第3章 「Society 5.0」に向けた行動変化 第3節

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第3節 イノベーションの進展による労働分配率と生産性への影響

前節までにおいて、第4次産業革命の世界的な動向とそれが経済社会に与え得る影響について整理した上で、我が国経済が国際的にみて第4次産業革命に向けたイノベーションの優位性を維持・向上させるための課題について検討を加えるため、「イノベーションの基礎力」と「イノベーションへの適応力」の観点から、日本の強みと弱みを考察した。

こうした第4次産業革命に向けたイノベーションの進展は、企業の行動に様々な影響をもたらすと考えられる。第一に、第4次産業革命に向けたイノベーションは、情報通信やデータ処理などに係る資本財価格を大幅に低下させ、第2章で詳しくみたように、ルーティンに係る労働を機械で代替する動きを促進し、労働分配率を低下させる可能性が指摘されている。第二に、第4次産業革命に向けたイノベーションは、新たな製品やサービスの開発等を通じて企業の付加価値を高めるとともに、生産や業務プロセスを効率化し、さらにインターネットを通じた消費者と企業のマッチングを迅速化することなどによって、生産性を大幅に高める効果があると考えられる。

本節では、こうしたイノベーションの進展による労働分配率と生産性への影響について、先行研究をサーベイするとともに、企業レベルのデータを用いた実証的な分析を行うことで、我が国経済の今後の課題を考察する。

1 イノベーションの進展による労働分配率の変化

イノベーションは労働分配率にどのように影響するか

イノベーションの進展の企業行動への影響の中でも、近年とりわけ注目されているのは、第4次産業革命が労働分配率を低下させる影響を持つ可能性がある点である36。労働分配率低下の経済的要因については、アメリカを中心にこれまで主に以下のような点が指摘されてきた。

第一の要因は、ICT関連機器の急速な価格低下を背景にした資本財価格の相対的低下である(Karabarbounis and Neiman(2013))。一般に、企業は労働と資本(機械設備やソフトウェア等)を用いて生産やサービスの提供を行っていると考えられるが、資本財の価格が賃金に対して相対的に低下した場合は、企業は労働を節約してより多くの資本を用いるインセンティブが高まる。その際、資本財価格の相対的な低下の程度以上に、労働が資本に代替された場合(代替の弾力性が1よりも大きい場合)、賃金に労働者数を乗じて求められる総人件費は低下し、企業が生み出す付加価値が一定であれば労働分配率は低下することになる。

第二の要因は、貿易や低賃金国へのアウトソーシング(海外移転)の影響である。自国内の労働集約的な財・サービスの生産・提供をより賃金の低い国に移転することや、低賃金国からの労働集約的な財が多く輸入される場合には、自国内の労働集約的な産業の規模が縮小し、相対的に資本集約的な産業の比率が高まることによって、経済全体としてみたときに労働分配率が低下する可能性が考えられる。これまでの実証研究によれば、アメリカについて、中国などからの輸入の増大の影響を強く受けた産業ほど労働分配率が低下していることが示されている(Elsby et al.(2013))。

第三の要因は、労働組合の組織率の低下や短時間労働及び非正規労働の増加など、労働市場や制度の変化による影響である。

第四の要因は、規模が大きく生産性の高い一部の企業群(スーパースター企業)の経済活動に占める比率が高まることによって、労働分配率が低下する可能性である(Autor et al.(2017))。関税や輸送コストの低下、ICTの発達による遠距離での売買マッチングの効率化、第1節でみたネットワークの外部経済効果などによって、規模の経済性が高まり、特にインターネット関連企業を中心に世界規模で活躍する巨大企業が出現している(例えば、第1節でみたプラットフォーム・ビジネスを行う企業等)。こうした巨大企業では、市場の寡占化による利幅の拡大などによって付加価値一単位当たりの労働コストの低下が生じ、企業単位でみた労働分配率が相対的に低い水準にあるが、こうした巨大企業の市場シェアが増加することにより、経済全体でみた労働分配率も低下する可能性が考えられる。

