第2章 第3節 1.拠点的都市における人口・就業者数の動き

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2000年代半ば以降、地方圏では、広域の地域ブロックとしても自然減となっている地域が広がりつつある。市町村別では、社会減に加え自然減も始まっている市町村が大半である。さらに、人口減少、少子・高齢化の進行によって、多くの市町村が厳しい財政状況に置かれている。また、就業機会でみても、2000年代半ば以降には、南関東も含めて全国的に生産年齢人口が減少するなかで、南関東では60歳未満の就業者が男女ともに増加に転じた一方、地方圏においては就業者数の減少が続いている。こうした中、各地域において、地域経済の活力や都市関連サービスの水準を維持するためには、「選択と集中」の考え方を基本として、拠点となる市における都市機能の集積を有効に活用しつつ、周辺地域とのネットワークを強化し、圏域全体として活力を維持することが一層重要となる。

地方圏では、これまでも、政令指定都市、県庁所在市や人口30万人以上の人口規模の市などが、広域的な経済社会活動の中心としての役割を果たしてきた。1975年から1995年までの地方圏における人口の動きをみると、地方圏全体としての人口増加率は低下傾向にあったものの、人口10~30万人程度以上の市の人口増加率は、全国平均を上回るほどであったとともに、こうした市では、人口以上に産業関連諸機能の集積がみられた7

そこで、以下では、地方圏で人口減少の地域が広がりをみせ始めた1990年代後半以降においても、地方圏にある拠点的都市が高度成長期から1990年代前半までにみられたような役割を果たしてきたのかどうかについて、みてみることにしよう。

1.拠点的都市における人口・就業者数の動き

(対象とする拠点的都市)

ここでは、地方圏にある「政令指定都市」30万人以上)」「特例市(人口20万人以上)」を、ある程度の人口規模や都市機能の集積を持ち、地域ブロックや県などの広域的なエリアで拠点的な役割を果たす市とみなすこととする。なお、県内に「政令指定都市」「中核市」「特例市」のいずれもない県については、「県庁所在市」をその県の拠点的都市とした。こうした条件に該当する都市は2008年現在、50市であった8

また、以下では、こうした地方圏における「中核市」「特例市」「県庁所在市」を便宜的に総称して「地方拠点市」と呼ぶこととする(付表2-2)。

(拠点的都市への人口の集積)

地方圏の政令指定都市や地方拠点市への人口の集中の度合をみるため、これらの市の人口が各県の総人口に占めるシェアの推移をみることにしよう。ただし、2000年代に入り、平成の合併により、地方圏の政令指定都市や地方拠点市でも、その大半で市町村合併が行われ、市域、人口ともに拡大した。そこで、こうした市町村合併による人口増加の特殊要因を除去するため、分析開始時点である1980年において、市域がすでに2005年時点の市域であるとみなして人口の補正を行い、各市の人口の推移をみることとした。

1980年から2005年までの推移をみると、政令指定都市と地方拠点市を合わせた50市のうち、多くの市が人口シェアを高めている(付表2-3)。都市規模別にみると、政令指定都市(6市)のうち、北九州市では、人口シェアが低下しているが、北九州市以外の5市では人口シェアの上昇が続いている。地方拠点市(44市)においては、人口シェアの低下が続いていたのは、函館市(北海道)、甲府市(山梨県)、呉市(広島県)の3市のみであった。1995年から2005年でみると、これらの4市に加え、旭川市(北海道)、長崎市(長崎県)では人口シェアの低下が続いたものの、残りの44市では人口シェアは上昇、もしくは横ばいとなった。

政令指定都市や地方拠点市の分布をみると、1つの県内に複数の地方拠点市が存在するケースや、政令指定都市と複数の地方拠点市が存在するケース等もある。そこで、県内の政令指定都市と全ての地方拠点市を合わせて人口シェアをみた。それによると、地方圏に所在する33道県のうち、山梨県と長崎県の2県では人口シェアは低下傾向にある一方、それ以外の31道県では人口シェアが高まっていた(第2-3-1表)9。このように、地方圏においては、ほぼ全ての県で、政令指定都市や地方拠点市への人口集中の傾向がみられる結果となった。また、人口シェアが低下傾向にある長崎県においても、長崎市と佐世保市の2市合計で県内人口の46.7%を占め、県内人口のほぼ半数がこの2市に居住している。

