平成2年

年次経済報告

持続的拡大への道

平成2年8月7日

経済企画庁


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第3章 経済力の活用と成果配分

第2節 企業から個人への分配

ここでは,第1節でみた世帯や個人単位の人的分配の背後にある要因を摘出するため,資本,労働,土地など各生産要素への成果配分(機能的分配)の動向とその変動要因を分析する。勤労者への成果配分は,賃金という直接的な形で分配されるほか,社宅,福利厚生費等フリンジ・ベネフィットの形でも分配されるが,その動向もあわせてみる。

1. マクロ分配率とその変動

(マクロ分配率の推移と国際比較)

毎年の経済活動の成果は,マクロ的にみて各生産要素へどれだけ分配されているだろうか。具体的には,国民所得が雇用者所得(賃金,俸給など),財産所得(利子,配当など),企業所得(個人企業を含む)にどのように分配されたかをみよう。まず,国民所得に占める雇用者所得のシェアは,トレンド的な上昇がみられ,88年では69.9%になっている。逆に,企業所得(配当受払後)のシェアは次第に低下し,88年では20.6%となった。また,財産所得のシェアは比較的安定しており,88年は9.5%であった(第3-2-1図①)。

マクロ労働分配率は国による違いも大きい。国際比較を行う場合,各国の就業構造,制度等の違いもあり,厳密な比較は難しいが,雇用者所得構成比(雇用者所得/(国民所得-個人企業所得))でみると,イギリスが77.1%(87年),アメリカが79.7%(88年),フランスが84.8%(87年),西ドイツが88.2%(86年)となっており,日本の77.6%(88年)はこのなかでは低い部類に属するが,差は縮小してきている(第3-2-1図②)。

日本で雇用者所得のシェアが上昇しているのは,雇用者比率(就業者中の雇用者の割合)が傾向的に高まってきたことも反映している。そこで,こうした就業構造の変化の影響を調整した労働分配率として,①雇用者一人当たり雇用者所得の就業者数一人当たり国民所得に対する比率(雇用者以外の就業者の所得のうち労働による収入は,一人当たり雇用者所得と同じと仮定したもの),②雇用者所得と雇用者所得に民間法人企業所得を加えた額との比率,③雇用者所得と国民所得から個人企業所得を取り除いた額との比率,④雇用者一人当たり雇用者所得の就業者一人当たり名目GNPに対する比率(①と同趣旨)について,その推移をみると,いずれも,70年代前半には第一次石油危機等により上昇したが,70年代後半は逆に低下傾向を示した。80年代に入ってからは,やや上昇の動きもみられたが,85~86年頃まで低下した後,ほぼ横ばい気味で推移している。89年までのデータがとれる④の分配率についてみると,88年,89年はやや低下しているが,四半期毎の動きを詳しくみると,88年10~12月期以降やや下げ止まりの動きもみられる。

なお労働分配率の動きはGNPベースと国民所得ベースでやや異なっているが,これは固定資本減耗等の差を反映したものである。

(労働分配率の変動要因)

ここで,GNPベースの労働分配率(上の④)の変動を,1時間当たり労働生産性,実質賃金,相対価格変化率に分けてみると,88年,89年は,景気上昇を反映した労働生産性の高い伸びが実質賃金の伸びを上回り,結果として労働分配率が低下した。しかし,88年4~6月期以降,労働生産性の上昇テンポに実質賃金の伸びがほぼ追いついてきており,労働分配率の低下傾向鈍化の1要因になっていると考えられる(第3-2-2図)。

日本の労働分配率は,景気変動に敏感であるといわれてきた。これは,日本の雇用慣行や賃金決定方式を反映して,多くの企業が景気回復初期には新規雇用にも慎重であり,逆に不況期には解雇も簡単に行われないこと,春季労使交渉に代表されるように毎年1回春に賃金決定を行う企業が多いため,賃金の変動も企業収益の変動に比べて遅れる傾向があること等のため,結果として好況期には労働分配率が低下し,不況期には労働分配率は上昇するためである。今回の景気上昇局面でもこうしたメカニズムが働いていると考えられるものの,景気循環に起因する労働分配率の変動は,高度成長期と比べ,経済成長率の低下等から次第に小幅化してしているものと考えられる。

2. 企業収益と利潤分配

今回の経済拡大の過程で企業収益もほぼ全産業で大幅な増加をみたが,株主からみると,収益は,安定配当政策のもとで,配当よりも内部留保の増加を反映した株価上昇という形で還元されている。土地保有に関しては,地価上昇に伴い,個人から法人企業への売却が進んでいる。なお,企業収益の配分に関して,最近,非営利事業への自発的援助を活発化させようとする動きがあり,企業の社会的貢献の一例として注目される。

(株主への利潤分配)

