第二 各論 五 輸 送


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(一)海上輸送の推移

(1)外航輸送

 二五年度における邦船による外航輸送実績は、年度当初以来逐月上昇の傾向をたどり、貨物船については輸出入合計二、八九〇千屯で前年度に比し九〇%の增加、油槽船については一、〇五〇千屯で三八%の增加を示している。他方この間、二五年八月末以来現在までに米国をはじめ主要二三ヶ国において邦船の入出港についての包括的許可が与えられ、このほか特定物資の積取或は罐水等の補給のための入出港を認めた国も一四ヶ国に上つている。

 また同年八月末の日本沖縄間航路を皮切りに、南米・バンコツク・印度・パキスタン及び最近においては米国との間に相次いで定期航路の再開を見るに至り、邦船の外航活動範囲は二五年度後半より急激に拡張された。しかしながら上の外航輸送の活況にもかかわらず、邦船による貿易物資の積取比率は、二五年度輸入量の二六・六%、輸出量の一六・六%に過ぎない。

第四四表 邦船外航輸送実績

 年度当初民営に復帰した本邦海運界は当時荷動きの不活溌から低調を続け、六月においては繋船量は一〇〇万重量屯を超えていたが、動乱発生後世界の船腹需要は逼迫の度を強め、特に国際情勢の急変により我国の輸入仕入先が遠方地に振替えられたため、船腹不足と輸入物資の輸送難は一段と深刻化した。

 他方次表に見る如く海上運賃の高騰も、輸入先の遠隔化と相まつて原材料価格騰貴の一因として問題を投げかけるに至つた。

第四五表 日本向海外運賃市況

 以上の如き情勢に対処し、一、二月には外航船腹增強対策が決定され、船腹拡充について從来より一段と強力な措置が講ぜられることとなつた。現在までに実施に移されたものは、

新造船(六次追加、七次) 三七隻 約二八万総噸
戦標船改造(A型、TL型) 三三隻 約二六万総噸
外国船買入 三〇隻 約一七万総噸
一〇〇隻 約七一万総噸

 であり、これらは二六年度中に稼働を開始する予定である。

 さて二五年度中における外航船腹增加の推移は次表に示す通りであつて、二四年度末の約一三万総噸から、二五年度末に約七四万総噸へと上昇し、さらに本年度中には船腹增強対策の結果も現れて約九七万総噸(約一四四万重量噸)の增加が予想され、二六年度末には一七一万総噸に逹する見込である。

 しかしながら本年度輸入予想量約一、六七〇万屯に対しては、なおその三三%を邦船により輸送し得るに過ぎず、残余はあげて外国船にまたなければならない。從つて輸入物資の入手にはなお困難が残され、また運賃支払のための外貨支払いの面に与える影響も依然として大きいものがある。

第四六表 外航船腹量の增加

(2)内航輸送

 二五年度当初においては、出荷低調のため内航輸送は極めて不振で、繋船は逐月增加し、これに伴つて低性能船舶の政府買上も実施された。

 しかしながら動乱を契機とする生産の上昇に伴い、荷動きが活溌化するとともに特需向用船も行われたため海運市況は一変して、繋船も急速に減少するに至つた。かくて年度間輸送実績は前年度に比し汽船一五%、機帆船一三%の增加を示している。なお機帆船にあつては燃料油に関する從来の配分規則が緩和されたので、今後益々輸送実績の上昇が見られるであろう。

第四七表 内航輸送状況

(3)港湾

 海陸を結ぶ港湾の諸施設は、戦災・天災その他の事情によつて、かなり能力の低下を来している。すなわち、一例を東京・横浜・大阪・神戸等主要九港湾にとつてみると、二五年度における本船関係の荷扱量は約二、九〇〇万屯で、現有能力二、六〇〇万屯をかなり上廻る強硬荷役を行つている。特に横横、神戸両港においては、大部分の荷役が沖荷役に移行され、二五年一二月には外航船の約一割程度は平均四―五日の滯船をみている。

 また臨港駅配車の不足から港頭滯貨が各港に生じ、これが上屋・倉庫の不足と相まつて、貨物を野積のまま放置するような事態も生じた。かくて今後、さらに增加を予想される荷役量に対処するためには港湾諸施設の設備強化が強く要望されている。

第四八表 港湾取扱物量の推移

(二)陸上輸送の推移

 二五年度の国鉄貨物輸送量は、当初に四年度実績と同程度の一二七百万屯と予想されていたが、朝鮮動乱発生後産業活動の活溌化と特殊輸送の增加に伴い輸送要請はきわめて旺盛となり、年間総輸送量は前年度を七%上廻る一三六百万屯に上つた。

 しかも最近の貨物輸送粁の增加を考慮すると、実質的輸送量(屯粁)はさらに增大し、二四年度実績の一一%增に当つている。それにもかかわらず駅頭滯貨は昨年一〇月頃から一五〇万屯程度に逹し、本年三月末には遂に二〇〇万屯を超えるに至つた。例年夏枯れを見せはじめる六月に入つても、依然として滯貨は二〇〇万屯を下らないので、今年秋冬繁忙期に入るとかなり深刻な事態を生ずるおそれがあり、早急に輸送力增強対策を講ずる必要がある。

 輸送の逼迫状況を所要車に対する使用車の割合すなわち需要に対する供給の比率でみると、全国平均では昨年六月ごろまで九割程度充足されていたものが、一〇月以降は四割程度に低下しており、地方線区においてはこの傾向がさらに著しい。また車種別に見ると、有蓋車と無蓋車の車数の比は四五対五五であるが、要請は有蓋車のほうが多いので有蓋貨物の充足率は二割程度に過ぎず、米麥を初め果物・鮮魚類まで無蓋車で運ばざるを得ない状態で、質的にも量的にも行詰つた輸送状態を示している。

 一方かかる輸送を担う滑車の車令をみると、総数一〇八千両の平均車令は二七年で(有蓋車平均二七年、無蓋車平均二四年、タンク車平均三九年)、その中三〇年以上を経過した滑車が一七%、四〇年以上が一一%を占めており、配車補充の必要性を物語つている。

 自動車による貨物輸送は自動車生産の增加、燃料その他資材事情の好転に加え、朝鮮動乱の影響を受けて、年間輸送量二八七百万屯に逹し、昨年度に比し四%增加した。

 また私鉄の年間貨物輸送量は二六六百万屯で、前年度に比し四%の增加であつた。

第四九表 陸上貨物輸送の推移

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