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第2章 2008年の経済見通し


第4節 世界経済の連関

1.東アジアにおける国際分業の進展と域内外貿易の動向

  (1)アジア新興国の世界経済、世界の貿易におけるプレゼンスは増大
  中国、NIEs、ASEANといった「アジア新興国」(1) は、近年、世界経済に占めるプレゼンスを急速に増大させている。名目GDP(市場為替レートでドル換算したベースで比較)では、1995〜2007年の間に世界全体のGDP総額に占めるシェアが8.0%から11.1%へと高まっており、中でも中国(香港を含む、以下同じ。)(2) のシェアは2.5%から6.0%へと高まっている(第2-4-1図)
  世界経済の成長に対する寄与をみても、アジア新興国の寄与は、各国の高成長を反映して大きく上昇しており、特に中国の寄与が増大している(第2-4-2図)。95〜05年の平均で、世界経済の成長に対する寄与率でみて18%がアジア新興国によるものとなっている。
  貿易面でもアジア新興国のプレゼンスは高まっている。世界全体の輸出額に占めるアジア新興国のシェアは、95〜06年の間に13.6%から17.9%へと高まっており、特に、中国のシェアが4.6%から8.6%へと顕著に上昇している(第2-4-3図)

  (2)中国をハブとした東アジアの分業構造
  このように、アジア新興国は、世界経済の中でのプレゼンスを高めている。その中で、「アジア新興国」に日本を加えた「東アジア」地域では、中国に中間財、資本財を輸出し、中国で加工・組立てを行い、主として先進国へ輸出するという、中国をハブとした域内分業を発展させてきている。以下では、その状況をみていこう。

●東アジア各地域から中国へ、中国から東アジア地域外への輸出が増大

  まず、東アジア地域全体及びその中の各国・地域グループごとに、その輸出総額(3) における相手先別のシェアをみてみよう(第2-4-4図)
  東アジア合計では、東アジア以外(域外)への輸出のシェアは、95年、06年とも6割強であり、この間にやや上昇しているもののあまり大きな変化ではない。その中で、中国については、域外輸出のシェアが相対的に高く、しかも上昇しており、06年では75%に達している。一方、NIEs、ASEANは、域外輸出比率が50%前後にとどまる。
  域外の輸出先としては、06年では、輸出側の国・地域ごとに相違はあるが、東アジア全体でみて、アメリカ、EUと、それ以外にほぼ3分される。その中でアメリカのシェアはやや低下したものの東アジアの総輸出の2割以上を占め、EUとの差は縮小してきたものの最大の相手先である。また、EUや、資源輸出で潤っている中東及びロシアのシェアが上昇している。中国からの域外の輸出先も、同様にアメリカ、EU、それ以外に3分され、アメリカ向け輸出はややシェアが低下しているものの中国の総輸出額の4分の1強を占め最大の輸出先である。
  東アジア域内については、輸出先として、日本のシェアが低下し、中国のシェアが上昇しているのが顕著な特徴である。特に、日本及びNIEsにとっては、06年は輸出総額の20%以上が中国向けとなっている。このほか、NIEs、ASEAN各国及び中国から、ASEANへの輸出もそれぞれ増加している。
  このように、東アジア地域の中では、中国が域外向けの輸出を増やす一方で、域内貿易では、中国への輸出が顕著に重要性を増している(4)

●中国の財別の輸出入構造

  次に、中国の貿易の財別の構成(5) をみると(第2-4-5図)、輸出では、消費財が最も大きなシェアを占める。ただし、近年、資本財、中間財(部品及び加工品)のシェアも高まっている。一方、輸入については、中間財が過半を占め、しかもそのシェアを高めており、05年では6割近くに上っている。また、資本財の輸入は、20%弱で比較的安定している。消費財のシェアは低下し、05年では10%程度に下がる一方、一次産品のシェアが上昇している。
  こうした財別の輸出入構成から、中国が、中間財、一次産品を輸入し、それを最終財、特に消費財に加工・組み立てて輸出するという生産・貿易構造を持っていることがうかがわれる。また、中国の輸出について、消費財輸出に特化した特性が薄まり、中間財や資本財の輸出も活発化しているのは、中国における近年の産業構造の高度化に伴い、輸出しうる財の構成が多様化してきているためと考えられる。