法人企業は,税引後利益の一部を配当の形で株主に還元し,残りを内部留保し,設備投資資金などに充てている。日本の企業は,利益のうち株主に配当する割合(配当性向)がもともと低く,また,伝統的に,一定額の配当を行おうとする安定配当政策をとっているため,好況期に配当性向が低下する傾向がみられる。すなわち,平均配当性向(全上場企業の税引後当期利益に対する配当額の比率)は,86年度の34.8%から88年度の28.1%へと7%ポイント近く低下している。このため,株価の上昇とあいまって配当利回り (加重平均値)も85年の1.05%から89年の0.46%へと大きく低下した。また,配当と並んで,役員賞与等も大きな変動はなく,結局,企業収益の大幅な増加は,内部留保として企業内に蓄積されてきたことになる(第3-2-3図)。

しかし,このことは,株主に利益が十分還元されていないことを直ちに意味するわけではない。毎期のフローの内部留保,減価償却引当金などは設備投資資金や一部は「財テク」に充てられ,ストックとしては企業の実物・金融資産という形で蓄積されていく。形式的には,そうした企業資産の増大は,株価の上昇という形で株主の利益に反映されるはずである。そうしたキャピタルゲインを含めた株式の投資収益率をみると,たとえば79年がら88年までの10年間の年間平均収益率が20%を超えるなど,諸外国の株式市場と比較しても遜色ないものとなっている(日本証券経済研究所の計測による株式投資収益率。また,第2章の第2-2-18図も参照)。

このように,企業から株主への利益配分ルートとして配当とキャピタルゲインの2種類あることになり,配当性向が低い分は,ある程度キャピタルゲインで埋め合わされることになるが,両者は配当税制と譲渡所得税制の違いから税引き後収益率が異なる。日本では,キャピタルゲインよりも配当に対する税の方が実質的には重いため,株主への成果配分が,配当からキャピタルゲインヘとシフトするのは,それなりに合理的であるといえる。しかし,それではなぜ,それにもかかわらず企業が配当を行うのかが問われなければならない(これは「配当のパズル」と呼ばれる問題である)。これについては,さしあたり次のような説明が考えられる。第一に,経営者が配当の多寡をシグナルとして企業業績や企業の将来収益の見通しを投資家に知らせようとしていることが考えられる。配当利回りが低くても,ある程度の安定配当を実施することによって,投資家が当該企業の将来見通しが明るいと考えれば,株価が上昇し,結局企業にとっても資金調達面などでメリットがありうる。第二に,上場企業の場合には,上場廃止基準に抵触させないように配当を継続する必要がある。第三は,有利な投資機会がなく,金融資産運用も増加できない経済環境のもとでは,配当に回さざるを得ないという消極的な説明である。これは,景気後退期には当てはまる可能性があるが,現在のような投資機会の豊富な景気上昇期には当てはまりにくいと考えられる。

(企業資産と株主の請求権)

株式は,ストックベースでみれば株式会社の資産に対する請求権であるといえる。そこで,株価総額(すなわち株主請求権の株式市場評価)と株主資本(実物資産から株式以外の純負債を差し引いたもの)の市場価値とを比較して,株価が企業の純資産をどの程度反映しているかという観点から,個人株主への成果配分を考察してみよう。

88年末において,法人企業部門(金融機関を含む)の株主資本の市場価値は686兆円であるが,これは,実物資産963兆円から株式以外の純金融負債277兆円を差し引いたものである。実物資産の中では土地が529兆円と大きく,株主資本の3/4以上を土地が占めることになる。一方,株価総額(ここでは純株価時価総額=株式時価総額から法人企業所有分を除いたもの)は,174兆円であり,これは,株主資本の市場価値の25%にとどまっている(第3-2-4図)。

こうした事実には形式的に二つの解釈が可能である。第一は,投資家にとって,一定の資金でそれ以上の企業資産額に対する請求権を得ることができる,すなわち投資効率がよいという解釈である。これに対し,第二は,法人企業部門に,株式会社が解散しない限り最終的な株主に帰属しない(すなわち株価には反映されない)ような企業の純資産が無視しえない大きさで存在するという解釈である。ゴーイング・コンサーン(永続的な活動体)として現代企業をとらえ,また一般に株主の発言力がかぎられたものであることを重視するなら,第二の解釈の方が当を得ているというべきである。

こうした株価総額と株主資本の差は,株価の上昇とともにやや縮小してきているが,それでも依然として大きな差が生じている。なお,株主資本の市場価値の評価は,多分に土地評価に依存する面があり,ある程度の幅をもってみる必要があるが,ここでの企業保有地の地価評価は,実勢より低い公示地価をベースにしているため,地価が多少低下しても,全体の結論には影響を与えないと思われる。

