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第1章 物価安定下の世界経済

第1節 インフレを抑制し回復続く世界経済

2.原油価格高騰とその背景

次に、物価安定の背景を分析する前に、最近の原油価格高騰とその背景をみる。

●高騰する原油及び一次産品価格
 03年秋以降原油価格は大幅な上昇基調にある(第1-1-2図)。国際石油市場における代表的指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)先物価格(中心限月)は、03年9月には28.31ドル/バレルであったが、04年10月には53.09ドル/バレルとなり、06年4月末には71.88ドル/バレルとなっている。また、WTI以外の主要銘柄である北海ブレンド、ドバイの価格にも大幅な上昇がみられている。
 また、一次産品価格(商品価格)についても、世界的な景気拡大、特に中国に代表される新興国の台頭等を背景に上昇が続いている。トウモロコシ、金、原油等主要国際商品17銘柄の先物価格から算出されるCRB(Commodity Research Bureau)先物指数(1967年=100)をみると、生産過剰やアジア通貨危機による需要減退の影響等により、99年にはほぼ四半世紀ぶりの低水準(99年平均値194.8)となった(第1-1-3図)。02年の底打ち以降上昇基調となり、05年には313.11ポイントと過去最高水準となっている。

●今回の原油価格高騰の特徴
 今回の原油価格高騰の特徴としては、過去の二度のオイルショックの時と異なり、一時的な供給ショックによるものではなく、供給能力に一定の制約がある中で、アメリカ、中国を中心に需要の大幅増が続いていることにより、基本的に需給がタイトになっているという構造的要因が背景となっている、という点がある。それに加え、金融緩和の中で投機資金が流入していることが指摘されている(4)
そこで、今回の原油価格高騰を、過去の高騰局面と比較してみる。ここでは、過去の世界経済白書でも取り上げられた3回の高騰局面とも比較しつつ、今回の局面をみることとする(第1-1-4図)
 これまでの原油価格高騰局面としては、第一次石油危機(74年)、第二次石油危機(79年)、アジア金融危機後のOPEC総会による減産をきっかけとする上昇(99年)等がある。過去3回の高騰局面と比べると、今回は相対的に緩やかな上昇を続けている。
 一方、消費者物価の動きをみると、二度に渡る石油危機の際にはかなりの上昇がみられ、4年間に2倍弱になった。しかし近年の高騰局面では、消費者物価上昇は原油価格上昇と比べ抑制されており、特に今回の高騰局面は約2年が経過した現時点では、約7%と石油危機時に比し5分の1の上昇にとどまっている。先進国と途上国で区分すると、特に先進国では、石油危機時の上昇が25%程度に比し今回は約4%と6分の1、途上国では、石油危機時に50%程度の上昇がみられたものの、今回は約10%と5分の1にとどまっている。


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