ここでは、まず、一国経済全体について、国民所得に対する雇用者報酬の割合でみた労働分配率の動向を確認する。OECD加盟国を中心とする33か国について、1995年~2015年までの労働分配率の変化をみると、単純平均値では65.0%から64.8%まで0.2%ポイント低下している(第3-3-1図)。国別にみると、約半数の19か国において低下している一方、残り半数の14か国では上昇している。この中で、とりわけ、日本、ドイツ、アメリカなどイノベーションが進展している先進国において、労働分配率が低下していることが特徴として挙げられる。ただし、労働分配率の定義や計測方法には様々なものが存在するため、上記のデータは一定の幅をもってみる必要がある37, 38

労働分配率の低下は主に賃金の低下による

以下では、先に紹介した労働分配率低下に関する諸仮説を踏まえ、日本の労働分配率の低下の背景について、経済産業省「経済産業省企業活動基本調査」の個票データを用いて、実証的に分析する。

はじめに、この企業レベルデータを用いて、Autor et al.(2017)が提唱する「スーパースター仮説」を検証する。具体的には、マクロでみた労働分配率が低下していることを、労働分配率が相対的に低い一部の高生産性企業(スーパースター企業)のシェアが高まったことによってどの程度説明できるかを確認する39

まず、我が国企業の労働分配率の変化を、<1>個別企業の労働分配率の変化に基づく「個社効果」、<2>既存企業のシェアの変化による「構成変化効果」、<3>新規参入・退出などを映じた「その他要因」に分解すると40、労働分配率が低い一部のトップ企業のシェアが高まることによって生じる構成変化効果だけでなく、個社効果も、労働分配率の低下に大きく寄与していることが分かる41第3-3-2図)。また、その他要因はほぼ一貫してプラス寄与していることから、新規参入企業が分配率を押し下げているという仮説も否定される42。時系列的にみると、2000年代に労働分配率が低下した際には、個社効果と構成変化効果がほぼ半分ずつ程度寄与していたことがみてとれるが、2013年以降の労働分配率の低下についても、構成変化効果と個社効果がともに労働分配率低下に寄与している。したがって、日本においては、労働分配率の低下の要因が、一部の労働分配率の低い企業のシェアが拡大したことによるものとまでは言えない結果となっている。

上記の分析では、マクロの観点から、既存企業のシェアの変化が経済全体の労働分配率に与える影響を確認したが、実際に、高生産性企業の労働分配率の動向は、その他の企業のそれと比べてどの程度異なるものであるかを確認する。ここでは、TFP(Total Factor Productivity:全要素生産性)43でみて上位5%以内の高生産性企業を近似的にスーパースター企業とみなして44、それらの企業の労働分配率の動向を詳しくみてみよう。その際、労働分配率の動向は、定義上、一人当たり賃金の伸びが労働生産性を上回ると上昇し、前者が後者を下回ると低下する関係にあることから、ここでは、一人当たり賃金と労働生産性の動向に分けて分析する。

高生産性企業の労働分配率の動向を、1995年から2015年までの平均でみると、労働者一人当たりの賃金がほとんど変化しない中で、専ら労働生産性の上昇によって労働分配率が低下していることが確認できる(第3-3-3図(1)左図)。期間を分けて高生産性企業の労働分配率の動向をみると、1990年代後半と2010年以降については、賃金が上昇する中で、それを大きく上回って労働生産性が上昇する形で労働分配率が低下しているが、2000年代前半には専ら賃金の低下によって労働分配率が低下するという違いがみられる(第3-3-3図(2)上図)。なお、2000年代後半に労働生産性が低下して労働分配率が上昇しているのは世界金融危機による不況のためである。

こうした高生産性企業に加えて、その他企業を含む全企業でみた場合、1995年から2015年までの平均では、労働生産性は若干低下し、労働分配率をむしろ押し上げる方向に寄与している一方、一人当たり賃金の低下が専ら労働分配率の低下に寄与している(第3-3-3図(1)右図)。期間別に動向を詳しくみると、1990年代後半においては、全企業でも賃金が若干低下したことに加え、労働生産性が高まる形で労働分配率が低下している。また、2000年~05年代前半には、賃金の大幅な低下によって労働分配率が低下していたが、2010年~15年については、労働分配率はおおむね横ばいとなっている(第3-3-3図(2)下図)。

