平成4年
年次経済報告
調整をこえて新たな展開をめざす日本経済
平成4年7月28日
経済企画庁
第2章 日本の景気循環の要因と今次循環の特徴
第6節では今回の景気調整局面の特徴につき過去の局面との対比でみてきたが,続いて,これがどのような形で次の回復過程に入っていくと考えられるか,やはり過去の経験が教えるところをみてみよう。以下,①在庫調整完了を起点とした経済の自律回復力,②後退期における企業の体質改善努力,の2点について検討する。
これまでの経験では,景気の循環はおおむね在庫循環と一致しており,在庫調整の進展が景気回復の出発点となっている。そこでまず,在庫調整の進展がどのような形で経済全般に波及してゆくのか,最も典型的な例として岩戸景気後の在庫調整完了局面を参考にしながらみた後,在庫調整の期間はどういった要因によって左右されるか,生産の立ち上がりから最終需要の回復までのプロセスを規定するものは何か,といった点につきそれぞれ典型的な局面を取り上げて検討し,今後の経済の自律回復力の強さを占う材料としよう。
(在庫調整の進展と経済全般への波及)
在庫調整の進展がどのような形で経済全般に波及してゆくのか,外的ショックがなく自律的循環が最も典型的にみられた例として,岩戸景気後の在庫調整完了局面を参考にしながらみてみよう( 第2-7-1図 )。
はじめに通産統計により生産と在庫の関係をみると,在庫の増加テンポは,生産の大幅な抑制に伴い62年第1四半期をピークに急激に鈍化し,3四半期後の62年第4四半期には前期比横ばいとなって生産が増加基調に転じている。
次に,生産の増加が最終需要の回復につながる過程をみると,生産の増加後間もなく製造業の売上高利益率は上昇に転じる。この間,非製造業についても動きは緩やかながら同様の傾向を辿るため,全産業ベースでも企業の収益は改善に向かう。また,生産の増加は設備稼働率の上昇をもたらし,企業の設備過剰感も後退し始める。このようにして,収益や設備水準判断等の条件に改善がみられ始めると,やがて設備投資も増加に転じることとなる。先の例では,製造業の売上高利益率は生産が増加に転じた2四半期後の63年第2四半期から,また全産業ベースでは,消費や公共投資の堅調を背景に非製造業が一足先に好転していたためこれより早く62年第4四半期から売上高利益率は上昇に転じており,設備投資も,生産の増加後1四半期で,製造業,全産業とも増加に転じている。
一方,生産の増加は同時に労働投入量の増加をもたらすことから,やがて雇用の増加につながり,収益改善や労働力需要増加等を反映した賃金の上昇とあいまって家計の所得増加をもたらし,個人消費の増加につながってゆく。先の例では,生産が上昇に転じると同時に名目賃金上昇率は増勢に向かい,翌期には雇用者数も伸びを高めており,これらを背景に実質個人消費も増加テンポを高めている。
以上が在庫調整の進展を起点とした景気の自律的回復の波及経路であるが,過去の状況をみると,その時々の諸条件の違いを反映して,①在庫調整入り後生産が増加するまでの期間,②生産増加から設備投資への波及,③生産増加から雇用・賃金・消費への波及,といった点を中心に回復のパターンは様々である。そこで,以下これらの違いがどのような要因によって影響されるのか,それぞれ典型的な局面を取り上げて検討し,今後の経済の自律回復力の強さを占うこととしよう。
(在庫調整入りから生産増加までの期間)
在庫の増加テンポがピークアウトしてから生産が増加基調に転じるまでの期間を過去の各局面についてみると, 第2-7-2表 のとおり3~4四半期を中心としてばらつきがあるが,この期間の長さには,輸出,政府支出といった外生需要の動きが大きく影響しているようにみられる。すなわち,在庫調整スタンスが本格化してから実際にどの程度のテンポで在庫調整が進展するかは,出荷が見通しを上回るか下回るかによって規定される。出荷の動きはマクロ的にはGNPベースの総需要(国内需要+輸出)とパラレルであるが,このうち消費,住宅,設備といった需要項目は,過去の例をみてもわかるとおりおおむね自律的な動きを示しているのに対し,輸出や政府支出は予測困難な外生的要因に大きく左右されるため,この動きによって在庫調整スピードは影響されると考えられる。
