第1章 第3節 2 住宅分野の環境関連支出

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ここでは、個人向け住宅における太陽光発電の設置や住宅版エコポイント制度の普及状況をみる。

(都道府県別住宅用太陽光発電の普及状況)

住宅用太陽光発電の普及率をみると、2007年度末時点で高い順に、佐賀県、熊本県、宮崎県となっている。日照時間が全国の中でも比較的長い九州を中心に西日本で高い傾向がみられる(第1-3-9図)。2009年の住宅用太陽光発電導入支援対策費補助金交付決定件数をもとに、都道府県別の補助金の活用率をみても、高い順に大分県、佐賀県、沖縄県となっており、やはり九州を中心に高くなっている(第1-3-10図)。

第1-3-9図  住宅用太陽光発電システムの普及率(都道府県別)

第1-3-9図

(備考)普及率は、導入件数を一戸建て件数で除したもの。導入件数は、「新エネルギー財団(2007年度末)」、一戸建て件数は、総務省「平成15年住宅・土地統計調査」より作成。そのため、2007年度末時点の普及率。

第1-3-10図  2009年の住宅用太陽光発電補助金活用状況
(一戸建て当たり住宅用太陽光発電補助金の利用率)

第1-3-10図

(備考)

  1. 普及率は、太陽光発電普及拡大センターの住宅用太陽光発電補助金交付決定件数(2009年1月13日~12月31日)を総務省「平成20年住宅・土地統計調査」一戸建て件数で除したもの。
  2. 総務省「平成20年住宅・土地統計調査」一戸建て件数は、平成20年10月1日現在の値。

太陽光発電の普及がなかなか高まらない背景には、発電コストが、一般に火力発電や原子力発電に比べて高く、再生可能エネルギー源の中でも突出していることがある(第1-3-11図)。そのため、住宅用太陽光発電の普及に向けて、民間企業による価格引下げ努力、政府・地方自治体の政策のあり方が課題となっていた。こうした中で、例えば、個人向け住宅の太陽光発電に対して、政府や地方自治体による導入費用の支援や電力会社による余剰電力購入等が実施されている。また、2010年度補正予算でも、住宅版エコポイントの対象が太陽光システムなど住宅設備に拡充されている。

第1-3-11図 各エネルギー源の発電コスト・CO2削減費用

第1-3-11図

(備考)

  1. 「みずほリポート(2010年9月13日発行)」より抜粋。
    みずほリポート(2010年9月13日発行)」では、資源エネルギー庁「エネルギー白書2009年版」、再生可能エネルギーの全量買取に関するプロジェクトチーム第4回会合・資料1「再生可能エネルギーの全量導入に向けた検討について(2010年3月24日)」より作成。
  2. 各エネルギー源のコストは、下記のとおり。
    • 太陽光:太陽光発電協会のデータより資源エネルギー庁試算。
    • バイオマス:再生可能エネルギーの原料買収に関するプロジェクトチーム第4回会合(2010年3月)。
    • 地熱:地熱発電に関する研究会(2009年6月)。
    • 風力:総合資源エネルギー調査会第7回新エネルギー部会(2001年6月)。
    • 水力・火力・原子力:総合資源エネルギー調査会電気事業分科会コスト等検討小委員会(2004年1月)。

トピック 個人向け住宅の太陽発電に対する補助制度

個人向け住宅の太陽光発電に対する補助制度は、大きく2つに分けられる。一つは、太陽光発電システムの導入費用を支援するものであり、もう一つは、太陽光発電システムで発電した電力を電力会社がこれまでの余剰電力の買取価格よりも高い価格で買い取るものである。

国による住宅用太陽光発電システムの設置に対する補助制度は1994年度に導入され、2005年度に一旦廃止されたが、2009年1月に補助内容を拡充して復活した6。地方自治体でも1998年頃から住宅用太陽光発電システムの設置支援を実施しているが、その市区町村数は、2009年度の477から2010年11月2日現在の655へと増加している。

2009年11月には、電力の固定価格買取制度が新たに導入された。それによって、太陽光発電によって発電した電力のうち、自家消費しない余剰電力を各地域の電力会社が固定価格で10年間買い取ることとなった。買取価格は、1kWhあたり住宅用が48円、非住宅用が24円と設定されている。電力の固定価格買取制度の導入前は、買取価格は1kWhあたり23~25円であったので、新制度によって、買取価格は今までの約2倍になったことになる。余剰電力の買取にかかる費用は電気を利用する需要者全員で負担するため、電気料金が若干値上がりすることになる7ものの、太陽光発電システムを設置した世帯にとっては、太陽光発電システムの初期費用の回収期間がこれまでの約半分になるメリットがある。

(住宅版エコポイントの普及状況)

