第3章 第2節 2.付加価値の高いサービスの提供

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さらに、経済のサービス化に伴って、提供されるサービス自体も様々な広がりが期待される。このような状況下において、自然環境の良さや相対的なコストの安さといった、地域の強みを活かして、人を惹きつけることのできるビジネスの萌芽もみられ12、健康や美容、癒しをキーワードにして、従来の国内旅行に付加価値を持たせたサービスが出現している。

例えば、PETガン検診13ツアーは、ある航空会社が、02年限定で、鹿児島で開始したが、予想をはるかに上回る人気であったため、今なお継続されている。他の旅行会社も追随しており、北海道帯広市、室蘭市、登別温泉、仙台市、鬼怒川温泉、別府温泉等、ツアー地は全国各地に拡大している。地方の場合、都心に比べて予約が取りやすく、検診代が安価なのも魅力となっている。

また、滞在型リゾートの開発も進められている。地方の温泉地には古くから、「湯治」文化が根付いており、元々地方に優位性があったと考えられる14。滞在型リゾートは、ホテルや旅館等といった点の開発だけではなく、周辺地域も含めた面的な開発を進め、きめ細かいサービスを提供することで、長期滞在者やリピーターをつかむことが可能となる。

長野県軽井沢町のある老舗温泉は、10年かけてリニューアルし、05年7月にオープンした。「谷あい」という見晴らしの悪い立地特性を逆に利用して、非日常的な「谷の集落」を形成している。食事は集落内のレストランから選び、かけ流しの温泉や東洋スパ、茶屋などの施設も豊富にそろえている。

沖縄県名護市に開発中のリゾート施設は、日本初の本格的なシニア向けのリゾートを目指しており、定住型のコミュニティを目指して、一般居住区、介護ゾーン、医療ゾーンと、変化に対応した住居形態を選ぶことができるようになっている。ゴルフ場をはじめとして、各種のアメニティも充実している。

さらに、別荘やセカンドハウスへの需要も期待できる。別荘の件数は増加傾向にあり、98年に全国で219,800戸だったものが、03年には257,200戸と、5年間で37,400戸増加している。今のところ、都心からのアクセスの良さもあって、静岡県や長野県、千葉県、山梨県の4県で半数強を占めているが、98年から03年にかけては多くの都道府県で別荘の戸数が増加している(第3-2-4図)。別荘やセカンドハウスを持つ人が増えることに伴って、交流人口が増加していけば、地域の消費需要を喚起する効果も期待できる。

第3-2-4図 別荘戸数
-32都府県で増加-

第3-2-4図

(備考) 総務省「住宅・土地統計調査」により作成。

12.
これらをけん引するのは都市、地域を問わず富裕層とみられる。例えば、申告納税者のうち、所得が1,000万円超の納税者は86万人、全納税者平均で10%を超えており、サービスへの消費意欲も高い。家計調査年報(06年)で収入階級5分位別のサービス消費割合をみると、所得の低いほうから、34.1%、35.7%、37.0%、37.1%、37.6%となっている(付表3-1付図3-2)。
13.
PETガン検診とは、ガンの早期発見を目的とする最新の医療機器による検診。保険適用要件に該当しない場合は医療保険の対象外であるため、各医療機関が自由に価格設定できる。
14.
湯治文化は志賀直哉の「城之崎にて」(城崎温泉)、川端康成の「雪国」(越後湯沢温泉)といった優れた文学作品も生み出した。

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