過去の例をみると,オリンピック景気の立ち上がり局面である62~63年には生産の回復が早かったが,これには財政支出の高水準持続が大きく影響しているのがみてとれる。一方,いざなぎ景気後は71年第2四半期に内生需要が回復過程に向かうと同時に生産もいったん増加を示しているが,8月のニクソンショックを契機に生産は再び足踏み状態となり,結局在庫増加のピークから生産の基調的回復までには5四半期を要している。また,第二次石油危機後の80~81年には,物価安定化に伴う実質財政支出増や輸出の好調から生産は早期に立ち上がったものの,その後の海外景気後退に伴い輸出が急激に落ち込んだことから,内生需要が自律的に回復軌道に乗っていたにもかかわらず総需要は停滞を続け,結果的に景気回復につながらなかったという例もみられる( 第2-7-3図 )。
このように,生産が回復に向かう時期については,外生需要の動向が一つのポイントになるとみられるが,今回については,財政支出面では総額430兆円の公共投資基本計画,景気に配慮した92年度予算編成,更にはデフレータ上昇による実質目減りの懸念が小さいこと,輸出面でも基本的には今後世界経済は回復傾向を示すとみられることから,これらはプラス要因として作用するとみられる。
(生産増加から設備投資への波及)
次に,生産が増加基調に転じてから設備投資が増加に向かうまでの期間をみてみよう。 第2-7-2表 で過去の状況をみると,ほとんどの局面で生産が増加基調に転じた1~2四半期後に,製造業,全産業とも設備投資が増加に向かい始めているが,第一次石油危機後の75~76年には,拡大期間中を通じて設備投資は停滞を続けたほか,77~78年の生産回復局面でも,製造業については設備投資の回復にかなりの遅れがみられる。これらの局面について設備投資を巡る諸環境をみると,75~76年については,前にみたとおり金利高止まりのもと投資採算が低調に推移したこともさることながら,石油危機後の期待成長率の下方屈折から,企業が適正とみる資本ストックの水準が大幅に低下したこと,減量経営下の雇用調整圧力から省力化投資のメリットも小さかったことが設備投資の回復につながらなかった最大の要因であり,この影響は77~78年の生産回復期においてもかなり作用しているものとみられる。ちなみに,日本銀行企業短期経済観測の生産設備判断DIをみても,75~78年は設備過剰感が歴史的に最も高い時期であり,生産増加が設備過剰感後退につながるまでのラグも長くなっている( 第2-7-4図 )。
今回については,先にみたとおり現状資本ストックの伸びが極めて高い水準に達しているだけに,製造業については急速な回復は期待し難いが,期待成長率,労働力需給,投資採算等の条件の違いを勘案すると,70年代後半のような状況が起こるとも考えにくく,生産が増加基調に転じればやがて設備投資も増加に向かうとみてよいと考えられる。
なお,生産が増加基調に転じてから企業の業況判断DIが好転するまでの期間は,おおむね1~2四半期程度である。このようにみると,生産が回復に向かっても,企業マインドに明るさがみられるまでには暫く時間を要するものと考えられる。
(生産増加から雇用・賃金・消費への波及)
生産が増加基調に転じてから雇用・賃金・消費が改善に向かうまでの期間については,過去かなり区々であり,標準的なパターンを見出すことは困難であるが,極めて改善のテンポが鈍かった83~84年の例と,順調な改善をみた71~72年の例を対照させることは参考となろう( 第2-7-5図 )。