以上を踏まえると、日本においても、一部の高生産性企業では賃金の伸びを大きく上回って労働生産性を高めているために労働分配率が低下しているものの、企業部門全体でみると、全体としての生産性は上がっておらず、専ら賃金の低下が特に2000年~05年に顕著であったこともあり、労働分配率が低下したと考えられる。

資本コストの低下やグローバル化の影響等により、日本の労働分配率が低下

以上でみたように、我が国の労働分配率は、一部の企業の労働生産性の急激な上昇の影響というよりも、企業部門全体として賃金が低下してきたことが大きいと考えられる。先に述べたように、人件費を抑制し労働分配率を低下させる方向に働く要因として、ICT関連機器等の資本財の価格の相対的低下を背景にした、労働の機械による代替の影響や、労働集約的な生産やサービスを海外に移転させる動き、さらに短時間労働及び非正規労働の増加といった要因が考えられる。ここでは、経済産業省「経済産業省企業活動基本調査」の個票データを用いて、労働分配率の変化を被説明変数とし、<1>資本財価格の変化、<2>企業の海外売上高比率の変化(グローバル化の代理変数)、<3>パートタイム労働者比率の変化(労働者の構成変化の要因)を説明変数としたモデルを推計することにより、それぞれの要因による影響の大きさを定量的に分析する。

なお、資本財の種類とその相対価格の低下によって労働がどの程度代替されるかを詳細に把握するために、内閣府「国民経済計算」の固定資本マトリックスから、5種類の分類で資本財(<1>機械・設備及び知的財産生産物<全体>、<2>機械・設備のみ<<1>の内訳>、<3>機械・設備のうち情報通信機器<<2>の内訳>、<4>知的財産生産物のみ<<1>の内訳>、<5>知的財産生産物のうちコンピュータソフトウェア<<4>の内訳>)を選定し、それぞれの分類ごとに5つのモデルを推計した(なお、海外売上高比率及びパートタイム労働者比率は、どのモデルでも共通のものを用いた)45

資本財価格について機械・設備及び知的財産生産物を用いたモデルの推計結果をみると、資本財価格は有意にプラスとなっており、また、その絶対値は、海外売上高比率やパートタイム労働者比率の係数より大きいことが分かる(第3-3-4図(1))。このことから、労働分配率の低下の大部分は、資本財の相対価格の低下に影響されていることが示唆される。特に、資本財の種類別でみると、コンピュータソフトウェアの相対価格の低下による影響が、他の資本財に比べて極めて大きくなっている(第3-3-4図(2))。このことからは、企業において、ソフトウェア等の価格低下によって、経理・人事給与・販売・物流管理など幅広い業務でIT化が進む中で、一部の労働が代替され、労働分配率の低下につながった可能性が示唆される。

次に、企業のグローバル化の度合いの影響についても、海外売上高比率の係数が有意にマイナスになっていることから、企業のグローバル化の度合いが高いほど、労働分配率が低下することが示唆される(前掲第3-3-4図(1))。また、パートタイム労働者比率の係数が有意にマイナスとなっていることから、労働者の構成においてパートタイム労働者の比率が高まることによっても、労働分配率が低下することが示唆される(前掲第3-3-4図(1))。

以上を踏まえると、日本においても、資本財の価格の相対的低下、企業のグローバル化の動き、さらに短時間労働者の増加といった要因が労働分配率の低下に寄与した可能性が示唆されるが、その中でも、影響の大きさとしては、資本財価格の低下の寄与が大きく、特にソフトウェア価格の低下の影響が大きいことから、IT化の進展といったイノベーションが一定程度労働分配率の低下をもたらしてきた可能性が考えられる。

2 イノベーションの進展と生産性成長率

前項では、イノベーションの進展に伴う資本コストの低下が、労働分配率の低下に一定程度寄与していることを確認したが、ここでは、経済成長の源泉となるイノベーションが、我が国の生産性上昇率の向上にいかに貢献しているかを、企業レベルデータを用いた分析によって確認する46

具体的には、IoTやAIといった第4次産業革命に関連した技術の導入や社員の教育訓練の取組の状況が企業の生産性に与える影響を分析するとともに、経済全体でみたマクロの生産性を考える上で、イノベーションを担うスタートアップ企業など新規企業の参入がどの程度生産性に影響を与えているかを分析する。

