第2章 労働市場の多様化とその課題 第2節

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第2節 働き方の多様化に向けて求められる変革

多様な人材が活躍するためには、多様な働き方の実現に向けて長時間労働の是正等の働き方改革を進めていくことや、多様なキャリア形成が可能となるようリカレント教育の充実等を図っていくことが重要となる。また、受け入れ側の企業においても、多様な人材の活躍を促進しようとした場合、多様性を受容できるような制度を整えることが必要である。女性や高齢者など多様な人材が労働参加するためには、働き方の面では、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方やワーク・ライフ・バランス(WLB)の改善が必要であるとともに、人事管理の面からは年功主義によらない評価制度の導入や、多様な人材の意思疎通の円滑化等の管理能力を高める必要がある。こうしたことを踏まえて、本節では多様な人材が活躍できるためには、どのような制度改革や取組が必要なのかについて、分析を深めていくこととしたい。

具体的には、内閣府の企業意識調査と個人意識調査を用いて、多様な人材の活躍に向けてどのような取組が行われているのか、どのような取組の効果が高いのか、企業側と雇用者側が考える必要な制度はかいりしていないか等の論点について考察を行う。また、近年特に注目が集まっている65歳以上の雇用者の就労に向けて必要となる取組の分析や、多様な人材の活躍に向けて最も重要な要素である働き方改革の進捗についてビッグデータを用いた分析を行う。

1 多様な人材を活かすために必要な取組

制度の概観:働き方改革、年功による人事管理の見直し、マネジメント等が重要

女性、高齢者、外国人材、限定正社員など多様な人材を企業が受け入れ、多様な人材の活躍を促進していくためには、制度的な見直しが必要である。これまでの先行研究によれば、ダイバーシティ経営や、女性・外国人材の活躍のために必要な制度改革として、<1>WLBや柔軟に働ける制度、時間意識の高い働き方の定着(働き方改革)、<2>年功による人事管理等の日本的雇用慣行の改革、<3>管理職のマネジメント、などが指摘されている(佐藤(2016)、高村(2016)、山本(2014))。働き方改革については、時間制約のある人やWLBを重視する人等すべての人にとって働きやすい環境が構築されることで、多様な人材の労働参加が促されることが期待される。日本的雇用慣行では、同質性・年功を基準とした人事管理が行われる傾向にあるため、中途・経験者採用、外国人、家庭の事情から残業が困難な者等、個々人の状況に応じた適切な評価ができない。より個別管理の人事制度に移行することで、多様な人材の働きやすさや仕事に対する意欲を高めることができると考えられる。また、最終的にこうした組織的な改革が、職場でうまく機能していくためには、管理職が適切にマネジメントすることが不可欠であると考えられる 。

以上のような観点を踏まえ、内閣府企業意識調査により、企業が多様な人材の活躍ために実施している内容を確認すると(第2-2-1図(1))、柔軟な働き方の実施(38.1%)やWLBの促進(30.5%)等の働き方改革の取組が上位にきている。実際に、同調査では1年前と比較した全社労働時間の傾向も質問しているが、減少と回答した企業割合は増加と回答した企業割合を上回っており、結果としても労働時間の短縮につながっている様子がみられる29。次に多い取組として、評価制度の見直しと教育訓練制度の強化(両方とも約23%)、マネジメント研修の強化(19.4%)があり、雇用制度の改革や管理職の役割の強化を図っていることがわかる。計画・ビジョンの作成(12.6%)、女性比率の目標(10.9%)、専任部署の設置(5.6%)については、実施している企業の割合は少ないが、企業内で多様性の理念・価値を共有すること等に貢献していると考えられる。

次に、それぞれの取組が企業の女性・外国人等の多様な人材の活躍に貢献しているのかについて簡単な回帰分析を行った。ここでは多様性の評価軸として、<1>過去と比較して多様な人材(人数)がどの程度増加・減少したか(フロー)、<2>多様な人材が雇用者に占める割合は現時点でどの程度か(ストック)、という2種類を用意した。両者を用いる理由は、多様性を追求し始めた企業では人数は増加しても割合が少ないことや、既に割合が高い企業では人数の増加が限定的となることが考えられるためである。また、多様性の度合いが一つの指標でわかるように、各企業における多様な人材の活躍の度合いに応じてスコア(点数)を付与し(増加・高い割合の場合に高スコア)、最終的に各人材のスコアを合計した指数を作成した(以降、フローの方は「多様性変化指数」、ストックの方は「多様性割合指数」と呼ぶ)30。回帰分析は作成した指数や各人材の変化・割合を被説明変数、上記の多様な人材の活躍のための取組を説明変数とし、各企業の属性(雇用者数全体の変化・産業・規模等)をコントロールした上で行っている31

推計結果をまとめた表が第2-2-1図(2)であるが、表中に丸印がついているものは該当する取組を行っている企業において、各人材の増加や割合が高いとの関係性が有意(10%水準)にみられたことを示している32。全体的な動向から確認すると、取組内容の8項目のうち7項目では、多様性変化指数または多様性割合指数のいずれかと有意な正の関係性がみられており、こうした企業の取組は実際に多様性の向上にも寄与している可能性が高いことがわかる。

多様な人材を個別にみると、女性正社員・管理職については、女性比率の目標はもちろん、管理職のマネジメント研修の強化、WLBの促進、柔軟な働き方の強化等が有意な項目となっている。柔軟な働き方については、すべての人材割合について有意となっていることから、働き方を変えることは、女性に限らず多様性全般に対して非常に有用な制度であると考えられる。その他にも、中途・経験者採用や外国人材と専門部署の設置や中長期計画・ビジョンの作成等、限定正社員と評価制度の見直し等、65歳以上の雇用者と教育訓練制度の強化等がそれぞれ関係していることが確認できる。

以上が多様化に対する企業の全般的な取組の概要であるが、以下では取組んでいる企業割合が多かった、働き方の改革、評価制度、マネジメント研修等の訓練について、より詳細にみていくこととしたい。

柔軟な働き方・WLBが重要な理由

柔軟な働き方やWLBの促進は実施企業が最も多く、多様性に対する効果も広く確認できた内容であるが、どのような制度がより効果的なのかについて、特に女性活躍に注目して分析を行った。推計はCSR調査を利用し、各上場企業における属性(産業・規模・売上高等)をコントロールした上で各種制度等の有無が女性従業員比率や女性管理職比率をどの程度高めるのかについて回帰分析を行った33

分析結果をみると(第2-2-2図)、特に、従業員1人当たりの残業時間が短いことや短時間勤務制度があることが女性比率を高める効果があることがわかる34。残業時間の短い企業は残業時間が長い企業と比較して女性従業員比率が8.7%ポイント・女性管理職比率が3.4%ポイント高く、短時間勤務制度がある企業では女性従業員比率が5.2%ポイント・女性管理職比率が2.7%ポイント高くなっている。日本における長時間労働の一部は、非効率的な働き方によって生じているとの研究もあり(山本・黒田、2014)、こうした合理的でない労働時間を削減していくことの重要性は極めて高いと言える。また、単純な労働時間の長さだけでなく、突発的な残業の発生や計画的な有給休暇が取得できない等の就労スケジュールの不確実性の影響も無視できない要素であることが指摘されている35