83~84年の景気拡大は輸出主導型であり,これに誘発されて電気機械,輸送機械等一部業種の設備投資には盛り上がりがみられたものの,個人消費については回復テンポは極めて緩慢であった。 第2-7-5図 でみられるとおり,雇用者数,賃金は83年にはむしろ伸びを低め,その後の動きも芳しくなく,実質個人消費が本格的に回復するのは85年に入ってからのことである。こうした背景には,生産の立ち上がり後も,製造業・非製造業とも収益の改善テンポが鈍く,春季賃上げ率が低調となったこと(82年度7.01%→83年度4.40%→84年度4.46%,労働省調べ・主要企業ベース),完全失業率は引き続き上昇基調をたどり,有効求人倍率もおおむね0.6~0.7倍程度で推移する等厳しい雇用情勢下にあったこと等が強く影響しているとみられる。
これに対し71~72年は,公共・住宅投資,個人消費といった政府・家計部門主導型の景気回復であった。当時は生産が増加基調に転じると同時に名目賃金は上昇率を高め(実質ベースでは物価の沈静化が寄与してその2四半期前から上昇加速),雇用者数もその2四半期後から増勢を強めている。その背景としては,景気の急速な立ち上がりに伴い企業収益の回復も急テンポであったこと,有効求人倍率はそのボトムにおいてもおおむね1.0倍と労働力需給が基本的にタイトであったこと等を指摘することができ,こうした条件は83~84年当時とは全く対照的である。
翻って今後の消費を巡る諸環境についてみると,企業収益については不透明であるものの,雇用情勢については先行きの労働力人口の伸びの鈍化・減少ということも展望すれば,生産の回復とともに企業の雇用意欲は高まるものと考えられる。また,乗用車等一部耐久消費財についてはストック調整圧力から急速な回復は期待し難いものの,一方で,長期に及ぶディスインフレ体質定着の効果から景気回復とともに期待インフレ率が急上昇するような事態は想定しにくいこと,労働時間短縮の影響がレジャー等サービス支出にプラスに作用するとみられること等の好材料もみられる。
これまでの後退期において,企業は単に需要の回復を待つのみならず,積極的に体質改善努力を行ってきた。経営合理化(スリム化)は,当初マクロ的には需要の減少をもたらすが,やがて生産性の向上や収益の改善が,雇用拡大や投資の積極化を通じて最終需要の増加につながっていく。ここでは,①65年不況期,②第一次石油危機後の不況期,③前回の「円高不況」期,における企業の体質改善の動きを参考に,今後の景気回復に向けての企業行動の可能性を探ってみよう。
(65年不況―財務体質の改善と輸出開拓)
我が国企業は65年不況において戦後最大の収益悪化に見舞われたが,66年度以降企業収益はめざましく回復し,早くも67年度には60年代前半の低調な状態からほぼ完全に脱出した。総資本経常利益率,売上高経常利益率等各種の収益指標をみると,67年度下期には金融引締め下にもかかわらず大幅な増益基調を持続し,岩戸景気時の水準に近づきつつあった。こうした背景には,財務体質の強化と輸出開拓という企業努力が寄与していたと考えられるが,以下この2点につき,製造業を中心にみてゆくこととしたい。
前にみたとおり,1950年代後半から60年代前半にかけての急速な経済成長は,企業の体質改善には結びつかず,むしろ企業の財務構成の悪化を招くという傾向がみられた。これが大きな原因となって,65年不況時には企業倒産があいついだが,こうした教訓にかんがみ,その後企業では株主に対する配当の抑制によって内部留保の蓄積を重視する動きが一般化した。東証一部上場企業における配当性向の動きをみると,66年度以降大幅な低下をみており,60年代前半に比べ明らかに水準を切り下げているのがみてとれる。これに加え,66年を中心として各種の企業減税措置(法人税率の引き下げ,特別償却制度の拡充)が実施され,法人税による社外流出が低水準で推移したこともこの時期の内部留保蓄積に少なからず寄与したとみられる( 第2-7-6図 )。
