第3章 健康と地域経済
人口が減少するなかで、高齢化が進展し、人生100年時代を迎えようとしている。高齢者を含め、意欲のあるあらゆる世代の人々が社会で役割を持って活躍できるよう、多様な就労・社会参加ができる環境整備を進めることが必要であるが、その前提となるのが、「健康」である。単に長生きすることではなく、いかに健康で過ごすことのできる期間を長く保つか、という健康寿命の延伸は、我が国の最重要課題の一つであり、その重要度は、今後ますます高まると考えられる。
健康であることは、そもそも個人の人生やQOL(生活の質)の根幹に関わることである。経済社会全体にとっても、就労・社会参加し、活躍することによる経済への影響、また、医療・介護費用が抑制されて社会保障負担が軽減される等、広範囲な影響を及ぼす。地域経済にとっては、全国より急速に高齢化が進み、既に人手不足問題への対応が喫緊の課題となっている地域もあるなかで、地域で生活する人々の健康は、地域の活力の維持・創出に大きく関わる。
本章では、地域に暮らす人々の健康の状況(以下、健康度)が、地域の経済活動に及ぼす影響、さらに、社会保障費用をみるにあたり、医療費への影響を分析する。また、地域の健康度を高めるためには、都道府県や市町村、身近な近隣のコミュニティやボランティアといった地域が果たす役割も大きい。そこで、どのような地域資源が健康度を高めるかについて分析するとともに、地域のつながりを利用した働きかけの好事例を紹介し、さらなる健康寿命の延伸に向けて、都道府県や市町村等には新たな手法も活用した働きかけが必要とされていることをみていくこととしたい。
なお、本章での「地域」とは、第1節、第2節においては、主に分析の観点から都道府県単位を用いるが、第3節においては、都道府県、市町村といった地方公共団体、身近な近隣のコミュニティ等、人々が生活の上で関わる地域的なつながりを幅広く意味するものとする。