第3章 第3節 健康と地域資源

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これまでみてきたように、地域の健康度の上昇は、その地域の経済活動を活発にし、医療費を抑制する可能性があるなど、地域経済に好影響をもたらすと考えられる。

では、地域で暮らす人々の健康度を高めるのは、どのような地域資源であろうか。また、どのような取組が地域の人々の健康行動の変容に影響するのだろうか。本節では、地域での人と人とのつながりの健康度への影響や、地域ぐるみの働きかけが成果を生み出した事例をみた上で、健康寿命の延伸に向けて、都道府県、市町村等には今後、新たな手法も活用しながら、更なる取組が必要とされていることをみていくこととしたい。

(個人の半数は、健康のために特に何もしていない)

厚生労働省「健康意識に関する調査」(2014年)によれば、自身の健康に不安が「ある」と回答した人の割合は61.1%を占めており、過半数の人が健康に不安を抱えている。一方、同調査で、普段から健康に気をつけるように意識しているかという質問に対する回答は、「特に意識しておらず、具体的には何も行っていない」が13.5%、「病気にならないように気をつけているが、特に何かをやっているわけではない」が32.5%を占め、約半数の人は、健康のために特に何もしていない(第3-3-1図(1))。これらの回答をした人に対し、その理由を尋ねたところ、「何をどのようにやったらよいかわからない(19.8%)」、「忙しくて時間がない(16.2%)」、「経済的なゆとりがない(14.6%)」の回答が一定数みられた。これらの回答をした人は、ある程度健康のために何らかの行動をとろうという気持ちはある一方で、日々の制約によりそうした行動をとれない人たちであると考えられ、そうした人たちは合計で約半数に上る(第3-3-1図(2))。健康を気にしつつも、特に具体的な行動をとっていない人々が相当数いることがうかがえる。

(地域における人と人のつながりや健康活動等が地域の健康度を高める)

個人の健康行動について何もしていない人が半数を占めるなか、行動の改善についてどのように取り組むべきだろうか。これまでの取組のなかでは、地域における人と人とのつながりを元にした働きかけが、地域の健康度の向上に功を奏している事例もある。例えば、長野県では保健師等による保健活動、山梨県及び長野県では食生活改善推進員と呼ばれるボランティアによる活動、また、愛知県武豊町では地域サロンの取組が地域の健康度を高めたと考えられる(コラム1:「地域の人と人とのつながりを活用した健康増進」参照)。

社会・地域における人々の信頼関係や結びつきといったソーシャルキャピタルが、個人の健康行動の改善や他者からの援助等を通じて健康に良好な影響を及ぼすという研究もある25。また、主観的健康度が良好な人々とそうでない人々について、月に1回以上会ったり話したりする家族や友人の有無や、助けを求めることができる家族や友人の数といったソーシャルネットワークの程度を比較すると、主観的健康度が良好な人々の方がソーシャルネットワークを構築しているという指摘がある26

(コラム1:地域の人と人とのつながりを活用した健康増進)

(長野県の保健師による働きかけ)

長野県は、都道府県別の人口1万人当たりの保健師数が7人以上と全国1位であり、栄養に関する指導を受けている人の数も他の都道府県に比べて多いなど、保健活動が活発である(コラム図3-1-1コラム図3-1-2)。長野県の研究チームが、長野県の平均寿命が男女共にトップクラスとなっている要因について分析したところ、人口当たりの保健師数と女性の平均寿命に相関関係がみられた(長野県健康長寿プロジェクト・研究事業研究チーム(2015年))。また、同研究において、1945年に長野県の一般家庭の主婦が保健師の手助けをしたことをきっかけに創設された保健補導員等のボランティアが専門家と住民との間の橋渡しを行い、地域の健康に寄与したとされている。例えば、脳卒中予防のために冬季の居間の室温を18度以上に保つ一部屋暖房運動など積極的な保健活動が平均寿命の延伸に寄与した可能性が示唆されている。

(ボランティアの働きかけによる食生活の改善)

適切な食生活が生活習慣病の発症リスクを軽減することはよく知られているものの、個人の意思・努力だけで行動を変えるのは容易ではない。食を通した健康づくりのボランティアである食生活改善推進員の働きかけによって、食生活の改善を図っている、山梨県の減塩と長野県の野菜摂取量増加の取組を紹介する。