次に効果の高いものとして、女性従業員比率には保育設備・手当やサテライトオフィスの制度(両方とも+3.3%ポイント)、女性管理職比率には在宅勤務の制度(+1.7%ポイント)が挙げられる。保育設備・手当や在宅勤務といった制度は、育児と仕事の両立がしやすくなることで、女性の働きやすさを高めていると考えられる。また、在宅勤務やサテライトオフィスの制度が利用できることは、通勤時間を削減することにより働き方の柔軟性を高め、WLBに寄与していると思われる。実証分析においても、通勤時間が長い場合において、子供を持つ既婚女性の就業率(特に正社員)が低下するとの結果が得られている(Kawabata and Abe、2018)36

多様な人材の活躍に向けて、雇用慣行の見直しが必要

人材評価制度の観点からは、日本的雇用慣行と呼ばれる年功的な人事管理の見直しが多様な人材の活躍を促進する上では重要である。日本的雇用慣行の特徴として、従業員の勤続年数が長い(長期雇用制度)、年功序列の賃金体系や昇進人事等が指摘できる37。日本的雇用慣行は、そもそも緩やかな環境変化や画一的な構成員の存在を前提とすることで成立している制度であるため、多様な人材の活躍に向けては弊害がみられる38。例えば、出産・育児等が女性に不利に働く、中途・経験者採用・外国人材等の外部の優秀な人材が活躍できない、生産性に応じた賃金が支払われない39、年功制度維持のため定年後の再雇用時に処遇が悪化する、といった様々な問題が指摘できる。実証研究においても、多様な人材が活躍できる人事制度にするためには、非年功的な処遇管理と自己選択型キャリア管理の制度体制に移行することの必要性が指摘されている(佐藤、2019)。こうした日本的雇用慣行は、全般的にみれば減少している可能性はあるものの、男性を中心に依然として根強く残っていることが指摘されている40

内閣府企業意識調査からも、日本的雇用慣行のある企業では多様な人材が活躍できていないことが確認できる。第2-2-3図(1)は、企業を日本的雇用慣行の度合いに応じて5段階に分類し、それぞれの分類における多様性割合指数の平均値をプロットしたものである41。多様性割合指数の値が高いことは企業内における多様性が高いことを示すが、日本的雇用慣行と多様性の間には負の相関関係が明確にみられる。割合指数の内訳である女性や外国人等と日本的雇用慣行との関係をみると(第2-2-3図(2))、女性正社員の割合が30%以上である企業は、日本的雇用慣行が弱い企業では約4割だが、強い企業では約14%である。同様に女性管理職比率が15%以上ある企業は、日本的雇用慣行が弱い企業では約26%だが、強い企業では約6%である。同様の傾向については、外国人労働者や限定正社員についても確認することができる(付図2-1)。

また、年功により賃金が決定する場合、中途・経験者採用として若い年代の層を主に雇用することや、そもそも中途・経験者採用を実施しない傾向がある。企業において過去2~3年程度において採用した人材の上限年齢の分布をプロットすると(第2-2-3図(3))、年功序列の賃金体系の企業はそうでない企業と比較して年齢が若い層に偏っており、中途・経験者採用を実施していない割合も高くなっていることが確認できる。多様な人材の活躍は、雇用者の年齢等によらずに適材適所の配置を行うことであるが、日本的雇用慣行はそれを阻害している可能性が高いことが指摘できる。

経済学解説<4>:日本的雇用慣行の経済的合理性とは

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一般に、日本的雇用慣行と呼ばれるものの主な特徴は、従業員が一つの企業に長期にわたって勤務する長期雇用と年功序列に基づく賃金体系にあります42。こうした雇用慣行が形成されてきた経緯については、様々な説がありますが、一説には19世紀末から20世紀初めにかけて、繊維産業等を中心に労働力不足とそれを補うための高い採用コストに企業が悩まされた結果として、企業側が従業員の定着を図るために採用されたとする説があります。また、当時、遅れて産業化が始まった日本では、企業が新技術への迅速なキャッチアップを図るためにも、技能を持った労働者を社内で育成する必要があったことが、終身雇用や年功賃金制が定着していった背景にあると指摘する説もあります。

長期雇用と年功的な賃金制度を特徴とする日本的雇用においては、外部からの採用を制限するとともに、内部の従業員が年齢、勤続年数、査定等に基づいて昇給・昇進する仕組みを整備することで、従業員が企業の求めるノウハウや技術を習得しようとするインセンティブが高まり、組織内の協力が高くなるとされています。また、こうした組織では、企業内部の様々な部署・階層間で情報が共有され、水平的な意思決定が行われるとされており、状況に応じた柔軟な対応が可能となるとも言われています。

しかし、現在の日本経済を取り巻く環境を考慮すると、こうした日本的雇用慣行の合理性には一定の限界がみられています。例えば、企業内部だけの訓練や職場経験を基に育成された従業員は、思考や知識が同質的になりがちであり、創造的な仕事が苦手となる傾向にあるため、画期的なイノベーションが必要とされる業務には必ずしも適しません。また、企業内部からの人材登用や年功的な評価を重視する慣行は、女性や外国人材等の活躍や専門性の高い外部人材の登用を阻害する可能性があるだけでなく、内部の従業員にとっても、専門性を高めにくく、キャリア途中でのやり直しを困難にするとの欠点もあります。さらに、年功序列制度は、若年期に教育訓練で身に着けたスキルが高齢期にも陳腐化しないといった環境変化が緩やかな条件においては合理的ですが、現在のように技術進歩が速く、スキルが陳腐化しやすい環境下では合理的とは言えません。

このように日本的雇用慣行は、多様な人材の活躍、イノベーションや生産性向上が必要とされる昨今においては、多くの変革すべき課題を抱えていると考えられます。人生100年時代を踏まえた多様なキャリア形成が進む中、より個々人の事情に応じた働き方や、自分で目指すべきキャリア形成の意識を持つことが必要となっています。

WLB等の促進には管理職のマネジメントが重要

多様な人材の活躍のために、企業は教育訓練やマネジメント研修等を強化している。事実、多様化が進んでいる企業では、全般的に従業員の教育訓練に積極的であり、特に管理職に対するマネジメント研修や自己啓発に対するサポート等にコスト(時間や資金)をかけて取り組んでいる傾向が確認できる(付図2-2)。

特に、多様な人材の活躍の文脈においては、管理職のマネジメントは非常に重要である。これは職場の構成員や働き方が多様化した場合、チームが保有している能力を最大限に発揮できるようにするには、業務や部下に対するマネジメントがより一層、管理職に求められるためである。つまり、多様な人材の活躍には、柔軟な働き方やWLBの促進が必須だが、職場における実現性については管理職のマネジメントに依存しているのである43

日本における上司の効果を分析した研究によると、上司と部下のコミュニケーションがよくとれていない場合、部下のメンタルヘルスに影響があるだけでなく、生産性の低下や離職率の増加にもつながることが指摘されている44。そこで、内閣府個人意識調査を利用して、上司とのコミュニケーションが、部下のWLBや希望する仕事との不一致(ミスマッチ)にどのように影響しているのかについて、個人属性(年齢・性別・労働時間・年収等)をコントロールした上で推計を行った。

