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第1章 物価安定下の世界経済

第2節 原油価格高騰下での世界的物価安定持続の要因:The Great Moderation?

 前節でみたように、世界経済は、今回の原油等の一次産品価格高騰が起こる以前から物価は安定という特徴がみられていた。特に90年代後半以降2000年初までにみられた世界的な物価安定の要因については、これまでも様々な分析が行われており、主な要因として、一次産品価格の低下、構造改革や規制緩和、グローバル化の進展、より緊縮的な財政政策のほか、中長期的な要因として適切な金融政策運営等が指摘されている(1)。その意味で、現況はもともと物価安定という特徴がみられていた中で、一次産品価格高騰にもかかわらず、その傾向が持続しているととらえることもできよう。
 本節では、まず(1)原油価格変動の物価への影響の低下についてみた上で、(2)グローバル化を含めた経済構造の変化やそれを背景とした企業の価格設定行動の変化、(3)財政・金融政策運営の変化、について、主要国・地域(以下、主要国)を中心にみていく。また、金融政策運営については、さらに第3節で主要国を中心に解説する。

1.原油価格変動が国内物価にもたらす影響の低下

●一次産品価格から消費者物価への影響は低下
 前節でみたように、一次産品価格高騰が続く中で、消費者物価は世界的に安定している。
 そこで、主要国について、一次産品価格変動が国内の消費者物価に及ぼす影響を、(1)一次産品価格が各国の輸入物価に及ぼす影響、(2)輸入物価が消費者物価に及ぼす影響、の二段階に分けてみてみよう。まず、一次産品価格と輸入物価の関係をみると、一次産品価格が上昇すると輸入物価も上昇するという関係がある。この関係については、70年代と90年代以降で特に大きな変化はみられない(第1-2-1表)
 ところが、次に、輸入物価と消費者物価の関係をみると、80年代までは輸入物価が上昇すると消費者物価コアも上昇するという関係がみられていたが、90年代以降はその影響が低下し、かつ統計的に有意でなくなっている。
以上を踏まえると、かつては一次産品価格が上昇すると、輸入価格も上昇し、それが国内の消費者物価まで影響が波及していた。これに対し、90年代以降では、一次産品価格が上昇した場合、輸入物価には依然として一定の影響を及ぼすが、輸入物価が上昇しても国内の消費者物価コアにはほとんど影響を与えなくなっている。

●原油依存度の低下
 一次産品価格が高騰しているにもかかわらず、消費者物価が安定している要因の一つとして、先進国における原油依存度の低下が挙げられる。世界の原油依存度をエネルギー効率性(GDP原単位あたりの原油消費量)でみると、71年と比べ、04年には約2分の1に低下している(第1-2-2表)。
 先進国における原油依存度の低下の背景には、70年代における2度にわたる石油危機の教訓による政府・企業の努力、技術進歩、サービス経済化の進展に加え、グローバル化工業製品の生産が途上国に移転しているため、製造業比率が低下していることも寄与している(2)。一方、途上国のエネルギー効率性は改善こそしているものの、先進国と比べ依然として低い状況にある(3)


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