ところで上でみたように,株主資本のなかで土地の構成比はかなり高いが,法人の土地所有はますます活発化している。全国の宅地のうち,法人によって所有されているものの割合をみると,面積でも,所有者数でも,法人への集積が進んでいることが伺われる。東京都についてみると,85年から88年にかけて,法人所有地の比率が顕著に高まっており,この傾向は,都心三区だけについてみると一層顕著である(第3-2-5図①)。

一方,国民経済計算でも,法人企業部門の土地の純購入が85年以降急速に増加する一方,家計部門(個人企業を含む)の土地の売り越しが増加しており,やはり法人への土地の集中が裏付けられる。これは,地価高騰の過程で,法人企業が投機的なものを含め,土地取得を行ったこと,家計が相続税支払い等のために土地を切り売りしたこと,個人の購入可能な金額の物件が減少してきたことなどがその背景にあると考えられる(第3-2-5図②)。

(企業収益の社会的還元)

近年,教育,学術,芸術文化,福祉,発展途上国援助など様々な分野で,ある種の公共性(外部経済性)を持ちながら,政府が直接供給する公共財とは異なったサービス(いわゆる準公共財)に対する需要が増大している。こうした準公共財の供給は,外部経済性を持つが故に商業ベースに乗りにくく,また政府が直接供給するにも限界があるため,過小供給になりがちである。そもそも市場機構の基本的な利点は,私企業と家計が共に利己的に行動するにもかかわらず,社会的には望ましい成果を生み出すことができることにあり,実際,日本が経済大国たりえたのは市場経済の利点を最大限にひきだしたからにほかならない。しかし,日本が単なる経済大国であるに満足せず,世界の「文化大国」をめざすためには,市場原理とその背後にある利己主義には自ずから限界があり,個人や法人の自発的,利他的な公益活動に依存する面が大きくならざるをえない。こうした分野での公益活動はフィランソロピー(Philn-thropy)と呼ばれることがある。

特に大企業には,資金提供等の面から公益活動への積極的貢献が期待されている。それは,単に企業に資金力があるからというだけではなく,法人企業がすぐれで社会的な存在であり,企業活動は,地域社会をはじめとする企業外部のセクターと良好な関係を維持しない限り継続することが困難な性質を持っているからである。特に,企業活動のグローバル化に伴い,海外での日本企業のオーバー・プレゼンスがしばしば問題とされるようになっている折から,海外に工場,オフィス等を立地する企業は,地域社会の一員(企業市民,Corporate Citizenship)として,各種コミュニティ活動への積極的な貢献が期待されている。こうした地道な活動は,長い目で見れば企業本来の営利活動を行いやすくする面もあり,この意味で,「見識ある自己利益(Enlightenedself-interest)」ということばで表現されるように,フィランソロピー活動は必ずしも企業の利潤追求と矛盾するものではなく,むしろ利潤追求の前提となるものであると考えられる。

フィランソロピー活動で先進国の立場にあるアメリカと比較すると,日本のそれはかなり見劣りするといわざるをえない。アメリカでは,非営利部門の付加価値額がGDPに占める割合は3.7%となっている。また,個人と企業を合わせた公益寄付金の額は1,000億ドル強と,GNPの2%を超えている。これに対し,日本では,対家計民間非営利団休の付加価値額がGDPに占める割合は2%にとどまっている(国民経済計算ベース)。また,アメリカ企業のフィランソロピー活動の規模は,公益寄付額でみて税引き前利益の1.6%に相当するが,日本の場合は0.3%である。こうして相対的に多額の資金を背景として,企業財団の活動も活発で,全米の主要20財団の年間合計助成額は,88年1年間で13億ドルである。さらに,小口資金を広く集めて運営されるコミュニティ財団の活動も活発である。これに対し,日本の主要20財団の年間合計助成額は91億円と1億ドルにも満たない水準である。また,日本企業は,企業イメージの向上などフィランソロピー活動からの具体的な見返りを期待しがちであるともいわれる。一方,イギリス,フランス,西ドイツなど西欧諸国でも,80年代後半以降フィランソロピーの考え方は急速に普及しつつある。イギリスについてみると,企業の公益寄付金額は税引後利益の0.4%とまだそれほど大きなものではないが,伝統的に個人のチャリティー(寄付)活動が活発に行われている(第3-2-6表)。

しかし,日本企業の規模や国際競争力からして,フィランソロピー部門への貢献は,潜在的にもっと大きくできる余地があると考えられる。日本企業は,経営者の裁量が大きいといわれるが,そうであれば,企業経営者の意思決定でこうした活動を活発化させることが比較的容易であると考えられる。現に,フィランソロピーの重要性が認識されてくるにつれて,日本企業が直接または間接的に様々な非営利的社会活動に対して援助を行う機会も少しずつ増大している。最近,経済団体等により,所得などの一定割合を寄付しようという運動の提唱やコミュニティ財団設立構想の検討などが行われるようになり,今後企業のフィランソロピー活動を充実させる素地はできつつあるように思われる。