第2-2-4図(1)は、個人属性をコントロールした上で、上司とのコミュニケーションのみが異なる場合において、仕事と私生活の両立ができている(できていない)と感じる確率がどの程度かをみたものであるが45、上司とのコミュニケーションとWLBの感じ方には非常に強い正の関係があることが確認できる。仕事と私生活の両立ができていると感じる確率は、上司とのコミュニケーションが取れている場合は55%、やや取れている場合は32%、やや取れていない場合は16%、取れていない場合は7%である。

同様の傾向は仕事との不一致においても確認することができる(第2-2-4図(2)~(4))。推計結果をみると、現在の仕事が、自身の能力やスキル、希望する仕事内容、希望する労働条件と一致していると感じる確率に対して、上司とのコミュニケーションの状況は有意に影響を与えている。上司との良いコミュニケーションがある場合は、ない場合と比較して、現在の仕事内容が自分とマッチしていると感じる確率が約5~11倍となっている。仕事が自分のスキルや希望内容と合致していない場合、雇用者のモチベーションが上がらず、生産性が低下する可能性も考えられるが、上司が積極的にコミュニケーションを図っている場合においては、雇用者が仕事に対してミスマッチと感じる確率を低下させることができる可能性がある。

このように管理職のマネジメントが、多様な人材活躍に向けてのWLBの促進やミスマッチの解消等に対して果たす役割は非常に大きい。また、管理職に対するマネジメント研修の強化だけではなく、管理職の仕事内容等についても組織的に見直していくことも重要である。特に日本においては、管理職の労働時間が長くなる傾向にあるだけでなく、プレイングマネジャー化しているために、マネジメント業務に対して十分な時間を割くことができていないことが指摘されている(武石、2011)。

多様な人材が働きやすい職場:雇用者の視点

以上は多様な人材の活躍について主に企業側(労働需要側)から考察してきたが、多様な人材がいる職場で働くことになった雇用者(労働供給側)はどのような制度が必要と感じているだろうか。内閣府個人意識調査により、多様な人材がいる職場でより生産的に働くために必要と思う制度について質問した回答結果をみると(第2-2-5図(1))、回答者の年代による回答傾向の差は小さく、企業意識調査と同様に柔軟に働ける制度が最も必要であると雇用者も感じていることがわかる。また、柔軟な働き方に関しては30~40代の女性を中心に必要と感じる割合が男性よりも10%ポイント程度高くなっていることから、女性活躍には働き方の改革が必要なことが個人意識調査からも確認できる。

次に必要と感じる制度として、多い順に仕事範囲の明確化、社員交流、評価制度の明確化、相談部署の設置、研修機会となっている。日本的雇用慣行では職務等や働き方について無限定で働く正社員を前提としていたが、多様な人材が多様な働き方で仕事を行う場合、業務範囲や評価の明確化が公平さのためにも必要だと考えられる。人事評価制度の見直しは企業意識調査でも働き方関連の次に多い項目であり、企業側と雇用者の問題意識は一致していることが考えられる。男女別にみると、仕事範囲の明確化、相談部署、研修機会の項目においては、女性の方が必要と感じる割合が高く、男性においては特にないと回答する割合が高くなる傾向にあるのが特徴である。

仮に多様化のために望ましい制度が自分の勤務する企業にあった場合には、多様化は利点と課題のどちらの方が多いかとの質問については(第2-2-5図(2))、回答者の年代に関係なく6割以上の雇用者が利点の方が多いと回答しており、課題の方が多いと回答する割合(約2割)を大きく上回っている。このことからも適切な労働環境の下では、多様な人材の労働参加は望ましいと雇用者側も考えていることがわかる。

また、近年、定年後も継続して働く高齢者が増えるなど、上司と部下との関係性ではなく、多様な年齢層の同僚と働く可能性が高まっていることが考えられる。このような状況において、どのような制度があればより生産的に働くことができると考えているのかについて、若年層(30~49歳)には高齢層の同僚と働く場合、高齢層(50~64歳)には若年層の同僚と一緒に働く場合を想定してもらい調査を行った。回答結果をみると(第2-2-5図(3))、意見交換の促進や相談部署の設置を求める声が多く、職場での意思疎通の円滑化が求められていることが示唆される。特に、高齢層(50~64歳)の雇用者においては、若年層(30~49歳)の雇用者と比較して、意見交換の促進を求める傾向にある。その他の制度については、若年層の雇用者は実力主義の人事を求める傾向が高齢層よりも高い一方、高齢層の雇用者は研修機会の増加を望む傾向が若年層より高い。若年層においては、高齢層が増えることによって自分の評価が不利にならないように年齢によらない評価を望んでいる可能性が考えられる一方、高齢層については、若年層との比較で自分のスキルのアップデートの必要性を感じている可能性が考えられる。

日本的雇用慣行の変革の重要性については、雇用者側はどのように考えているのかについて最後に確認しておこう。年功序列型の雇用制度に対する考えを聞いたところ(第2-2-5図(4))、30~40代においてはデメリットしかないと回答する割合が高く、50~64歳においてはメリットとデメリットの双方が存在するとの回答割合が高い。ただ、メリットのみの回答割合は、すべての年代においてデメリットのみの回答割合を下回っており、全般的にはデメリットが意識される傾向にあると考えられる。また、男女別では男性より女性の方がデメリットのみと回答する割合が高くなっている。女性や若年層を中心に、年功序列の雇用制度の弊害を感じる声が多いことから、日本的雇用慣行を見直していくことは、雇用者側の視点からみても望ましいと考えられる。雇用制度を構成する要素は相互補完的であるため、制度の変革は困難を伴うが、こうした労使間の意識が変化していくことで、日本的雇用慣行の見直しが加速していくことが見込まれる46

企業における新卒採用の通年化に対する意識

多様な人材を確保するためには、その入口となる採用についてもより柔軟にしていくことが求められる。日本的な雇用慣行においては、新卒の一括採用が一般的な採用方法であったが、人材の多様性との観点からは課題が生じている。以下では、新卒の通年採用に注目して、企業における通年採用に関する考えを整理する。

まず、内閣府企業意識調査により企業の通年採用の導入状況をみてみよう。調査結果をみると(第2-2-6図(1))、33.3%の企業では既に導入済み、22.4%の企業では導入を検討中と回答している。両者を合計すると半数を超えることから、今後新卒の通年採用がより一般的になっていくことが考えられる。ただし、28.7%の企業においては導入の予定がないと回答していることから、新卒の通年採用の普及はまだ途上にある。また、15.6%の企業ではそもそも新卒採用がなく、新卒ではなく中途・経験者採用を重視している企業も一定数存在することが確認できる47

そもそも新卒採用をしていない企業を除き、新卒の通年採用に関するメリット・デメリットの認識を企業に尋ねたところ(第2-2-6図(2))、メリット・デメリットの両方あると考える企業の割合は約64%と大多数を占めている。ただし、メリットのみと回答した企業の割合(約21%)は、デメリットのみと回答した企業割合(約8%)を大きく上回っており、全般的にはメリットの方がより意識される傾向にあると考えられる。

