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2.金融政策上の論点

 財政支出拡大の余地がないに等しい中で、金融政策に期待が集まりやすい状況が続いており、実際の政策決定が行われる前に、もしくは、実際の政策決定とは無関係に、市場参加者の期待によって金融資本市場が大きく動くこともある。例えば、アメリカでは、11年6月の量的緩和第2弾(QE2)完了後、景気回復が極めて弱くなったことにより市場参加者の間ではQE3への期待が高まり、バーナンキFRB議長のジャクソンホール講演前には追加緩和期待が先行し、株式市場等が変動するという状況があった1。このように市場の期待が大きいことから、市場参加者の期待形成を一歩間違えれば、期待が大きい分、金融政策運営が金融資本市場に与える影響も大きいと考えられる。このため、市場参加者の期待形成をどのように図っていくかが、これまで以上に重要となっている。

 次に、先進各国の金融緩和が世界経済にもたらすリスクへの配慮が必要である。欧米では緩和的政策の長期化が避けられない状況にある一方、新興国では引締めスタンスが続けられていることから、先進国と新興国の金利差や経済成長のスピードの差により、高収益を求める投資家の資金が新興国に流入しているとみられる2。為替制度が変動に許容的でない国々では、大量の資本流入が起こると、自国通貨の増価圧力を抑えるため、自国通貨売りの為替介入を行うこととなり、バブルの温床となる可能性がある。加えて、欧米の金融緩和により世界的に過剰流動性が増す場合には、そうした国々のバブル懸念が更に増幅される可能性がある。一方、世界経済の情勢に敏感な短期資金の大きな流出入は、当該国の通貨の安定にも悪影響を及ぼすと考えられる。こうした点にも留意が必要である。


1 詳細は、コラム2‐5参照。
2 詳細は、内閣府(2011)を参照。
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