フィランソロピーは民間部門の自発的な活動であることに最大の意味があり,政府の役割は側面からの支援が中心となろう。例えば日本においても,税法上,企業が行う寄付に関しては,一般に一定限度額まで損金参入が認められているのに加え,教育,科学,文化,社会福祉など公益性の高い寄付金については,損金算入枠を拡大する措置(指定寄付金,特定公益増進法人への寄付金の特例)が設けられている。また,企業財団など公益法人の設立許可や監督の面でも政府が関与している。今後とも,フィランソロピーを活発化させるためのいわば「触媒」として,政府の役割は小さくないと考えられる。

3. 賃金とフリンジ・ベネフィット

(賃金構造と賃金格差)

第1節でみた所得分配のなかで,高額所得者は財産所得に依存する面が大きく,また低所得層は社会保障給付に依存する面が大きいと思われるが,それ以外の中間層の所得分配は,勤労者の賃金構造を大きく反映すると考えられる。

勤労者の賃金は,年齢,勤続年数,学歴,性別など様々の要因に依存する。

このうち,年齢や勤続年数は同一の個人でも変化していく要因であるが,そうした要因を調整しても,賃金の男女間,産業間,企業規模間等の格差は依然として存在している。ここでは,性,年齢,企業規模,産業等に関する格差を,主に70年代後半以降について,労働省「賃金構造基本統計調査」の所定内給与(パートタイム労働者を除く民営事業所の労働者)でみることとする。

最初に,全体の賃金の分散についてみると,拡大傾向が認められ,十分位分散係数(定義は,(第9分位数-第1分位数)/2×中位数。これが小さいほど分布のばらつきが小さいことを意味する)は,75年の0.58から89年の0.64へ上昇している。これを性別にみると,男子は0.50から0.56へ,女子は0.40から0.47へと共に上昇している。企業規模別では,従業員1,000人以上の企業では0.57から0.64へ,100~999人企業では0.56から0.63へ,10~99人企業では0.57から0.59へと拡大している。年齢別にみると,75年,89年とも,年齢が高くなるほど分散は大きいが,この間の年齢別分散の変化をみると,男子は多くの年齢階級で分散が縮小となっているが,女子は35歳未満では縮小,35歳以上では拡大となっている。学歴別には,男女とも大卒の分散が最も大きい。こうしてみると,全体としての賃金の分散が拡大しているめは,この間の高齢化の進展(すなわち分散の大きい中高層の増大)や年齢間格差の拡大等が背景にあると考えられる。

(産業別・企業規模別賃金格差)

産業別賃金格差を,労働省「賃金構造基本統計調査」の所定内賃金率についてみると,全般的に格差が拡大する方向にある。電気・ガス・熱供給・水道業については,87年まで格差が拡大した後,やや縮小している。金融・保険業の平均賃金は,70年代後半以降平均より高く,最近になるほど格差が拡大してきている。これに対して,製造業,卸売・小売業,飲食店及びサービス業は,70年代後半においても平均を下回っており,最近でもその傾向は変わらない(第3-2-7図①)。

このような賃金格差には,労働者の属性に起因する賃金格差(内部賃金格差)も反映していると考えられるので,こうした産業間の賃金プロファイルの違いを,性,学歴,企業規模,勤続年数について属性調整した賃金格差(外部賃金格差)を,同じく所定内賃金率について試算してみよう。これによると,属性調整をする前と比較して,金融・保険業の賃金はやや格差は縮小するものの,なお高いものとなっている。また,電気・ガス・熱供給・水道業は格差は大きく縮小するものの,平均を上回っている。なお,不動産業,サービス業では,属性調整後の所定内賃金率をみると,平均を上回って推移しており,卸売・小売業,飲食店は属性調整後は平均程度となっている(第3-2-7図②)。

このように,年齢構成を別として,属性調整をしてもなお賃金格差が残るのはなぜだろうか。第一に,ここでの形式的な属性に基づく調整では調整しきれない労働生産性の違いがあることが考えられる。たとえば,同じ勤続年数でも,仕事の性質によって労働生産性等は異なる。第二に,企業収益の違いがある。

高い企業収益が賃金にも反映されるという意味で,労働者も含めた利潤分配原理が作用していることが考えられる。本来競争原理が有効に機能しなければならない産業において,競争が活発でないような場合には,競争市場におけるよりも高い利潤が発生する傾向があり,それが労働者に分配されるというメカニズムがありうると考えられる。

次に,企業規模別の賃金格差をみると,格差はおおむね拡大傾向にあり,企業規模計の所定内給与を100とした場合,75年で1,000人以上規模113.7,100~999人規模98.6,10~99人規模89.6だったのが,89年には1,000人以上規模118.4,100~999人規模95.8,10~99人規模88.8となっている。各年の動きをみると,100~999人規模企業では,86~88年と横ばいの時期があり,10~99人規模企業では,88年にやや縮小の動きがあるが,89年にはいずれの規模においてもやや拡大している。

