第2章 円高の進行と企業の対応

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第1章でも指摘したように、2010年に入って円高が一段と進んでおり、対ドルレートで80円近くにまで達した。これは、1995年の円高とほぼ同じ水準であり、脆弱な我が国経済にとって厳しい状況をもたらしている。特に、輸出関連の製造業を中心に、「韓国や欧州などとの競争に勝てない」「生産拠点を海外に移さざるを得ない」といった声が強く、国内雇用への影響も懸念されている。その一方で、「実質実効為替レートではそれほど円高ではない」「日本企業は円高に対する抵抗力が高まっている」といった見方も出ている。また、円高になるたびに「円高にはメリットもある」「メリットを生かせばよい」との声が聞かれるが、今回もその例に漏れない。

そこで、本章では、「今回の円高はどのような意味において厳しいのか」という点を整理してみたい。まず、特に95年当時との対比も交えつつ、今回の円高局面の特徴を把握する。次に、輸出や企業収益といった実体経済への影響について、業種別の相違、他の先進国との対比に注目して検討する。最後に、長期的なグローバル化のトレンドを踏まえつつ、海外投資や雇用との関係を考察する。

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