では、具体的にどのような点をメリット・デメリットと感じているのかについて、既に通年採用を導入している企業と導入していない企業に分けてみてみよう(第2-2-6図(3))。まず、メリットとしては、導入状況にかかわらず予定人数を確保しやすいことを挙げる企業が最も多い。次に多い項目としては、導入している企業ではより自社にマッチした人材の確保を挙げる割合が多いが、導入していない企業では同項目と閑散期に採用活動できるとの項目がおおむね同水準となっている。デメリットとしては、導入している企業では特にデメリットを感じていない企業が最も多いが、導入していない企業では採用後の研修・配属が困難であると回答する企業が最も多い。また、両企業とも採用コストの高さが2番目に多い項目となっている。既に導入している企業では、人数の確保やマッチングの向上等を中心に利点の方が多いと感じる傾向にあるが、導入していない企業では通年採用に一定のメリットは感じつつも、一斉採用・一括研修により採用・育成コストを抑えたいと考える傾向にある。

今後、多様な人材の活躍を促進していくためには、多様な人材を採用していくことが重要なのは言うまでもない。事実、人材多様性を重点目標としている企業では、採用活動の変更や革新を行っていることを示した研究も存在する48。ここでは新卒の通年採用を中心に議論を進めたが、企業の採用活動にあたっては中途・経験者採用も含め、より企業やポジションにマッチした人材が獲得できるように採用方針を柔軟に見直していくことが必要であると考えられる。

2 高齢者就業の促進には何が必要か

近年関心が高まっている65歳以上の就業についてはどのような制度・環境が必要か、という観点から分析を行う。分析は雇用者側と企業側の両面から行うが、雇用者側からの分析についてはコンジョイント分析法と呼ばれる就業意欲への影響を定量的にとらえることが可能な手法を利用する。

高齢期の望む就業環境の実現には、年功による賃金制度の見直し等が必要

65歳以降の雇用者は人数的にも増加しており、65歳以降も就業意欲のある雇用者は一定程度存在しているものの、30~50代の正社員の半数以上は65歳を超えて就業することを希望していない現状がある(前掲第2-1-4図)。

そこで、内閣府個人意識調査において、現状では65歳超の就業を希望していない30~64歳の者に対して、どのような変化があれば65歳以降も働いても良いと感じるにようになるかについて尋ねた。回答結果をみると(第2-2-7図(1))、どのような変化でも働かないと回答している割合は、どの年代でも1割程度であり、残りの9割程度の人は何らかの環境変化があれば65歳以降も働いてもよいと考えていることがわかる。具体的にどのような変化や制度を望んでいるのかをみると、どの年代においても定年後の賃金が大きく減らないことを回答する割合が最も高く、定年後の再雇用により賃金の大幅な低下が起きることが就業インセンティブを低くしていることがわかる。次に希望する変化としては、30~40代では残業がなくなるとの回答が多い一方、50歳以上では就労に対して中立的な公的年金制度を希望する割合が高くなっている。より多くの人が、これまでより長く多様な形で働く社会へと変化していく場合、年金制度についても、環境変化に適した制度となるように改革を進めていくことが求められる。また、4位以降の項目をみると、各年代とも職務の明確化が4番目であるが、5位は30~40代及び60~64歳(非正社員)は有給消化の義務化、50代は年齢によらない昇進制度、60~64歳(正社員)はテレワーク・フレックスと年代によるばらつきも若干みられている。

賃金変化は最も割合の大きい項目であったが、この問題は定年後の雇用パターンと密接な関係がある。実証研究によると、継続雇用制度利用者の仕事満足度は低く、雇用の安定性と引き換えに賃金の大幅な低下を受け入れていることが指摘されている49。内閣府企業意識調査では、継続雇用の場合、定年到達時の年収と比較して年収が6~7割となると回答する企業が約半数であった50

では、雇用者は定年制度について、どのような制度が望ましいと考えているのだろうか。内閣府個人意識調査によると(第2-2-7図(2))、50代までの雇用者は、定年60歳と継続雇用の組合せを希望する割合が4割程度と多くなっているが、現在働いている60~64歳は、定年65歳と継続雇用の組合せを希望する割合が45%程度と最も多い。また、30~50代においても定年65歳を支持する割合が3割強いることから、望ましい定年年齢が60歳と65歳とで大きく2分されていることわかる。また、そもそも定年制度がない方が望ましいとする割合については、回答者の年代により異なるものの15~25%存在している。このように、引き続き定年制度自体を支持する声が多いものの、高齢層を中心にそもそも定年制の廃止を希望する声も一定程度存在している。

しかし、実際の企業における定年の制度は、このような雇用者の定年に関する希望と大きくかいりしている。厚生労働省の2017年調査では、定年がない企業は5%を下回り、一律に設定された定年が60歳の企業は約74%、65 歳以上の企業は 約17%である51。OECD(2018)でも、現状の定年後の再雇用を前提とした制度においては、能力の高い高齢者を定年年齢で強制的に退職させる必要があること、再雇用後に低賃金で質の低い仕事に従事することにより高齢者の労働市場からの退出を促す可能性があること、低スキルの仕事を与えることで高齢者の生産性の維持・向上につながらないこと等の問題があるため、定年年齢を徐々に上げていくことや、将来的には定年制度の廃止も含めた制度改革が必要であると指摘している。定年年齢の延長が困難である要因の一つとしては、日本的雇用慣行では、年功が大きく反映される賃金カーブの存在が指摘されるところであるが、就業者の高い意欲を活かして65歳以降の就業促進を図るとの観点からも、生産性に応じた賃金制度へ変革していくことが必要である。また、高齢期の就業機会の確保の観点からは、定年や再雇用の見直し以外にも、他の企業への再就職の実現、個人とのフリーランス契約への資金提供、個人の起業支援、個人の社会貢献活動参加への資金提供等、多様な選択肢が想定し得る52

65歳以降の就業意欲に対しては、労働時間や賃金変化の重要度が高い

65歳以降の就業意欲として、どのような就労条件がどの程度影響しているのかについてより詳しくみていこう。ここではその手法としてコンジョイント分析と呼ばれる実験を行う53。具体的には、65歳以降の就業環境として、<1>職業(現在と同じ、異なる)、<2>仕事のやりがい(高い、普通、低い)、<3>60歳と比較した賃金変化(▲30%、▲50%、▲70%)、<4>週当たりの労働時間(8時間×5日、8時間×3日、4時間×3日)の4つの要素を考える。この4つの要素について、各要素の内容が異なる組合せは全部で54通り(=2×3×3×3)存在することになる。次に、この54通りの中から5つの選択肢を抽出して、被験者(30~64歳の正社員及び60~64歳の非正社員)の前に提示し、最も魅力的と思う選択肢を一つ選んでもらう54。この選択プロセスを10回程度繰り返すことで、各要素に対する人々の選好(効用値)を算出することが可能となる。

分析結果をみると(第2-2-8図)、全般的な傾向として、65歳以上の就業意欲(効用値)が高くなる環境として、現在と同じ仕事、やりがいは普通または高い、賃金変化が少ない、労働時間が短いという結果になっている。やりがいに関しては、低い場合における効用値の低下は大きいが、普通と高い場合における差はほとんどみられなかった。また、4つの就業環境のうち相対的にどれを重要視しているかをみた指標である重要度をみると、労働時間と賃金変化(それぞれ3割程度の寄与)の重要度が高く、次にやりがいと職業が同程度(それぞれ2割程度の寄与)の重要性であることが確認できる。

