昭和62年
年次経済報告
進む構造転換と今後の課題
昭和62年8月18日
経済企画庁
我が国財政を取り巻く環境には極めて厳しいものがあり,我が国経済の着実な発展と国民生活の安定・向上を図るためには,引き続き財政の改革を強力に推進し,その対応力の回復を図ることが緊要となっている。
このような背景の下で,61年度予算は,臨時行政調査会による改革方策等の着実な実施を図るなど,特に,歳出面において,経費の徹底した節減合理化を行うことを基本として,その規模を厳しく抑制しつつ,限られた財源の中で質的な充実を配意するとともに,歳入面においても,その見直しを行い,これにより,公債発行額を可能な限り縮減することを基本として編成された。
このため,一般会計予算においては,既存の制度・施策について見直しを行うなど経費の徹底した節減合理化に努め,特に一般歳出(国債費及び地方交付税交付金以外の歳出)については,全体として前年度同額以下に圧縮された。
この結果,一般会計予算の規模は,54兆886億円となり,前年度比3.0%増に抑制された。
主要経費別にみると,経済協力費,防衛関係費が高い伸びを示した。一方,食糧管理費が前年度費減少となった。歳入については,厳しい財政事情にかんがみ,61年度の公債発行予定額は10兆9,460億円と,前年度補正後発行予定額から1兆4,920円の減額を行い,この結果,61年度予算における公債依存度は20.2%となり,前年度当初予算から2.0%ポイント低下した。
<1>公共事業の施行状況
61年度の公共事業等の施行状況についてみると,上半期の事業施行については,過去最高の契約済額(契約率77.4%)を目指して可能な限り施行の促進を図ること,各地域の経済情勢に即した適切な施行を行うよう配慮するものとし,景気の動向に応じて機動的・弾力的な運用を図ることが決定された。これを受けて積極的な上半期前倒し発注等の効果もあり,公共工事請負額が4月から10月まで前年同月を上回る水準で推移した。その後一時息切れの状態を呈したものの,秋の総合経済対策,補正予算の効果が年明け後出始め,61年度全体では前年度比8.4%増と比較的高い伸びを示した。また,地域別にみてもほとんどの都道府県で年度を上回った。
<2>61年度補正予算
60年度補正予算は61年11月11日成立した。この補正予算においては,総合経済対策を実施するために公共事業関係費の追加を行うほか,給与改善費及び義務的経費の追加等,当初予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった事項等について措置を講ずるとともに,租税及び印紙収入等について減収を見込むこととし,他方,規定経費の節減,予備費の減額,地方交付税交付金の減額,前年度剰余金の受け入れ及び公債の増発等を行うこととした。公債発行については,建設公債5,490億円を追加発行することとしたため,公債の総発行予定額は11兆4,950億円となり,この結果,補正後の公債依存度は,21.4%(当初予算ベースは20.2%)となった。
61年度の財政資金対民間収支は,租税の揚超幅の拡大があったが,外為の払超への転化もあって,全体では前年に比べ揚超幅は大幅に縮小した(8,575億円,60年度は4兆6,527億円の揚超)。
<1>62年度予算
62年度予算は62年1月26日国会に提出され,4月23日衆議院,5月20日に参議院でそれぞれ可決成立した。62年度予算は,臨時行政調査会及び臨時行政改革推進審議会による改革方策等の着実な実施を図るなど,特に,歳出面において,経費の徹底した節減合理化を行うことを基本として,その規模を厳しく抑制しつつ,限られた財源の中で質的な充実に配意するとともに,歳入面においても,その見直しを行い,これにより,公債発行額を可能な限り縮滅することを基本方針として編成された。この結果,62年度一般会計予算額は,54兆1,010億円となり,前年度に比べ,0.0%増となった。また,一般歳出(国債費及び地方交付税交付金以外の歳出)の規模は,32兆5,834億円で,前年度比0.0%滅となっている。
(ア)歳入予算
一般会計歳入のうち租税及び印紙収入は,前年度補正後予算額に対し,1兆7,540億円増の41兆1,940億円になると見込まれている。
税外収入については,可能な限りその確保を図ることにしている。
(イ)歳出予算
歳出予算総額の前年度比増加率は0.0%となった。主要な経費についてみると,社会保障関係費については,高齢化の進展等社会・経済の変化に対応して,社会保障制度が長期的に安定的かつ有効に機能するよう,引き続き制度・施策の合理化・適正化に努めるとともに,今後の高齢化社会を展望し,きめ細かに各種の福祉施策等を推進することとして編成し,10兆896億円を計上している。
公共事業関係費については,我が国財政を取り巻く環境が極めて厳しいことにかんがみ,その規模を極力圧縮することとし,国民生活充実の基盤となる社会資本の整備に配慮しつつ,総額6兆824億円(61年度当初予算額に対し,1,409億円減,2.3%減)を計上している。
一方,経済の持続的拡大に資するため,国費はマイナスとしつつも,一般公共事業の事業費については財政投融資の活用,民間活力の活用,補助・負担率の見直し等種々の工夫を行うことにより,前年度を上回る伸び率を確保することとしている。
文教及び科学振興費については,教職員定数の改善,文教関係施設の整備,私学助成の推進等を図ることとし,4兆8,497億円を計上している。
経済協力費については,厳しい財政事情の下にあって,政府開発援助についての第3次中期目標を踏まえ,6,492億円(一般会計政府開発援助予算については6,580億円)を計上している。
<2>62年度財政投融資計画
62年度財政投融資計画の策定に当たっては,内需の拡大,地方財政の円滑な運営など政策的な必要性を踏まえ,また資金需要の実態を勘案し,積極的かつ重点的・効率的な資金配分を行うこととした。また,資金運用部預託金利を政令で定めるよう法改正を行うことにより,預託金利の弾力化を図ることとしている。
この結果,62年度の財政投融資計画の規模は27兆813億円であり,61年度計画額22兆1,551億円に対して4兆9,262億円(22.2%)増となっている。このうち郵便貯金特別会計,年金福祉事業団及び簡易保険郵便年金福祉事業団の資金運用事業に対する融資3億3,500億円を除いた規模は23兆7,313億円(61年度計画比7.1%増)となった。
また,資金配分については,国民生活の向上と国民経済の発展に資する見地から,住宅,生活環境整備,中小企業,道路等に重点的に配意することとしている。
62年度財政投融資の原資は,61年度計画額に対し3兆9,262億円(1465%)増の31兆813億円を計上している。このうち,27兆813億円については,62年度財政投融資の原資に,また,4兆円については,62年度において発行される国債の引受けに充てることとしている。
<3>62年度地方財政計画
62年度の地方財政計画は,地方財政が引き続き厳しい状況にあることにかんがみ,おおむね国と同一の基調により,歳入面においては,財源不足については地方交付税の特例措置等所要の地方財源措置を講じることとし,歳出面においては,経費全般について徹底した節減合理化を図るとともに,生活関連施設の整備を計画的に推進し,あわせて地域経済の安定的な発展と内需振興に資するため必要な地方単独事業費の確保に配意するなど限られた財源の重点的配分と経費支出の効率化に徹し,節度ある行財政運営を行うことを基本として策定された。
62年度において生ずると見込まれる財源不足額2兆3,758億円については,地方たばこ消費税税率の特例措置1,200億円,地方交付税の特例措置3,828億円及び建設地方債の増発1兆8,730億円によって補てんすることとされた。
62年度の地方財政計画の総額は,前年度(52兆8,458億円)に比し2.9%増の54兆3,796億円を計上している。なお,公債費を除いた歳出の伸び率は2.7%増となった。