第1章 第2節 4.ガソリン高騰の生活インフラへの影響

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(相次いだフェリーや高速艇の運賃値上げ)

人口減少が進む中、乗客の減少による採算悪化を原因として、地方圏を中心に、バス路線や島嶼・半島とを結ぶ航路が、大幅な減便や休止に追い込まれるケースが増加している。島嶼や半島の住民にとっては、フェリーや高速艇の航路は、通勤・通学、買物、通院等の日常生活において不可欠な生活航路である。これまでも、地方での公共交通サービスの維持は厳しい状況にあったが、2007年以降のガソリン高騰により、島嶼部の生活インフラであるフェリーや高速艇の運賃が大幅に引き上げられる事例が数多くみられた。さらに、ガソリン高騰による採算悪化により、減便や休止となるフェリーや高速艇の航路も各地で見られ、住民にとっては利便性の低下を余儀なくされたケースも多い。

瀬戸内海には数多くの島が点在するが、2008年に入り、島嶼の住民が日常利用するフェリーや高速艇の運賃値上げの件数が増加し、値上げ幅も1~2割強の大幅な値上げであった14。また、減便や休止となった航路も多い。

小豆島を例にとると、岡山港とを結ぶ高速艇航路については、2008年7月から平日運行が廃止され、9月以降は休日も含めた全面休止となった15。さらに、小豆島と高松港を結ぶ高速艇航路についても、9月以降、半分程度に減便されるとともに、11月に約2割の運賃値上げが実施された。こうした動きは、小豆島の住民の日常生活のみならず、観光を中心に地元産業に及ぼす影響も大きいとみられている。

航路廃止問題は、青森と北海道を結ぶフェリー航路等でも見られた。2008年9月、フェリーの運航事業者が、原油高騰のため、大間・函館間を含む、青森県と北海道間の3航路16を11月末で休止する方針を表明した。青森県大間町は、津軽海峡に面した本州最北端の町であり、北海道とは最短で17.5kmの距離に位置する。大間町周辺に高度な医療設備を持つ大きな総合病院がないことから、高度な専門的医療を受ける必要がある場合には、函館市の病院に通院・入院する住民も多い17。このため、大間町住民を中心に、航路の存続を求める声が強く、青森県と大間町が財政支援することで2009年末までの航路の暫定存続が決定した。しかし、原油価格は下落局面に入ったものの、2008年12月に6割強の運賃の引上げ18が実施された。


14.
四国運輸局管内では、旅客航路の運賃改定は、2007年4件、2008年1月~11月で14件。
15.
航路の廃止や減便、運賃の大幅な値上げが地域の経済社会に及ぼす影響が大きいことから、小豆島の住民を中心に船舶会社を新たに設立する動きがある(2008年11月末現在)。また、便数の回復を住民が強く求めたこともあり、2008年12月中旬以降、使用船舶の小型化等による燃費節約で便数はおおむね回復した。
16.
他2航路は、青森・函館間と青森・室蘭間。なお、青森・函館間は他社が継続運行。青森・室蘭間は予定どおり11月末に休止。
17.
大間町によれば、2007年度に北海道の医療機関を受診した町民は、国民健康保険加入者が約2,900人、その他の健康保険(健康保健、共済組合等)の加入者を加えると約4,900人に上る(2008年9月末人口約6,300人)。
18.
旅客運賃(大人2等)が片道1,370円から2,200円に値上げ。

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