第2-3-1表 各道県に占める拠点的都市のシェア(総人口)
  総人口
県名 都市名 80年 85年 90年 95年 00年 05年
北海道 札幌、旭川、函館 37.7 39.6 41.8 42.8 43.8 45.0
青森 青森、八戸 36.4 37.0 37.5 38.1 38.4 38.7
岩手 盛岡 18.2 19.0 19.7 20.2 20.4 20.7
宮城 仙台 38.0 39.4 40.8 41.7 42.6 43.4
秋田 秋田 24.3 25.2 26.3 27.3 28.3 29.1
山形 山形 18.9 19.4 19.8 20.2 20.5 21.1
福島 いわき、郡山 30.9 31.4 31.9 32.2 32.7 33.2
新潟 新潟、長岡、上越 46.7 47.4 48.1 48.8 49.6 50.6
茨城 水戸、つくば 14.4 14.8 15.1 15.0 15.2 15.6
栃木 宇都宮 21.1 21.7 22.1 21.9 22.1 22.7
群馬 前橋、高崎、伊勢崎、太田 46.0 46.8 47.2 47.2 47.6 48.4
山梨 甲府 24.8 24.3 23.5 22.8 22.1 22.0
長野 長野、松本 26.8 26.9 27.2 27.5 27.4 27.6
富山 富山 35.5 35.9 36.5 37.2 37.5 37.9
石川 金沢 37.3 37.4 38.0 38.5 38.6 38.7
福井 福井 30.3 30.6 30.7 30.9 30.4 30.7
鳥取 鳥取 30.6 31.0 31.8 32.2 32.7 33.2
島根 松江 23.4 23.8 24.6 25.3 26.2 26.5
岡山 岡山、倉敷 53.5 54.3 55.2 56.1 57.1 58.5
広島 広島、福山、呉 58.3 62.0 62.5 62.5 62.9 63.4
山口 下関 19.4 19.2 19.1 19.1 18.8 19.5
徳島 徳島 30.2 30.9 31.7 32.3 32.5 33.1
香川 高松 32.1 32.4 32.6 32.6 32.9 33.4
愛媛 松山 29.3 30.5 31.7 33.0 34.0 35.1
高知 高知 36.6 37.6 38.8 39.8 41.0 41.9
福岡 福岡、北九州、久留米 53.5 53.1 53.2 52.8 53.0 53.5
佐賀 佐賀 23.4 23.1 24.0 24.1 23.8 23.9
長崎 長崎、佐世保 47.4 47.4 47.2 47.3 46.7 46.7
熊本 熊本 31.8 32.7 34.1 35.0 35.6 36.3
大分 大分 31.4 33.1 34.8 36.3 37.2 38.2
宮崎 宮崎 23.0 23.7 24.6 25.5 26.1 26.9
鹿児島 鹿児島 30.7 31.6 32.4 33.1 33.7 34.5
沖縄 那覇 26.7 25.8 24.9 23.7 22.8 22.9
(備考) 1. 総務省「国勢調査」により作成。
2. 総人口について、5年前よりシェアが低下しているものは太字で、且つ背景色の背景色で示す。
  但し、1980年については5年前と比較していない。

地方圏における政令指定都市と地方拠点市の人口の集積をより広域的な範囲でみるため、次に、地域ブロックにおけるシェアでみてみよう。集積の度合は地域ブロック間で異なるが、沖縄以外の地域ブロックでは、政令指定都市や地方拠点市への人口集積が緩やかではあるが高まる傾向にあった(第2-3-2図)。また、集積の度合は、北海道、中国、九州が高い。地方圏においては、前述でみたように、地域ブロックといった広域の範囲で人口の減少が進むと同時に、ある程度の人口や都市機能の集積を持つ拠点的都市へ人口が集まる傾向にある。

第2-3-2図 各地域ブロックに占める拠点的都市の人口シェア

第2-3-2図
(備考) 1. 総務省「国勢調査」により作成。
2. 2005年10月1日時点に合わせて市町村合併組み替え修正を行った。
3. 拠点的都市とは、付表2-2に掲げた都市(50市)。

(拠点的都市への就業者の集積にみられる変化)

次に、就業の場としての政令指定都市や地方拠点市の位置付けをみてみよう。

各道県における就業者数10のうち、こうした拠点的な市における就業者数のシェアを1995年、2000年、2005年の3時点でみることにしよう。就業機会の集積の度合は、人口よりも高いものの、この10年間でシェアを低下させている県が多くなっている。2005年では、地方圏にある33道県のうち、13県において低下がみられた(第2-3-3表)。

