第2章第2節
2.条件不利地域等における取組と人口の動向
(地域活性化の取組では地元資源が有効活用)
中山間地域などの条件不利地域等では人口の動向は更に厳しいものとなっているが(第2−2−1図) 5、はじめに、こうした条件不利地域等における地域活性化に向けた取組の特徴を概観する。
条件不利地域等における地域活性化の取組の好事例6をみると(第2−2−2図)、その特徴として、まず、地元の資源、人材等が有効に活用されていることが挙げられる。農林水産品などの地元産品の利用、加工、販売、地域の自然環境を活用した観光客の呼び込み、町並みなど歴史文化的資源を活かしたイベントの開催等の例がみられる。また、地元の企業経営者、農業者、自治会等が活性化に向けた取組を主導し、観光ガイドや農業体験における指導など地元住民が積極的に活動へ参加している場合も多くみられる。こうした地域の特徴ある資源、人材等を活かした取組の結果、その地域特有の魅力的なモノ、サービスなどが生み出されているものと考えられる。
(地元資源のほか外部の人材、技術、知恵等が重要な役割)
また、地域活性化の取組においては、地元の資源の活用に加え、外部の人材、技術、知恵等が重要な役割を果たしている場合が多くみられる。
都市部でサラリーマン等として経験を積んだ者が地方に移住し、これまでの経験から得たノウハウを活用して開始した事業や、外部のデザイナー等のアイデアを取り入れた取組等が良好な成果を上げている場合がみられる。地域外の者を主な構成員とする特定非営利活動法人が、地域の行事等の保存を支援するといった取組もみられる。また、一次産品の需要先拡大等をねらった鮮度保持技術の導入、大学、企業等との連携、地域の施設の管理運営を特定非営利活動法人へ委託することなどにより、外部の技術やノウハウ等を取り入れた取組もみられる。
(地域外の需要の創出、地方への人の流れを作るための情報発信が重要)
活性化の取組が更に成果を上げていくためには、上記のような取組から生み出された魅力あるモノ、サービス等に対する地域外の需要を創出し、交流人口を拡大していくことが重要となる。地方への移住促進についても、地域外の者の関心を喚起し、潜在的な移住希望を実現させていくことが重要である。
こうした観点から、各地域においては、地域の特産品、観光、文化等に関する情報の発信、移住を検討している者に対する情報提供等を積極的に進めていくことが重要と考えられる。活性化の取組の好事例においても、インターネットを通じた特産品の全国販売、観光情報等の提供、移住者の体験等、移住に関する情報の提供等の例がみられるほか、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用して取組の状況等を外部に積極的に発信している例がみられる。
(それぞれの地域が個性を活かした取組を進めることが重要)
地域の取組の概要をまとめてみると、まず、好事例とされる地域の取組がその地域外の多くの人々を引き付ける要因として、その地域が有する個性ある資源、人材等が活用されていることがあると考えられる。こうした地域の資源等が、移住者等の地域外の人材の新しい視点、地域外からの技術や知恵の導入等により、魅力的な商品、観光対象等となり、インターネット等を通じて情報発信されることで、地域外の需要が創出され、地方への人の流れが作られている場合が多くなっているものとみられる。なお、活用される資源等は地域により様々であり、各地域は、自らの有する個性ある資源等を見い出し、それを活用し創意工夫していくことが重要であると考えられる。
(活性化の取組を進める団体の中には人口減少に歯止めがかかっているものがみられる)
活性化の取組と人口動向の関係を、活性化の取組を進める地方の22町村7の人口の動きを例にみると(第2−2−3図)、取組を進める町村の中には、足元、人口が増加し、または人口減少幅が縮小している町村がみられる。
こうした人口動向に改善のみられる町村8について、自然増減(出生者数-死亡者数)と社会増減(転入者数等-転出者数等)に分けて人口の動きをみると(第2−2−4図)、社会増減率の改善が、全体の人口増減率の改善に寄与する一方、自然増減率はマイナス幅を拡大させている。また、地方の過疎地域(被災3県を除く)において、足元、人口が増加した町村9について、同様に自然増減と社会増減に分けて人口の動きをみても、社会増減率がプラスとなることが人口増加につながっている。
また、これらの町村における取組事例等をみると、観光資源等を活用して交流人口を拡大させ、雇用を創出するとともに都市部からの移住者が増加した事例(ニセコ町、小値賀町等)、地元の一次産品を基に商品開発、加工、販売を行い、雇用創出等を図った事例(海士町、中土佐町等)、優良なICT(インフォメーション・アンド・コミニュケーション・テクノロジー)インフラの下、豊かな自然の中で働ける環境を整備し、事業所誘致を進め移住者が増加した事例(神山町)、山村留学や高校の魅力化などにより地域外から児童、生徒を呼び込み交流人口や移住者が増加した事例(北相木村、海士町等)などがみられる。また、過疎地域において足元の人口が増加した町村においては、就業者に占める宿泊業、飲食サービス業の比率が高く観光業が主要な産業となっているとみられる町村が多くなっている(ニセコ町、竹富町等)。
このように、条件不利地域等において人口動向が改善した団体では、観光振興や一次産品の加工販売など、地域の自然環境等を活かした取組を進め、これによる交流人口の拡大や地域雇用の創出等を通じ、移住者の増加など人口の社会増減率の改善がみられた場合が多くなっている。
(コラム6 高等学校、大学の所在と人口動向)
地方の市町村(被災3県を除く)の高等学校、大学の所在と若年層の人口構成比率をみると(第2−2−5図)、高等学校、大学のない市町村では、15~19歳の人口構成比率が地方の平均値よりも低くなり、20歳代、30歳代においては平均値からのかい離が大きくなる。また、高等学校はあるが大学のない市町村においても、15~19歳の人口構成比率が平均値よりも低くなり、20~24歳でそのかい離が拡大し、20歳代、30歳代においても、平均値からのマイナスをほぼ維持する。こうした市町村では、高等学校や大学への進学を機に若年層が流出し、その後、流出した人口が戻っていないことがうかがえる。
一方、高等学校、大学のある市町村では、15~24歳の人口構成比率は地方の平均値より高くなっているが、このうち、産業集積等10のみられない市町村では、20歳代後半から30歳代において、人口構成比率が平均値よりも低くなっていく。産業集積等のみられない市町村では、就職等を機に若年層の人口流出が生じているものとみられる。高等学校、大学の所在は、若年層の人口維持に一定の効果があるとみられるが、子育て世代の人口を定着させていくためには、産業等の集積を背景とした良好な雇用環境が重要と考えられる。