企業規模間の賃金格差についても労働者構成の違いが影響しているため,各規模について,性,年齢,学歴,勤続年数別の労働者構成を企業規模計と同一にした場合の賃金格差を75,80,85,89年について試算してみると,調整前と比較して格差はかなり小さいものとなる。またその動きをみると,特に10~99人規模では変化は小さいが,これはひとつには基準となる企業規模計の労働者構成の変化(高齢化,勤続年数の長期化等)が特に10~99人規模企業のそれより大きいことも考えられる(第3-2-8図)。

(男女間賃金格差)

男女間の賃金格差についてみると,近年,格差が縮小してきているものの,女子の所定内給与は男子の6割程度となっている。すなわち,75年以降83,84年頃まで賃金格差はほぼ横ばいないし緩やかな拡大傾向で推移し(男子の賃金を100とした場合,所定内給与は75年58.4から77~79年59.0となった後84年には58.6となった),85~87年にかけて格差が縮小したが(87年60.5),88年,89年とやや拡大している(89年60.2)。女子の賃金が男子と比べて低い要因としては,年齢・勤続年数の差が大きいこと,賃金水準の相対的に低い中小企業に多く就業していること,高学歴労働者の比率が小さかったこと等が考えられる。

そこで,学歴,企業規模,勤続年数について男子と同一にした場合の所定内給与を試算してみると,女子の賃金水準は男子の75%程度と,格差が縮小するが,これは主に勤続年数の効果が大きい。また,属性調整後の賃金格差は75年の71.4から89年の76.2へと格差の縮小傾向はよりはっきりする。なお,男女のそれぞれの年齢構成・産業構成の違い等も格差要因として重要と考えられるが,年齢は勤続年数,産業は企業規模とも関連が深いと考えられることもあり,ここでは調整を行わなかった(第3-2-9表)。

(年功賃金カーブ)

賃金の年齢に応じた上昇の程度についてみると,一般に,男子,大企業,大卒の方が賃金カーブが年功的となっており,年齢間格差が大きい。男子についてみると,50~54歳層ないし45~49歳層がピークとなっている。産業別では,金融・保険業で特に年功カーブが急になっている。ただし,金融・保険業では年功カーブのピーク・アウト後の低下も大きい。

男子(学歴計,企業規模計)の20~24歳の所定内賃金を基準として,年齢間賃金格差の推移をみると,高度成長期には格差は縮小したが,75年以降は拡大する傾向にあり,特に40~50歳台の賃金が相対的に上昇している。しかし,80年以降は40歳未満の格差は縮小しており,また,87年以降は40~45歳でも縮小している他,45歳以上でも拡大幅はわずかとなっている。

企業規模別に年齢間格差をみると,男子労働者(学歴計)では,75~85年の間に1,000人以上規模企業では年齢間格差が大きく拡大しているのに対して,100~999規模企業,10~99人規模企業では年齢間格差はあまり拡大していない。

また,産業間で年齢格差の推移をみると,20~24歳層の賃金はほぼ同じであるが,中高年層の産業間賃金格差は拡大している。

年齢間賃金格差の変動要因としては,労働市場の需給状況,企業の経営環境,賃金体系(賃金原資の配分方法),平均年齢(高齢化),勤続年数の変化等が考えられる。高度成長期は労働力需給が逼迫し,新規学卒者を中心に若年層の賃金が上昇したこと等から,賃金格差が縮小した。安定成長期は,成長率が低下し,労働力需給が緩む中で,労働者構成が高齢化し,中高年層を中心に勤続年数が長期化したこと等から,若年層の賃金上昇は中高年層と比べて低くなったため,賃金格差が拡大したものとみられる。また,中高年層の賃金の伸びが相対的に高かったのは,この層で住宅ローン返済や教育費等家計の生計費負担が大きいことへの企業の考慮もあるとみられる。88,89年には,人手不足感の高まりから,中途採用の増加,新規学卒者の求人倍率の上昇といった中で,新規学卒者等若年層の賃金が上昇している。一方,在籍労働者,特に中年層の賃金は新規学卒者程は上がっていない。実際,年齢間格差を男子(学歴計)40~49歳層の20~24歳層に対する比率で代表させて,有効求人倍率,40~49歳層の平均勤続年数,40~49歳層の家計消費に占める必需的支出の割合を説明変数とする回帰式を計算してみたところ,係数は,求人倍率は負,勤続年数は正,必需的支出割合は正で,共に有意となっており,上述の要因をある程度裏付ける結果となっている(第3-2-10図)。

(フリンジ・ベネフィット)