また、性別における違いをみると、女性においては労働時間による効用値の変化が極めて大きく、週あたりの労働時間が4時間×3日の場合のプラスの効用は男性の2倍程度だが、8時間×5日の場合のマイナスの効用は男性の1.5倍程度となっている。一方、賃金においては、男性の方の効用値の変動が女性より大きくなっていることから、女性は労働時間、男性は賃金変化に敏感になる傾向がみられる。次に、年代別における違いをみると、60~64歳ではより労働時間と職業の状況が、他の年代と比較してやや重要な要素を持っていることが確認できるが、年代間による差はそこまで大きくはない。

その他にも各人の効用値は、個人属性や年収・貯蓄状況といった前提条件によっても異なることが考えられるため、上記同様の効用値のプロットを、望ましいキャリアパス、現在の年収、60歳前半に想定される貯蓄額、の3つの属性別に行った(第2-2-9図)。

推計結果をみると、キャリアパスとして一企業キャリアを志向する者は、現在と同じ職業でいたいという志向が非常に強く、現在と同じ職業であることの効用値は、独立を考える者の2.1倍となっている。また、独立志向がある場合、仕事のやりがいに対する効用値が大きく、性別等では違いが観察されなかったが、やりがいが大きい場合と普通の場合で2倍以上の差が生じている。

現在の年収区分別にみると、特に現在の年収が多い者ほど賃金変化に対して効用値が大きく変化する傾向にあるのがわかる。特に賃金変化が▲70%になった場合の効用値のマイナスは、年収が1000万円以上の者は、200万円未満の者の3.4倍である。また、老後の貯蓄別にみると、労働時間に特に差がみられており、貯蓄が十分である者は長い労働時間働くことに対する負の効用が高くなっていることが確認できる。

以上、様々な属性別に傾向を確認したが、賃金水準と労働時間が就業意欲に対して与える影響は非常に大きいこと、やりがいのない仕事の担当になることによる負の効用は賃金の減少と同程度かそれ以上に大きいこと等を踏まえると、就業意欲を高めるための定年制度・再雇用制度のあり方についての見直しが必要である。その際、年功とともに上昇する賃金カーブについても、若年層の働く意欲を高め、高齢期の急激な賃金低下を避けるためにも、より生産性に見合ったものとしていくことが重要である。また、現状と異なる職業に就いた場合の負の効用は大きく、同時にやりがいの低下も見込まれるため、職業移動が必要な場合においては、教育訓練等のサポートを行うことが重要である。

企業の高齢者雇用に対する意識

以上は雇用者の視点であったが、企業側は65歳以降の雇用についてどのような問題意識を持っているのかも確認する。採用側としてどのような人物や資質であれば65歳以降も雇用してもよいと考えているのかについて、雇用形態を問わずに65歳以降も働ける企業と65歳で退職が必要な企業とに分けてみてみよう(第2-2-10図(1))。

まず、現在65歳以降の継続雇用がない企業でも、資質・条件にかかわらず雇用したくないと回答した企業は1%未満であり、一定の資質や条件があれば65歳以降も雇用しても良いと考えていることがわかる。具体的に求める項目についてみると、割合が大きい項目は4つであり、高い専門性、健康、働く意欲・意思、他の職員の教育・指導である。特に、高い専門性を求める割合は、65歳以降も働けるか否かにかかわらず約6割と高い水準となっている。専門職にある雇用者は就業意欲が高い傾向にあるとの研究もあるが55、企業サイドからも専門的なスキルを保有していれば、年齢によらず活用したいとの意向があると考えられる。65歳以降も働ける企業では、健康上支障がないことを求める割合が最も高くなっている。既に高齢者を雇用している企業では、健康確保が重要な要素となっていると考えられる。また、コンジョイント分析で重要と指摘された賃金については、賃金の引下げを条件に考える企業は12~15%程度と比較的限定的であることから、65歳以上でも能力や意欲等があれば、企業としても一定程度の賃金を支払う意志があることが示唆される。

次に、企業が65歳以上の雇用促進に対して、どのような制度が必要と考えているのかを確認しよう(第2-2-10図(2))。回答割合が多い項目として、柔軟な働き方と職務の明確化の2項目があげられる。柔軟な働き方の重要性は多様性においても重要な要素であったが、65歳以降の雇用に対しても重要な要素となる。また、その他の項目では、65歳以降も働ける企業では社内コミュニケーションの円滑化や長時間労働の是正を挙げる割合が多くなっている。実際に65歳以上を雇用している企業では、年齢が多様化することによるコミュニケーションコストの増加や就業期間の長期化に対応するためにWLBの改善が重要であると認識している可能性がある。一方、勤務可能な年齢が65歳までの企業では、社内のキャリアモデルの再構築を指摘する声が高くなっており、年功を基準とする賃金・人事制度を見直す必要性がより認識されていることが考えられる。

コラム2-1 高齢者雇用の促進について

日本の高齢者の就業率をみると((1))、2012年から2018年にかけて60~64歳では11.1%ポイント、65~69歳では9.5%ポイント、70~74歳では7.2%ポイント、75~79歳では3.4%ポイント上昇しており、高齢者の就業が進んでいることが確認できます。2018年における就業率は60~64歳が68.8%、65~69歳が46.6%、70~74歳が30.2%、75~79歳が16.6%です。高齢者の就業率の上昇には、厚生年金の支給開始年齢の引上げや高年齢者雇用安定法の改正に加え、健康寿命の延伸等もあって就業意欲の高い高齢者が増加していることなどが背景にあると考えられます。

2040年には団塊ジュニア世代が65歳以上になることもあり、今後も生産年齢人口の減少と高齢化の進展が見込まれています。こうした変化に対応し、より多くの人が意欲や能力に応じて就労・社会参加を行い、社会の担い手として長く活躍できるよう、高齢者の雇用・就業機会を確保していくことは非常に重要です。

高齢者の更なる就業促進の余地について、医学的な観点からみると10~20年前の高齢者と比較して現在の高齢者は加齢に伴う心身の機能の変化が5~10年遅くなっているとの指摘もあり56、こうした高齢者の「若返り」を考慮すると、更なる就業促進の余地は十分にあると考えられます。さらに、高齢期の就業は健康意識にも良い影響を与える可能性があり、中高齢者を対象としたパネルデータである厚生労働省「中高年者縦断調査」を用いた分析によると、ある年(t年)において「不健康」と答えた者が翌年(t+1年)に「健康」と答える確率(健康改善確率)やある年(t年)において「健康」と答えた者が翌年(t+1年)も「健康」と答える確率(健康維持確率)を、t年の就業者と非就業者とで比較すると、就業していた者の方が高くなることが示されています((2))。

また、高齢者の雇用・就業機会を確保するにあたっては、仕事の「質」が良いものであることも重要です。現在多くの企業で継続雇用制度が普及していますが、継続雇用で働く高齢者は、継続雇用以外の就業者と比べて、定年後の賃金低下の幅が大きく、仕事満足度や65歳以降の就業意欲が低いという指摘があります57。また、OECD(2018)による分析においても、他のOECD諸国と比較して、日本では仕事におけるスキル58の活用度が若年期から高齢期で大きく低下しており、高齢期におけるスキルの活用が不十分であることが指摘されています。定年後の処遇の不連続性を段階的に解消していくことや、中高齢者の学び直しの機会を充実させることなどを通じて、高齢者が就労しやすい環境を整備していくことが重要であると考えられます。