食塩摂取量について、男女共に青森県、秋田県、福島県、茨城県、長野県、福岡県と、東北地域を中心に食塩摂取量が多い(コラム図3-1-3)。日本人の食生活は、おおむね食塩摂取量が過多である。過多な食塩摂取は高血圧や心筋梗塞等を招くリスクがあり、厚生労働省が公表している「日本人の食事摂取基準(2015年版)」によると、食塩については、男性で1日当たり8グラム未満、女性で7グラム未満(いずれも食塩相当量)が目標量とされているが、すべての都道府県でこの値以上に食塩が摂取されている。

山梨県では、1979年の第1回県民栄養調査で食塩摂取量の多い東北よりも食塩摂取量が多かったことから、減塩に向けた取組が1970年代から行われてきた。1982年から、食生活改善推進員と呼ばれるボランティアが県内の各家庭を訪問し、塩分測定器を用いてみそ汁の塩分濃度を測定し、この結果を基にその場で減塩に向けたアドバイスを行うという減塩活動が行われてきた。併せて、計測結果は市町村ごとに集計され、塩分マップとして公表されており、推進員たちが各家庭を訪問して減塩指導を行う際等に活用されている(コラム図3-1-4)。みそ汁の塩分測定活動は現在も行われており、2011年は4,316戸、2014年は5,863戸、2018年は11,158戸の家庭を訪問している。こうした活動の結果、2011年のみそ汁塩分濃度は県平均で0.97%だったのが、2018年には0.79%まで低下した。

また、長野県では、食生活改善推進員が所属する食生活改善推進協議会において、1970年の発足当初から緑黄色野菜の積極的な摂取をテーマに掲げ、レシピの普及を図るとともに、緑黄色野菜の少ない時期にも自分で育てた野菜を食べられるように野菜の種を配るといったユニークな活動も行っている。こうした活動もあるためか、野菜摂取量を都道府県別にみると長野県は1日当たり男性352グラム、女性335グラムである。なお、厚生労働省が推進する健康づくり運動である「健康日本21(第二次)」(2012年)では、健康増進の観点から、野菜摂取量1日平均350グラムを目標にしており、長野県は男女ともに目標値に最も近い県となっている(コラム図3-1-5)。

(愛知県武豊町の高齢者地域サロン参加と介護予防)

愛知県武豊町では、既存の調査データを分析し、高齢者が介護予防事業に参加するには、自宅から近いことが条件の一つであることや、また、新規要介護者や死亡者の1年前の状態については、要介護リスク「なし」が約半数を占めることが明らかになった。そうした分析を踏まえ、要介護リスクの高い高齢者だけでなく多くの高齢者が気軽に参加できる地域サロンを2007年に立ち上げている。サロンの事業では、町の支援の下、ボランティアを中心に住民参加型で行われ、健康体操や手芸・工作、地域の子供たちとの世代間交流、季節の催しなどの多彩な活動が行われた。2016年度には、町の高齢者のサロンへの参加率も1割を超えた。サロン参加群の要介護認定率は、非参加群と比べて、約半分に抑制されていることが確認できた。また、7年間の追跡調査により、サロン参加群は認知症の発症が3割程度減少していることも確認された。このように、高齢者の社会参加を促すことによって、要介護状態への移行確率を低下させる可能性がある(コラム図3-1-6)

(ソーシャルキャピタルが豊かであることが健康度に好影響)

ここでは、ソーシャルキャピタル等の地域資源が人々の健康度を高めるかについて、ミクロデータを使って分析する。内閣府「生活の質に関する調査」(2012年度)では、主観的健康度、ソーシャルキャピタル等、生活の質について豊富な項目を調査している。この調査データを用いて、主観的健康度に対して、年齢、家族構成、就労状況等の個人の属性以外に、居住環境、ソーシャルキャピタル、街の構造といった地域資源等が影響を与えているかについて、順序ロジット分析を行った。

その結果、困難な時に助けてくれる隣人がいることや身の回りから受ける援助への期待といった、何かあったときにサポートが得られるという期待や、他人に対する一般的信頼や行政等の組織への信頼といった抽象的な信頼度が高いなど、ソーシャルキャピタルが豊かであるほど、主観的健康度が高いことが分かった。また、騒音が少なく公園や緑地が多いといった近隣環境の良好さや、1人当たりの部屋の数が多いなど、居住環境が良好であるほど、また、徒歩又は自転車で行ける施設の種類27 が多いといった街の構造であるほど、主観的健康度が高いという結果となった(第3-3-2表)。人と人のつながりからのサポートが得やすい、社会に対する信頼が高いといったソーシャルキャピタルが豊かであることが、人々の健康度に好影響を与えていることがうかがえる。