勤労者は,企業活動の成果の分配を,賃金の外にフリンジ・ベネフィット(現金給与以外の付加給付)という形でも受け取る。たとえば,88年において,傘業の総労働費用(常用労働者1人1カ月平均)は398,115円であるが,このうち,83.8%(333,638円)は賃金(現金給与),16.2%(64,476円)が現金給与以外の労働費用となっている。現金給与以外の労働費用のうち,7.9%(31,330円)が法定福利費(厚生年金保険料,健康保険料,労働保険料等),4.2%(16,534円)が退職金等の費用(退職一時金,中退金等への掛金,退職年金の費用),2.8%(11,048円)が法定外福利費(住居に関する費用,医療・保健に関する費用,食事に関する費用,文化・体育・娯楽に関する費用,私的保険制度への拠出金,労災付加給付の費用,慶弔見舞等の費用,財形奨励金等の費用等),0.5%(1,870円)が現物給与,0.4%(1,521円)が教育訓練費,0.3%(1,170円)が募集費となっている。なお,現金給与以外の労働費用の推移をみると,労働費用全体に占める割合は75年の13.6%から88年の16.2%へと傾向的に高まっているが,これは主として,高齢化の進展もあり,法定福利費(75年6.1%→88年7.9%),退職金等の費用(3.1%→4.2%)が高まっていることによる。法定外福利費の内訳では,住居に関する費用(社宅,住宅取得補助等)が最も大きく,88年では,法定外福利費の38.4%を占め,次いで食事に関する費用(同12.9%),文化・体育・娯楽に関する費用(同11.4%),医療・保健に関する費用(同10.4%)となっている(労働省「賃金労働時間制度等総合調査」)。

フリンジ・ベネフィットの産業間の格差は賃金のそれより-も大きいため,賃金にフリンジ・ベネフィットを加えた総労働費用の格差は,一般に賃金だけの場合より大きく,かつ拡大している。電気・ガス・熱供給・水道業や鉱業のフリンジ・ベネフィットは多い。これは,電気・ガス・熱供給・水道業では退職金等の費用,法定外福利費等が産業平均より高いためである。鉱業では,退職金等の費用,法定福利費が産業平均よりも高いためである。また,金融・保険業においても,同様に産業平均よりもフリンジ・ベネフィットが多い。逆に,卸売・小売業,飲食店及びサービス業については,産業平均より下回る水準である(第3-2-11図①)。

また,企業規模間でも,フリンジ・ベネフィットを加えた場合には格差の拡大がみられる。特に,退職金等の費用(5,000人以上規模企業を100とした時,30~99人規模企業19.7(1988年))や法定外福利費(同25.7),法定外福利費の中では特に住居(同8.4),医療保健(同4.3)で規模間格差が大きい(第3-2-11図②)。

なお,統計の制約上,ここでの労働費用格差には,性,学歴,勤続年数等の労働者の属性等の違いを反映している面があることは留意する必要がある。

(社宅建設ブームと住宅手当)

最近の住宅建設の特徴の一つとして,社宅,独身寮(給与住宅)の建設ブームがある。89年度の給与住宅の着工戸数は3万1千戸であり,量的には,新設住宅着工戸数のうちでまだ1.8%を占めるに止まるものの,その伸びをみると,80年代半ばから伸びが高まっており,89年度の前年度比伸び率は22.5%であり,そのうち民間資金によるものは34.7%と極めて高い伸びであった。なかでも東京圏の伸びが顕著に高い(第3-2-12図)。

こうした社宅・独身寮充実の動きの背景にはいくつかの理由が考えられる。

第一に,東京など大都市圏を中心とした地価高騰により,個人の持家取得が著しく困難になっていることである。第二に,最近の人手不足感の高まりを背景に,人材確保のため,企業が社宅・独身寮の充実を図ろうとしていることが挙げられる。第三に,企業にとって,収益の顕著な増加を背景に,社宅建設の余裕が出てきたことである。第四に,社宅は減価償却の対象となり,また,社宅建設のための借入金利子が費用として収益から控除できるため法人税負担の軽減が可能となることから,企業の遊休地の活用として,売却より社宅建設のほうが選択されるという面もあろう。

しかし,現在のような社宅建設ブームにも問題点がないわけではない。第一は,勤労者にとっての問題として,社宅・独身寮には居住期間に制限のあるところが多く,またない場合でも退職後の住宅の確保は依然問題として残ることである。第二に,社宅建設には,先に指摘したように,企業の資産運用といった住宅需要以外の誘因から建設されでいる面があり,住宅の需要・供給を調整する市場メカニズムの働きをゆがめる可能性がある。第三に,社宅に住めるのは企業の雇用者の一部の者だけであり,その他の住宅需要者はますます住宅取得が難しくなる可能性がある。集中的な社宅建設は,土地の新規取得を伴う場合には,新たな土地需要を生み出し,地価上昇の原因にもなりうるからである。

