第3章 第3節 1.地域に密着したプロスポーツの展開 ~ 2.地域を想う気持ちが行政を動かす

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第3節 地域を想う気持ちを形にする

産業振興、観光振興といった、一般的な手法に加えて、地域を想う気持ちを形にすることで、活性化につながるような仕組みも考えられている15。観光カリスマのような地域のリーダー的な存在には、手弁当も辞さないといった情熱が不可欠であったが、それを広く薄く分かち合うというようなものと言って良い。

1.地域に密着したプロスポーツの展開

プロ野球でも地域名を冠した球団が近年、続々と登場するなど、ファンやサポーターが地域経済に与える影響も無視できないものとなっている。05年に宮城県で発足した新球団は、06年度の経済波及効果(直接効果及び、1次・2次波及効果の合計)が97億円と推計されている。04年度の宮城県の県内総支出は約8.4兆円であるから、県の経済規模の0.1%程度が新球団効果ということになる。さらに、球場周辺の投資を誘発することで、地価が上昇したり、ビジター球団や取材メディアによる消費効果も見込まれる16

Jリーグの隆盛も、地域に密着したチーム作りがなければ、成しえなかったかもしれない。新潟県のJリーグチームはJリーグ屈指の集客力を誇っており、J1への昇格が決定した03年には、年間観客数の新記録を達成した(66万人)(第3-3-1図)。04年、05年には年間順位がそれぞれ16、18チーム中10位、12位と振るわなかったものの、J1の年間観客動員数1位を達成した。行政、地元企業、地域住民が一体となって、チームのサポートを行っていることが成功の要因である。

第3-3-1図 新潟県に本拠地を置くJリーグチームの観客動員数の推移

第3-3-1図

(備考) 関連ホームページ、ヒアリングにより作成。

2.地域を想う気持ちが行政を動かす

地域を想う気持ちの集積が行政を動かし、後押しする事例もみられる。

広島では、市民球場が老朽化し、新球場の建設が課題となっていた。多額の負担が予想されたことから、行政や経済界は及び腰であった。しかし、市民球場などでの「たる募金」で04年11月から05年11月までの1年間で1億2,000万円余を集め、こうした活動が結果的に新球場の建設を後押しした。新球場の総工費は約90億円17と、募金額よりははるかに多いが、募金活動がなかったら、実現するまでもっと時間が掛かったかもしれない。

新球場への支援は、広がりを見せており、地元の地方銀行が寄付金付定期預金を開始した。これは、店頭表示金利に0.2%を上乗せして、満期日に受取利息(税引き後)の20%相当額を広島市に寄付する仕組みとなっている。07年8月に開始し、12月までの預金目標額は300億円であるが、9月現在順調な滑り出しとのことである。300億円が達成されれば、広島市に約1,000万円の寄付が出来ることになる。

東京都東村山市の「淵の森」(「トトロの森」として知られる)の対岸の雑木林に宅地開発計画が持ち上がり、市が公有地化する方針を打ち出したものの、価格が1億3,000万円と希望価格とかなりの乖離が生じていた。しかし、宮崎駿氏(アニメ映画監督)が会長を務める「淵の森保全連絡協議会」への募金が2,400万円超に達し、市の公有地化方針を後押しすることになった。


15.
07年6月から総務省で検討の始まった、いわゆる「ふるさと納税」制度も、地域を想う気持ちを具現化したものと言える。
16.
球場内での県政PR映像の放映(全試合、90秒)や、東北各県の小学校の修学旅行の誘致など、球団を活用した地域振興策も打ち出されている。
17.
90億円のうち、たる募金分や球場の将来収入などを差し引いた地元負担額は46億円と算出されている。広島市が23億円、広島県と地元経済界が11.5億円ずつを負担することになった。

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