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1.回復テンポが大きく鈍化したアメリカ経済

 世界金融危機発生後に実施された景気刺激策による下支えもあり、09年半ば以降、実質経済成長率は堅調に回復し、10年前半には前期比年率で3%を大きく超える成長となっていたが、10年後半から低下し、11年に入り回復テンポが大きく鈍化した(第2-2-1図)。特に、10年の4四半期を通じて前期比年率3%前後の伸びを示していた個人消費が、11年1~3月期に同2.1%、4~6月期に同0.7%、7~9月期に同2.3%の伸びとなるなど、11年に入り鈍化した。この背景には、家計のバランスシート調整が依然として継続する中、雇用の回復の遅れやガソリン価格の高止まりなどにより消費が抑制されたことがあげられる。さらには、11年3月の東日本大震災の発生に伴うサプライチェーンの寸断による部品供給の停止・減少、11年夏に南西部を襲った歴史的な洪水・竜巻といった一時的な要因が重なったことも個人消費等の鈍化に影響した(第2-2-2図)。

第2-2-1図 実質経済成長率の推移:11年に入り景気回復が弱まる
第2-2-1図 実質経済成長率の推移:11年に入り景気回復が弱まる
第2-2-2図 2011年入り後のアメリカ経済
第2-2-2図 2011年入り後のアメリカ経済

 全米経済研究所(NBER)が景気判断に用いる指標(実質経済成長率、実質総売上(卸・小売売上高)、実質個人所得、雇用者数、鉱工業生産)をみると、07年12月を景気循環の山とする今般の局面では、他の局面と比べて景気後退が深刻であり、また、回復ペースは極めて緩慢である。09年半ばを底に緩やかな回復が続き、11年春以降は横ばいとなっている(第2-2-3図)。11年夏には、NBERの元所長であるフェルドシュタイン氏(ハーバード大学教授)やニューヨーク大学教授のルービニ氏等の有識者から景気後退に陥る可能性も示唆され、また、9月に行われた民間調査機関に対するアンケートでは「3割強の確率で12年末までに景気後退に陥る」との見方が示されるなど、弱い景気回復の先行きを懸念する声も聞かれるような状況であった。

第2-2-3図 景気判断関係指標の動き:未だ危機前に戻らず、11年半ばより横ばい
第2-2-3図 景気判断関係指標の動き:未だ危機前に戻らず、11年半ばより横ばい
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