第2章 第3節 2.拠点的都市間の就業者の比較
(都市間でみられる雇用拡大の差)
地方圏の政令指定都市と地方拠点市の40市11について、2001年と2006年の2時点間で、産業別の就業者数(民間事業所に所属する就業者)を比較してみよう。この期間、全国平均で就業者が1.3%の減少、地方圏平均で2.5%の減少となっているのに対し、地方圏における政令指定都市(6市)の平均は0.2%の減少、地方拠点市(34市)の平均は2.1%の減少となっていた。政令指定都市と地方拠点市を合わせた40市の平均では1.4%の減少となり、全国平均を僅かに下回るものの、地方圏平均を上回り、地方圏内の他地域に比べ就業者数の減少を食い止めることができたとみられる。
しかし、地方拠点市の個々の都市についてみると、都市間でかなりの違いがある。就業者数の変化率では、那覇市が10.4%の大幅な増加を示したほか、鹿児島市、宮崎市、富山市、岡山市等も増加となった。一方、減少率が最も大きいのは、青森市の9.5%の減少であり、旭川市、長野市、松山市でも7~8%の減少となり、都市間でかなりのばらつきがみられる。
地域の拠点的都市であり、同程度の人口規模を持つ都市でありながら、このように就業者数の変化に違いが生じた要因をみるため、2001年から2006年までの5年間で、就業者数の増加率の高い上位10市と、低い下位10市との間で、就業者数の変化を産業別に要因分解してみよう。ちなみに、上位10位の市の就業者数の変化率の平均は1.2%の増加である一方、下位10位の市は6.9%の減少であり、両グループで就業者数の変化にかなりの差がある(第2-3-5図)。
就業者数の増加率を産業別に要因分解すると、両グループに差が生じたのは、増加率の高い上位10市では、サービス業や情報通信業で就業者が拡大した一方、卸売・小売業、建設業、飲食・宿泊業においては、就業者の減少の程度が下位10位よりも小さかったことがあげられる。特に、サービス業の中でも、事業所向12けサービス については、上位10市では大きく増加した一方、下位10市ではほぼ横ばいであった。上位10市と下位10市の就業者数の変化の違いの要因の一つとして、情報通信業と事業所向けサービス業における就業者数の変化の違いがある。
他方、高齢化の進行により雇用の拡大分野として期待される医療・福祉については、上位10市、下位10市のいずれにおいても、同程度の就業者数の増加率となった。地方拠点市(34市)の就業者数の変化率について、産業別にみると、医療・福祉が都市間のばらつきが最も小さい業種であった。
このように、地域ブロックや県などの広域的な範囲において、拠点となるべき都市の産業構造を就業者数の変化という面からみると、地方圏のほぼ全ての地域で人口減少がみられるようになった2000年代前半以降、情報化やサービス化に対応できた都市とそうでない都市とで就業機会に大きな差が生じたと言えよう。
第2-3-5図 地方圏の拠点的都市における就業者数の変化(01→06年)
(備考) | 1. | 総務省「事業所・企業統計調査」により作成。 |
2. | 2006年10月1日時点に合わせて市町村合併組み替え修正を行った。 | |
3. | 対象就業者は、民営事業所に所属している就業者。 | |
4. | ここでいう地方拠点市(34市)とは、地方圏にある中核市と特例市(但し、県庁所在市でない特例市(10市) は除く)。なお、島根県と佐賀県には中核市・特例市がないため、県庁所在市を地方拠点市としている。 | |
5. | 地方拠点市上位10市とは、地方拠点市のうち、2001年から2006年までの5年間で就業者数の増加率の高い 10市、下位10市とは増加率の低い10市。 |
(拠点的都市に関する今後の課題)
今後、人口減少圧力がさらに強まり、高齢化が進むなか、地方圏にある拠点的都市は、産業機能面だけでなく、集積性の高い大型商業・娯楽施設、中核的な医療機関、各種の都市関連サービスの提供機能など、周辺地域を含めた広域的エリアの住民の生活機能面においても、重要な役割を果たすことが求められる。このため、地方圏にある拠点的都市が、周辺地域を含めた広域的なエリアにおける経済活動や住民の暮らしの安心の確保のため、産業構造の変化への対応を含め広域的なエリアの中心として地域を牽引する活力をいかに維持するかが課題となる。
11. | 2000年代前半に産業分類の大幅変更が実施されたことによる時系列比較の制約等により、地方拠点市のうち、特例市については県庁所在市のみを対象とした。 |
12. | 事業所向けサービスとは、中小企業庁「サービスの生産性に関する実態調査」(2007年)にならい、サービス業(他に分類されないもの)から、洗濯・理容・美容・浴場業及びその他の生活関連サービス業、娯楽業、学術・開発研究機関及び政治・経済・文化団体、宗教、外国公務を除いたものとした。 |