社宅ブームの一つの背景が地価高騰への対応であることを考えれば,ジレンマに陥りかねない(一種の合成の誤謬)。

こうした社宅・独身寮の建設ブームは,企業にとっての住居に関する費用にも影響を与えている。福利厚生費のなかで,住生活に関係するものは,社宅・独身寮に関する経費と持家援助の2種類に大別される。経済企画庁「企業行動アンケート調査」(90年1月実施)でみると,最近の傾向として,持.家補助を重視する企業の比率が減少し,代わって社宅・独身寮を充実させようとする動きが見られる。今後3年間の住宅に関する福利厚生向上方策として,独身寮や社員住宅の新・改築を過去3年間と比較して充実させる意向の企業が多いのに対し,住宅手当ての引上げ,低利住宅ローン制度の導入・充実を重視する企業は減少している。

なお,持家取得の困難化への対応としては,社宅建設に加え,最近,新幹線通勤に補助を行う企業の数は急速に増加しており,実際に新幹線を利用して通勤している人数も,88年度の5,600人/日から89年度には7,800人/日(新幹線通勤定期券発売実績による)に急増している。

(直接的な分配と間接的な分配の比較)

企業から勤労者個人に対する分配は,賃金,退職金,住宅手当て,通勤手当てなど,直接的な分配と,社宅・独身寮の提供,各種福利厚生施設の提供などといった間接的な分配に大別される。こうした二つの分配経路は,企業にとっても,勤労者にとっても同等ではなく,メリット,デメリットが異なる。

フリンジ・ベネフィットの充実とこれに伴う間接的な分配ルートの拡大は,賃金など他の条件が一定ならば,勤労者福祉の向上に資するもので,基本的には望ましいと考えられる。例えば,個人が単独でそのサービスを購入する場合よりも企業が提供する方が,スケールメリットを働かせることにより,勤労者1人当たりの購入価格を安価にするととができるというメリットがある。しかし,法定外の福利費の一部など間接的な分配については,金銭的な報酬に換算した場合に比較して自由度が少ないこと(つまり,勤労者が提供されたフリンジ・ベネフィットを他の目的に転用できないこと),この結果,勤労者のライフスタイルが企業が提供するフリンジ・ベネフィットにある程度依存する面があることなどの問題が指摘できよう。.また,福利厚生施設などフリンジ・ベネフィットのなかには,企業間の格差が大きいものがあることは注意されるべきである。

一方,直接的な分配は,所有権の移転を伴うのに対し,間接的な分配は,所有権を企業に残したまま,勤労者はそのサービスを受けるという点も重要な差異である。この場合,日本の,土地資産のようにストックを所有することが利用するだけよりもはるかに有利な経済システムのもとでは,企業への富の集中が進む恐れもある。

なお,勤労者のライフスタイルが企業にある程度依存するということについて関連していえば,生活時間の面でも,後述するように,労働時間そのものが一般的にまだ長いということに加えて,職場での良好な人間関係を保つために,また,取引先との良好な関係の形成のために,勤労者が,部下や上司とのつきあい,社内行事,接待などに多くの労力や費用を費やすということが,会社への帰属意識が強く,勤務時間外でもいろいろな意味で会社との関係が断ち切れない,いわゆる「会社人間」をつくり出すという面もあろう。

4. 労働時間短縮と成果配分

日本経済の国際的地位の高まりと対照的に,労働時間は他の先進国より年間で200~500時間も長く,先進国にふさわしい水準とは言いがたい。経済のグローバル化が進展するにつれて,先進国の中で日本の労働者だけが長時間働き,国際競争力をますます高めることは,公正な競争という観点がらも諸外国の誤解を招きやすい。そうした対外的な問題だけでなく,労働時間を短縮していくことは,勤労者自身が豊がさを享受するために不可欠のプロセスである。さらに,労働時間短縮は,勤労者の創造性を養い,産業・社会の活性化に資する,消費を拡大し内需主導型成長を促進するといった副次的な効果も期待できよう。

(労働時間短縮の進展状況)

労働省「毎月勤労統計調査」(事業所規模30人以上)によると,日本の勤労者の年間総実労働時間は,70年代前半までは顕著に減少したが,それ以降はほぼ横ばいで推移してきた。しかし,88年から89年にかけては,労働力需給の引き締まり傾向が継続し,企業の人手不足惑が一段と拡大するなか,企業が人手確保のために就労条件の改善をすすめたことや,88年4月に改正労働基準法が施行され,法定労働時間が当面は週46時間に短縮されたこと(週40時間労働制に向け段階的に短縮することが明示されており,91年4月には週44時間への移行を目指している),89年に月2回の土曜閉庁が国の行政機関において実施され,地方公共団体においても導入が進められたことや,金融機関の毎土曜日閉店による完全週休2日制が実施されたこと等もあり,労働時間は88年7~9月期以降減少傾向で推移しており,89年は年間2,088時間と,前年よりも23時間の短縮(前年比1.1%減)となり,75年(1.9%滅)以来の減少率となった(第3-2-13図)。

