケース2として、経常収支比率と地方の属性との相関の推計式に、行財政改革の取組の一部を表す指標として、行政評価システムの採用状況、評価指標の数値化、バランスシートの作成状況、総務省調査による2004年6月時点での指定管理者の導入状況を加えて、それらと経常収支比率との相関を調べた(前掲第2-3-12表)。すると、評価指標の数値化、指定管理者制度の早期取組を行っている団体の経常収支比率が低い傾向が統計的に有意にみられる。また、統計的な相関はやや弱いものの、バランスシートの作成を行っている団体の経常収支比率も低い傾向がみられる。
次に、職員数の適正化といった行財政改革の取組は主に歳出面に現れると考え、地方公共団体の費用をコブダグラス型の費用関数で表し、それを推計することにより、行財政改革の効果を調べた。具体的には、地方公共団体の費用を表す変数として、人件費と物件費の合計額(総額)を被説明変数として用い、それを説明する変数として、要素所得(職員一人当たり人件費)、産出指標(住民人口)に加え、地方公共団体の属性(高齢化率、人口増加率、第2次産業比率)、行財政改革指標として過去5年間の職員数の増減を加えて推計した(付表2-11)。すると、過去に職員数の削減を行っている団体の費用は他の団体よりも低いということが示される結果となった。また、地方公共団体の属性を表す変数については、経常収支比率の推計とは異なり、高齢化率が高い団体では費用も高いということが示されている。
以上の結果をまとめると、行財政改革の取組を行っている団体では、経常収支比率が低い傾向がみられる、あるいは、費用が抑制されているといった状況があると考えられる。