新技術と教育訓練の組合せにより、生産性が向上

はじめに、IoTやAIといった第4次産業革命に関連する技術の導入が企業レベルの生産性にどのように影響するか、また企業における教育訓練など人材育成の取組が新技術の導入と補完性を持って生産性をさらに高める効果があるかを検証する。

推計に使用するデータは、内閣府による企業アンケート調査の個票データである。具体的には、2018年調査(働き方や教育訓練に関するアンケート調査)と2017年調査(第4次産業革命に関連する新技術の導入に関するアンケート調査)の双方に回答した企業をマッチングしたパネルデータを構築し、分析に用いている。

推計方法については、新技術と教育訓練の組合せが生産性に与える因果関係を把握するため、IoT及びAIを「導入済み」または「導入を検討している」と回答した企業(処置群)と、そうでない企業(対照群)を、傾向スコアマッチング法により対応させ、TFP成長率の差を推計している47

推計結果をみると、平均処置効果はいずれの技術でも有意にプラスとなっており、IoTやAIを導入した企業では、その他の条件がほぼ同じで、かつ、これらの新技術を導入していない企業と比べて、生産性の伸びが高い傾向があることが示唆される(第3-3-5図)。また、そうした新技術を有効に活用するための教育訓練について、「正社員・非正社員関係なく、広く教育訓練を行う」と回答した企業に限定したサンプルにおける平均処置効果をみると、有意にプラスとなっており、その値は全サンプルにおいて推計した場合のものより大きくなっている。このことから、新技術を導入し、適切な人的投資と組み合わせている企業では、着実に生産性が高まっていることが示唆される。

企業の参入・退出の不活発さが生産性上昇を鈍化させている可能性

次に、日本企業の参入・退出の不活発さによって、資本や労働といった経営資源が適切に配分されず、日本企業全体の生産性が停滞している可能性について検証する。第2節で指摘したように、需要構造の変化に十分に適応できない企業、あるいは技術の陳腐化を食い止められない企業の生産性は中長期的に低下傾向を辿る可能性が高い。こうした企業から、新しい技術やアイデアを持ち高い生産性を実現し得る企業へと経営資源が適切に再配分されない場合、経済全体の平均的な生産性は低下すると考えられる。

ここでは、こうした個別企業の生産性の違いが、日本企業全体の集計された生産性にどのような影響を与えるかについて分析するため、<1>前期以前から存続している企業の生産性変動による要因(既存企業要因)、<2>前期に参入した企業の生産性変動による要因(参入企業要因)、<3>当期に退出した企業の生産性変動による要因(退出企業要因)、の3つの要因に分解する48

分解結果をみると、参入企業要因は想定通り一貫して全体の生産性を押し上げる方向に寄与している一方、退出企業要因は逆に押下げに働いており、平均よりも生産性が相対的に高い企業が退出し、平均よりも生産性が低い企業が残ってしまっている可能性が示唆される。こうした中で、既存企業要因については、2001年~05年の期間や2011年~15年の期間ではプラスに寄与している一方、世界金融危機時を含む2006年~10年の期間ではマイナスに寄与していることから、主に景気動向に従って推移しているものと考えられる(第3-3-6図(1))。

退出企業要因に関してより詳細にみるために、生産性の低い企業が、時間とともにどの程度生き残るのかという割合(低生産性企業の存続率)を計算すると、低生産性企業は時間とともに生存確率が低下(=市場から退出、もしくは生産性向上により低生産性サンプルから離脱)しているが、その低下スピードはさほど速くなく、例えば、2010年を起点としてみて、5年後でも約半数近くが残っている(第3-3-6図(2))。また、同様にアメリカの低生産性企業の存続率を算出した先行研究をみると、アメリカの上場企業の存続率が30%程度であることを考慮すると、日本では低生産性企業の存続率が相対的に高いことが分かる49

以上の分析結果を踏まえると、<1>企業の新規参入は生産性を押し上げる方向に寄与はしているものの、2000年代初めと比べると2011年以降については寄与が小さくなっていること、<2>生産性の低い企業が退出せずに存続していることが生産性を押し下げている可能性があること(退出企業要因がマイナスに働いていること)が示唆される。