次に,輸出の増大といった点についてみてみよう。60年代前半まで,我が国の景気拡大はやがて輸入の増加による国際収支の悪化から外貨準備の減少をもたらし,これに対していわば強制的に金融が引き締められたことが景気後退の引き金になる(いわゆる「国際収支の天井」)というパターンを繰り返しており,当時輸出の増大は景気拡大持続のために必須のいわば国家的課題であった。我が国の輸出は60年代半ばから増加テンポを加速し,世界貿易の伸びをはるかに上回る伸びを示したが,こうした背景にはそれまでの様々な企業行動の成果が反映していると考えられる。すなわち,それまでの設備投資の大幅な増加は,一面で企業の財務体質悪化をもたらした点は否めないが,国際競争力の改善には大きく寄与する結果となった。我が国の賃金上昇率が諸外国を上回るなかで輸出価格の相対的低下を可能としたのは,こうした資本装備率の上昇を反映した労働生産性の上昇による面が大きい。更に,60年代入り後の急速な労働コストの上昇のなかで,輸出産業の構造が大きく変化しつつあった点も見逃せない。60年頃の我が国の輸出は,労働集約的商品が引き続き過半を占めていたが,その後の輸出拡大に寄与したのはこれらのいわば伝統的な輸出商品ではなく,鋼材,テレビ,自動車といった新たな商品群であり,こうした産業の輸出開拓努力が,世界的な需要動向にも適合して我が国国際収支の黒字化に大きく寄与し,これがその後のいざなぎ景気の長期拡大を可能とする一因になったと考えられる。
(第一次石油危機後―成長鈍化に見合った合理化,人減らし)
次に,第一次石油危機後の企業の経営合理化の動きをみてみよう。当時の経営合理化努力は各方面にわたってかなり急ピッチで進められたが,以下①中期的な雇用の減少を通じての人件費削減(労働面でのコスト削減),②借入金圧縮による金融費用の削減(資本面でのコスト削減),③投入原材料の原単位向上(資本と労働を所与とした場合の生産の一層の効率化)の3点につき順にみていくこととしよう。
まず,企業の雇用スタンスをみると,74年度から76年度にかけ,製造業を中心に雇用削減の動きが活発化した。製造業では,生産の大幅な落ち込みを反映して,特に直接生産部門で退職,転職等の勧奨といった厳しい人員削減措置がとられたほか,間接部門についても抑制スタンスに転じる動きがみられた。また,子会社等関連企業への出向も急激に増加した。出向者の増加傾向は73年度以前にもみられたが,従来は業務拡大に伴う新会社設立とそこへの従業員派遣という動きを反映したものが主体であったのに対し,74年以降の出向の増加は,親会社の人員整理,不採算部門の分離,子会社を通じる販売促進等に関連したものが多かったという点で,それまでとは大きく性格の異なるものであった。
また,金融費用の削減も減量経営の一環として行われた。こうした動きは,企業設備や在庫等の実物投資の慎重化のほか,資金繰り効率化等の努力による手元流動性残高の圧縮も加わって,外部資金の取入れを極力抑制するというかたちで明確に現れた。この結果,高度成長期にみられた自己資本比率の趨勢的低下傾向はこの時期に歯止めがかかり,77年以降上昇基調に転じることとなった( 第2-7-7図 )。
更に,投入原材料の原単位向上についても精力的な進展努力が認められた。こうした努力は従来よりみられたことではあるが,原油価格の上昇による相対価格の変化から,より一層の創意工夫が促されることとなったわけである。こうした動きはとりわけエネルギー消費量の大きい鉄鋼(銑鉄),セメント等の産業で顕著であり,これら業種では,操業技術の向上等により,74年度以降製品一単位当たりの重油消費量の大幅な減少がみられた。
以上のような合理化努力が強力に推進されたのは,期待成長率の大幅低下のもと,数量効果に依存した高度成長期における収益構造はもはや通用しないとの危機意識が企業に広く浸透したためであり,このような合理化努力こそがその後の低成長経済のもとでも景気回復を可能にする最大の要因となったと考えられる。
(「円高不況」―内需転換とリストラクチャリング)
