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第 II 部 世界経済の見通し

第1章 2008年の経済見通し

2.アジア

 2007年は、ヨーロッパや新興国向け等の輸出が好調に推移したほか、内需も堅調を維持し、中国を中心に景気拡大が続いた。08年は、世界経済の減速等からやや減速する国もあるものの、アジア経済全体では引き続き堅調に推移すると見込まれる。

(1)北東アジア(中国、韓国、台湾、香港)

 07年の北東アジアの経済成長率は9.0%程度と見込まれる。引き続き中国を中心に景気は拡大し、韓国及び台湾ではIT関連財等の製造業の在庫調整が進んだ。
 08年は世界経済の減速の影響等があるものの、民間部門を中心に内需が堅調に推移し、8.4%程度の成長になると見込まれる。

●投資と輸出を中心に高成長が続く中国
 中国の07年の成長率は、11.3%程度と5年連続二桁の高成長となる見込みである。内需、外需ともに拡大し、1〜9月期は前年比11.5%の高成長となった。引き続き投資と輸出が景気のけん引役となっている(第1-8図)
 固定資産投資(都市部、名目値)は、06年前半に前年比30%前後の伸びが続き、投資過熱感が高まった。そのため、直接規制や金利引上げ等の「マクロコントロール」が強化され、06年後半以降やや伸びが鈍化したものの、過剰流動性や地方政府の旺盛な投資意欲等を背景に07年に入り再び伸びを高めた(第1-9図(1))。ここで中国の資本ストック循環をGDPベースの固定資産投資額を活用して推計してみると(5)(一定の前提を置いた試算であり、幅をもってみる必要がある)、03〜07年にかけて、過去のすう勢と比較してもかなり高い期待成長率に対応した水準で推移しており、過熱が懸念される(第1-9図(2))。また限界資本係数でみても、90年代に傾向的に上昇した後、2000年以降ほぼ横ばいで推移している(第1-9図(3))。このため、一たび経済が減速した場合には、過剰資本の問題が顕在化するおそれもあり、引き続き注視する必要があろう。
 輸出額は前年比20%台の高い伸びが続き、鋼材等の一部品目に対する輸出増値税還付率の調整(6)や輸出暫定税率(7)の引上げ等の輸出抑制策を実施しているものの、貿易黒字は06年通年(約1,775億ドル)に続き、07年1〜10月期で既に約2,126億ドルと過去最高額を更新している(第1-10図)
 これまで低位安定していた消費者物価上昇率は、食品価格の上昇により06年後半から上昇がみられ、07年3月より政府目標(8)の前年比3%以内を超えて、8月以降は同6%台で推移している。一方、非食品価格は低水準で安定した動きとなっている(第1-11図)。また、平均賃金上昇率が07年1〜9月期で前年比18.8%と高い伸びとなっており、これを背景に消費の増加率(1〜10月期同16.1%増)も高まってきている。
 資産価格をみると、株価(上海総合指数)は06年初頃より上昇し始め、07年10月末は06年初に比べ約5倍となり、不動産価格(9)も07年1〜10月の平均伸び率は前年比7.0%と上昇している。
 こうした状況の下、金融政策においては、流動性管理の強化、固定資産投資の伸びの抑制、物価の安定維持等を目的として07年は一層の金融引締めが実施され、貸出・預金基準金利は5回、預金準備率は9回引き上げられた(第1-12図)。しかし、マネーサプライ(M2)や銀行貸出残高の伸びをみても、引き続き高い伸びが続いている。
 なお、外貨準備を効率的に運用するなどのため、07年9月に中国投資有限責任公司が設立された。中国人民銀行(中央銀行)が保有する外貨準備をその資本金とするため、財政部が特別国債(総額1.55兆元、約2,000億ドル)の発行を一部開始した(10)。これまで発行された特別国債の多くは中央銀行に買い取られており、公開市場操作に活用することとされているため、流動性の吸収に寄与する面もあると考えられるが、これまでのところこうした効果は限定的とみられる。
 08年については、中国当局によるマクロコントロールの引締め効果、世界経済の減速の影響等から、成長率は07年よりやや鈍化するものの、10.3%程度と6年連続で二桁台を維持すると見込まれている。しかし、投資や消費の高い伸びが続けば上振れする可能性があると考えられる。また、今後の景気過熱を十分に抑制できない場合には、超過供給の発生等により、中国経済が調整局面を迎え、結果的に成長率が減速するおそれがあると考えられる。

●緩やかな景気拡大が続く韓国、台湾、香港
 韓国では、ウォンの増価にもかかわらず堅調な海外需要等を背景に、IT関連財や船舶、自動車等を中心に輸出が拡大した。IT関連財の生産も増加しており、IT部品における出荷・在庫バランス(出荷の前年比−在庫の前年比)をみると、07年に入り出荷の伸びが在庫の伸びを上回るなど改善がみられている(第1-13図)。また、民間消費や設備投資等の内需も比較的堅調に推移していることなどから、07年には4.8%程度の成長が見込まれる。08年は、引き続き好調な輸出と堅調な民間消費によって5.0%程度の成長になると見込まれる。
 台湾は、IT関連財等の輸出の緩やかな増加と、民間投資等の内需の堅調な伸びに支えられてきた。07年に入ると、IT関連財の在庫調整が進み生産が回復しており、さらに年後半からは輸出の伸びも高まっていることなどから、07年の成長率は4.4%程度になると見込まれる。08年には、輸出がけん引し、内需が下支えすることなどから、4.4%程度の成長が見込まれる。
 香港では、外需がアメリカ向けの輸出の伸び悩みから低調に推移したものの、民間消費の好調等を受けて内需が拡大したことから、07年の成長率は5.6%程度と見込まれる。08年は5.3%程度の成長になると見込まれる。

(2)ASEAN:シンガポール、インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン

 ASEAN各国は、ヨーロッパ向け等の輸出が比較的堅調に推移したことなどから、07年の成長率は5.8%程度になると見込まれる。また、08年は世界経済の減速等があるものの、成長率は5.6%程度と見込まれる。

●景気は総じて拡大している
 シンガポールでは、IT関連財の輸出の伸びが緩やかとなったものの、医薬品を始めとした非IT関連財の輸出が力強い伸びをみせた。また、民間消費や建設投資、設備投資等の内需も拡大し、07年の成長率は7.1%程度になると見込まれる。08年の成長率は5.8%程度と見込まれる。
 タイでは、民間消費や民間投資等の内需は政情不安等から停滞しているものの、政府支出と輸出が景気を下支えし、07年の成長率は4.3%程度と見込まれる。08年は、内需の回復から、4.8%程度の成長が見込まれる。
 マレーシアでは、内需を中心に景気が拡大しており、07年は5.7%程度の成長が見込まれている。08年にも5.7%程度の成長が見込まれる。
 フィリピンでは、好調な輸出等により、07年の成長率は6.4%程度と見込まれる。08年の成長率は5.6%程度と見込まれる。
 インドネシアでは、民間消費等の内需が景気をけん引し、07年の成長率は6.0%程度と見込まれる。08年には内需が引き続き堅調に推移するとみられることなどから、成長率は5.9%程度と見込まれる。


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