中国のアメリカ、ヨーロッパへの消費財輸出増加と東アジア域内からの中間財・資本財輸入増加

  以上を踏まえ、次に、中国の資本財の輸出、中間財(部品及び加工品)、消費財の輸出を中心に輸出入の相手先別の構成をみてみよう。
  (i)先進国向け、域外向けがそれぞれ8割以上に達する消費財輸出
  中国の消費財輸出の相手先別のシェアをみると(第2-4-6図)、特徴的なことは、先進国に集中し、しかも先進国向け輸出のシェアが高まっていることであり、アメリカ、EU、日本の合計で05年には8割に達している。なお、これら3地域の中では、90年代後半以降の日本向けのシェアの低下と2000年代に入ってからのEU向けのシェアの上昇がみられ、「世界の工場」としての中国の消費財輸出が、地理的に遠いヨーロッパにも広がってきていることがうかがわれる(6)
  また、東アジア地域の内外でみると、域内向けは、日本を除くと5%程度に過ぎない。日本を含めても、東アジア地域への輸出比率は90年代後半以降傾向的に低下し、05年には2割を切っている(域外向けが8割を超えている)。
  (ii)中間財・資本財輸入は東アジア地域内からが過半
  一方、中国の中間財、資本財の輸入に占める各国・地域のシェアをみると、東アジア地域内からの輸入比率が高く、しかも上昇していることが特徴となっている(第2-4-7図)。中間財の輸入については、東アジア地域内からの輸入が05年には6割以上となっており、中でもNIEsからが約3割、日本からが2割強となっている。また、NIEs及びASEANからの輸入のシェアが顕著に高まっており、これら地域がその産業構造の高度化にしたがって電子部品、機械部品等の供給を増やしているためと考えられる。その反面として、日本からの輸入のシェアはやや低下している。
  資本財については、東アジア地域内からの輸入のシェアが90年の5割強から05年には3分の2以上に上昇している。特にNIEsのシェアは傾向的に上昇し、2000年代に入ってからは3分の1以上となっている。ASEANのシェアは相対的には小さいが顕著に上昇し、05年には1割を超えている。一方、日本のシェアはやや低下する傾向にあり、05年は2割強となっている(7)
  (iii)2000年代に入ってからは資本財、中間財の先進国向け輸出も拡大
  さらに、輸出に占める資本財や中間財のシェアが高まった2000年代について、財別の輸出入を実際の金額でみてみよう(第2-4-8図)。アジア地域から中間財等を輸入し先進国に消費財を輸出するという従来の構図に加え、資本財については先進国やNIEsに、中間財については先進国を中心に世界中に輸出が拡大しており、中国の産業構造の高度化を反映して、輸出の財別構成が多様化したことを反映した変化と考えられる。また、資本財、輸入財の東アジア地域外向け比率をみても、05年で、資本財については8割弱、中間財については約6割であり、域外向けが多いことが分かる(第2-4-9図)

中国経由で世界景気の影響を受ける可能性

  以上みてきたように、中国を始めとするアジア新興国は、世界経済におけるプレゼンスを確実に増しており、自らの経済成長とともに世界経済の成長への寄与度を高めている。ただし、これまでの経済成長は、輸出の急速な伸びによる外需依存の構造によるところも大きい。東アジア地域内では、中間財、資本財の輸出入による域内分業を発展させるとともに、中国が域外輸出を増加させるという構図が発展してきた。さらに、近年においては、中国の産業高度化を反映して輸出の財別構成が多様化してきている。その中で、中国は、東アジア地域外への輸出比率を高めてきており、また、中国にとっても、東アジア地域にとっても、アメリカは依然としても輸出先として最大のシェアを占めている。こうしたことからも、アジアの景気はこれまでは相対的に堅調に推移しているものの、アメリカを始めとするアジア地域外の経済が減速する場合には、東アジア各国に、直接に、あるいは、貿易の分業関係を通じて中国経由で間接的に、その影響が波及する可能性があることが再確認される。


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