第2章 活力回復のための税制改革に向けて

第2章 活力回復のための税制改革に向けて

少子・高齢化、ライフスタイルの多様化、グローバル化、情報化等のなかで、日本経済は、長期にわたって低迷を続けている。一方、現在の財政は、極めて不十分な歳入構造になっており、巨額の歳入・歳出ギャップが存在している(1)。こうしたなかで、日本経済がこの低迷から脱し、活力を取り戻していくためには、広範な制度改革を含む構造改革を進めることが急務となっているが、その一環として経済・社会の基盤である税制についても包括的かつ抜本的な改革が求められている。

税制改革については、先般(2002年6月25日)閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002(以下、「基本方針2002」という。)」においても、「少子化・高齢化、IT革命、激化する国際競争の中で、日本経済が活力を取り戻し、国内に質の高い雇用を確保していくためには、経済・社会の基盤である税制を幅広く見直していくことが不可欠である。」とされている。

経済の活力を支える新しい税のデザインを行い、それに向けて税制改革を行うためには、課税の負担構造を検討することが不可欠である(2)

本章は、このような問題意識から、個人所得課税及び法人所得課税について、その税負担の実態を多面的かつ包括的に検討することを目的としている。第1節では、個人所得課税について、その負担構造を検討する。ここでは、所得階層別の負担構造、世代別・ライフサイクルを通じた税負担、及びそれに影響を及ぼしている控除の現状について分析する。第2節では、法人所得課税について、その負担構造の国際比較を行いながら検討する。さらに法人所得課税については、産業連関等を通じた一般均衡的な影響が重要なことから、応用一般均衡モデルを用いたシミュレーションを行って分析する(3)