(36)例えば、IMF(2017)やOECD(2018)においても、先進諸国の労働分配率の低下の背景について詳細な分析がなされるなど、国際的にも大きな関心が寄せられている。
(37)労働分配率の定義については、例えば、マクロ経済を対象として国民経済計算における「雇用者報酬/国民所得」を算出する場合と、本節のように民間法人企業部門の労働分配率を分析の対象として、企業の財務諸表等のデータを用いて「人件費/(人件費+営業利益等)」を算出する場合とでは、概念範囲が異なっており、当然のことながら指標の動向も異なり得る。
(38)労働分配率の計測方法については、そもそも技術革新の成果が統計で十分に捕捉できておらず、労働分配率の分母となる付加価値が過小評価されており、実際の労働分配率はより低くなるのではないかという可能性も指摘されている。統計上の計測が困難である例としては、Oliner et al.(2017)やGoodridge et al.(2013)、Barnett et al.(2014)等は、無形固定資産投資の計測について、組織資本がGDP統計の投資項目に計上されないため、情報関連投資の初期段階において生産性が過小評価される傾向にあり、過去の無形固定資産投資の効果が統計に計上されるのが遅れる可能性を指摘している。もっとも、こうした計測の問題の深刻さを巡っては、識者の見解にばらつきが大きい状況にある点には留意が必要である。
(39)アメリカについて分析したAutor et al.(2017)の結果をみると、生産性が高く、労働分配率が低い一部のトップ企業のシェアが高まることにより、マクロでみた労働分配率が低下していることが示唆されている。
(40)分解方法の詳細は、第3-3-2図の備考を参照。
(41)日本銀行(2018)でも、異なるデータセットを用いて、おおむね同様の結論を得ている。
(42)なお、経済産業省「経済産業省企業活動基本調査」は、産業構造の変化に応じて、調査対象範囲の業種を順次拡大させてきているため、こうしたサンプルの拡大も「その他要因」に反映される点には留意が必要。また、同調査は、足下でも、農林水産業や建設業を調査対象としていないため、集計された労働分配率の動向は、財務省「法人企業統計」や内閣府「国民経済計算」を用いて算出した場合とは異なる動きとなり得る点にも注意。
(43)TFPの算出方法については、付注3-1を参照。
(44)今回の分析に用いた経済産業省「経済産業省企業活動基本調査」の個票データでは、例えば、電子部品・デバイス、生産用機械、卸売業(商社等)、情報通信業などに属する企業が該当する。
(45)このほか、ルーティン業務は機械による代替が起こりやすいとの仮説を検証するため、推計モデルの説明変数に、資本財価格の変化と各企業が持つ労働のルーティン度合いの交差項を加えている。この交差項については、知的財産物のみが有意にマイナスとなっており、労働のルーティン度合いが低い企業においては、知的財産物によって完全に労働が代替され労働分配率が低下する訳ではないことが分かる(詳細は付注3-2を参照)。
(46)成長会計の枠組みで考えると、労働生産性の成長率は、資本装備率とTFP成長率に要因分解できること、また、長期的な定常状態において、産出量と資本投入量が等速で成長する均斉成長経路が実現すると仮定すると、資本装備率の成長率はTFP成長率に依存して決定されることから、以下では、TFP成長率を対象に分析を行う。
(47)詳細は付注3-3を参照。
(48)分解方法の詳細は、第3-3-6図の備考を参照。
(49)中村・開発・八木(2017)は、日本とアメリカの上場企業を対象に、1998年~2009年の個社別TFPを計測し、同様に低生産性企業の存続率を算出している。彼らは、経年に伴った低生産性企業の存続率(T=5年時点)について、日本企業では約50%程度であるのに対し、アメリカ企業では約30%との算出結果を得ており、その背景として、<1>アメリカでは生産性が低下傾向にある場合、金融機関や機関投資家等の株主からのプレッシャーによって、速やかに市場から退出するか、経営状況を改善する一方、<2>日本では収益悪化や生産性低下が生じても、しばらくの間は、金融機関等が支援を行うことで市場にとどまり、経営状況がさらに悪化することが少なくない、と指摘している。
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