第2章 第1節 2.地域経済と地域財政の自立の状況を測る試み
(1)経済の公的依存度
地域経済は公的部門にどの程度依存しているのだろうか。
まず、政府最終消費支出(政府消費)と公的固定資本形成(公的投資)の県民総支出に対する割合(以下、「公的依存度」)をみてみよう。直近の04年度では高知県、沖縄県が40%を超え、以下、島根県、長崎県、秋田県が続く(第2-1-1図)。10年前の94年度には島根県、沖縄県、高知県、鹿児島県、秋田県の順であった。公的部門に依存する体質の地域は依然大きくは変わっていない。
第2-1-1図 公的依存度
(都道府県別、04年度)
(備考) | 1. | 内閣府「県民経済計算」により作成。 |
2. | 公的依存度=(政府最終消費支出+公的固定資本形成)/県内総支出、名目 | |
3. | 点は都道府県。 |
県内総支出を、94年度と04年度の2時点で比較すると、多くの県で増加している。このうち、公的投資は千葉県を除くすべての都道府県で大きく減少しているが、政府消費は全都道府県で大きく増加している1。この2つを合わせた公的需要ではやや増加している。
一方で、民間需要を地域別にみると、公的投資の減少分を民間需要の増加分で吸収できないだけでなく、民間需要自体が減少しているところもみられる(第2-1-2図)。
第2-1-2図 民間需要と公的需要の県内総支出への寄与度(94→04年度)
(備考) | 1. | 内閣府「県民経済計算」により作成。 |
2. | 民間需要=民間最終消費支出+民間固定資本形成+民間在庫増加 |
公的投資の削減に伴って、すでに地域経済に占める建設業のシェアは低下してきている。需要の公的依存体質からの脱却を図る過程において、建設業に代わる製造業等の産業基盤を育成し、地域の産業構造も転換していく必要性があると考えられる。
(2)雇用の公的依存度
地域の雇用は公的部門に依存している面もある。そこで、05年の国勢調査における公務従事者比率をみると、全国平均で3.4%、最も高い沖縄では6.4%を占めている。公務従事者比率を10年前と比較すると、公務員数は多くの地域で減少しているものの、全体の就業者数が減少していることもあって、比率はむしろ上昇している地域が多い(第2-1-3図)。
第2-1-3図 公務従事者の割合
(備考) | 総務省「国勢調査」により作成。 |
なお、統計項目における「公務従事者」には小中学校の教員や福祉事務所の職員などは含まれていない。さらに国・地方機関から補助金を受けている財団法人などの公益団体、第3セクターまでを含めるとその比率はさらに高くなるとみられる。
(3)地域財政の中央政府依存度
地域の歳入は地方税、地方交付税、国庫支出金などから成り立っている。現行制度では地方税のみでは地域の歳出を全てはまかなえないことから、ほとんどの地方自治体は地方交付税や国庫支出金といった中央政府からの財政移転等によって、その不足をまかなっている。
地方税や手数料といった、都道府県の自前財源(=自主財源)の歳出総額に占める割合をみると、35道府県では、50%を下回っており、歳入の半分以上を地方交付税や国庫支出金といった、自主財源以外の財源に頼っていることが分かる。オイルショック以降について、自主財源比率が50%を超えた県の数を数えると、91年度の18都府県が最高であった(第2-1-4図)。また、このところの景気回復を反映して、自主財源が50%を超える都道府県は増加傾向にある。
第2-1-4図 自主財源比率が50%を超える都道府県数の推移
(備考) | 1. | 総務省「地方財政統計年報」、「都道府県別決算状況調」により作成。 |
2. | 自主財源比率=自主財源額/歳出決算総額 | |
3. | 自主財源とは、地方税、分担金及び負担金、使用料、手数料など地方公共団体の意思で、 ある程度収入額を増減できる自前の財源をいう。 |
(4)公的依存度と財政力指数
「自立」を考えるときに、経済の自立が先に来るのか、それとも財政の自立が先に来るのか、どちらであろうか。
地方交付税の不交付団体をみると、06年度に不交付となっている都道府県は東京都と愛知県だけである。愛知県は今回の景気回復の代表的存在であるが、不交付団体になったのは06年度からであり、それまでは愛知県ですら交付団体であった。こうした事実から考えると、経済の自立がなければ、財政の自立は果たしえないと考えられる。
実際、公的依存度と財政力指数の関係をみると、負の相関関係がみられる。このような関係は04年度においても、10年前の94年度においても同様にみられる(第2-1-5図)。
第2-1-5図 公的依存度と財政力指数
(備考) | 1. | 内閣府「県民経済計算」、総務省「地方財政白書」により作成。 |
2. | 公的依存度=(政府最終消費支出+公的固定資本形成)/県内総支出、名目 | |
3. | 点は、都道府県。 |
なお、近年の地方交付税不交付団体数をみると、2000年度を底として、順調に増加傾向にあり、06年度にはバブル期のピークをつけた91年度の175団体に次ぐ水準の171団体となっている(第2-1-6図)。
第2-1-6図 地方交付税不交付団体数の推移
(備考) | 総務省公表資料により作成。 |
1. | 政府消費とは、一般政府の財貨・サービスに対する経常的支出である政府サービス生産者の生産額から他部門に販売した額を差し引いたものに、現物社会給付等を加えたもの。政府消費には、一般行政サービスとは性格を異にする医療・介護サービス支出のうちの公的保険給付分(自己負担分は家計消費に計上)が含まれていることに注意する必要がある。当該部分の政府消費に占める割合(名目)を全国でみると、04年度に34.4%となっている。政府消費が全都道府県で大きく増加しているのは、介護保険や国民健康保険の支出の増加によるものと考えられる(付図2-1)。 |