第1章 第2節 3.ガソリン高の旅行動向への影響

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(好調な沖縄観光)

旅行動向を国内旅行取扱額と海外旅行取扱額とに分けてみると、いずれも、2008年第1期、第2期、第3期と減少幅を拡大しているが、特に海外旅行取扱額の減少幅が大きい(第1-2-5図)。こうした背景としては、物価の上昇等により消費者の節約志向が強まり、旅行が「安近短」の傾向になったためとみられる。

そこで、国内航空会社の利用者数のデータを用いて、2008年夏のお盆期間における国内線利用者と国際線利用者の変化率を比較すると、国内線利用者が前年を上回った一方、国際線利用者は下回った(第1-2-6図)。また、リゾートとして人気のあるハワイ・グアム方面と沖縄方面への旅行者数を比較すると、ハワイ・グアム方面の利用者数が大幅に減少した一方、沖縄方面は高い伸びとなった。「安近短」の傾向が、顕著に現れている。この背景としては、航空運賃(含む燃油サーチャージ(燃油特別付加運賃))が、グアム方面は前年同期比21%増、ハワイ方面は同20%増であるのに対し、沖縄方面は、原油高により運賃が値上げされたものの、燃油サーチャージが加算されないこともあり、同9%増にとどまり、国内線の運賃上昇幅が国際線に比べ小さかったことがあると思われる(付図1-10)。

第1-2-5図 国内及び海外旅行取扱金額の推移
-国内旅行を上回る不振のみられた海外旅行-

第1-2-5図

(備考) 1. 鉄道旅客協会資料により作成。
2. 大手旅行業者12社取扱金額は08年3月までは13社が調査対象。

第1-2-6図 08年お盆期間の航空機利用者
-海外旅行から国内旅行へのシフト-

第1-2-6図

(備考) 1. JALグループ、ANA各社プレスリリース資料により作成。
2. お盆期間とは、07年は8月10日~8月19日、08年は8月8日~8月17日。

沖縄県においては、観光が主要産業であるが、沖縄県への入域観光客数の推移をみると、2007年以降、堅調に増加し、2008年2月以降の各月において、過去最高の入域観光客数を記録している(第1-2-7図)。こうした堅調な増加の背景としては、国内客の増加のみならず、台湾、香港、韓国といった近隣諸国・地域からの入国者が大幅に増加していたことが大きい。台湾・香港等からの大型クルーズ船の寄港回数の増加や、本年4月の那覇・香港間の航空路線の新規開設など、外国人観光客の誘致が奏効した結果となっていた。しかしながら、アメリカに端を発した金融危機による世界的な景気減速と、金融危機に伴う株式・為替市場の大幅な変動により、9月以降、円高・ウォン安が急速に進み、韓国人客を中心に外国人客が減少している。

第1-2-7図 沖縄県入域観光客数の動向
-堅調に増加する沖縄への観光客数-

第1-2-7図

(備考) 沖縄県「入域観光客統計」により作成。

(円高・ウォン安による韓国人旅行客の減少)

2007年の日本への入国外国人を国籍別にみると、韓国人が3割強と最も多い。韓国からの観光客が増加した要因としては、査証免除のほか、韓国と日本各地を結ぶ航空航路の新規開設・増便が挙げられる。さらに、為替レートが、2006年、2007年と、円安・ウォン高基調であったことで、韓国人からみると、日本への海外旅行に値頃感が出ていたこともあったと考えられる。しかし、2008年に入り、円高・ウォン安基調へと変化する中で、韓国からの入国者数が7月以降、減少している(第1-2-8図)。9月には、円高・ウォン安が前月に比べ10%超で進む中、韓国からの入国者数は前年同月比で約23%の大幅な落ち込みを記録した。円高・ウォン安は10月前月比約25%、11月同約8%とさらに進んだ。

韓国からの観光客が、沖縄のみならず国内各地の観光・レジャー分野で主要な客層となっていることも少なくない。今後、韓国人観光客の減少が、観光・レジャー分野を中心として地域経済にマイナスの影響を及ぼすことが懸念される。

第1-2-8図 韓国からの観光客数と韓国ウォンの動向
-円高・ウォン安の影響もあり、韓国人客が減少-

第1-2-8図

(備考) 1. 法務省「出入国管理統計」、IMF"International Financial Statistics"、 日本政府観光局「訪日外客数・出国日本人数」により作成。
2. 韓国ウォンは月中平均値。2005年1月=100とした指数。
3. 入国者数は、法務省「出入国管理統計」の値。在留資格別内訳のうち、「短期滞在」の値を用いた。
4. 08年10月の入国者数に限り、日本政府観光局「訪日外客数・出国日本人数」の訪日外客数のうち、韓国の観光客の前年比増減率を用いた(同局推計値)。

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