第1章 第1節 3.各地で弱含みとなる設備投資

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(多くの地域で設備投資が前年割れに)

日本銀行「企業短期経済観測調査(以下、「短観」という。)」を用いて、各地域の設備投資計画をみると、2007年度(実績)においては、ほぼ全ての地域で前年度実績を上回り、好調であった6。しかしながら、2008年度(計画)には、南関東や近畿では前年度を上回ったものの、東海や中国等では前年度とほぼ同水準となり、東北、北関東、北陸、四国では、前年度を大幅に下回るものとなっている(第1-1-9図)。

第1-1-9図 地域別の設備投資計画(全産業)
-08年の設備投資計画は、多くの地域で前年割れに-

第1-1-9図

(備考) 1. 日本銀行各支店「企業短期経済観測調査」(08年12月調査)により作成。
2. 東北は6県(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県)であり、新潟県を含まない。
  北関東は日本銀行前橋支店管内。北関東の設備投資額はソフトウェアを含む。南関東は神奈川県。東海は3県(愛知県、岐阜県、三重県)であり、静岡県を含まない。

一般に、企業は、業況が今後良くなると予想する場合には設備投資計画を上方修正し、反対にリスクが高まり業況が今後悪くなると予想する場合には設備投資計画を下方修正する。そこで、「短観」における設備投資計画の修正幅を2007年度(計画)と2008年度(計画)との間で比較してみた。2007年度(計画)では、2007年6月調査から同年9月調査にかけて、10地域のうち7地域で上方修正となった(第1-1-10図)。一方、2008年度(計画)では、2008年6月調査から同年9月調査で上方修正となったのは10地域のうち4地域だけであり、残りの6地域では下方修正となった。特に、北陸、九州・沖縄での下方修正幅が大きく、九州では製造業の修正幅が大きかった。こうした設備投資計画の下方修正は、高騰していた原油・原材料価格が低下局面に入ったものの、海外向け受注の減少、建設・不動産市場の低迷とそれに伴う倒産の増加等を背景として、多くの企業が収益予想を引下げたためである。

さらに、秋以降、円高や世界経済の後退によって、急速に企業の収益環境が悪化する中、設備投資の見送りや延期の動きが各地でみられるようになっている。

「短観」における設備投資計画は、前述のとおり、2008年9月調査で多くの地域で下方修正されたが、続く12月調査でさらなる下方修正となった地域もある(第1-1-11図)。特に、北関東、北陸では、下方修正幅がさらに拡大している。

他方、太陽光発電、リチウムイオン電池等の蓄電池、炭素繊維といった次世代製品や新分野においては、新工場の建設や既存工場の拡張計画が発表され、堅調さがうかがえる。

第1-1-10図 地域別の設備投資計画の修正幅(全産業) -08年秋に各地でみられた設備投資計画の下方修正-

第1-1-10図

(備考) 1. 日本銀行各支店「企業短期経済観測調査」及び日本銀行各支店へのヒアリングにより作成。
2. 東北は6県(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県)であり、新潟県を含まない。
  北関東は日本銀行前橋支店管内。北関東の設備投資額はソフトウェアを含む。南関東は神奈川県。東海は3県(愛知県、岐阜県、三重県)であり、静岡県を含まない。
第1-1-11図 08年後半における設備投資計画の修正幅(全産業)
-08年後半以降、多くの地域で設備投資計画のさらなる引下げ-
 
第1-1-11図
(備考) 1. 日本銀行各支店「企業短期経済観測調査」により作成。
2. 東北は6県(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県)であり、新潟県を含まない。
  北関東は日本銀行前橋支店管内。北関東の設備投資額はソフトウェアを含む。南関東は神奈川県。東海は3県(愛知県、岐阜県、三重県)であり、静岡県を含まない。

(収益見通しの下方修正)

2008年度の地域別の経常利益計画の推移を「短観」を用いてみると、ほぼ全ての地域で、2008年3月調査以降、下方修正が続いている。特に、東海、中国、九州・沖縄においては、2008年度の経常利益計画を3月調査の当初計画ではほぼ前年並みと見込んでいたものの、9月調査では2~3割程度の前年割れと計画の大幅な引下げを行い、12月調査では更なる引下げを行っている(第1-1-12図)。

先行き不透明感の高まり等もあり、今後、企業収益がさらに下方修正されることも予想され、各地で企業の設備過剰感が一層高まることが懸念される。

第1-1-12図 経常利益計画(08年度)の推移(全産業) -ほぼ全ての地域で収益見通しの下方修正が続く-

第1-1-12図

(備考) 1. 日本銀行各支店「企業短期経済観測調査」により作成。
2. 東北は6県(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県)であり、新潟県を含まない。
  北関東は日本銀行前橋支店管内。南関東は神奈川県。東海は3県(愛知県、岐阜県、三重県)であり、静岡県を含まない。

6. 南関東のみが減少したが、前年度に製造業で大型の設備投資があったことによる反動減の影響もあるとみられている。

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