2009年12月8日に閣議決定した「明日の安心と成長のための緊急経済対策」によって、エコ住宅の建設、エコ住宅へのリフォームに対する住宅版エコポイント制度が導入された。この制度8 は、省エネ住宅に対して最大30万円相当のポイントを助成する制度である。すなわち、エコ住宅の新築では一戸あたり一律30万ポイント(30万円)が付与され、エコリフォームでは1戸あたり30万ポイント(30万円)を限度として付与される。さらに、2010年9月10日に閣議決定された「新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策」によって、それまでは2010年12月31日に期限を迎える予定であった住宅版エコポイントの1年延長(2011年12月31日まで延長)が決定された。2010年10月8日に閣議決定された「円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策」によって、住宅エコポイントの対象も拡充され、住宅用太陽熱利用システム(ソーラーシステム)等が対象となった9

住宅版エコポイント発行戸数をみると、2010年3月8日の申請受付開始から2010年10月末までの累計は、新築83,482戸に対し、リフォーム148,374戸となっており、新築に比べてリフォームの割合が高い。また、リフォームに占める二重サッシなど窓の断熱改修に占める割合10はリフォーム全体の99.8%となっており、リフォームの大部分を占めている。

都道府県別の普及率をみると11、新築は岡山県、三重県、和歌山県、山口県、福島県、栃木県で高く、東京都、神奈川県、大阪府等の都市圏で低くなっている。リフォームは、富山県、石川県、新潟県、福井県等の積雪の多い地域での普及率が高くなっている。リフォームは、寒冷対策としての二重窓の設置など、断熱効果のための需要のある地域で活用されるケースが多かったことが分かる。なお、富山県の住宅用アルミニウム製サッシ出荷額は全国2位12であり、供給側の環境が整っていたことも普及率が高い要因の1つになっている可能性がある(第1-3-12図)。

第1-3-12図 住宅版エコポイント普及率
―北陸等の積雪地域において目立つ活用例―

第1-3-12図

(備考)

  1. 国土交通省公表「住宅版エコポイントの都道府県別実施状況(平成22年10月末時点)」、国土交通省「建築着工統計」の新設住宅着工戸数(平成22年3月~10月までの累計)、総務省「平成20年住宅・土地統計調査」一戸建て件数より作成。
  2. 総務省「平成20年住宅・土地統計調査」一戸建て件数は、平成20年10月1日現在の値。

他方、住宅版エコポイント制度によって発行されたポイント数は、2010年3月8日の申請受付開始から2010年10月末時点までの累計で、新築とリフォームと合わせて約334億ポイントとなっている。ポイントは商品券・プリペイドカード13 、地域産品、省エネ・環境配慮商品等と交換できるため、ポイントを利用した消費の下支えへ効果も期待される。


  • 6.2005年の補助金額は最大出力1kWあたり2万円であったが、2009年から1kWあたり7万円となった(2010年度も同額)。標準的な世帯の太陽光発電設備を3.5kWと仮定すると、補助金額は7万円/kW×3.5kW により24万5千円となる。システム価格を65万円/kWとした場合、設置工事費用は65万円/kW×3.5kWにより227万5千円となるので、補助金は設置工事費用の約1割に相当することになる。
  • 7.資源エネルギー庁によれば、一般家庭の電気料金への上乗せ額は、1か月あたり、制度導入当初は約30円、5年目以降は約45~90円と試算される。なお、2010年度については、09年11月に制度が開始したばかりであり、費用転嫁の対象となる買取期間が短かったため、要した費用は少なかった。一世帯当たりの負担が1銭/KWh未満になる場合、その費用は次年度に繰り越されることになるため、2010年度分は2011年4月以降に一括して負担されることになる。
  • 8.2009年12月8日に閣議決定した「明日の安心と成長のための緊急経済対策」における住宅版エコポイント制度では、発行対象は、新築については2009年12月8日~2010年12月31日に建築着工したもので、省エネ法のトップランナー基準(省エネ基準+α(高効率給湯機器等))相当の住宅、省エネ基準を満たす木造住宅とされ、一戸あたり一律30万ポイントが与えられることとなった。リフォームの発行対象は、2010年1月1日~2010年12月31日に工事着手したもので、窓・外壁・屋根・天井・床の断熱改修、バリアフリー改修に対してポイントが加算されることとなった。
  • 9.拡充された住宅設備(太陽熱利用システム、節水型便器、高断熱浴槽)については、2011年1月以降に工事着手するものを対象とし、2011年1月11日から申請受付(戸別申請のみ)を開始。一括申請の申請受付は、2011年2月上旬に開始する予定。
  • 10.リフォームの内訳については、エコポイント発行戸数ではなく、発行件数を使用。
  • 11.新築は、都道府県別住宅エコポイント発行戸数のうち新築/新設住宅着工戸数(2010年3月~10月の累計)で算出。リフォームは、都道府県別住宅エコポイント発行戸数のうちリフォーム/総務省「平成20年住宅・土地統計調査」一戸建て件数で算出。
  • 12.経済産業省「工業統計調査(品目編)(2008年)」による。
  • 13.環境寄付を行うなど環境配慮型のもの、公共交通機関利用カードなどが対象となる。

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