3 働き方改革はどこまで進展したか

多様な人材の活躍には、WLBや柔軟な働き方が重要であることは前述したが、ここではそのような働き方の改革がどの程度進展してきているのかについて状況を確認しよう。 企業におけるWLB制度の導入状況を確認した上で、人々の働き方にどのような変化がみられるのかについてモバイル・ビッグデータを利用した分析を行う。

企業における柔軟な働き方の導入に向けた取組が進展

各企業においては、働き方改革を進めるため、様々な取組が進展している。CSR調査により、2012年度と2017年度の両年に回答した上場企業等を対象に、柔軟な勤務形態に関する諸制度の導入割合をみると(付図2-3(1))、すべての項目において2017年度における導入企業の割合が高くなっていることが確認できる。2012年度と2017年度を比較して、導入割合の伸びが高くなっている制度としては、順に、在宅勤務制度(+26%ポイント)、サテライトオフィス(+16%ポイント)、保育設備・手当(+12%ポイント)、フレックスタイム制度(+5%ポイント)となっている。

また、この4つの制度それぞれについて、2012年度には同制度がなかった企業を対象に、2017年度までに制度を導入した企業と2017年度においても引き続き制度の導入がない企業の2つのグループに分割し、各グループにおける残業時間の伸び率59の中央値を確認した。結果をみると(付図2-3(2))、制度の導入がない企業では、残業時間が8~12%程度増加しているのに対し、制度を導入した企業では残業時間の伸びが0~3%程度になっていた。企業においては柔軟な働き方に資する制度の導入が進んでおり、従業員のWLBに寄与している可能性が指摘できる。こうした働き方改革の状況について、以下では少し視点を変えて、都市部の滞在人口の変化に着目したモバイル・ビッグデータを利用した分析を行うこととしたい。

男性や若年層等を中心に働き方改革による残業時間の減少が現れている可能性

都市部における滞在人口の変化という観点からは、働き方改革が進展するに連れて、19時以降においてオフィス街に滞在している人数が減少する一方で、飲食街等の繁華街に滞在している人数は増加するといった現象がみられることが予想される。本稿ではこうした都市部の滞在人口の変化が実際にみられているのかについて、各年2月の東京23区に注目した分析を行う。具体的には、通信会社の基地局を通して、あるエリアにおいてどの程度の携帯電話の端末数が存在しているかをベースに、そのエリアに滞在している人口を推計した位置データを利用する60。端末には契約者の属性に関する情報が含まれているため、滞在人口の推計は全体数だけでなく、性・年代・居住地別等に滞在者の属性を分けて集計することが可能となる。ここでは働き方改革の観点に着目するため、各エリアにおいて居住者を除いた男女20~59歳の人数に着目することとする。また、エリアの一単位は500m×500m(この単位を以下「メッシュ」とよぶ)であり、各メッシュに滞在していた人数を1時間単位で推計している。

まず、東京23区の全体でみた時間帯分布の動向から確認しよう。2018年2月と2019年2月の平日における5時~23時台の前年比(平均)をみると(第2-2-11図(1))、景気回復により就業者数の増加等もあり、全体的に東京に滞在している人口が増えており、日中61の20~59歳の滞在人口は、前年比で2.3%増加している。ただし、夜間62の伸びは前年比1.2%と日中の伸びと比較すると低く、夜間の滞在人口の増加は限定的である。働き方改革が進んでいても、全体的な活動人口が増えている場合においては、夜間の前年比が増加すると考えられるため、「前年比昼夜差」(夜の前年比-昼の前年比、東京23区全体では▲1.1%ポイント(=1.2%-2.3%))を評価軸として考えると、全般的に働き方改革が進展している可能性が考えられる。また、6時~7時台の早朝における前年比が高くなっていることから、時差Biz等の取組が影響している可能性も指摘できる。

次に、同様の分析を性別に確認する(第2-2-11図(2))。まず、日中の前年比を比較すると、女性は2.9%・男性が1.9%となっており、女性の伸びが男性よりも1%ポイント程度高くなっており、女性の労働参加の進展が確認される。一方、前年比昼夜差をみると、男性は▲1.2%ポイント、女性は▲0.7%ポイントであり、男性の方が日中と比較した夜間の伸びが小さいことが確認できる。また、男性においては日中よりも早朝の伸びが高くなっている一方、女性においてはそのような傾向は確認できず、早朝にタイムシフトしているのは男性であることがわかる。そもそも残業を行う主体は男性が中心であることもあり63、男性を中心に柔軟な働き方や残業時間の縮小が進展している可能性が示唆される。

さらに、年齢階級別についても動向を確認する(第2-2-11図(3))。20代、30代、40代については前年比昼夜差がそれぞれ、▲1.2%ポイント、▲1.5%ポイント、▲0.8ポイントであるなど、特に20代・30代の若年層を中心に働き方改革が進んでいる可能性が指摘できる。一方、50代については前年比昼夜差が0%であり、日中の前年比と夜間の前年比が同程度であり、50代において働き方の変化を確認することができない。ただし、グラフは省略しているが、朝方シフトの傾向は40代・50代において確認することが可能であり、50代においても働き方の変化は一部でみられている可能性が考えられる64。人口構成の影響もあり、30代においては日中の人数が▲1.1%と減少しているが、これは30代男性の減少が要因であり、労働参加が進む30代女性ではむしろ微増となっている65。また、年代・性別にみた前年比昼夜差では、20代・30代では男性の減少が大きいが、40代・50代では女性の減少が大きい点が特徴として指摘できる。

残業時間の削減により、オフィス街の夜間人口も減少

次に、メッシュ毎にそのエリアの特性を踏まえた分析を行う。まず、各メッシュにおける地域特性を大まかに把握するため、総務省・経済産業省「平成28年経済センサス‐活動調査」の町丁・大字レベルのデータとマッチングさせたデータを作成した。その上で、各メッシュにおける従業員の産業別割合を利用した機械学習(クラスタリング)により、メッシュを4つのグループに分割した66。各グループにおける前年比昼夜差の中央値をみると(第2-2-12図(1))、小売業・飲食業・娯楽業等の従業員割合が高い地域において前年比昼夜差の減少が▲0.2%ポイントと他の地域よりも小さくなっている。一方、金融業・情報通信業・卸売業等の従業員割合が高い地域では前年比昼夜差の減少が▲1.2%ポイントと大きいことから、相対的にオフィス街における夜間人口が減少し、繁華街に流れている可能性が示唆される。

ただし、メッシュ毎の分析における懸念点として、該当メッシュにおける滞在人口が少ない場合、小規模の人口変動でも前年比昼夜差が大きく変化してしまうことが考えられる。そこで、以下では該当メッシュにおける日中の滞在人口が2,000人以上67を対象として動向を分析する。なお、日中人口が2,000人以上のメッシュを対象に、上記同様のクラスタリング分析を行い、産業割合との関係性を確認したところ、小売業・飲食業・娯楽業等の割合が高い地域における前年比昼夜差の減少が、他の地域と比較して小さいという上記同様の傾向が観察された(第2-2-12図(2))。