(予防・健康づくりでは地域の役割が重要)

では、地域の健康度を高めるために、今後、地域はどのような役割を期待されているのであろうか。ここでは、主に地域の行政機関である都道府県、市町村といった地方公共団体が健康増進のために人々にどのように働きかけていくことが必要であるかをみていく。

「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部」(本部長:厚生労働大臣)で2019年5月に策定された「健康寿命延伸プラン」では、2040年までに健康寿命を男女とも3年以上延伸し、75歳以上とすることを目指すとしている。また、2019年6月に閣議決定された「成長戦略実行計画」では、人生100年時代の安心の基盤は「健康」であるとされている。

このため重要な役割を担うとされているのが、地域や職場による予防・健康づくりである。健康に無関心な層を含め、全ての世代や地域の住民が予防・健康づくりを進めるためには、地域や職場といった、個人が居住している、あるいは所属している等、つながりのある関係からの取組が期待されている。都道府県や企業は医療保険の保険者という立場でもあり、政府としては、保険者に対して、予防・健康事業を行う大胆なインセンティブ措置を講ずるとしている。

(新たな手法を活用した地域からの働きかけ)

健康に無関心層も含めて、予防・健康づくりを推進するために、これまでの取組に加えて、新たな手法を用いた働きかけにより効果を高めることが期待されている。

新たな手法とは、自然に健康になれる食環境づくりの推進や、行動経済学(ナッジ理論等)の活用やインセンティブ強化など、個人が無理なく健康な行動をとれるような環境・仕掛けである。

例えば、ナッジ理論を用いた取組として、国立がん研究センターによるソーシャル・マーケティングを活用したがん検診の受診勧奨用の資材の開発がある。ナッジとは、英語で軽く突くという意味であり、行動科学の知見に基づく工夫や仕組みによって、人々がより望ましい行動を自発的に選択するように誘導する手法である。地方公共団体は、がん検診を受けてもらう「きっかけ」を与えるために、ハガキやリーフレットの郵送等によって受診勧奨・再勧奨を行うものの、配布されるリーフレット等の情報量が多すぎてわかりづらいという声が多く聞かれた。そこで、同センターでは、マーケティングの専門家等の協力を得て、受診を促すために必要な情報や効果的なメッセージを簡潔にわかりやすく伝えるハガキやリーフレット等の資材を開発した。全国194市町村がこれらの資材を活用して、受診勧奨を実施したところ、2~4倍の受診率向上を達成できた。今後、このような先進事例をとりまとめたハンドブックを活用し、全国の地方公共団体に横展開していくこととしている。

また、今後、情報通信技術の一層の進展により、個人の健康状態に関わる電子データを活用して、より個人に即した的確な働きかけを行うことが可能となっていくと考えられる。既に、モデル事業としてIoT機器を活用した生活習慣病予防のサービスも実施されているところである(コラム2:「IoT機器を活用した糖尿病等の生活習慣病予防サービス」(愛知県のチーム「七福神」)参照)。政府においても、パーソナル・ヘルス・レコード(PHR)、個人の健康診断結果や服薬履歴等の健康情報を、電子記録として本人や家族が正確に把握するための仕組みの構築を進めることとしている。

このような新たな手法も活用しながら、地方公共団体や保険者など関係者・関係団体がこれまで以上に連携し、地域ぐるみ、職場ぐるみで、地域の健康度を向上させる、効果的な予防・健康づくりを進めることが必要とされている。こうした取組の推進もあって、地域の多くの人々が健康を享受し、多様な世代の人々が自らの希望に応じて地域で活躍することを通じて、地域経済社会の活力が高まることが期待されている。

(コラム2:IoT機器を活用した糖尿病等の生活習慣病予防サービス(愛知県のチーム「七福神」)

