第1章 第2節 2.物価上昇や株安等が個人消費に及ぼした影響

[目次]  [戻る]  [次へ]

(百貨店販売や乗用車販売の不振)

消費者物価の上昇は、消費者の購買力を低下させ、消費者の節約志向を促す。大型小売店販売額を地域別にみると、2008年第1期には、南関東や近畿で僅かながらではあるが増加がみられたが、2008年第2期以降になると、百貨店販売が不振であること等から、全ての地域において販売額が減少している。

乗用車新規登録・届出台数をみると、2008年第2期においては、人気車種のモデルチェンジがあったことや、自動車取得税の税率が暫定税率の失効に伴い一時的に引き下げられたこともあり、全地域で普通車の新規登録・届出台数が増加した。ガソリン価格の上昇によってハイブリッド車への乗換えが進んだことも普通車の増加に寄与した。しかし、小型や軽乗用車を含めた全体でみると、消費者物価上昇率の高い北海道や東北において、減少幅が大きかった。沖縄では引き続き増加がみられたものの、2008年第1期と比較すると、増加に鈍化がみられた(第1-2-3図)。

第1-2-3図 乗用車新規登録・届出台数 車種別寄与度
-普通車を中心に各地で乗用車販売が不振に-

第1-2-3図

(備考) 1. (社)日本自動車販売協会連合会「自動車登録統計情報」の登録ナンバーベース及び(社)全国軽自動車協会連合会「軽自動車新車日報累計表」により作成。
2. 地域区分はA。

2008年第3期に入ると、8月上旬まで急騰したガソリン価格がその後下落傾向に転じたものの、9月中旬の米大手証券会社の破綻や株価の下落等の影響で、消費マインドが急速に冷え込んだ。このため、2008年第3期の乗用車新規登録・届出台数は、東海では前年並みであったものの、それ以外の全ての地域で前年割れとなった。2008年第2期には増加していた普通車も、2008年第3期には、ほぼ全ての地域で減少した。

乗用車保有台数を最近数年でみると、2005年度末以降、全地域で保有台数の伸びが低下傾向にある。2007年度末には、乗用車保有台数が北海道と近畿で減少に転じたが、減少する地域がみられたのは戦後1951年以降初めてである。2008年9月末には、東北、南関東、中国、四国、沖縄でも減少が始まった(付図1-9)。

(消費マインドの急速な冷え込み)

景気ウォッチャー調査においても、9月以降の株価の下落等を受け、2008年10月調査では、家計動向の現状判断DI、先行き判断DIともに、現行調査方法となった2001年8月以来、最大の低下幅を記録し、最低の水準となる等、消費マインドが急速に冷え込んだ。地域別にみると、現状判断DIでは、東海、中国、九州の3地域で、最大の低下幅かつ最低水準となり、先行き判断DIでも、北関東、南関東、東海、中国、四国、九州の6地域で、最大の低下幅かつ最低水準となった(第1-2-4図)。景気ウォッチャーのコメントをみても、「金融不安、株価低下など良い話題がなく、高額品である家電の購買にブレーキが掛かっている(北関東=家電量販店)」、「米大手証券会社の倒産以来、高級ブランドを中心に急激に売上が落ち込んでいる。比較的好調なのは食品のみである(南関東=百貨店)」というように、消費マインドが急速に悪化し、高額商品の販売が不調となっていることに言及するコメントが多くみられた。

第1-2-4図 景気ウォッチャー調査 家計動向関連DIの推移(現状判断)
-2008年秋に急速に冷え込んだ消費者マインド-

第1-2-4図

(備考) 1. 内閣府「景気ウォッチャー調査」により作成。
2. 地域区分はA。

11月調査では、株安のほか、企業の減産に伴う雇用情勢の悪化等もあり、消費者の購買態度がより慎重になったこと等から、ほぼ全ての地域で、家計動向の現状判断DIは低下した。先行き判断DIは、5地域では上昇したが、6地域では低下した。地域別でみると、現状判断DI、先行き判断DIともに、東海の低下幅が最も大きい。今後2~3か月先についての景気ウォッチャーのコメントでも、東海では、「自動車産業の落ち込み等により客の購買意欲が萎縮している。不安を抱える客が多く、厳しい状況が続く(東海=スーパー)」というように、自動車メーカーから相次いで発表される減産や人員削減計画の影響から、景気の先行きに対する不安感が他地域に比べ高まりをみせた。

[目次]  [戻る]  [次へ]