日中の滞在人口が2,000人以上のメッシュは、東京の中心部に固まっているため、中心部におけるヒートマップを作成することで、その動向を確認する。その際、日中の活動人口がそもそも増加しているため、前年比昼夜差についてヒートマップを作成したところ(第2-2-13図(1))、多くのエリアでマイナスとなっており、昼間の増加率と比較すると夜間の増加率は低くなっている地域が多い。ある程度固まった減少がみられる地域としては、西早稲田、国立競技場、南青山等である。一方、夜間の前年比の方が高い地域としては、東新宿、九段下、永田町、霞ヶ関等の地域である。一部に例外的な地域もあるものの、全体的な傾向としては、より繁華街的な地域において夜間の増加率が日中より高くなる一方、その他の地域では夜間の増加率が日中より低くなっている傾向が確認できる。

最後に、滞在人口が多い主要メッシュの状況を確認する(第2-2-13図(2))。まず、西新宿、内神田、大手町といった主にオフィス街であると思われるメッシュでは、夜間の前年比が日中の前年比より小さいという傾向が確認できる。男性と女性を比較すると、男性の減少の方が大きい傾向があり、特に大手町でその傾向が顕著である。年代別にみると特に若年層を中心に減少が大きい傾向があるが、東京23区全体では減少していなかった50代についても前年比昼夜差がマイナスとなっている。次に、丸の内、銀座、西新橋といったより繁華街的な地域では、前年比昼夜差がプラスになっている。また、セグメント別にみると、性別の増加率はまちまちであることや、年齢階級別の大まかな傾向として40代~50代における増加率が大きいこと等が指摘できる。なお、これらの動向を踏まえると、東京23区全体でみて50代の前年比昼夜差が減少していなかった背景として、他の年代と比較して、働き方の変化が小さく68、帰宅時間が早くなると繁華街へ移動する傾向がある等の可能性が考えられる。

このようにモバイル・ビッグデータにより、滞在人口という観点から東京における20~59歳の状況をみてきたが、オフィス街を中心に相対的な夜間の滞在人口の減少がみられており、全般的には働き方改革による残業時間の削減がみられていると考えられる。また、属性別にみると、そもそも残業時間が多いと思われる若年層や男性において比較的その効果が現れていることが示唆されている。今後、働き方改革による残業時間の削減の取組を加速していくことで、より多様な人材の労働参加が進むことが期待される。なお、今回の分析では東京の限られた地域のみを対象としていることや、同一人物の動きを追跡できていない等の課題も存在している。より質の高い分析結果を提供できるように、ビッグデータを利用した分析についても引き続き研究を進めていくことが重要である。

コラム2-2 ビッグデータを活用した経済活動の把握

近年の情報通信技術の進歩により、社会において大量にデータが蓄積されるとともに、人工知能等によりその大量のデータを迅速に処理し、利用することが可能になりつつあります。ビッグデータは、企業におけるマーケティングや需要予測等に非常に有用ですが、経済・金融分析についても活用が進んでいます。ビッグデータの特性として、速報性があることと、数量だけでなく利用者・購買者の属性が把握できることなどデータの“粒度”が高いという特徴があります。一般的に、月次の統計は、その月が終ってから1~3ヶ月後に公表される場合が多いですが、経済動向の迅速な把握という観点からは、ある月が終ってすぐにその月の動向が把握できる方が望ましいと言えます。ここでは、ビッグデータを利用することで、経済状況をより迅速に把握する取組の例について紹介していきます。

本文ではモバイル・ビッグデータを利用して東京23区の滞在人口を推計したデータを利用しましたが、同じデータを利用して新幹線の駅があるエリアにおいてどの程度の人口がいるのかを推計したデータを利用します。新幹線の駅があるエリアにおいて携帯電話の端末数が多く観察された場合、新幹線を利用する人口も多く、観光業等が盛り上がっていると考えられます。2014年10月~2019年3月において、新幹線の駅があるエリアにおける滞在人口の前年比69と各種経済指標との相関をみると((1))、0.4~0.7程度の正の相関が観察されています。特に相関が高い指標として、月次の旅行状況を示す代表的な指標である旅行大手取扱額(12社)があります。実際に両者の動向をプロットすると((2))、前年比の水準は異なる部分もありますが、方向性において両者は似通った動きをしていることが確認できます。なお、直近の2019年4月においては、位置データ以上に旅行取扱額が大きく増加していますが、企業によっては出発日を基準に旅行取扱額を集計しており、ゴールデンウィーク期間分(5月分)が含まれているためと考えられます。

上記以外にも、例えば、平成30年度経済財政報告では70、スーパーやコンビニ等のレジで記録された販売商品の数量・価格等のデータ(PОS(point-of-sale)データ)と機械学習の手法を利用し、経済産業省「商業動態統計」における小売業計を一定程度予測できることを示しています。同報告では、新聞記事の内容がどの程度ポジティブ(ネガティブ)であるかを機械に判断させることで、文章(テキスト)情報を数値に変換し、消費者マインドと相関があることも示しています。その他にも、クレジットカードの情報から消費動向を把握しようとする取組や、衛生写真からGDPの予測を行おうとした分析などもあり71、様々な角度からの分析が進んでいます。

こうしたビッグデータの経済分析への活用にはメリットが多いですが、他方で、留意点として、データが把握できる範囲はマクロの経済活動のあくまで一部であることや、標本設計に基づいて標本抽出が行われる統計調査とは異なり、収集されたデータの特性をよく考慮する必要性があります。例えば、PОSデータであれば、データを取得した店舗に地域的な偏りがある可能性があります。また、クレジットカードのデータから全国の消費動向を予想しようとした場合、クレジットカードを保有している人の特性などを考慮する必要があります。したがって、ビッグデータを経済動向等の把握に活用する際には、こうしたデータの特性を考慮したデータ蓄積や集計の方法を検討することや、その利用・分析の方法を吟味することで、ミクロの情報が持つメリットを最大限活かしたものとすることが重要です。