85年9月のプラザ合意を契機とした大幅な円高の進展のもとでは,企業は積極的な内需転換努力や既存分野の縮小撤退と新規事業分野への進出(いわゆるリストラクチャリング)を行ったが,こうした積極的な対応は,設備投資の盛り上がりや収益体質の強化を通じその後の大型景気実現に大きく寄与することとなった。
円高による価格体系の変化は,交易条件の改善を通じて内需採算を好転させる一方,円建て輸出価格の低下をもたらすことにより輸出採算を大幅に悪化させた。こうしたなかで従来輸出比率の高かった自動車,電気機械といった業種では,国内販売拠点強化のための設備投資や人員投入等生産要素の内需シフトの動きが顕著にみられた。また,鉄鋼,造船,繊維等安定成長期入り後国内需要の伸び悩みと対外競争力の趨勢的低下に直面していた業種では,大規模な人員削減と設備休止を伴う新たな減量経営により,既存分野からの縮小・撤退を実行する一方,本業以外のマーケットへの進出により経営の安定と新たな成長を図ろうとする動きがみられた。更に,こうした余剰人員は,円高メリットを享受した非製造業の雇用拡大の動きによって吸収され,また設備投資面でも製造業の落ち込みを非製造業がカバーするといった意味でも,マクロ的にみた内需転換が進展した。
新規事業分野への進出の動きは,上記のようないわゆる成熟型産業に限らず,幅広い分野において活発化したが,日本銀行の「事業分野の多角化状況調査」(91年8月実施)によっても,経済のソフト化・サービス化が進展するなかで企業が子会社を通じて保険・不動産関連を筆頭に非製造業部門への進出を積極化させたこと,本業以外の分野への設備投資のウエイトが徐々に高まったこと等をみてとることができる。また,将来の成長分野への進出に当たっては地道な研究開発が必要となることから,研究開発投資が多くの業種において活発化したほか,新たな事業展開に向けての外部資源活用策としてM&Aが増加する等の動きもみられた。
当時のこうした動きは,非製造業を含め広い業種にわたっての産業構造の変化につながったうえ,海外直接投資の増加や国際分業の展開等構造変化が国際的な広がりを伴って進められる等,かなり大規模かつ広汎なものであった。その背景としては,①大幅な円高に加え,アジアNIEs等の技術力向上,対外経済摩擦の高まりといった国際環境の変化,②エレクトロニクス技術の発達と情報化の進展に伴う新たな需要分野の出現,③規制緩和や三公社・特殊法人の民営化等政府による競争促進的な政策の実施,といった大きな環境の変化が生じていたことが指摘できるが,何よりもこうした状況を企業が真剣に受け止め,これに前向きに対処したことが内需転換の実現につながったとみるべきであろう。また,このような企業行動の背景には,当時進みつつあった株価・地価の急騰が,資産売却益の発生,不良債権の回収進展,担保価値上昇による資金アヴェイラビリテイの向上等を通じて積極的な投資を可能にさせたという面も無視しえないものと考えられる。
(今後の景気回復に向けての企業行動の方向)
以上みてきたとおり,わが国企業は,65年不況,第一次石油危機,「円高不況」といった過去の経営環境の悪化に対し,その時々の課題に答えることでこれを克服してきた。それではいま企業が求められている課題は何であろうか。基本的には,これまでの長期に及ぶ景気拡大の下で肥大化したコスト体質を改善することにあると考えられる。具体的には,①事業規模の見直し(リサイジング),②販売管理費等の経費節減,③開発コストの削減,の3つに集約されよう。これまで既に,過剰な設備の見直し,工場・店舗等の統廃合,人員再配置,広告費・交際費の切り詰め,非効率的なジャストインタイム方式の見直し等による物流コストの削減,自動車・電機等にみられる製品のライフサイクルの長期化,多品種少量生産の見直し等の動きが活発化している。これらの努力が所期の効果をもたらし,企業の収益体質の改善が進展すれば,やがてこれが様々な経路を通じて今後の景気回復に寄与することとなろう。