第2-3-3表 各道県に占める拠点的都市のシェア(就業者)
  就業者
県名 都市名 95年 00年 05年
北海道 札幌、旭川、函館 43.1 43.6 44.5
青森 青森、八戸 39.0 39.6 39.4
岩手 盛岡 21.6 22.2 22.8
宮城 仙台 47.2 47.5 47.2
秋田 秋田 28.6 29.7 30.4
山形 山形 22.2 22.7 23.0
福島 いわき、郡山 32.5 32.9 33.2
新潟 新潟、長岡、上越 49.3 50.4 51.6
茨城 水戸、つくば 18.0 18.4 19.0
栃木 宇都宮 24.9 25.0 25.0
群馬 前橋、高崎、伊勢崎、太田 51.6 52.0 52.9
山梨 甲府 28.0 27.0 25.8
長野 長野、松本 30.1 30.0 30.0
富山 富山 39.8 40.8 41.0
石川 金沢 42.9 43.6 43.2
福井 福井 36.0 36.0 36.5
鳥取 鳥取 33.4 34.5 35.0
鳥根 松江 26.6 27.8 28.0
岡山 岡山、倉敷 59.5 60.3 60.8
広島 広島、福山、呉 64.5 64.7 64.4
山口 下関 18.4 18.2 19.0
徳島 徳島 38.0 38.2 38.5
香川 高松 39.3 39.9 39.3
愛媛 松山 33.5 34.7 35.0
高知 高知 43.1 43.6 43.7
福岡 福岡、北九州、久留米 61.7 61.4 61.1
佐賀 佐賀 27.1 27.3 27.0
長崎 長崎、佐世保 48.8 48.5 48.3
熊本 熊本 38.1 38.5 38.2
大分 大分 37.8 38.6 39.8
宮崎 宮崎 27.3 28.0 28.2
鹿児島 鹿児島 33.8 34.5 35.1
沖縄 那覇 29.2 28.0 27.3
(備考) 1. 総務省「国勢調査」により作成。
2. 総人口について、5年前よりシェアが低下しているものは太字で、且つ背景色の背景色で示す。
  但し、1980年については5年前と比較していない。

一方、各県における拠点的都市の就業者シェアの平均値をみてみると、36.8%(1995年)、37.2%(2000年)、37.4%(2005年)と、緩やかではあるが上昇している(付図2-4)。比較対象としてこの期間におけるこれら50市の人口シェア(平均値)をみると、34.0%(1995年)、34.4%(2000年)、34.9%(2005年)であり、就業者の方が人口よりも集積度が高い。

さらに、人口と同様に、地方圏における政令指定都市と地方拠点市の就業者数の集積を各地域ブロックでみてみた。集積の度合は地域ブロック間で異なるが、沖縄以外の地域ブロックでは、1990年代半ば以降、政令指定都市や地方拠点市への集積が強まる傾向にある(付図2-5)。また、人口同様に、北海道、中国、九州において集積の度合が高い。1990年代前半では、地域ブロックや各県の就業者数に占める拠点的都市のシェアは、総じて上昇していたものの、1995年以降になると、県全体の就業者に占めるシェアでは低下がみられる県も増加し始めていた。

(拠点的都市においても減少する就業者数)

拠点的都市における就業者数の動きについて、人口や、就業者数との連動が高い生産年齢人口との関係でみてみることにしよう。

1990年代前半、1990年代後半、2000年代前半の3つの期間において、対象とする50市の人口増減率と就業者数増減率とを、この3つの期間の地方圏平均の増減率と比較し、それぞれが平均を上回るか、下回るかで、4つのグループに分類してみた(第2-3-4図)。それによれば、1990年代前半は、地方圏全体として、就業者数と人口ともに増加していた時期であるが、50市のうち、31市(62%)は、人口、就業者数ともに平均よりも高い伸びを示し、人口、就業者数ともに平均を下回るのは6市(12%)に過ぎなかった。1990年代後半には、地方圏全体として、人口は横ばい、就業者数は減少となった時期であるが、人口と就業者数の増減率がともに平均を上回っていた市は、1990年代前半と同じく31市(62%)であったものの、人口、就業者の増減率ともに平均を下回る市は、12市(24%)と2倍になった。さらに、2000年代前半には、人口、就業者数の増減率ともに平均を上回る市が26市(52%)と減少する一方、人口は平均を上回りつつも、就業者数が減少する市が11市(22%)に増加した。この3つの期間を比較すると、特に就業者数が平均を下回って減少する市が増加している。

