第1章 第2節 5.各地域で厳しくなる雇用情勢

[目次]  [戻る]  [次へ]

(全ての地域で有効求人倍率が低下)

各地域の就業者数の推移をみると、2006年には多くの地域で増加していたが、2007年には、南関東や東海で前年を上回る伸びとなったものの、ほぼ半数の地域で減少した。2008年1~9月期には、大半の地域で減少している(付図1-11)。また、失業率を2007年第3期と2008年第3期との2時点で比較すると、2008年第3期には、ほぼ全ての地域で上昇している(第1-2-9図)。このように、就業者数の動きや失業率において、地域間で差はあるものの、ほぼ全ての地域で雇用情勢が悪化している。

雇用情勢の変化をより詳しくみるため、各地域の有効求人倍率を2008年1月、4月、7月、10月の4時点で比較すると、北海道以外の全ての地域で低下を続けている19(第1-2-10図)。さらに、各時点間の低下幅をみると、2008年7月から10月にかけての低下幅が、多くの地域でそれ以前に比べて大きくなっている。地域別にみると、有効求人倍率の水準の高い東海、北陸、南関東での低下幅が大きい。

新規求職申込件数の伸び(原数値、前年比)も、2008年第3期は2008年第2期と比較してほぼすべての地域で上昇した。求職理由別の動きをみると、多くの地域で「事業主都合による離職」が大きくプラスとなり、「在職者(在職中の求職者)」も全地域で伸びを高めた(第1-2-11図)。

第1-2-9図 完全失業率の動向

第1-2-9図

(備考) 1. 総務省「労働力調査」により作成。
2. 地域区分はC。

第1-2-10図 有効求人倍率の推移
-ほぼ全ての地域で低下を続ける有効求人倍率-

第1-2-10図

(備考) 1. 厚生労働省「一般職業紹介状況」により作成。4月の北海道の求人倍率低下には、求人数の集計方法変更(北海道のみ)も影響しているとみられる。
2. 地域区分はA。

第1-2-11図 理由別にみた新規求職申込件数の推移(08年第2期→08年第3期)
-ほぼ全ての地域で、事業主都合による離職や在職中の求職が増加-

第1-2-11図

(備考) 1. 厚生労働省「一般職業紹介状況」により作成。
2. 地域区分はA。

2008年半ば以降の「短観」の雇用人員判断DIの推移を地域別にみると、2008年6月調査では、北関東、南関東、東海などの多くの地域において、不足超であった(第1-2-12図)。しかし、続く9月調査では、ほぼ全ての地域が、不足超幅の縮小もしくは過剰超幅の拡大と、悪化の方向に変化した。さらに、12月調査では、北関東、南関東、東海において、悪化の方向への変化幅が大きく拡大した。2008年後半におけるこうした変化は、製造業と非製造業の双方でみられるが、特に製造業では、過剰超となった地域が、全国10地域のうち、9月調査では7地域であったのが、12月調査では全地域となり、悪化の方向への変化幅が全地域で拡大した。特に北関東、東海では6月調査時には雇用不足感のある地域であったが、わずか半年で雇用過剰感の高い地域となった。秋から年末に向けて、製造業を中心に、全地域で雇用過剰感が急速に高まったと言える。

第1-2-12図 日銀短観における雇用判断DIの推移(08年6月→9月→12月)
-全ての地域で製造業を中心に雇用過剰感が高まる-

第1-2-12図

(備考) 1. 日本銀行各支店「企業短期経済観測調査」により作成。
2. 東北は6県(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県)であり、新潟県を含まない。
  静岡県を含まない。九州は沖縄を含む。

(派遣社員の削減)

「景気ウォッチャー調査」においても、2008年10月調査では、雇用関連の現状判断DIと先行き判断DIがともに大幅に低下した(付図1-12)。特に、先行き判断DIが前月差で11.5ポイント低下した。これは、現行調査方法となった2001年8月以来最大の低下幅であり、雇用情勢に対する先行きの見方が急激に悪化したことを示す。この背景には、世界的な金融危機の深刻化や景気後退、円高等によって、海外向けの受注が減少し、自動車産業を中心に派遣社員の削減が発表されたことがある。厚生労働省による調査「経済情勢の変動に伴う事業活動及び雇用面への影響について」でも、前回7月調査と比べ、10月調査においては、輸出型製造業の派遣社員を中心に雇用過剰感が高まっていることが示されている(第1-2-13図)。

さらに、「景気ウォッチャー調査」11月調査においても、雇用の現状判断DIは低下した。コメントをみると、派遣契約の途中解除・再契約停止に関するものが増加したのみならず、全国各地でみられるようになった20。企業の減産に伴い、派遣社員や期間従業員等の削減が拡大することにより、各地で雇用情勢がさらに悪化することが懸念される。

第1-2-13図 雇用形態別にみた雇用過不足感
-派遣社員で高まる雇用過剰感-

第1-2-13図

(備考) 厚生労働省「経済情勢の変動に伴う事業活動及び雇用面への影響について」により作成。

19. 北海道の有効求人倍率が2008年4月に大幅に低下しているのは、求人数の集計方法の影響もあるとみられる。
20. 厚生労働省によれば、派遣又は請負契約の期間満了、中途解約による雇用調整及び有期契約の非正規労働者の期間満了、解雇による雇用調整について、2008年10月から2009年3月までに実施済み又は実施予定として、全国で47都道府県、477件、約3万人となっている。また、新規学校卒業者の採用内定取消し(ハローワークが指導中のものを含む)が、全国で331人となっている(2008年11月25日現在)。

[目次]  [戻る]  [次へ]