(29)減少と回答した企業割合は30%、増加と回答した企業割合は20%。
(30)多様性変化指数については、7カテゴリー(女性正社員、女性管理職、中途・経験者採用(正社員)、外国人、限定正社員、65歳以上雇用者、障害者)の人材それぞれについて、非常に増加=1点、増加=0.5点、変化なし=0点、減少=▲0.5点、非常に減少=▲1点、該当者なし=0点、として点数を付与し、合計した値。多様性割合指数については、6カテゴリー(女性正社員、女性管理職、外国人、限定正社員、65歳以上雇用者、中途・経験者採用(正社員))の人材それぞれについて、各人材が雇用者等に占める割合により3分割し、高=3点、中=2点、低=1点、該当者なし=0点として点数を付与した後合計し、理論上の最大値である18で割った値。詳細は小寺・上島(2019)を参照。
(31)被説明変数が指数の場合はスコア化したことにより連続変数とみなし通常のOLSを行ったが、被説明変数が各人材の場合は離散変数であるため、順序ロジットを利用している。また、各人材について「変化」の回帰の際には、該当者なしの企業を除いて分析している。
(32)空欄は取組内容と多様な人材の増加や割合が高いとの関係性が発見できなかったものである。推計結果は付注2-4を参照。
(33)CSR調査は財務データが収録されていないため、売上等のデータについては、証券コードを利用してNEEDS-Financial QUESTより取得している。
(34)先行研究である山本(2014)と同様の結果となっている。
(35)森川(2018a)の推計によると、不確実性の高い残業や休暇取得の不確実性が仕事満足度に与える影響は、労働時間の削減等よりも大きいことが指摘されている。
(36)森川(2018b)においても、特に女性において勤務時間よりも通勤時間かが長くなることへの忌避感が強いこと、女性・若年層・既婚者・就学前児童を持つ人においてテレワークを積極的に評価する傾向があること等を指摘している。
(37)日本的雇用慣行の特徴としては、終身雇用、年功賃金、企業内労働組合の3点が指摘されることもある。
(38)大湾・佐藤(2017)を参照。
(39)長期雇用制度と引きかえに、賃金が退職金を含めて後払いシステムとなっている。若年期に「生産性>賃金」、高齢期に「生産性<賃金」とすることで長期間同じ企業で働くインセンティブを与えることができる。
(40)例えば、Kawaguchi and Ueno(2013)による実証研究では、企業規模や産業によらず長期雇用は減少していることが指摘されている。一方、加藤・神林(2016)は、勤続年数の長い者の割合に明確な減少傾向が観察されないなど、長期雇用慣行は崩れていないことを指摘している。
(41)前掲の第2-1-10図と同じ分類である。詳細は付注2-3を参照。
(42)本コラムは、内閣府(2006)、大湾・佐藤(2017)を参考に議論を整理した。
(43)中央大学大学院戦略経営研究科・ワーク・ライフ・バランス&多様性推進・研究プロジェクト(2014)では、WLBを支援するための管理職として、<1>自らメリハリのある働き方を行い自分自身の生活も大事にしていること、<2>部下のWLBを考慮し業務遂行を把握し支援していること、の2条件を指摘している。
(44)Kuroda and Yamamoto(2018)の個人データを利用した推計による。
(45)推計は順序ロジットを利用した。個人属性はすべて平均値で固定し、上司とのコミュニケーションの程度のみを変えた時に、被説明変数の4分類それぞれに分類される確率(理論値)をプロットした。
(46)日本的雇用慣行の見直しが望ましいにもかかわらず残っている背景として、山口(2017)は、日本的雇用慣行は一連の戦略的合理性の下で形成されてきたため、制度を構成する要素は相互補完的であり、環境変化により制度の弊害が顕著になっても、部分的な変更が難しいことを指摘している。
(47)JILPT(2017)の調査によると、規模の大きい企業では新卒採用、規模の小さい企業では中途・経験者採用に重点を置く傾向がある。従業員1000人以上の企業においては、6割弱の企業は新卒重視であるが、新卒採用、中途・経験者採用の双方を重視している企業も3割程度存在している。
(48)服部・矢寺(2018)では、採用活動の変更度・採用革新の有無をそれぞれ被説明変数とした重回帰分析を行い、採用上の重点目標のうち人材多様性重視の変数等が有意となったことを報告している。
(49)久米他(2019)は、個人属性をコントロールしても、継続雇用の利用者は、継続雇用を利用していない者と比較して、賃金や仕事満足度、65歳以降の就業意欲が低くなることを示している。
(50)企業の回答割合は以下の通り。ほぼ同程度:9.9%、8~9割:14.6%、6~7割:48.5%、4~5割:16.1%、~3割:2.5%、わからない:8.4%。
(51)厚生労働省「平成29年就労条件総合調査」。
(52)「経済財政運営と改革の基本方針2019」(令和元年6月21日閣議決定)においては、「70歳までの就業機会確保については、多様な選択肢を法制度上整え、当該企業としては、そのうちどのような選択肢を用意するか、労使で話し合う仕組み、また、当該個人にどの選択肢を適用するか、企業が当該個人と相談し、選択ができるような仕組みを検討する」と記載されている。
(53)コンジョイント分析は、消費者の購買意欲が高い商品プロファイルを作成する等のマーケティングで利用されることが多い手法であるが、労働経済学の分析でも利用されている(例えば、Heyma et al.(2014)や岡本他(2012)等)。また、ここで利用した手法は、選択型コンジョイント分析(Choice-Based Conjoint Analysis)に階層ベイス法(Hierarchical Bayes)を組合せたものであり、各人の効用値の違いを捉えることが可能となる。技術的な詳細はOrme(2006)等を参照されたい。
(54)この4つの要素以外にも、健康状態の要因も就業意欲に対して大きく影響を与えることが考えられるが、ここでは前提条件をそろえるため、健康上問題ないと仮定した上で質問している。詳細は上島・小寺(2019)を参照。
(55)戸田(2018)の厚生労働省「中高年者縦断調査」による分析。
(56)日本老年学会・日本老年医学会(2018)「高齢者に関する定義検討ワーキンググループ報告書」。
(57)久米他(2019)を参照。
(58)読解力(reading)、計算力(numeracy)、ICT、問題解決力(Problem solving)といったスキル。
(59)各企業における従業員一人当たり月平均残業時間の2012年度~2017年度の伸び率。
(60)データは株式会社ドコモ・インサイトマーケティング「モバイル空間統計®」を利用し、分析には総務省他(2017)を参考にした。同データにおいては国内約7,800万台(法人名義の契約データ等は除去)の運用データを基に、ドコモの普及率を加味するなどして、人口を推計している。本分析は、国内居住者のみを対象としているため、訪日外国人は含まれない。また、推計される人数は滞在時間により加重平均を行った値であり、例えば、100人が1時間、100人が30分滞在したエリアにおける人数は100人×1時間+100×0.5時間=150人となる。
(61)日中は11時台と13時台の平均値とした。
(62)夜間は19時以降(~24時)の平均値とした。
(63)総務省「労働力調査」によると、2018年において一週間の労働時間が49時間以上の雇用者のうち約8割が男性である。
(64)詳細は井上他(2019)を参照されたい。
(65)総務省「労働力調査」より2018年における就業者数の前年差をとると、20代、40代、50代ではプラスだが、30代ではマイナスである。また、男女別では、30代男性は▲13万人、30代女性は▲2万人であり、全国的な傾向ともおおむね一致している。
(66)クラスタリングにはK平均法を利用した(付注2-3も参照)。
(67)東京都「平成27年国勢調査による東京都の昼間人口」により、区部におけるメッシュ当たり(500m×500m当たり)の昼間就業者(20~59歳)の平均値を計算すると2,120人であったため、ここでは2,000人を閾値とした。
(68)一般社団法人日本能率協会(2018)「ビジネス─パーソン1000人調査」によると、働き方改革を実感している割合は、20代38.5%、30代34.3%、40代31.0%、50代25.0%であり、50代では3割を切る。
(69)各月の休日における滞在人口の平均値の前年比。分析の対象とした駅は、東京駅、品川駅、新横浜駅、名古屋駅、京都駅、新大阪駅であり、指標毎に最適な組合せを検討している。また、2017年における新幹線利用者数により各駅を加重平均している。
(70)内閣府(2018)の1章3節2を参照。
(71)例えば、クレジットカードの取組として「JCB消費NOW」、衛生写真とGDPの分析についてはHenderson et al.(2012)がある。
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