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第1章 物価安定下の世界経済

 世界経済は、2003年後半以降着実に回復を続けている。また、1990年代以降の世界経済にみられる特徴の一つとして、物価安定が顕著となっていることが挙げられる。特に、03年秋以降原油価格が高騰する中で、各国においてインフレ圧力が懸念されつつも、物価は比較的安定した動きが続いている。
 このような世界的な物価安定は、物価上昇率や経済成長率の変動(ボラティリティ)の縮小と同時に起こっており、超安定(グレート・モデレーション、あるいは、グレート・スタビリティ)と指摘されるようにもなっている(1)。  本章では、世界の物価の動向について概観するとともに、物価安定の要因を分析する。

第1節 インフレを抑制し回復続く世界経済

1.物価安定続く世界経済

●安定続く世界の物価
 世界の物価上昇率は、1990年代初における約30%から4%へと低下した(第1-1-1表)。特に、最近では、原油価格高騰や景気の順調な回復等を背景に各国においてインフレ圧力が懸念されつつも、物価はおおむね安定した動きが続いている。
 先進国についてみると、70年代には、物価の高騰と景気後退が同時に進行する「スタグフレーション」を経験し、80年代前半には物価上昇率が8%台であったが、以降低下がみられ、特に90年代後半以降は2%程度で極めて安定している。途上国では、アジアにおける物価安定が顕著になっているが、高インフレ国であったラテンアメリカを始めとするその他地域においても、基本的に安定化する傾向がみられる。特にラテンアメリカでは、80年代以降累積債務問題から高インフレに直面し、90年代前半には物価上昇率は263.5%となった。しかしながら、緊縮財政等のインフレ抑制政策の実施や、通貨危機後の変動相場制への移行等により(2)、90年代末から物価上昇率は1桁台まで収束している。
 また、最近における原油・商品価格の高騰局面である2003年秋以降をみても、消費者物価上昇率は先進国では抑制されている。世界全体でみても、過去の高騰局面と比べ、抑制された状況といえる。
 物価上昇率のばらつきを表す分散も、縮小している。物価上昇率の安定(ばらつきの縮小)は、(1)価格機能等市場メカニズムを改善する、(2)家計・企業等経済主体の先行きの計画を立てやすくする、(3)インフレリスクをヘッジするための資源を節約することができる等の利点がある(3)

● 回復を続ける世界経済
 一方で、世界の実質経済成長率は、90年代初の2%台から4%前後へとやや高まっている(前掲第1-1-1表)。先進国では、90年代前半の2〜3%程度の成長率となっているが、成長率のばらつき(分散)をみると、90年代以降成長率がむしろ安定するようになっている。途上国の成長率は、アジアは90年代以降おおむね7%台となっているが、その他地域の多くは成長率が高まっている。
 2000年以降の世界経済は、成長と物価安定双方の面で、かつてと比べ良好なパフォーマンスを示しているといえよう。


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