平成元年
年次経済報告
平成経済の門出と日本経済の新しい潮流
平成元年8月8日
経済企画庁
第3章 グローバル化が進む日本経済
(世界経済と日本のグローバル化)
日本経済は,第一次,第二次の石油危機に対して,また,最近では,昭和60年以降の急激な円高に対して,柔軟に対応し,必要とされる方向へ転換を遂げてきた。このような大きな流れの中で,最近の円高において,国内では産業の構造調整を行うとともに,国際化を進めて来た。企業では内需拡大に向けて,国内では高度化を図り,海外へは中間原材料・部品の海外調達や製品輸入を拡大した。政府においては,内需主導型成長を目指すとともに,国内の市場開放や資金還流を行う等,積極的に国際的な視野を持って政策を実施するようになっている。
日本経済のグローバル化に見られるのは,まず,第一に,輸出,輸入の高まり,両建てで増加する資金移動,発展途上国に対する資金還流など,双方向的な国際的関係の強まりである。第二に,企業の戦略が事業展開を世界的視野で行うように変化して,海外直接投資を通じて,生産,販売など最適立地を目指していることである。第三に,日本経済の運営において世界を見据えた視点が必要となっていることである。今や,日本経済の運営には,世界経済が相互依存性を高め,一体化しつつあることを認識し,世界経済に占める我が国の経済規模に相応しい役割を果たすことが必要となっている。第四に,国民生活の面でも先にみたように海外旅行や海外からの直接購入の増加,双方向的なホームステイ等の往来の増大など,海外との多様な接触が行われている。最後に,日本のグローバル化では,国内発展の持続,雇用への配慮と海外事業の展開を同時に達成しようとする意欲が強い点に特徴がある。経済運営の面でも諸外国と経済発展の調和を図ろうとしている。
このような,グローバル化の動きはようやく潮流となってきたものである。未だ経済全体に完全に根づいたものではないものの,グローバル化は,今後,日本経済の順調な発展を図るために,積極的に取り組まなくてはならない重要なテーマである。本章では,世界経済の大きな変化を踏まえた後,日本経済がグローバル化を進めるとき,経済全体にどのような変化が生ずるか,また,世界経済における日本の役割がどのようなものになるかに視点を絞って,検討してみよう。