第二部 各論 ―動乱ブームより調整過程へ 四 輸送 2 国内輸送
二六年度における国内貨物輸送は、朝鮮動乱以降活況を呈した生産活動の影響をうけて、各輸送機関とも第二九表のごとく前年度実績を上廻る増送を行つた。
まず国鉄についてみると、年度当初から前年同期の実績をかなり上回る輸送が続けられたにもかかわらず、駅頭在貨は二〇〇万屯(平常在貨は約一〇〇万屯)に上つて、輸送逼迫、貨車不足がさけばれる状態であつた。これは鉱工業生産の上昇に伴う輸送需要の増加に、特殊輸送の増加が加わつたためで、この傾向は第三、四半期末まで続いた。この間、国鉄の輸送力も逐次増強されたため、秋冬の繁忙期にも当初憂えられた程の混乱には至らず、第四、四半期に入つて景気後退の影響が出貨減となつてあらわれ、輸送は次第に逼迫状態を脱した。今年度に入つてからも、輸送屯数は二六年度同期をやや上回つているが、駅頭在貨は五月中旬で一〇〇万屯に低下した。
海上輸送においては、汽船、機帆船を併せて年度当初から出荷は増加し、陸運と同じ傾向を示し、前年同期の四、五割増しを続けたが、その後汽船においては港頭貯炭の減少から荷待ち港船となつて、八月以降は輸送実績が減少し、一一月には炭坑ストの影響もあつて急減した。第四、四半期に入ると景気後退の影響から輸送実績はさらに減少を続けたが、三月には北海道炭の港頭への出回りの増加もあつて輸送実績は持ち直している。
国内輸送において注目すべきことは、戦前は海上輸送が国鉄輸送とほゞ同量であつたが、戦後は国鉄輸送が海上輸送に比べて著しく増したことである。その原因として汽船、機帆船の現行運賃が戦前(昭和一一年)のそれぞれ五四〇倍、二二五倍に上つたのに対し、国鉄のそれは一七〇倍であること、工業の国内資源依存度が増加したこと、産業の立地条件が変化したこと、その他近似取引の単価が零細化したことなどをあげることができる。
このようにして海外輸送、国内輸送ともに輸送力はかなり充実したが、なほ船舶、鉄道車輛および施設関係には老朽化したものが多く、輸送力の維持増強のためにも、また国際収支の積極的改善の上からもなお多くの問題が残されている。