糖尿病は軽症者であれば、生活習慣の改善により予防できるが、実際には、生活習慣改善が難しいと感じたり、治療を中断してしまう人も少なくない。

愛知県健康づくり振興事業団等が率いるチーム「七福神」は、IoT機器等を通じて得られる健康情報等を活用して、糖尿病の発症を予防する健康管理サービスを提供している。糖尿病教育入院の患者又は糖尿病疑いのある者による協力者がウェアラブル端末等で、体重、歩数、血圧値等の測定データの転送、食生活等の自己評価を入力すると、「健康応援七福神アプリ」より週2回応援や注意等のフィードバック、4週ごとのサマリー通知が配信される。また、データについては医師等の専門職とも共有し、個人の状態にあった療養・保健指導を行い、参加者の行動変容を支援している。IoT機器を用いて介入したグループと介入していないグループを比較すると、3か月後に、血糖値の高さを確認する代表的な検査値であるHbA1cが、前者では6.99%から6.43%へと▲0.56%ポイント低下し、糖尿病の疑いのある基準である6.5%を下回った。しかし、介入していないグループではHbA1cが6.75%から6.60%と、▲0.16%ポイントの低下にとどまった。統計的にも両グループ間には、有意な差があることが確認されている。

(コラム3:企業の健康経営の取組)

地域だけでなく、企業による職場ぐるみの予防・健康づくりの取組も重要である。

「日本再興戦略改訂2014」(2014年6月閣議決定)では、健康経営の推進を掲げ、企業側の取組も促している。健康経営とは、従業員の健康保持・増進の取組が将来的に収益性を高める投資であるとの考えの下、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践するという取組である。また、企業の従業員は各健康組合の構成員でもあり、彼らの健康度が高まれば、医療費が低下する可能性もあると言える28

健康経営の推進に向けて、優れた健康経営を実践している企業を経済産業省と東京証券取引所が共同で選定し、健康経営銘柄として2015年から毎年公表している。また、経済産業省が制度設計を行い、日本健康会議が認定を行う健康経営優良法人認定制度では、地域の健康課題に即した取組や日本健康会議が進める健康増進の取組を基に、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を顕彰している。

地域において、企業の健康経営を推進することにより、地域の健康度の向上と地域経済へ好影響が期待できるため、都道府県による取組も実施されている。青森県では「青森県健康経営認定制度」を設けており、がん検診の受診勧奨や受動喫煙防止対策の実施等の6項目の必須要件を満たした上で、従業員を対象とした健康づくりの実施等に関する選択要件を4つ以上満たした事業所を「青森県健康経営事業所」として認定している29 。認定事業所に対しては、県入札参加資格申請時の加点や県内金融機関による低利融資等のインセンティブが用意されている。

この制度で青森県から健康経営事業所として認定された協同組合青森総合卸センター30は、青森市南部の健康づくりの拠点となることを目指して健康事業を開始しており、センター自身も健康経営に取り組むこととした。具体的には、特定保健指導を事業所内で勤務時間内に実施することで当該指導を受けやすくしたり、毎月1回以上体組成の測定を行って健康意識の向上に取り組んだ。また、施設内の全面禁煙を実施し、受動喫煙の防止にも取り組んでいる。また、1チーム3名で歩数を競う「問屋町100日ウォーキング」を開催し、徒歩を促す取組も行っている。こうした結果、健康づくりを意識した運動を始めたり、職員の禁煙率が向上するなど、健康に向けた意識や個人の取組が促進されたとしている。

(コラム4:こころの健康度)

世界保健機関(WHO)では、「健康」を「肉体的、精神的及び社会的に、完全に良好な状態であること」と定義しており、こころ(精神状況)も健康にとって重要なポイントであると言える。現代社会では、様々なストレスから、こころの病にかかる人が増えて、こころの健康は、ますます重要になっている。このコラムでは、こころの健康度について、主観的健康度と同様の手法で、性別・都道府県別の状況、有業率や労働生産性との関係、さらにどういった要素がこころの健康度を改善するのかについて分析を行う。

こころの健康度の指標についてはK6スコアを用いる。K6とは、米国のKesslerらによって、うつ病・不安障害などの精神疾患をスクリーニングすることを目的として開発された国際的な指標である。「神経過敏に感じましたか」、「絶望的だと感じましたか」、「そわそわ、落ち着かなく感じましたか」、「気分が沈み込んで、何が起こっても気が晴れないように感じましたか」、「何をするのも骨折りだと感じましたか」、「自分は価値のない人間だと思いましたか」の6つの質問について5段階で回答し、点数が高いほど、精神的な問題がより重い可能性がある。また、5点を超えると心に何らかの負担を抱えている状態と言われており、5点が一つの基準となっている。K6スコアは精神的な健康面を表す指標としてだけではなく、高脂血症、高血圧症、糖尿病及び三大疾病(がん(悪性新生物)、急性心筋梗塞及び脳卒中)の予測指標としても優れているという指摘がある(野口(2011))。

(こころの健康度は男性より女性の方が悪い)