労働省「労働経済動向調査」(89年5月調査)により,労働時間制度の改善を実施(または予定,検討中)の事業所について,改善理由(複数回答)をみると,「労働時間短縮は世の流れだがら」(90%),「労働基準法が改正されたため」(67%),「人材確保のため」(63%)等となっており,最近の人手不足惑の高まりも,人材確保のために企業が積極的に時間短縮を行う誘因にもなっている。

年間総労働時間の減少は,88年がら89年にかけて顕著になったが,これを,1日当たり所定内労働時間,1日当たり所定外労働時間及び出勤日数の変動効果に分けてみると,1日当たり所定外労働時間(残業)の増加率が低下する一方,年間出勤日数が大きく労働時間減少に寄与している(第3-2-14図①)。出勤日数の減少は,労働基準法の改正による法定労働時間の短縮に際して,中小企業をはじめ週休2日制の導入等による休日増に取り組んだ事業所が多かったこと,金融機関の完全週休2日制の実施等によるものである。

また,労働時間の短縮が,どのようなマクロ的環境の時に進むがを回帰分析によってみると,生産性上昇率が高いほど,また労働市場の需給が引き締まるほど,時間短縮が進展するという結果が得られている(第3-2-14図②)。

もっとも,最近は女子を中心にパートタイム労働者が増加しており,パートタイム労働者の比率が高まったことが平均としての労働時間を見かけ上短くしていることも考えられる。そこで,労働省「賃金構造基本統計調査」により,女子労働者の所定内労働時間の減少について,パートタイム労働者の効果(パートタイム労働者の労働時間短縮効果とパートタイム労働者比率の高まりによる効果)を試算してみると,80~87年では2.7%減少のうちパートタイム労働者の寄与率は74%となっており,女子についてパートタイム労働者の効果が大きかったことがうかがえる。

しかし,87年から89年にかけての労働時間の減少は出勤日数減少効果が大きかったことから,パートタイム労働者の効果というよりも,一般労働者の労働時間の減少によるものとみられる(第3-2-15図)。

なお,「賃金構造基本統計調査」は年1回6月に実施され,10人以上事業所規模を対象としていること等から,「毎月勤労統計調査」(30人以上事業所規模)と労働時間の水準,変化率が異なっていること(「毎月勤労統計調査」では80~87年に女子所定内労働時間は1.6%減,87~89年は2.7%減)に留意する必要がある。

このように我が国の労働時間は減少しているものの,欧米諸国と比較すると依然として長い。すなわち,日本が2,189時間に対し,アメリカ1,962時間,イギリス1,961時間,フランス1,647時間,西ドイツ1,642時間となっており,日本の労働時間はイギリス,アメリカに比べ1割,フランス,西ドイツに比べ3割多くなっている(いずれも1988年時点,製造業生産労働者)。

(分配問題からみた時短)

長期の景気拡大とその間の生産性上昇の成果は,賃金やフリンジ・ベネフィットの外,労働時間短縮という形でも配分される。そこで,経済成長の成果を,時間当たり労働生産性の上昇という形で捉えた場合,その成果が賃金と労働時間にどのように配分されているかみてみよう(第3-2-16図)。これによると,60年代から70年代前半までは,生産性上昇は一部は時短の形で配分されていたが,70年代後半以降,生産性上昇率が低下したなかで,時短への配分は進まなかった。しかし,89年には,時間当たり生産性上昇率4.0%のうち,時短へ1.1%が配分されている。

一方,賃金と労働時間について労働者の意識をみると,経済企画庁「平成元年度国民生活選好度調査」によれば,「所得が減ると困るので,労働時間は減らしたくない」という人が51.5%,「残業代が減ってでも残業時間を減らしたい」と思わない人が71.7%(常勤サラリーマン,無回答〔35.8%〕を除いた数値)となっており,労働者の意識の面では,残業なしで十分な所得が確保されることが時短をより進めるために重要であるといえる。今後とも生産性の着実な向上を図り,その成果が賃金及び労働時間に相応に配分されることが望まれる。

さらに,労働力の高齢化,生産年齢人口の伸びの低下が今後予想されている中,労働時間短縮と適度な経済成長の両立をいかに図るかが中長期の課題となる。生産性の向上とともに,女子や高齢者等で,就業意欲がありながら労働市場に未参入の潜在労働力について雇用機会の増加などの就業環境を整備することも重要である。

また,労働時間の短縮が逆に生産性の向上につながる面や,あるいは時短を通じて雇用機会の世代間の再配分(ワークシェアリング)が進み,ミスマッチが軽減する可能性も見逃せない。