第2章第1節
1.地方において人口の増加した市町村の特徴
(地方で人口が増加した市町村の割合は約1割)
まず、地方(3大都市圏1を除く地域、以下同じ)において人口が増加した市町村をみると、人口が増加した市町村の割合は、1995年度には全団体の約3割となっていたが、その後低下傾向となり、2013年には約1割(1256団体中148団体、11.8%)となっている(第2−1−1図)。2013年に3大都市圏において人口が増加した団体(東京の特別区を含む)の割合は約3割(486団体中152団体、31.3%)となっており、地方においては人口が増加した団体の割合は低いものとなっている。
また、2010年4月から2013年3月までの3年間2に被災3県を除く地方で人口が増加した市町村を地域別にみると(第2−1−2図)、北海道、東北、四国等で人口増加団体の割合が低くなっている一方、北陸、九州、沖縄、大都市圏の近隣県(北関東、滋賀県)で高くなっている。総じて北日本よりも南日本に人口増加団体が多いという地域性がみられる。
(人口が増加した市町村には、製造業、商業の集積等がみられる市町村が多い)
さらに人口が増加した市町村の特徴をみると(第2−1−3表)、第1には、製造業、商業の集積等がみられる市町村3が多くなっている。また農業や観光等の拠点が所在するとみられる市町村においても人口の増加したものがある(第2−1−4表)。これらの市町村では、昼夜人口比率が1倍を超え、周辺地域に比べて有効求人倍率が高い(第2−1−5図)など雇用機会が比較的多く確保されている場合が多くなっている。
また、人口の増減にかかわらず地方において製造業、商業の集積等がみられる208市町村について、人口増減率をその他の市町村と比較すると(第2−1−6図)、その他の市町村よりも総じて増加率が高い(減少率が低い)傾向があり、製造業や商業の立地と人口動向には一定の相関性があるものと考えられる。
(製造業、商業の集積等がみられる人口10万人以上の都市の近隣にも、人口の増加した市町村が多く所在)
第2には、上記のような製造業、商業の集積等がみられる市町村の近隣に、人口の増加した市町村が多くみられる。人口の増加した市町村の分布をみると、人口の増加した市町村が複数、隣接する地域がみられる(第2−1−7表)。こうした地域では、製造業、商業の集積等がみられる人口規模10万人以上の都市が所在し、これに隣接する形で、そこへの就業者が多く、昼夜人口比率が1未満の人口増加市町村が所在している場合が多くなっている。
例えば、近隣に複数の人口が増加した市町村が所在する宇都宮市、金沢市、福岡市、熊本市、那覇市における就業者の常住地(自市を除く)をみると(第2−1−8図)、近隣の市町村から多数の就業者を受け入れており、周辺市町村の雇用の場となっていることがうかがえる。
こうした人口が増加した市町村が隣接する地域内の市町村について、世帯主の雇用状況をみると、雇用者に占める正規雇用の割合が周辺よりも高くなっている場合が多く(第2−1−9図)、世帯主の雇用が安定的に確保されている場合が多いものとみられる。人口規模が比較的大きく製造業、商業の集積等がみられる地域内の都市が雇用機会を創出し、それにより近隣の市町村も含めて安定的な雇用環境が提供されていることがうかがえる。
また、昼夜人口比率が1未満の市町村へのヒアリングの結果をみると(第2−1−10表)、人口が増加した要因として、近隣の産業の集積等がみられる都市への交通アクセスの良さや周辺と比較した地価の安さ等が挙げられているほか、定住を目的とした住宅建設費の一部補助、土地区画整理事業の実施などの住環境の整備、子供の医療費助成、保育体制の拡充等の子育て支援策の充実等が挙げられている。こうした市町村では、住環境整備や子育て支援等の施策への取組により、若い世代の住民の暮らしやすさが向上しているものとみられる。
(人口増加市町村では、子育て世代の人口構成割合が高い)
人口が増加した市町村では、20歳代から40歳代の人口構成割合が高く(第2−1−11(1)図)、出生率が高くなっている(第2−1−11(2)図)。また、人口の自然増加と社会増加が同時にみられる市町村が多くなっている4。
こうしたことから、地方の市町村において人口が増加したのは、良好で安定的な雇用環境の下、住環境整備や子育て支援等の取組が進められることで、人口の流入、定着がみられ、若い子育て世代の人口構成割合が高まり、出生率が高まっていることが要因となっている場合が多いものと考えられる。
(コラム5 県庁所在地の人口動向)
各県の県庁が所在する市(県庁所在地)の人口動向をみると(第2−1−12図)、人口の多い県庁所在地ほど人口増加率が高い傾向にある。また、人口の動向を自然増減と社会増減に分けてみると(第2−1−13図)、各市とも自然増減と社会増減は概ね同方向に寄与しているが、人口が増加した県庁所在地においては、社会増加の寄与が大きい傾向にある。
人口の増加した主な県庁所在地について社会増減の純流出入元をみると(第2−1−14図)、総じて自県からの純流入が多いが、福岡市、仙台市では、地域ブロック内の他県からの純流入も多くみられ、一部の地域ブロックでは、特定の県庁所在地に人口の集中が進んでいる可能性がある。