三、表面的好轉の裏面にひそむ實態(四)


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(四)生活水準の停滯

(1)戰前を基準とした生活水準

 終戰後著しく低下した生産水準と人口の增加とを反映して、國民生活は耐乏を餘儀なくされているが、いま統計に基き大づかみに戰前基準の最近における生活水準をうかがうと下表の如くであつて、東京都における家計費は戰前の約一二七倍に膨張しているが、この閒物價は約二七四倍に騰貴しているため、實質的には戰前の五割足らずの消費水準となつている。

第26表

 また、これを生活物資別に區分してみると、それぞれの消費水準は主食では九割、非主食では七割、光熱品では九割、衣類品では一―二割、住居關係品では一―二割、その他では五―六割となつており、飮食物殊に主食や光熱品の如く高度な必需性を持つているものにおいては比較的低下率が少いが、衣料や住居關係の物資になると甚だしく低い水準になつている。從つて、家計費中に占める飮食費の割合即ちエンゲル係數は異常に膨張し、戰前では三割五分程度であつたものが最近では約六割五分になつていて、生活水準の低位を物語つている。

(2)最近における推移

 さきに、勤勞者の消費水準が實質賃金の上昇を反映して、二二年に較べ昨年末頃には三割程度向上していることを指摘したが、これも相對的に低かつた勤勞者の消費水準が他の階層のそれへ喰込んで平準化したことに主な原因があるのであつて、都市生活者全體の消費水準としては次の表に示す如く僅かの向上に止まつているし、またこの間農村の水準も好轉はしていない。

第27表

 しかしながらこのような事態の根本的原因は、敗戰に基く生産と貿易の異常な縮少にあり、現在の水準自體が多額の救濟資金によつて支えられているのであつて、生活水準向上の前提として何よりもまず生産と輸出の增大に最善の努力を拂わねばならなぬのである。

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