さらに、この3つの期間において、同じように、就業者数の増減率と生産年齢人口の増減率についても、地方圏平均と比較してみたが、ここでも、就業者と生産年齢人口の増減率が共に平均を上回る市が減少する一方、就業者と生産年齢人口の増減率が共に平均を下回る市が増加している。

1990年代後半以降、地方の拠点都市のなかには、就業機会を提供し圏域の雇用を確保するという、かつての機能を低下させた市が増加し始め、2000年代に入り、その傾向が強まっていると見られる。

第2-3-4図 地方圏における拠点的都市の就業者数と人口の増減率分布
 
(1)就業者数と人口の関係
【90~95年】
  就業者数の増減率
地方圏平均以上 地方圏平均以下 合計
人口の増減率 地方圏平均以上 31 1 32
(62.0%) (2.0%) (64.0%)
地方圏平均以下 12 6 18
(24.0%) (12.0%) (36.0%)
合計 43 7 50
(86.0%) (14.0%) (100.0%)
*・・上段が市町村数、下段がカバー率。以下同様。
第2-3-4図
 
 【95~00年】
  就業者数の増減率
地方圏平均以上 地方圏平均以下 合計
人口の増減率 地方圏平均以上 31 4 35
(62.0%) (8.0%) (70.0%)
地方圏平均以下 3 12 15
(6.0%) (24.0%) (30.0%)
合計 34 16 50
(68.0%) (32.0%) (100.0%)
第2-3-4図
【00~05年】
  就業者数の増減率
地方圏平均以上 地方圏平均以下 合計
人口の増減率 地方圏平均以上 26 11 37
(52.0%) (22.0%) (74.0%)
地方圏平均以下 2 11 13
(4.0%) (22.0%) (26.0%)
合計 28 22 50
(56.0%) (44.0%) (100.0%)
第2-3-4図
(備考) 1. 総務省「国勢調査」により作成。
2. 就業者数は「国勢調査」でいう「従業地による就業者数」のこと。
3. 2005年10月1日時点に合わせて市町村合併組み替え修正を行った。
4. 地方圏平均の就業者数の増減率は90~95年は 3.6%、95~00年は△2.1%、00~05年は△3.3%。
5. 地方圏平均の人口の増減率は90~95年は1.2%、95~00年0.0%、は00~05年は△0.9%。
6. 地方圏平均の生産年齢人口の増減率は90~95年は0.5%、95~00年△1.8%、は00~05年は△3.2%。
7. 拠点的都市とは、付表2-2に掲げたし(50市)。
(2)就業者数と生産年齢人口の関係
【90~95年】
  就業者数の増減率
地方圏平均以上 地方圏平均以下 合計
生産年齢人口の増減率 地方圏平均以上 33 2 35
(66.0%) (4.0%) (70.0%)
地方圏平均以下 10 5 15
(20.0%) (10.0%) (30.0%)
合計 43 7 50
(86.0%) (14.0%) (100.0%)
第2-3-4図
*・・上段が市町村数、下段がカバー率。以下同様。
【95~00年】
  就業者数の増減率
地方圏平均以上 地方圏平均以下 合計
生産年齢人口の増減率 地方圏平均以上 29 5 34
(58.0%) (10.0%) (68.0%)
地方圏平均以下 5 11 16
(10.0%) (22.0%) (32.0%)
合計 34 16 50
(68.0%) (32.0%) (100.0%)
第2-3-4図
【00~05年】
  就業者数の増減率
地方圏平均以上 地方圏平均以下 合計
生産年齢人口の増減率 地方圏平均以上 25 9 34
(50.0%) (18.0%) (68.0%)
地方圏平均以下 3 13 16
(6.0%) (26.0%) (32.0%)
合計 28 22 50
(56.0%) (44.0%) (100.0%)
第2-3-4図

7.
旧国土庁「国土レポート 2000」による。
8.
対象となる拠点的な都市は、政令指定都市が6市、「中核市」「特例市」「県庁所在市」が合わせて44市であり、合計50市となる。
9.
山口県と沖縄県においては、2000年までは地方拠点市である下関市や那覇市の人口シェアは低下傾向にあったが、足下の2005年には上昇に転じている。
10.
就業者数についても、人口同様に、市町村合併調整を行っている。

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