第2章 新興国経済:金融危機の影響と今後の展望 |
第4節 世界金融危機とインド
1.インド経済の現状
●インド経済は金融危機発生以降一段と減速
インド経済は、物価上昇率の高まりなどを背景に金融政策を引き締めていたこともあり、08年に入ってからの実質経済成長率は08年1〜3月期前年同期比8.6%、4〜6月期同7.8%、7〜9月期同7.7%と既に減速基調にあった。さらに、その後、世界的な金融危機の影響が加わって、成長率は一段と減速し、08年10〜12月期は同5.8%と、04年10〜12月期(同5.3%)以来4年ぶりの低い伸びとなっており(08年通年の成長率は前年比7.3%)、09年1〜3月期は同5.8%と横ばいとなった(第2-4-1図)。
実質経済成長率を産業別にみると、08年10〜12月期以降は、金融危機発生前に比べて製造業やIT・ソフトウェア産業を始めとした商業・ホテル・運輸・通信部門の大幅な減速が目立つ。また、インドは就業人口の5割超が主に農業に従事する農業大国であるが(第2-4-2表)、農林水産業の生産はおおむね安定成長が続いている。08年10〜12月期は前年比マイナスの伸びとなったが、この背景には、北東モンスーンがもたらした雨量が前年同期に比べて少なかったことなど(1)が挙げられる。
今後、外需の早期回復は見込まれないことから、製造業やIT・ソフトウェア産業等は低調に推移するとみられる一方、農業生産については、09年度(09年4月〜10年3月)(2)のモンスーンにおいて通常の降雨量が見込まれているため、安定的に推移するとみられる。
また、成長率を需要項目別にみた場合(3) 、08年10〜12月期以降をみると、総固定資本形成が大幅に減速している。これは、金融危機発生以降、外需の落ち込みや海外からの直接投資の減少等がみられることが要因として挙げられる(第2-4-3図)。一方、個人消費は08年1〜3月期から7〜9月期にかけて既に減速していたが、10〜12月期以降はほぼ横ばいで推移しており、減速に歯止めがかかっている。こうした背景には、08年9月以降に実施された公務員給与の21%以上の引上げ (4)や物品税引下げ(後述)等が挙げられる。なお、10〜12月期以降の政府消費の伸びも08年9月以降大幅に高まった。