健康度をこころの状態という観点からみると、K6スコアが5点以上(こころに何らかの負担を抱えている)の人の割合は、男性だと全国平均で約25%であるのに対し、女性だと約30%となっており、女性の割合が高くなっている(コラム図3-4-1)。都道府県別にみても、いずれも男性より女性の割合が高くなっており、こころの健康度の男女差は、どの都道府県にも当てはまる。なお、都道府県ごとに5点以上の人の割合について男女間の相関係数を調べると、約0.78と高い値となっており、男女のこころの健康度は都道府県ごとに似たような傾向があることがうかがわれる。都道府県ごとの違いをみると、おおむねどこも全国平均付近ではあるものの、5点以上の割合が高い上位5県のうち4県は東日本側に位置している。また、沖縄県は5点以上の割合が男性は約19%、女性は約27%となっており、他の都道府県に比べて低めになっている。

(こころの健康度と有業率及び労働生産性には弱い正の相関)

健康寿命や主観的健康度と有業率、労働生産性の間には弱いながらも正の相関があったが、こころの健康度についても、K6スコアが0~4点の人の割合31が1%ポイント上昇すると、有業率が約0.39%ポイント高くなる傾向がある(コラム図3-4-2)。

労働生産性についても、主観的健康度と同様に正の相関があり、K6スコアが0~4点の人の割合32が1%ポイント高まると、実質労働生産性が約100万円上昇する傾向がある(コラム図3-4-3)。

こころの健康度が高まれば、有業率の上昇や労働生産性の向上等、地域経済に好影響を与える可能性がうかがえる。

(仕事の質、組織への信頼や居住環境とこころの健康度には正の相関がある)

それでは、こころの健康度を改善させるのは、どのような要素だろうか。主観的健康度の分析と同様に、内閣府の「生活の質に関する調査」の個票データを用いて、順序ロジット分析を行ったところ、こころの健康度は、身の回りから受ける援助への期待や一般的信頼、徒歩又は自転車で行ける施設の種類が多い、仕事の裁量があることや報酬が良いことと正の相関があり、仕事の質が激務であることが負の相関にある等の結果になった(コラム表3-4-4)。こころの健康度には、職場環境や、社会に対する信頼が影響を与えているとみられる。


脚注25 小塩(2008)。こうしたソーシャルキャピタルが個人の健康に影響を与える程度は、家庭の経済状況、就業状態、婚姻関係、家族との同居、家族の介護、性別、学歴、そのほか観測されない要素も含めた個人属性にも依存するとも指摘している。
脚注26 栗本他(2011)において、両者は、統計的に10%水準で有意な違いがあるとしている。なお、この研究では、調査対象者が現在の健康状態を5段階(最高に良い,とても良い,良い,あまり良くない,良くない)で評価し、そのうち「最高に良い」、「とても良い」及び「良い」を主観的健康感が良好であるとしている。
脚注27 食料品が買える所(食料品店、スーパー等)、日用雑貨が買える所、郵便局、銀行・信用金庫などの金融機関、映画館・劇場・美術館等の文化施設、公共交通機関(バス停、鉄道駅等)、診療所や病院、役場・支所等の自治体窓口、図書館・公民館等の集会施設、子どもなどが遊べる場(公園等)。
脚注28 大企業について健康経営に熱心に取り組んでいる企業とそうでない企業の年間医療費を比較すると、熱心に取り組んでいる企業の方が5%水準で有意に医療費が低いとの結果が出た調査がある(日本総研(2017))。
脚注29 6項目の必須要件は、[1]事業主自身の健康診断の受診、健康宣言の実施、[2]県医師会健やか力推進センター研修等(申請年度又はその前年度に実施したもの)修了者を健康づくり担当者として定めるなどの健康管理体制の構築、[3]がん検診の受診勧奨及び勤務時間内にがん検診を受診できる体制の構築、[4]受動喫煙防止対策の実施、空気クリーン施設(施設内禁煙)の認証、[5]40歳以上の従業員の健康診断の結果把握、[6]労働保険料と社会保険料の完納(社会保険料については適用除外に該当する場合を除く)。
脚注30 同センターは経済産業省の「健康経営優良法人2019」(中小規模法人部門)にも認定されている。
脚注31 ここでは全年齢ではなく、15~54歳の人について、0~4点の人の割合と有業率の関係をみている。
脚注32 ここでは全年齢ではなく、15~54歳の人について、0~4点の人の割合と労働生産性の関係をみている。
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