3.論点を踏まえた各国の現状の評価
上記で整理した論点にかんがみて、各国の現在の取組はどのように評価できるであろうか。
まず、アメリカについては、財政政策に関しては、11年8月に成立した2011年予算管理法により財政赤字削減の枠組みが法制化された。そして、同年11月の超党派委員会による協議の決裂を受け、2013年から2021年までに1.2兆ドルの歳出を強制的に削減する措置が発動されることとなった。ただし、この措置は歳出削減額を各年で均等に配分するため、景気回復の状況に照らして適切な財政再建ペースとなるとは限らないことに留意が必要である。一方で、金融政策に関しては、FRBが時間軸の明確化やツイスト・オペの実施3等を通じて景気回復に目配りするとともに、バーナンキFRB議長の議会証言や政策決定後の記者会見等を通じ、市場の期待の安定化を慎重に行っていると評価できる。
次に、ヨーロッパについては、財政政策に関しては、財政赤字削減策や財政規律を高めるための法的枠組みの構築等の面でEU及び各国の努力がみられるものの、南欧諸国等の財政規律に対する金融資本市場の懸念が依然として根強く、また、一部の国においてゼネストが行われているような状況では、何よりも、各国が市場の信認と国民の理解を得ることが急務である。金融政策に関しては、ECB・BOEともに、実体経済や金融資本市場の動向を見極めながら非伝統的金融政策の実施を決断していると評価できるが、特にECBについては多少の更なる利下げ余地もあることから、物価上昇率の動向如何によっては景気への一層の配慮がなされてよいと考えられる。
3 アメリカの金融政策については第2章第2節を参照。